128 case 28 改善例 (1) 本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」 【本研究の学術的背景】 蚊は、鳥類宿主に比べ世代交代サイクルが速く、行動範囲も狭いので、蚊群集における鳥マラリア 原虫の保有状況は、現在進行中の鳥マラリアの流行状況を反映すると考えられる。また、吸血から は、病原体、ベクター、宿主鳥類の三者が接触したという直接的証処が得られる。これまでの分析 果で、日本では夏鳥であるイワツバメや冬鳥であるシメ、シロハラなど、渡り鳥を吸血していた蚊サ ンプルからも鳥マラリア原虫が検出されている。これらの鳥マラリア原虫は、ヨーロッパやアメリ カ、日本以外のアジア地域の野生鳥類血液から検出された原虫遺伝子配列と一致したが、日本の からの検出報告がない。このことは、日本以外に感染環をもつ鳥マラリア原虫が、渡り鳥である宿主 鳥類によって日本に運ばれ、飛来地で日本産数に吸血されることで一時的に取り込まれたと考えられ る。 また、申請者のこれまでの研究結果で日本産蚊から検出されたマラリア原虫10系統のうち、4系 統についてはGenBankデータベース上に一致する配列が無い。この理由のひとつとして、日本産 における鳥マラリア原虫の情報量自体が少ないことが挙げられる。 【研究課題の核心をなす学術的「問い」】 このように鳥マラリア原虫を含む節足動物が媒介する感染症について、野外における流行地や流行 時期を明らかにすることは媒介昆虫の発生消長や病原体保有状況がわかり、有益な情報が得られる が、日本産鳥類における鳥マラリア原虫の保有状況や原虫の種類について調べた研究はこれまでにな く、情報量が不足しているのが現状である。 (2)本研究の目的および学術的独自性と創造性 【本研究の目的】 本研究では鳥マラリア原虫の媒介昆虫である蚊群集の菌保有状視と吸血源動物種を調べることで、 その調査地において、どの鳥マラリア原虫種が、どの鳥類宿主と、媒介蚊の間で流行しているか らかにする。 本研究での調査地として、2007年より調査を継続している福岡県内の森林公園に加え、ラム 条約登録地である新潟県佐潟湿地において、ドライアイストラップ、ヒト法、捕虫網によるス ウィーピング法を用いて蚊サンプルを集める。捕獲蚊については、顕微鏡による形態学的観察、 に応じDNA解析により、蚊の種同定を行った後、遺伝子解析法により鳥マラリア原虫の検出・分類を 行う。吸血数については、DNA解析による吸血源動物の同定も併せて行う。また、調査地で観察 る鳥類の種類構成、出現頻度などのデータを収集し、複数の調査地で得られたサンプルの地域差につ いて比較検討を行う。 また、傷病鳥として持ち込まれた野生個体からの血液試料の採取を指定動物病に依頼し、鳥類血 液検体から鳥マラリア原虫を検出し、蚊から検出されている菌種との比較を行うことで、日本産 鳥類群集の間に感染環を持つ鳥マラリア原虫種を明らかにする。吸血敏および鳥類サンプルの分 果を、媒介蚊種、吸血源動物種、病原体をセットとして記録し、これらの情報を逐次蓄積することに よって、野生鳥類の昆虫媒介性の感染症の基礎的データベースを機築する。 バラバラだった「背景」と「目的」を見出しを使って1つにまとめる