--- title: "CASE 84: 「AとBを用いて,CとDを行う」はわかりにくい" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第12章 その他(研究経費や図など) case_number: 84 pages: 345-348 images: page_0345.png ~ page_0348.png advice: "文を2つに分けてそれぞれの関係を確認しよう.文章を簡潔にすることに縛られて,一文に情報を盛り込みがちなので注意" tags: ["はっきりと", "推敲のヒント"] --- # CASE 84: 「AとBを用いて,CとDを行う」はわかりにくい ## アドバイス 文を2つに分けてそれぞれの関係を確認しよう.文章を簡潔にすることに縛られて,一文に情報を盛り込みがちなので注意 ## どこがよくないか 129-ES細胞のSTAT3 KO-ES細胞とSTAT3のDox(ドキシサイクリン)依存性発現誘導系を用いて、STAT3の有無の条件で転写因子PCFTに対する抗体を使用したChip-qPCRと下流遺伝子のqPCRを行う。 ## 添削例 > 129-ES細胞のSTAT3 KO-ES細胞(A)とSTAT3のDox(ドキシサイクリン)依存性発現誘導系(B)を用いて、STAT3の有無の条件で転写因子PCFTに対する抗体を使用したChip-qPCR(C)と下流遺伝子のqPCR(D)を行う。 > > A, B, C, Dが何にかかり、何を受けているのかわからない! **指摘された問題点:** 1. 「AとBを用いて、CとDを行う」という構造で、A, B, C, Dの関係がわからない 2. 「129-ES細胞」が「STAT3 KO-ES細胞」にかかるのか、「STAT3 KO-ES細胞とSTAT3のDox依存性発現誘導系」の両方にかかるのかが不明 3. 1文に情報が詰め込まれすぎている ## なぜよくないのか? 例文は「AとBを用いて、CとDを行う」という1文になっていて、さらに、「129-ES細胞」が「STAT3 KO-ES細胞」にかかるのか、それとも「STAT3 KO-ES細胞とSTAT3のDox(ドキシサイクリン)依存性発現誘導系」の両方にかかるのかがわからない。 「AとBを用いて、CとDを行う」のように、〇〇と〇〇の対になることが1文中に2つあるとわかりにくい。このわかりにくさは、簡潔にしようと1文に情報が詰め込まれたことに原因がある。またこういった場合、形容詞が最初のものにかかるのか、あるいは両方にかかるのか、その点でもわかりにくくなりやすいので注意が必要だ。文章がわかりにくいときは、短い文章で説明するという前提を捨てる。説明を加え、くり返しを多くし、文章を長くしてでも、はっきりとした文章をめざした方がわかりやすい。 ## どのように改良すればよいか? 1文の情報をシンプルに。「AとBを用いて、CとDを行う」の1文ならば、2つに分ける。つまり「この系ではAとBの2つを用いる((1))。この2つについてCとDを行う((2))」とするともう少しわかりやすい。 例文ならば次のように分ける。文章は長くなるが、理解しやすくなると思う。 - 「STAT3の有無の条件下で、転写因子PCFTに対する抗体を使用したChip-qPCRと下流遺伝子のqPCRを行う」(=(2)) - 「STAT3がない条件としては、129-ES細胞においてSTAT3 KO-ES細胞を作る。STAT3がある条件としては、Dox(ドキシサイクリン)依存性の発現誘導系によってSTAT3発現レベルを上昇させる」(=(1)) ## 改善例 > ここでは、STAT3の有無の条件下で、転写因子PCFTに対する抗体を使用したChip-qPCRと下流遺伝子のqPCRを行う。STAT3がない条件としては、129-ES細胞においてSTAT3 KO-ES細胞を作る。STAT3がある条件としては、Dox(ドキシサイクリン)依存性の発現誘導系によってSTAT3発現レベルを上昇させる。 > > 文章を複数に分けて、それぞれの意味をはっきりさせる