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title: "CASE 79: 略語の種類が多すぎて把握できない"
book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版
chapter: 第12章 その他(研究経費や図など)
case_number: 79
pages: 331-334
images: page_0331.png ~ page_0334.png
advice: "略語は3種類くらいにしよう.それ以外は日本語表記を使う"
tags: ["はっきりと", "簡潔に"]
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# CASE 79: 略語の種類が多すぎて把握できない
## アドバイス
略語は3種類くらいにしよう.それ以外は日本語表記を使う
## どこがよくないか
①研究の学術的背景
多くの精神疾患に対して薬物療法と経頭蓋磁気刺激法(TMS: Transcranial magnetic stimulation)が効果的な治療的介入であることが証明されており、米国精神医学会のガイドラインでは多くのうつ症状や不安障害に対する治療として、薬物療法とTMSのどちらかを治療の第一選択として患者の好みにより提供するとされていることから、TMSは精神疾患の治療において重要な選択肢になっている。
生物学的指標を用いてTMSの効果を検討した研究としては、TMSによってうつ病患者の前頭前野内側部と前部帯状回、社交不安障害(Social Anxiety Disorder; SAD)患者の前頭前野内側部と背外側部、背内側部、強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder; OCD)患者の眼窩前頭皮質と前部帯状回の活動性が変化することが報告されており、TMSの治療効果がうつ病、SAD、OCDの脳活動における変化としてとらえられることが明らかになってきた。また、神経性大食症(Bulimia Nervosa; BN)でも外側前頭前皮質と前部帯状回の機能不全が見られ、TMS後に脳活動が変化するという症例報告がある。
(中略)しかしながらその一方で、TMSの効果を予測する指標についての研究としては、Voxel-Based Morphometry(VBM)を用いた全脳の解析でOCDに対するTMSの治療効果と前頭前野領域の体積の関連を示唆する報告があるものの、前頭前野に関心領域(Region of Interest; ROI)を置いた用手的体積測定によるgyrusレベルの解析や脳機能と組み合わせた検討は行われておらず、うつ病、SAD、BNについては脳構造とTMSの治療効果の関連について検討した報告はまだされていない。
## 添削例
> ①研究の学術的背景
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> 多くの精神疾患に対して薬物療法と経頭蓋磁気刺激法(TMS: Transcranial magnetic stimulation)が効果的な治療的介入であることが証明されており、米国精神医学会のガイドラインでは多くのうつ症状や不安障害に対する治療として、薬物療法とTMSのどちらかを治療の第一選択として患者の好みにより提供するとされていることから、TMSは精神疾患の治療において重要な選択肢になっている。
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> 生物学的指標を用いてTMSの効果を検討した研究としては、TMSによってうつ病患者の前頭前野内側部と前部帯状回、社交不安障害(Social Anxiety Disorder; SAD)患者の前頭前野内側部と背外側部、背内側部、強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder; OCD)患者の眼窩前頭皮質と前部帯状回の活動性が変化することが報告されており、TMSの治療効果がうつ病、SAD、OCDの脳活動における変化としてとらえられることが明らかになってきた。また、神経性大食症(Bulimia Nervosa; BN)でも外側前頭前皮質と前部帯状回の機能不全が見られ、TMS後に脳活動が変化するという症例報告がある。
>
> (中略)しかしながらその一方で、TMSの効果を予測する指標についての研究としては、Voxel-Based Morphometry(VBM)を用いた全脳の解析でOCDに対するTMSの治療効果と前頭前野領域の体積の関連を示唆する報告があるものの、前頭前野に関心領域(Region of Interest; ROI)を置いた用手的体積測定によるgyrusレベルの解析や脳機能と組み合わせた検討は行われておらず、うつ病、SAD、BNについては脳構造とTMSの治療効果の関連について検討した報告はまだされていない。
>
> 略語が多すぎる! 分野外の審査委員にはやや難しい
**指摘された問題点:**
1. TMS、SAD、OCD、BN、VBM、ROI、gyrusなど略語・英語が多すぎる
2. 分野外の審査委員には読みにくく、把握しづらい
3. full spellingは書いているが略語の種類が多すぎて負担になる
## なぜよくないのか?
略語が多すぎる。最初に出てきた箇所ではfull spellingを書いて、それ以降は略語を使っているのはたしかに学術論文のルールにしたがっていてよい。しかし申請書においては略語が多くなるにつれて読みづらさは増すものと思おう。
## どのように改良すればよいか?
毎回full spellingを使うよりは略語を使ったほうがよい。しかし略語の使いすぎには注意したい。もちろん略語を使わざるを得ない場合(適当な日本語がまだない場合など)もあるが、できるだけ略語は整理すること。私の場合は、略語にするのは申請書のなかでせいぜい3個くらいに留めるようにしている。その他は略さないで日本語で書いた方が少し分野の遠い審査委員は理解しやすい。
例文では略語は「TMS」と「VBM」(こちらは適当な日本語がまだない)だけにする。「gyrus」もとくに英語である必要はないので「脳回」とした。
## 改善例
> 略語の使用を2つだけにして、他のものは日本語で書く
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> 多くの精神疾患に対して薬物療法と経頭蓋磁気刺激法(TMS: Transcranial magnetic stimulation)が効果的な治療的介入であることが証明されており、米国精神医学会のガイドラインでは多くのうつ症状や不安障害に対する治療として、薬物療法とTMSのどちらかを治療の第一選択として患者の好みにより提供するとされていることから、TMSは精神疾患の治療において重要な選択肢になっている。
>
> 生物学的指標を用いてTMSの効果を検討した研究としては、次のような脳の部位の活動性が変化することが知られている。
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> - うつ病患者:前頭前野内側部と前部帯状回
> - 社交性不安障害患者:前頭前野内側部と背外側部、背内側部 ← **箇条書きを活用**
> - 強迫性障害患者:眼窩前頭皮質と前部帯状回
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> したがってTMSの治療効果がうつ病、社交不安障害、強迫性障害の脳活動における変化としてとらえられることが明らかになってきた。また、神経性大食症でも外側前頭前皮質と前部帯状回の機能不全が見られ、TMS後に脳活動が変化するという症例報告がある。
>
> (中略)その一方で、TMSの効果を予測する指標についての研究としては、Voxel-Based Morphometry(VBM)を用いた全脳の解析で**強迫性障害**に対するTMSの治療効果と前頭前野領域の体積の関連を示唆する報告があるものの、前頭前野に関心領域を置いた用手的体積測定による**脳回**レベルの解析や脳機能と組み合わせた検討は行われておらず、うつ病、**社交不安障害**、**神経性大食症**については脳構造とTMSの治療効果の関連について検討した報告はまだされていない。
なお、例文では「うつ病患者の前頭前野内側部と前部帯状回、社交不安障害(Social Anxiety Disorder; SAD)患者の前頭前野内側部と背外側部、背内側部、強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder; OCD)患者の眼窩前頭皮質と前部帯状回の活動性が変化する」と複数の事柄を続けて説明していることも、読みにくさにつながっている。複数の事柄を続けて説明するときには、箇条書きや表にするなどの工夫をするとよい(case55参照)。