--- title: "CASE 78: 主観的な表現、刺激する表現が目につく" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第12章 その他(研究経費や図など) case_number: 78 pages: 327-330 images: page_0327.png ~ page_0330.png advice: "余計な言葉や大げさな言い方、尊大な表現はカットしよう" tags: ["簡潔に", "推敲のヒント"] --- # CASE 78: 主観的な表現、刺激する表現が目につく ## アドバイス 余計な言葉や大げさな言い方、尊大な表現はカットしよう ## どこがよくないか > しかし、実証的研究の蓄積が十分ではなく、今後さらに質の高い研究に基づく支援が求められることは**自明である**。 > 申請者は今まで、児童・生徒がどのようなところで学習につまずくのかということの研究を中心に行ってきた。したがって、小学生のうちに、中学に入っても学習についていける基礎技能を特定する**自信がある**。 > 身体運動とDHA摂取による治療法は、医薬品を使用しないために副作用の問題がなく**安全である**。 > 申請者が所属する研究室では、**国内で最も活発に**本技術を用いた解析をすすめており、この点には研究の**遅延は考える必要はない**。 > siRNA法は当研究室で日常的に行われており、手技的に**何ら問題はない**。 > この方法は当研究室で行われており、技術的に**何ら問題はなく**、**容易に遂行可能**である。 > 研究に関する情報を共有することができるなど研究体制は**盤石**であり、研究の開始準備は整っている。 > 実践家が参加する研究会には、全国から新人、ベテランと幅広く参加があるため、**あらゆる**困難を抽出することが可能である。 ## 添削例 > しかし、実証的研究の蓄積が十分ではなく、今後さらに質の高い研究に基づく支援が求められることは**自明である**。 → ここまで言うのはどうか?研究に自明のことなどない! > 申請者は今まで...基礎技能を特定する**自信がある**。 → 主観的 > 身体運動とDHA摂取による治療法は...副作用の問題がなく**安全である**。 → 言い過ぎ? > 申請者が所属する研究室では、**国内で最も活発に**...研究の**遅延は考える必要はない**。 → 言い過ぎ?研究では何が起こるかわからない > siRNA法は当研究室で日常的に行われており、手技的に**何ら問題はない**。 → 言い過ぎ? > この方法は当研究室で行われており、技術的に**何ら問題はなく**、**容易に遂行可能**である。 → 言い過ぎ? > 研究体制は**盤石**であり... → 大げさすぎる? > **あらゆる**困難を抽出することが可能である。 → 言い過ぎ? **指摘された問題点:** 1. 「自明である」「自信がある」「何ら問題はない」「盤石」「あらゆる」など、審査委員を刺激する可能性のある主観的・尊大な表現が多い ## なぜよくないのか? 例文は審査委員を刺激する可能性のある言い回しが多い。 審査委員の立場になって考えてほしい。申請者自身が研究計画に「何も問題はない」と宣言した場合、たとえ本当に問題がなくても、審査委員には"本当かな?""よく確認しなくては"という気持ちが生まれる。一度その気持ちをもってしまうと、申請書のよくない点が目につきやすくなる。 ## どのように改良すればよいか? 読み手を刺激する言い回しを、不必要に、無自覚に使わない。こうした言い回しは、地の文など研究内容以外の、あまり注意を向けていない箇所に含まれることもあるので注意しよう。また、推定や意見ではなく、根拠を示すこと。申請書は意見ではなく、厳密な根拠や事実にもとづいて書くべきものである。そのために必要なら参考文献を引用する。 例文では、余計な言葉や大げさな言い方はカットする。なお、「自信がある」とは主観的な記述。このように書く必要はないし、自信については客観的事実の積み重ねでアピールする方がよい。 ## 改善例 > しかし、実証的研究の蓄積が十分ではなく、今後さらに質の高い研究に基づく支援が**求められる**。 > 申請者は今まで、児童・生徒がどのようなところで学習につまずくのかということの研究を中心に行ってきた。したがって、小学生のうちに、中学に入っても学習についていける基礎技能を**特定できる**。 > 身体運動とDHA摂取による治療法は、副作用の問題が**少なく比較的安全**である。 > 申請者が所属する研究室では、国内で最も活発に本技術を用いた解析を**すすめている**。 > siRNA法は当研究室で日常的に行われており、手技的に**十分な経験を積んでいる**。 > この方法は当研究室で行われており、技術的に**遂行可能**である。 > 研究に関する情報を共有することができるなど**研究体制ができており**、研究の開始準備は整っている。 > 実践家が参加する研究会には、全国から新人、ベテランと幅広く参加があるため、**さまざまな困難の事例を学ぶ**ことが可能である。