--- title: "CASE 65: 「(1)これまでの研究活動」に載せた学会発表の情報が不十分" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第10章 応募者の研究遂行能力及び研究環境 case_number: 65 pages: 281-284 images: page_0281.png ~ page_0284.png advice: "学会での一般発表をあげるだけでなく、その内容を書いて、「研究遂行能力」や「実行可能性」をアピールしよう" tags: ["ふさわしく", "アピールする"] --- # CASE 65: 「(1)これまでの研究活動」に載せた学会発表の情報が不十分 ## アドバイス 学会での一般発表をあげるだけでなく、その内容を書いて、「研究遂行能力」や「実行可能性」をアピールしよう ## どこがよくないか (学会発表) 申請者らが「グレリン受容体の研究」に関して口頭発表したもののうち、代表的なものを以下にあげる。 「グレリン受容体の結晶構造解析による活性型グレリン認識機構の解明」(椎村祐樹、第91回日本内分泌学会学術総会、2018年4月宮崎) 「グレリン研究のこれから」(児島将康、第36回内分泌代謝学サマーセミナー、2018年8月蔵王) ## 添削例 > (学会発表) > > 申請者らが「グレリン受容体の研究」に関して口頭発表したもののうち、代表的なものを以下にあげる。 > > 「グレリン受容体の結晶構造解析による活性型グレリン認識機構の解明」(椎村祐樹、第91回日本内分泌学会学術総会、2018年4月宮崎) > > 「グレリン研究のこれから」(児島将康、第36回内分泌代謝学サマーセミナー、2018年8月蔵王) > > 学会発表をあげただけでは、研究の遂行能力と実行可能性がわからない。発表内容を書いて、この2つについてアピールする **指摘された問題点:** 1. 単なる学会発表のリストだけでは、申請者の研究遂行能力がわからない 2. 研究計画の実行可能性が示されていない 3. 発表内容の説明がない ## なぜよくないのか? 学会発表について従来の申請書にあった【研究業績】欄では、記載できるのは特別講演や招待講演などの限られたものだけだったが、現在の申請書では、その制限がなくなった。そのため、まだ論文には発表していないような研究の途中経過でも、学会での一般発表の記録という形で記載できる。「まだ論文にはなっていないのだが、ここまで研究が進んでいて、これまでの途中経過を学会で発表している」と記載することで、申請する研究計画の実行可能性を示すことができる。 しかし、例文のような単なる学会発表のリストだけでは、申請者の研究遂行能力や研究計画の実行可能性がわからない。 ## どのように改良すればよいか? 学会での発表内容が、今回の研究計画にどのように関連しているのか、あるいは研究計画のどの段階にあるものなのかなどを説明する必要がある。 学会発表も単にリストとしてあげるのではなく、その発表内容を簡単に説明して、今回の研究計画にどのように活かされているのかを示す(case64参照)。 また今回の研究計画に直接関係のない学会発表であっても、用いる手法が共通であるとか、研究の進め方が同じであるとか、これまでの研究活動の経験が今回の計画に応用できる場合はそれらも示すのがよい。 例文では、申請者の研究がどこまで進んでいて、それをどの学会で発表したか(発表するか)を加える。 ## 改善例 > (学会発表) > > 申請者らによるグレリン受容体の結晶構造に関してはまだ論文発表はないが、不活性型のグレリン受容体の結晶構造についてはすでに解析に成功しており、その途中経過はいくつかの学会において報告している。 > > 1,「グレリン受容体の結晶構造解析による活性型グレリン認識機構の解明」(椎村祐樹、第91回日本内分泌学会学術総会、2018年4月宮崎) > > この発表ではグレリン受容体の結晶化のためのコンストラクトの設計や発現・精製について説明し、得られた不活性型のグレリン受容体の概略を解説した。 > > 2,「グレリン研究のこれから」(児島将康、第36回内分泌代謝学サマーセミナー、2018年8月蔵王) > > グレリン受容体の結晶構造から推定されるグレリンのオクタン酸修飾基の役割について説明した。 > > さらに本年6月にも日本蛋白質科学会において、グレリン受容体の立体構造から明らかになったアミノ酸について、その変異実験の経過を発表予定である。 > > このように申請者らによるグレリン受容体の結晶構造解析についての研究は着実に進んでおり、研究計画の実行可能性は十分にある。 ## 申請者のギモン 24 学会参加 「学会参加で情報を得る」と【研究目的、研究方法など】に書くのはよいのでしょうか? 学会発表を研究計画の中身として申請書に書くことがふさわしくない(case54参照)ように、学会参加で情報を得ることも研究の中身としては適切ではない。研修会や学会参加で、研究に関する情報を得ることの意義はわかるが、はっきり言って「学会参加で情報を得る」ことは申請書に書く必要はない。学会の内容は開催の2~3カ月前にならないとわからないし、もちろん次年度以降の内容もわからない。そのため、研究計画の遂行に役立つのかどうかが審査委員には不明だからである。 ただし、学会について申請書では書かない、という意味ではない。学会参加は【研究経費とその必要性】に学会参加費や交通費などに関して書いておけばよい。