--- title: "CASE 64: 「(1)これまでの研究活動」に論文のリストしか載せていない" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第10章 応募者の研究遂行能力及び研究環境 case_number: 64 pages: 277-280 images: page_0277.png ~ page_0280.png advice: "論文リストだけではなく、各論文(研究成果)の内容を書いて、研究遂行能力をアピールしよう" tags: ["ふさわしく", "アピールする"] --- # CASE 64: 「(1)これまでの研究活動」に論文のリストしか載せていない ## アドバイス 論文リストだけではなく、各論文(研究成果)の内容を書いて、研究遂行能力をアピールしよう ## どこがよくないか 申請者は本研究計画に関連して、これまでに以下のような論文を発表してきた。 1: Kojima M, Hosoda H, Date Y, Nakazato M, Matsuo H, Kangawa K. Ghrelin is a growth-hormone-releasing acylated peptide from stomach. Nature. 1999 Dec 9;402(6762):656-60. 2: Hosoda H, Kojima M, Matsuo H, Kangawa K. Ghrelin and des-acyl ghrelin: two major forms of rat ghrelin peptide in gastrointestinal tissue. Biochem Biophys Res Commun. 2000 Dec 29;279(3):909-13. 3: Kaiya H, Kojima M, Hosoda H, Koda A, Yamamoto K, Kitajima Y, Kitayama S, Kangawa K. Bullfrog ghrelin is modified by n-octanoic acid at its third threonine residue. J Biol Chem. 2001 Nov 2;276(44):40441-8. 4: Kaiya H, Van Der Geyten S, Kojima M, Hosoda H, Kitajima Y, Matsumoto M, Geelissen S, Darras VM, Kangawa K. Chicken ghrelin: purification, cDNA cloning, and biological activity. Endocrinology. 2002 Sep;143(9):3454-63. 5: Nishi Y, Hiejima H, Hosoda H, Kaiya H, Mori K, Fukue Y, Yanase T, Nawata H, Kangawa K, Kojima M. Ingested medium-chain fatty acids are directly utilized for the acyl modification of ghrelin. Endocrinology. 2005 May;146(5):2255-64. 6: Sato T, Fukue Y, Teranishi H, Yoshida Y, Kojima M. Molecular forms of hypothalamic ghrelin and its regulation by fasting and 2-deoxy-d-glucose administration. Endocrinology. 2005 Jun;146(6):2510-6. 7: Sato T, Kurokawa M, Nakashima Y, Ida T, Takahashi T, Fukue Y, Ikawa M, Okabe M, Kangawa K, Kojima M. Ghrelin deficiency does not influence feeding performance. Regul Pept. 2008 Jan 10;145(1-3):7-11. 8: Ohgusu H, Shirouzu K, Nakamura Y, Nakashima Y, Ida T, Sato T, Kojima M. Ghrelin O-acyltransferase (GOAT) has a preference for n-hexanoyl-CoA over n-octanoyl-CoA as an acyl donor. Biochem Biophys Res Commun. 2009 Aug 14;386(1):153-8. 9: Sato T, Nakashima Y, Nakamura Y, Ida T, Kojima M. Continuous antagonism of the ghrelin receptor results in early induction of salt-sensitive hypertension. J Mol Neurosci. 2011 Feb;43(2):193-9. 10: Li E, Chung H, Kim Y, Kim DH, Ryu JH, Sato T, Kojima M, Park S. Ghrelin directly stimulates adult hippocampal neurogenesis: implications for learning and memory. Endocr J. 2013;60(6):781-9. 11: Yuge K, Hara M, Okabe R, Nakamura Y, Okamura H, Nagamitsu S, Yamashita Y, Orimoto K, Kojima M, Matsuishi T. Ghrelin improves dystonia and tremor in patients with Rett syndrome: A pilot study. J Neurol Sci. 2017 Jun 15;377:219-223. ## 添削例 > 申請者は本研究計画に関連して、これまでに以下のような論文を発表してきた。 > > 1: Kojima M, Hosoda H, Date Y, Nakazato M, Matsuo H, Kangawa K. Ghrelin is a growth-hormone-releasing acylated peptide from stomach. Nature. 1999 Dec 9;402(6762):656-60. > 2: Hosoda H, Kojima M, Matsuo H, Kangawa K. Ghrelin and des-acyl ghrelin: two major forms of rat ghrelin peptide in gastrointestinal tissue. Biochem Biophys Res Commun. 2000 Dec 29;279(3):909-13. > (以下省略) > > 平成31年度の公募から従来の「研究業績」のリストを書かせる欄ではなくなった。論文を羅列するだけでは記載する内容として求められていることに足りない。研究遂行能力を工夫して示す **指摘された問題点:** 1. 従来の記載方法のままで、発表論文を順番に記載しているだけで、なんの工夫もない 2. 論文リストだけでは研究遂行能力が示されていない 3. 平成31年度の公募から記載内容が変わったにもかかわらず対応していない ## なぜよくないのか? 【(1)これまでの研究活動】では【応募者の研究遂行能力】を示さなければならない。従来の申請書の【研究業績】を書かせる欄について「必ずしも研究課題とは関係のない業績を不必要に連ねたり」「単に『欄を埋める』ことが重要であるかのような印象を払拭する必要がある」などの意見があり(科学技術・学術審議会学術分科会科学研究費補助金審査部会等における議論から)、平成31年度公募の申請書からこのような記載内容に変わった。つまり発表論文などの業績を単に並べるのではなく、申請者の研究遂行能力を示すために工夫して書きなさいということだ。 例文では、従来の記載方法のままで、発表論文を順番に記載しているだけで、なんの工夫もない。 ## どのように改良すればよいか? ただ論文のリストを載せるのではなく、申請者がこれまでどのような研究を行ってきたのか、各論文の内容を簡単に説明して、申請者の「研究遂行能力」を示す。論文はPubMedなどで検索できる情報があれば十分で、むやみに詳しく記載する必要はない(その分のスペースは「研究遂行能力」を示すことに使う)。 例文では、今回の研究計画に関する申請者の研究成果について、日本語の文章とともに、発表論文を示す。また、自分の研究計画に必要なテクニックや手法をこれまでの研究論文で使っているのなら、それを示せばよい。 ## 改善例 > **(1)これまでの研究活動** > > **グレリンに関する申請者のこれまでの研究成果:** > > グレリンの発見以来、申請者はグレリンの生理作用の解明、脂肪酸修飾のメカニズム、様々な動物種でのグレリンの構造解明などを行ってきた。 > > ①成長ホルモン分泌刺激活性および摂食亢進作用を示すペプチド・ホルモンのグレリンを胃から発見した。グレリンはオクタン酸で修飾されており、この修飾基が活性発現に必須であることを明らかにした。(Nature 402, 656-660, 1999) > > ②グレリンのラジオイムノアッセイ(RIA)による測定系を開発し、グレリンが胃に一番多く、消化管や膵臓に存在することを明らかにした。(BBRC 279, 909-913, 2000) > > ③経口摂取した中鎖脂肪酸がグレリンの脂肪酸修飾に直接使われることを明らかにした。(Endocrinology 146, 2255-2264, 2005) > > ④視床下部でのグレリンが、胃と同じくオクタン酸で修飾されたフォームであることを確認した。(Endocrinology 146, 2510-2516, 2005) > > ⑤ほ乳類以外にも、鳥類、魚類、両生類など、グレリンは脊椎動物全部に存在し、しかも脂肪酸による修飾基もすべての動物種のグレリンで認められることを明らかにした。(JBC, Endocrinologyほか 2001~2005) > > ⑥グレリン活性化に必要なグレリン脂肪酸転移酵素の酵素学的性質を明らかにした。グレリン脂肪酸転移酵素が、グレリンの主要な修飾基であるオクタン酸よりも、ヘキサン酸の方をより効率的に転移することを明らかにした。(BBRC 386, 153-158, 2009) > > ⑦グレリン欠損マウスを作成し、これが摂食行動や体重変化に野生型と差がないことを明らかにした。(Regul Pept 145, 7-11, 2008) > > ⑧グレリン阻害によって食塩感受性の高血圧発症が早期に起こることを見出した。(J Mol Neurosci 43, 193-199, 2011) > > ⑨グレリンが海馬の神経細胞幹細胞を刺激して、神経再生を行うことを明らかにした。(Endocr J. 60, 781-789, 2013) > > ⑩小児遺伝性疾患のレット症候群において、グレリンがジストニアや振戦を改善することを明らかにした。(J Neurol Sci 377, 219-223, 2017) > > **今回の研究計画に必要な実験手法を扱った研究論文:** > > グレリン欠損マウスの表現型の解析については次のような研究成果をあげている。 > > ①予想外のことにグレリン欠損マウスでは摂食活動や摂食リズムには変化がないことを明らかにした。(Regul Pept. 145, 7-11, 2008) > > ②グレリン欠損マウスを使って、グレリンが成人の海馬神経発生を刺激して学習・記憶に関与していることを見いだした。(Endocr J. 60, 781-789, 2013) > > ③グレリン欠損マウスでは食餌制限によって海馬の神経発生が刺激されることを見いだした。(Endocr J. 62, 269-275, 2015) > > また褐色脂肪細胞に関する実験について以下の研究を行っている。 > > ④褐色脂肪細胞の培養系を用いて、ベージュ細胞におけるFABP3とミトコンドリアの脂肪酸酸化酵素群がUCP1とは異なる制御過程で誘導されることを明らかにした。(BBRC, 441, 42-47, 2013) > > このように申請者は、グレリンやその他のペプチドホルモンの遺伝子改変マウスの解析、ならびに褐色脂肪細胞の培養細胞を使った実験を行ってきており、今回の研究計画に必要な実験動物を準備し、実験手法をマスターしている。