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title: "CASE 63: これから準備するのでは不十分"
book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版
chapter: 第9章 研究目的、研究方法など:準備状況
case_number: 63
pages: 273-276
images: page_0273.png ~ page_0276.png
advice: "応募する研究課題は"これから準備をはじめる"のではなく、準備はすでに着手しておこう。もし準備不足が否めない場合にはできる限り具体的に書くこと"
tags: ["具体的に", "アピールする"]
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# CASE 63: これから準備するのでは不十分
## アドバイス
応募する研究課題は"これから準備をはじめる"のではなく、準備はすでに着手しておこう。もし準備不足が否めない場合にはできる限り具体的に書くこと
## どこがよくないか
**例文1**
申請者は、2018年以来、一貫して本研究のテーマである戦前の人材養成機関の研究を進めており、本研究に関連する研究成果等を既にいくつか公表し、本研究に関する十分な研究実績を有している。研究に必要な基本的な研究設備は既に整備されているものを利用する。また、論拠を補完するための資料については、適時、国立公立の文書館や、各地の資料館などを訪問することで収集は可能である。さらに研究成果の意見交換を行う研究者等については、適時、助言等を求めることも可能である。
**例文2**
申請者らは対象症例の凍結組織の検体を20数例保存しているが、目標とする200例にはまだ至っていない。今後、大学病院と関連病院と打ち合わせを行い、積極的に検体数を増やしていく計画である。
**例文3**
本研究を実施するために使用する機器は現有設備として備わっている。原料の基質等の合成は本申請書の採択ののちに開始する予定である。また、デイヴィス酸触媒などの反応条件を試す準備をしており、計算化学により反応機構の考察を行う準備も始めている。
## 添削例
> **例文1**
>
> 申請者は、2018年以来、一貫して本研究のテーマである戦前の人材養成機関の研究を進めており、本研究に関連する研究成果等を既にいくつか公表し、本研究に関する十分な研究実績を有している。研究に必要な基本的な研究設備は既に整備されているものを利用する。また、論拠を補完するための資料については、適時、国立公立の文書館や、各地の資料館などを訪問することで収集は可能である。さらに研究成果の意見交換を行う研究者等については、適時、助言等を求めることも可能である。
>
> 具体的な業績を示す/「可能」ではなく「確実」なものへ変更
>
> **例文2**
>
> 申請者らは対象症例の凍結組織の検体を20数例保存しているが、目標とする200例にはまだ至っていない。今後、大学病院と関連病院と打ち合わせを行い、積極的に検体数を増やしていく計画である。
>
> もっと具体的な計画を書く
>
> **例文3**
>
> 本研究を実施するために使用する機器は現有設備として備わっている。原料の基質等の合成は本申請書の採択ののちに開始する予定である。また、デイヴィス酸触媒などの反応条件を試す準備をしており、計算化学により反応機構の考察を行う準備も始めている。
>
> すでに着手していないと、準備不足とみなされる
**指摘された問題点:**
1. 例文1:業績が具体的に示されていない
2. 例文1:「可能」ではなく「確実」なものへ変更すべき
3. 例文2:検体数を増やす計画が具体的でない
4. 例文3:「採択ののちに開始する予定」では準備不足とみなされる
## なぜよくないのか?
挑戦的研究以外では、準備にまったく手をつけていない、これから準備をはじめる研究では、採択はおぼつかないだろう。実験や調査の準備はすでに整っていて採択されたらすぐに研究をはじめられるというのと、採択されてから準備をはじめるというのでは、当然、審査委員に与える印象はすごく異なるからだ。
例文1では、資料は「資料館などを訪問することで収集は可能」で、他の研究者に「助言等を求めることも可能」と書いているが、あくまで「可能」であって「確実」なものではない。審査委員は"本当に計画通りに進むのだろうか"と疑ってしまうだろう。
例文2では、現有のサンプル数と目標のサンプル数との差が大きすぎて、やはり実行可能かどうか疑ってしまうだろう。
また例文3のように、「本申請書の採択ののちに開始する予定」では、いくら内容のよい申請書であっても、準備不足と判定されてしまう。
## どのように改良すればよいか?
ほとんどの応募者は、これまで行ってきた研究の発展・展開として今回の研究計画を提案するはずだ。つまり応募課題の研究の前段階の研究は進んでいて、ある程度の研究成果をあげていると思う。
しかし、そうではない応募者もいるかもしれない。現時点の「準備状況」はまだ十分ではないときには、どのように書いていけばいいだろうか?正直に書くと準備不足と判定されてしまうのは間違いない。しかし、ウソの「準備状況」を書くわけにはいかないから、やはり正直に現在の「準備状況」を書くしかない。そのような場合に大切なのは具体的に書くということ。
例文1では、研究成果を【応募者の研究遂行能力】に記載した論文で示し、さらにすでに保有している資料」「訪問予定の各地の資料館」「意見交換などを行う研究者」について、具体的な名称や名前をあげて書き直す。
例文2では、目標とする検体数を実現するための具体的な方法を書いていく。現施設での検体数の獲得見込み、他施設の具体名やそこでの検体数の獲得見込みを記載する。またいつくらいまでに目標検体数に到達できるのか、その目安を書いておく。もちろん研究期間内に十分に検体数を取得して研究を進めることができることをアピールしなければならない。
例文3では、「本申請書の採択ののちに開始する予定」のような書き方をしないで、現段階での具体的な「準備状況」を記載する。
なお、まったく新しいテーマで、まだ準備も十分でない研究計画は、挑戦的研究に応募するのを考えてもいいだろう。ただし挑戦的研究は基盤研究や若手研究に比べて採択率が低く、競争が厳しいことは覚悟しておかなければならない。
## 改善例
> **例文1**
>
> 申請者は、2018年以来、一貫して本研究のテーマである戦前の人材養成機関の研究を進めており、本研究に関連する研究成果等を既にいくつか公表し(②応募者の研究遂行能力の発表論文#1~3)、本研究に関する十分な研究実績を有している。
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> 研究に必要な基本的な研究設備(データ保存用のPC、ハードディスク、資料整理用のバックアップシステム)は既に整備されているものを利用する。また、論拠を補完するための資料については、適時、国立公立の文書館(国立公文書館および各県の公文書館)や、各地の資料館(東京都の昭和館、京都府の舞鶴引揚記念館など)を訪問することで収集する。さらに研究成果の意見交換を行う研究者等(戦争関連資料に関する研究会、〇〇大学〇〇教授、〇〇大学准教授など)については、これまでも共同研究等を行っており、研究に関する助言や資料の提供を求めることができる。
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> **例文2**
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> 申請者らは対象症例の凍結組織の検体を20数例保存しているが、目標とする200例にはまだ至っていない。研究に必要な検体数を得るために、以下の施設での検体数の確保を行う。
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> 〇〇大学附属病院(目標数70例:対象症例は年間約400例)
> 〇〇大学附属病院(目標数50例:対象症例は年間約300例)
> 〇〇中央病院(目標数25例:対象症例は年間約80例)
> 〇〇病院(目標数20例:対象症例は年間約60例)
> 〇〇病院(目標数10例:対象症例は年間約30例)
>
> 各施設のこれまでの対象症例の年間診察数から、ほぼ1年で目標の検体数を確保できると考える。これらの大学病院と関連病院との打ち合わせはすでに完了している。
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> **例文3**
>
> 本研究を実施するために使用する機器(光電子分光装置 Kratos Analsis Axis HS)は現有設備として備わっている。原料の基質等の合成はすでに20数種類完了しており、今後さらに増やしていく。また、デイヴィス酸触媒などの反応条件を試す準備はすでに行っており、計算化学により反応機構の考察を行う準備も始めている。