--- title: "CASE 60: 計画通りに進まないときの対応を考えていない印象を受ける" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第8章 研究目的、研究方法など:何をどのように case_number: 60 pages: 261-264 images: page_0261.png ~ page_0264.png advice: "申請者の研究能力とは関係しないものを「リスク」としてあげ,その対応策を具体的に書こう" tags: ["ふさわしく", "アピールする"] --- # CASE 60: 計画通りに進まないときの対応を考えていない印象を受ける ## アドバイス 申請者の研究能力とは関係しないものを「リスク」としてあげ,その対応策を具体的に書こう ## どこがよくないか **例文1** > 本研究における最大のリスクはデータの入力が間に合わないかもしれないという点である。このリスクは、基となるデータが職員名鑑などの紙媒体であれ、デジタル化されたものであれ、生存時間分析に適したフォーマットに手作業で移し替えなければならないという事情から発生する。分析が全くできないという事態を避けるために、最初にデータを収集する企業・期間・変数を絞る。 **例文2** > 本研究を行う体制は整備されており、環境面においては計画どおり実行可能である。しかしながら、研究対象となる疾患の症例数が少ない場合には、研究の進行に遅延が発生する可能性がある。そのため令和2年度に不足分のデータ集積が行えるように、研究試薬や実験器具を確保し、計画の遅延に対応可能な研究計画を立案している。 ## 添削例 **例文1** > 本研究における最大のリスクはデータの入力が間に合わないかもしれないという点である。このリスクは、基となるデータが職員名鑑などの紙媒体であれ、デジタル化されたものであれ、生存時間分析に適したフォーマットに手作業で移し替えなければならないという事情から発生する。分析が全くできないという事態を避けるために、最初にデータを収集する企業・期間・変数を絞る。 **指摘された問題点:** 1. 研究の内容とは直接関係はない 2. ここに書く必要はなく「2 応募者の研究遂行能力及び研究環境」に書けばよい 3. 「研究の進行に遅延が発生する可能性がある」は審査委員に印象がよくないので、このような記載は避ける **例文2** > 本研究を行う体制は整備されており、環境面においては計画どおり実行可能である。しかしながら、研究対象となる疾患の症例数が少ない場合には、研究の進行に遅延が発生する可能性がある。そのため令和2年度に不足分のデータ集積が行えるように、研究試薬や実験器具を確保し、計画の遅延に対応可能な研究計画を立案している。 ## なぜよくないのか? 以前の申請書に存在した「研究が当初計画どおりに進まない時の対応」を記載せよとの指示はなくなったが、うまくいかないときの対応策はある程度書いておいた方がよい。 しかし例文1のような「データの入力が間に合わない」というのは、申請者側の理由であって、これは研究内容とはなんの関係もない。そのような記述は不要。 考えてみてほしい、例えば「データ入力が間に合わないから研究ができない」ならば、「予定している研究などその研究者にできるはずがない」と審査委員は思うだろう。無理でもやる、その心構えさえ内面にもてばよく、個人的資質を疑われる内容をあえて書かないでよい。 例文2のように自ら「本研究を行う体制は整備されており、環境面においては計画どおり実行可能である」といっても、あまり説得力はない。研究環境については具体的に書いて、実行可能性を示す必要がある。 また「研究の進行に遅延が発生する可能性がある」というのは、審査する側の立場からはマイナス評価になるかもしれない。 ## どのように改良すればよいか? 例文1は、すべて不要な記載なのでカットする。「研究が当初計画どおりに進まない時の対応」は、研究結果がうまく得られないときの対応とか、調査や資料の問題点があったときの対応などのリスクを書くものであった。「時間がないから」とか「データ入力が間に合わないから」という個人的資質を疑われる書き方では、審査委員に与える印象はよくない。そもそも「データ入力ができる」云々などは書かなくてもよい。 例文2の研究環境の整備に関しては【2 応募者の研究遂行能力及び研究環境】のところにしっかりと書いておけばよい。また「研究の進行に遅延が発生する可能性がある」というような記述は避けて、「症例数が少ない場合」には具体的にどうするのかを書いておけば問題はない。 ## 改善例 **例文2** > 研究対象となる疾患の症例数が少ない場合には、令和2年度に不足分のデータ集積が行えるように、研究試薬や実験器具を確保し、年度別の研究計画の流れに記載しているように、計画の遅延に対応可能な研究計画を立案している。 ## 参考 参考までによい例をあげる。「研究が当初計画どおりに進まない時の対応」「本研究を遂行する上での具体的な工夫」と分けて書いてあるので、わかりやすく、読みやすい。丁寧に書いているので好感がもてる。 **研究が当初計画どおりに進まない時の対応** > 研究計画のうち先行研究の整理と現地調査を遂行する過程で、①当初の分析枠組みや仮説を反証する新たな事実関係の発見、②現地調査の時間的な制約から当該関係者への聞き取りができない問題が生じる可能性がある。その際の対応として、事実に沿って分析枠組みの見直しや仮説の修正を行う。また後日、電子メールやSkypeなどの電子媒体を活用した対話で証言を得る。これらの対応によって実証研究の精度を向上させ、より現実に則した研究成果を得ることができる。 **本研究を遂行する上での具体的な工夫** > (1)効果的に研究を進める上でのアイディア > 本研究を遂行する上で、国内外の複数の公的研究機関と連携を図る。地球環境政策の研究において不可欠となる自然科学・社会科学の知見を国立環境研究所研究員、ラテンアメリカ地域特有の知見をアジア経済研究所研究員との情報交換により補完する。さらに現地調査中は、ブラジリア大学国際関係研究所とメキシコ自治大学に客員研究員として在籍する。政策策定に携わる研究機関や研究者ネットワークへのアクセスと研究者との共同研究への発展が期待できる。 > (2)効率的に研究を進めるための研究協力者からの支援等 > 研究協力者からの支援として、関連文献、研究者・政治家・専門家の紹介、研究計画・研究報告・論文への助言、国際学会・ワークショップでの報告機会の提供が期待できる。申請者はまた、研究者と専門機関を通じて、国連気候変動条約第21回締約国会議(フランス・パリ)での本会への参加許可を既に申請中である。これらの支援も本研究を効率的に進めるために有用となる。