--- title: "CASE 59: 前欄に戻らないと記号や略語の意味を確認できない" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第8章 研究目的、研究方法など:何をどのように case_number: 59 pages: 257-260 images: page_0257.png ~ page_0260.png advice: "前の欄に既出だからと省略せず,振り返りの意味を込めて改めて書こう。戻って確認する審査委員はまれ" tags: ["はっきりと", "推敲のヒント"] --- # CASE 59: 前欄に戻らないと記号や略語の意味を確認できない ## アドバイス 前の欄に既出だからと省略せず,振り返りの意味を込めて改めて書こう。戻って確認する審査委員はまれ ## どこがよくないか **例文1** > 【平成25年度】 > 研究目的の(2)研究の範囲における①を行う。 > まずは装置の改良を行う。研究目的の図1に示した実験装置の改良版はすでに作成済みであり、オンラインでデータを収集するシステムの構築も完了している。(以下省略) **例文2** > H26年度は、LPLに対するAL型授業を効果的にすると推測される5つの工夫とアクティビティのそれぞれの効力を、試験的授業を実施して学習者へのアンケートと英語テストにより測定、分析する。 ## 添削例 **例文1** > 【平成25年度】 > 研究目的の(2)研究の範囲における①を行う。 > まずは装置の改良を行う。研究目的の図1に示した実験装置の改良版はすでに作成済みであり、オンラインでデータを収集するシステムの構築も完了している。(以下省略) **例文2** > H26年度は、LPLに対するAL型授業を効果的にすると推測される5つの工夫とアクティビティのそれぞれの効力を、試験的授業を実施して学習者へのアンケートと英語テストにより測定、分析する。 **指摘された問題点:** 1. 「(2)」や「①」だけでは、なんのことだったか? 2. 「LPL」「AL」だけでは、なんの略語だったか? ## なぜよくないのか? 例文1の「(2)」や「①」は、【(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性】内の記述に対応しているのだが、ここだけ読んでも、「(2)」や「①」がなんのことかわからない。 例文2では「LPL」や「AL」と略語を使っている。これらは、「背景」や「目的」の部分に略語の定義はあったのかもしれないが、【(4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか】に読み移ったときに、その略語の定義をはっきりと覚えている審査委員はまれだ。専門家が審査するんだから大丈夫じゃないの?と思うかもしれないが、自分の専門とは少し離れた分野の申請書をチェックする審査委員のほうが多い。 審査委員にとって科研費申請書を読む時間は限られている。論文のように何度もくり返して読むものと違って、申請書はそのまま一度きりで読み終えることもあるかもしれない。その点を考慮した工夫があるとよい。 ## どのように改良すればよいか? たとえ申請書内のいずれかには書いてあっても、別の欄に移ったときには、もう一度きちんと説明する。ページ(項目、部分)が変わり、最初に出てくるところで、もう一度、略語のfull-spellingを書いておく。くり返しを恐れない。これは申請書のその他のことにも通じる。例えば、「研究目的」などの重要なことはくり返し書いて、審査委員を十分納得させること。 なお、申請書中で使う略語の数も重要である(case79参照)。 例文1のように研究計画の各年度の冒頭には、その年度に行う研究について1〜2行で簡潔にまとめて、その後に詳しく実験(調査)の内容を書いていくのがよい(case48参照)。 ## 改善例 **例文1** > 【平成25年度】 > 平成25年度には流水路の抵抗値を求めるための実験装置の改良を行う。もととなる装置は申請者がこれまでの研究で作製した、マルチバルブを組み込んだ流路抵抗の計測装置である。 > 「(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性」に記述した「①流水路での流れの発達を調べ、層流化の際の流れの変化を調べる」ため、まずは装置の改良を行う。研究目的の図1に示した実験装置の改良版はすでに作製済みである。オンラインでデータを収集するシステムの構築も完了している。(以下省略) **例文2** > H26年度は、LPL(less proficient learners)に対するAL(Active learning)型授業を効果的にすると推測される5つの工夫とアクティビティのそれぞれの効力を、試験的授業を実施して学習者へのアンケートと英語力テストにより測定、分析する。