--- title: "CASE 57: 研究項目ごとの「予想される結果と意義」がなく意図がつかみにくい" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第8章 研究目的、研究方法など:何をどのように case_number: 57 pages: 249-252 images: page_0249.png ~ page_0252.png advice: "項目ごとに何が確認でき何がわかるという「結果と意義」を書こう。研究項目の意図をはっきり示す" tags: ["はっきりと"] --- # CASE 57: 研究項目ごとの「予想される結果と意義」がなく意図がつかみにくい ## アドバイス 項目ごとに何が確認でき何がわかるという「結果と意義」を書こう。研究項目の意図をはっきり示す ## どこがよくないか **例文1** > 平成26年度 > 1.飲酒と非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の関連についての動物モデルを用いた研究 > 飲酒とNAFLDの関連を調べるため、肥満マウス(db/dbマウス)に高脂肪食を負荷したモデルを用いた実験を行う。アルコール投与量は低・中・高用量の3段階とする。 > (途中、省略) > 肝細胞のアポトーシスの解析(TUNEL法による)を行う。さらに、クロマチン再構築因子Brahma-related gene1, BrahmaやmicroRNA miR-155の発現解析(リアルタイムRT-PCR法による)を行う。 > 2.少量飲酒のNAFLD抑制効果についての臨床的・病理学的研究 **例文2** > 平成28年度 > 1.コプトの調査対象作品500点の調査を行う。調査項目は、①作品の撮影、②採寸、③材質の特定、④技法の特定、⑤文様の分類である。 > 2.コプトの染織品と同じ地域から発掘されたペルシャ更紗10点の放射性炭素年代測定を実施する。 > 3.国内の美術館で作品の調査を行う。年度内に国内3箇所、国外2箇所の調査を行う。調査を実施する美術館については、国内の国立博物館や、イギリスの大英博物館など候補を絞り込んでいる。 > 4.学会で口頭発表および論文発表を行う。 ## 添削例 **例文1** > 平成26年度 > 1.飲酒と非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の関連についての動物モデルを用いた研究 > 飲酒とNAFLDの関連を調べるため、肥満マウス(db/dbマウス)に高脂肪食を負荷したモデルを用いた実験を行う。アルコール投与量は低・中・高用量の3段階とする。 > (途中、省略) > 肝細胞のアポトーシスの解析(TUNEL法による)を行う。さらに、クロマチン再構築因子Brahma-related gene1, BrahmaやmicroRNA miR-155の発現解析(リアルタイムRT-PCR法による)を行う。 > 2.少量飲酒のNAFLD抑制効果についての臨床的・病理学的研究 **指摘された問題点:** 1. 「実験項目」と「具体的実験内容」の2つを書いているのは非常によいが、この実験によって何がわかるのかを書いてほしい **例文2** > 平成28年度 > 1.コプトの調査対象作品500点の調査を行う。調査項目は、①作品の撮影、②採寸、③材質の特定、④技法の特定、⑤文様の分類である。 > 2.コプトの染織品と同じ地域から発掘されたペルシャ更紗10点の放射性炭素年代測定を実施する。 > 3.国内の美術館で作品の調査を行う。年度内に国内3箇所、国外2箇所の調査を行う。調査を実施する美術館については、国内の国立博物館や、イギリスの大英博物館など候補を絞り込んでいる。 > 4.学会で口頭発表および論文発表を行う。 **指摘された問題点:** 1. 具体的な調査内容を書いているのはよい。この調査で何がわかるのかを書いてほしい 2. 「4.学会で口頭発表および論文発表を行う。」は申請書に書く必要はない ## なぜよくないのか? 例文1はそれぞれの実験項目(研究項目)に、実験の「目的」である「飲酒とNAFLDの関連を調べる」と書いているのはとてもよいが、その実験によって何が明らかになるのか、「予想される結果」がない。それを書いてはじめて、何を意図してそれぞれの実験を行うのか、その意義が明らかになる(case49も参照)。 例文2では調査の「目的」や要約なしに、いきなり具体的な調査項目が書かれており、さらに、この調査によって何が明らかになるのかが書かれていない。そのため、本年度の調査の意義がわかりにくい。また、学会発表や論文発表の記載は、調査とは別個のものなので不要である。 ## どのように改良すればよいか? 実験や調査の項目ごとに「何が確認でき」「何がわかるのか」「研究全体に対しどのような意義があるのか」を書く、そのことによって研究計画が何をもとに考えられているかがわかりやすくなるし、項目ごとのつながりが明確になる。 例文1は「この実験によって、飲酒とNAFLDとの関連が確認でき、またアルコール投与量によって病態がどのように進行するのかがわかる」と関連性や病態進行の状況が確認できることを加える。 例文2では、冒頭に要約を加える、また、これらの調査によって、何がわかるのかを書いておく、そうすることによって、調査の意義が明らかになる。「本年度には国内外の美術館に収蔵されているコプトの調査対象作品についての調査と、保有しているペルシャ更紗の年代測定を行う」「これらの研究によって、対象作品の年代と制作地の特定を試み、ペルシャ更紗の文様や技法のインドへの伝播過程を明らかにしていく」と付け加えて、調査の意義を明確にする(case48、49参照)。また「4.学会で口頭発表および論文発表を行う」はカットする。 ## 改善例 **例文1** > 平成26年度 > 1.飲酒と非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の関連についての動物モデルを用いた研究 > 飲酒とNAFLDの関連を調べるため、肥満マウス(db/dbマウス)に高脂肪食を負荷したモデルを用いた実験を行う。アルコール投与量は低・中・高用量の3段階とする。 > (途中、省略) > 肝細胞のアポトーシスの解析(TUNEL法による)を行う。さらに、クロマチン再構築因子Brahma-related gene1, BrahmaやmicroRNA miR-155の発現解析(リアルタイムRT-PCR法による)を行う。 > この実験によって、飲酒とNAFLDとの関連が確認でき、またアルコール投与量によって病態がどのように進行するかがわかる。 **例文2** > 平成28年度 > 本年度には国内外の美術館に収蔵されているコプトの調査対象作品についての調査と、保有しているペルシャ更紗の年代測定を行う。 > 1.コプトの調査対象作品500点の調査を行う。調査項目は、①作品の撮影、②採寸、③材質の特定、④技法の特定、⑤文様の分類である。 > 2.コプトの染織品と同じ地域から発掘されたペルシャ更紗10点の放射性炭素年代測定を実施する。 > 3.国内の美術館で作品の調査を行う。年度内に国内3箇所、国外2箇所の調査を行う。調査を実施する美術館については、国内の国立博物館や、イギリスの大英博物館など候補を絞り込んでいる。 > これらの研究によって、対象作品の年代と制作地の特定を試み、ペルシャ更紗の文様や技法のインドへの伝播過程を明らかにしていく。