--- title: "CASE 52: アンケート調査やプログラム作成の内容がないのでイメージできない" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第8章 研究目的、研究方法など:何をどのように case_number: 52 pages: 225-232 images: page_0225.png ~ page_0232.png advice: "現段階の構想でかまわないので、アンケート調査の中身を具体的に書こう。「インタビュー」「質問紙調査」「プログラム作成」「カリキュラム作成」は中身がないと審査委員には伝わらない" tags: ["はっきりと", "具体的に", "推敲のヒント"] --- # CASE 52: アンケート調査やプログラム作成の内容がないのでイメージできない ## アドバイス 現段階の構想でかまわないので、アンケート調査の中身を具体的に書こう。「インタビュー」「質問紙調査」「プログラム作成」「カリキュラム作成」は中身がないと審査委員には伝わらない ## どこがよくないか **例文1** > ・複数の教員養成大学の教育実習を経験した学生を対象に、実習中の食育に関する指導の有無と、有りの場合の指導内容をアンケート調査する。 **例文2** > 教材の開発:経験の浅い教員が、実践の授業研究を通して自ら欠点に気付くことができるような問い(査定項目)を含んだ教員用教材のプロトタイプを作成する。 **例文3** > ◎事例研究により高齢者の「参加型アクション・リサーチ」の可能性を明らかにする > 参加型アクション・リサーチによるモデルケースとして「健康長寿のまちづくり」の実践場面を観察し、プログラム内容を描き出すとともに、主催者と参加者の両者へのインタビュー調査を実施する。それによって参加型アクション・リサーチの効果と意義について明らかにしようとするものである。 **例文4** > (平成24年度の研究計画) > 平成23年度の調査により得られた高齢対象者の社会的背景や身体機能、心理的側面および介護予防に関する興味や希望について分類する。同時に、聞き取り調査から得られた参加者の特徴や傾向、介護予防に関する学習ニーズを検討する。また、性別や年齢などの属性による興味や学習ニーズの違いや、自信がない日常生活動作および現在の対処の方法などを整理、分類し、介護予防の教育プログラムの検討項目とする。そして、従来の介護予防の運動プログラムに、介護予防の教育プログラムを組み合わせた介護予防「運動+教育プログラム」を作成する。 ## 添削例 **例文1** > ・複数の教員養成大学の教育実習を経験した学生を対象に、実習中の食育に関する指導の有無と、有りの場合の指導内容をアンケート調査する。 **指摘された問題点:** 1. 具体的な質問項目は? **例文2** > 教材の開発:経験の浅い教員が、実践の授業研究を通して自ら欠点に気付くことができるような問い(査定項目)を含んだ教員用教材のプロトタイプを作成する。 **指摘された問題点:** 1. とは具体的にどのようなものか?具体的に査定項目をいくつかあげる **例文3** > ◎事例研究により高齢者の「参加型アクション・リサーチ」の可能性を明らかにする > 参加型アクション・リサーチによるモデルケースとして「健康長寿のまちづくり」の実践場面を観察し、プログラム内容を描き出すとともに、主催者と参加者の両者へのインタビュー調査を実施する。それによって参加型アクション・リサーチの効果と意義について明らかにしようとするものである。 **指摘された問題点:** 1. どのような内容でインタビューを試みるのか?いくつかあげる **例文4** > (平成24年度の研究計画) > 平成23年度の調査により得られた高齢対象者の社会的背景や身体機能、心理的側面および介護予防に関する興味や希望について分類する。同時に、聞き取り調査から得られた参加者の特徴や傾向、介護予防に関する学習ニーズを検討する。また、性別や年齢などの属性による興味や学習ニーズの違いや、自信がない日常生活動作および現在の対処の方法などを整理、分類し、介護予防の教育プログラムの検討項目とする。そして、従来の介護予防の運動プログラムに、介護予防の教育プログラムを組み合わせた介護予防「運動+教育プログラム」を作成する。 **指摘された問題点:** 1. プログラムの中身がわからない ## なぜよくないのか? この例文1のように、アンケート項目の候補を1つもあげていない申請書が、審査委員に具体的な研究であると思わせることができるだろうか? 例文2には「教材のプロトタイプ」とあるが、その中身が具体的でない。特に初年度中にある程度の教材のプロトタイプをつくる計画ならば、その構想も示しておきたい。そうでないと準備不足と判断される。また「教材のプロトタイプ」の具体的なイメージがないと、審査委員には次年度以降、どのように改良していくのかがわからない。 例文3は「インタビュー調査を実施する」だけでは不十分。インタビューの中身はどのようなものなのか書かないといけない。「申請書を出す段階ではまだインタビューの中身がわからない」というのでは、審査委員に準備が不十分と思われてもしかたがない。研究計画の段階で、インタビューの概略くらいは考えておくべき。 例文4のプログラムの具体的な内容としてどのようなものを考えているのか?それが申請書では全くわからない。しかもここには書かれていないが次の年度の研究計画では「プログラムの実施・検証」に進んでおり、プログラムの実態は最後まで不明なままである。 これまでの添削経験から、文系の申請書では方法論のところが不十分なものが多いと感じる。「インタビュー」「質問紙調査(=アンケート調査)」「プログラム作成(開発)」「カリキュラム作成」などは文系の申請書の定番の内容である。しかし、残念ながら多くの申請書では、これらの詳しい内容は書かれていない。また、十分な材料集め、資料集め、データ収集についてきちんと書かれていないばかりか、むしろ「効果の検討」に重きを置いているものが多い。そうではなく例えば「開発されたプログラム」があってこそ「効果の検討」「他との比較」ができるはずだ。実態のないもので効果を検討したり、他との比較をしたりなどできない。 ## どのように改良すればよいか? 「プログラム」「カリキュラム」「教材」「マニュアル」の開発・実施・検証で重要なことは、開発のための基本調査の内容をしっかりと計画し、次に得られた(得られるであろう)データをもとにした試案を提案し、そのうえで検証方法を書くことである(case32も参照)。 例文1のような質問紙調査(=アンケート調査)は、具体的な内容まで書く。構想段階での質問項目でよいから、いくつかの項目をあげる。そうしてはじめて調査内容に具体性が生まれる。質問項目の例を書くのが難しい場合はせめて、アンケートの対象者は?何人くらいにアンケートを行う?調査内容をどのように分析する?などでもよいので審査委員がイメージできる情報を足そう。 例文2は「教材のプロトタイプ」を具体的な内容まで書く、それは文章で書かれたマニュアルのようなものなのか、あるいは図を使ったチャートのようなものなのか、あるいは項目とチェックポイントの〇と×を記入する表のようなものなのか? 例文3はインタビューの内容(質問項目、対象人数、解析方法など)を必ず書く、実際に行うインタビューの内容でなくてもよい。あくまでも計画段階のインタビュー調査でよい。どのような質問をするのか、その候補項目をいくつかあげておく、そうやって詳しく書いていくことで、研究計画の具体性が生まれる。 例文4はプログラムの概略を想像ができるように示す。その一部でもよいから、予備的な研究成果のなかで、試案としてプログラムを示したい。そうすることで研究計画にリアリティが出る。どのようなプログラムなのか?例えば運動プログラムであれば、どのような運動の組合わせか?教育プログラムでは、その教育内容は?少しでも具体的な中身を示す。例文4の場合、前年度の研究計画でかなり具体的な調査計画を提案しているので、そこを活かすべきだ。 ## 改善例 **例文1** > 複数の教員養成大学の、教育実習を経験した学生を対象に、実習中の食育に関する指導の有無と、有りの場合の指導内容をアンケート調査する。 > 以下に現時点でのアンケートの試案をあげておく。 > 対象とする教員養成大学:福岡教育大学、兵庫教育大学、大阪教育大学、奈良教育大学 > アンケートを行う学生の人数:約50名 > 以下、いくつかの質問項目の案: > ①実習中の食育に関する指導の有無 > ②(①がなしの場合):昼食時間について、昼食時(給食を含む)の生徒とのコミュニケーションについて、生徒の昼食メニューについて(弁当、パン、家庭での手作りなのか、その他) > ③(①が有りの場合):どのような食育の指導があったのか、その内容、場所、回数、など > ④食育を受けて(or受けないで)の感想 **例文2** > 教材の開発:経験の浅い教員が、実際に行った授業をかえりみて、よくなかった点や改良すべき点に自ら気付くことができるような問い(査定項目)を網羅した教員用教材のプロトタイプを作成する。 > 査定項目としては、例えば > ・授業の計画は適切だったか? > ・授業の進め方はうまくいったか? > ・授業の開始前と終了後に、どのような変化が自身にみられたか? > ・説明しにくい箇所があったとき、なぜ説明しにくかったのか? > 等がある。 **例文3** > ◎事例研究により高齢者の「参加型アクション・リサーチ」の可能性を明らかにする > 参加型アクション・リサーチによるモデルケースとして「健康長寿のまちづくり」の実践場面を観察し、プログラム内容を描き出すとともに、主催者と参加者の両者へのインタビュー調査を実施する。 > インタビュー調査を行う項目は次のものを予定している。 > ・地区集会所を活用した地域密着型の活動について > ・運動指導や介護予防のための高齢ボランティア活動について > ・運動習慣の定着に向けての体操開発について > 対象人数は約50名。行った調査については、それぞれの内容からキーワードを抽出して解析を進める。 > このインタビュー調査によって参加型アクション・リサーチの効果と意義について明らかにしようとするものである。 **例文4** > (平成24年度の研究計画) > 平成23年度の調査により得られた高齢対象者の社会的背景や身体機能、心理的側面および介護予防に関する興味や希望について分類する。同時に、聞き取り調査から得られた参加者の特徴や傾向、介護予防に関する学習ニーズを検討する。また、性別や年齢などの属性による興味や学習ニーズの違いや、自信がない日常生活動作および現在の対処の方法などを整理、分類し、介護予防の教育プログラムの検討項目とする。そして、従来の介護予防の運動プログラムに、介護予防の教育プログラムを組み合わせた介護予防「運動+教育プログラム」を作成する。 > 次のようなプログラムの試案を考えている。 > > 1.介護予防の教育プログラムの試案: > 教育プログラムの内容は、高齢者が身体機能や健康関連QOLを長期間保てるようにするための知識や情報を学べるものにする。前年度の調査結果に基づいて作成したテキストおよび研修を通して、身体機能を保つための運動方法、栄養のとりかた、日常生活の工夫、精神的な安定性、などについて学ぶことができる。内容は高齢者の年齢別、性別に対応できるように構成する。 > > 2.介護予防の運動プログラムの試案: > 運動プログラムの内容は、高齢者が要介護とならないように身体機能や筋力を向上・維持するものにする。前年度の調査結果に基づいて、実際に高齢者が困難を覚える動きを改善できるような運動プログラムにする。多くの高齢者に応用できるようなトレーニングの流れを示したものを基本的なプログラムとする。そのうえで、個々の高齢者に応じて、筋力の弱い部分を鍛えるための方法を記載したものにする。同時にけがなどで全身の運動ができないときに、部分的なトレーニングができる内容も含ませる。 ## 参考 よい例をあげる。参考1は、「手引き書」の内容を具体的に記述し実際の内容にまで踏み込んで書いているので、理解しやすい。現実感、リアリティがある。参考2は、「質問紙調査」の書き方がとてもよい。「(目的)」「(方法)」「(予想される結果)」と分けて書いている。 **参考1** > 基本的には以下の項目を含む教授手引き書を作成する。 > a)LPLが持つ共通の特徴 b)各仕掛けの意義 c)各アクティビティの意味と実施方法 d)AL型における教師役割 e)授業モデルフロー f)想定される問題と対処法 g)LPLを対象にしたAL型で配慮すべき点(教室環境、グループ構成、教師の言葉かけなど) h)リーディングやリスニングの教科書によく見られるタスク(語彙、文法、聞き取り)ごとに活用できるALでのアクティビティリスト **参考2** > ①教員・地域コーディネーターを対象とした質問紙調査 > (目的) > 学習指導要領改訂に向けた議論が始まった現時点での「総合的な学習の時間」に対する教育関係者の意識、同時間の取組状況、教職員と地域住民等との連携・協働状況を調査するとともに、「総合的な学習の時間」が「活性化」していると判断される基準、及び同時間の準備・実施においてコーディネーターに求められている役割と機能を明らかにする。 > (方法) > 郵送による自記式質問紙により調査し、統計学の手法を用いてデータを解析する。 > 学校支援地域本部には、地域コーディネーターが配置されている。そこで、全国で約3,500ある学校支援地域本部の設置校を、学校種ごとに区間推定法に基づいて母数を算出しサンプリング抽出するとともに、それと同数の未設置校もサンプリング抽出し、調査対象校とする。調査対象者は「総合的な学習の時間」主担当教員、地域コーディネーター(配置校のみ)とする。 > 調査項目は、山崎(2012c・2009b)に準じた内容とし、地域コーディネーターには活動についての内容を、教員には地域コーディネーターとの協働状況及び協働に対する意識を加える。 > (予想される結果) > 地域と協働するアクティブ・ラーニング的な単元を実践している学校では「活性化している」と教員が意識していることや、そのような学校では、学校と地域を「つなぐ」役割を担うボランティア・PTA・コーディネーター等が準備段階から関与していることが、因子分析、相関分析、高群・低群に分けた比較分析において明らかになる。また、学校と地域住民等との連携・協働に関する学校運営上の要件(地域性、学校文化、教職員構成、教務分掌等)が明らかになる。 ## 申請者のギモン19:フォントの大きさ 申請書で使用するフォントの大きさはどのくらいがいいのか? 【研究目的、研究方法など】の「留意事項」には「本文全体は11ポイント以上の大きさの文字等を使用すること」とある。つまりフォントの大きさの標準は11ポイントである。ダウンロードしてきた申請書のワードファイル(これが事実上の標準)の説明欄に使われているフォントはMS明朝とMSゴシックである(申請者のギモン2参照)。つまりこの11ポイントはMS明朝とMSゴシックを想定していると考えられる。しかし、同じポイント数ならば、すべてのフォントの大きさが同じに見えるわけではない。