--- title: "CASE 50: 研究方法が具体的に何を指しているかがわからない(理系の例)" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第8章 研究目的、研究方法など:何をどのように case_number: 50 pages: 217-220 images: page_0217.png ~ page_0220.png advice: "細部を緻密に書き、具体性とオリジナリティのある内容を目指そう" tags: ["具体的に"] --- # CASE 50: 研究方法が具体的に何を指しているかがわからない(理系の例) ## アドバイス 細部を緻密に書き、具体性とオリジナリティのある内容を目指そう ## どこがよくないか **例文1** > ・炎症反応については、炎症マーカーによる免疫染色等を行い、組織学的に解析する。 > ・移植後に新生骨を形成した骨については、骨密度のデータを定量解析する。 **例文2** > その細胞集団において、real-time PCRで骨芽細胞マーカーであるosteocalcin、ALP mRNAの発現が増加しているか解析することで骨芽細胞系細胞であるかどうか検証する。また、ALP染色、ALP活性を測定する。 **例文3** > 本研究で明らかになった結果を基にデータベースを作成する。また、これらの情報は国際的な鳥類の血液原虫データベースに登録し、公表する。これによって、海外からの鳥マラリア原虫の侵入監視と流行予測のための基盤を整備する。 ## 添削例 **例文1** > ・炎症反応については、~~炎症マーカー~~による免疫染色等を行い、~~組織学的に解析する~~。 > ・移植後に新生骨を形成した骨については、骨密度のデータを~~定量解析する~~。 **例文2** > ~~その細胞集団~~において、real-time PCRで骨芽細胞マーカーであるosteocalcin、ALP mRNAの発現が増加しているか解析することで骨芽細胞系細胞であるかどうか検証する。また、ALP染色、ALP活性を測定する。 **例文3** > 本研究で明らかになった結果を基に~~データベースを作成する~~。また、これらの情報は国際的な鳥類の血液原虫データベースに登録し、公表する。これによって、海外からの鳥マラリア原虫の侵入監視と流行予測のための基盤を整備する。 **指摘された問題点:** 1. 例文1:「炎症マーカー」とは?具体例をあげる/「組織学的に解析する」とはどのような解析か?解析法の詳細を書く/「定量解析する」とはどのような解析か? 2. 例文2:「その細胞集団」とはどのような細胞集団なのか、ここだけではわからない/何について染色し、活性を測定するのか、そしてどうするのかまで書く 3. 例文3:データベースの具体的な中身(の案)がない ## なぜよくないのか? 例文1では「炎症マーカー」とは具体的に何か?「組織学的に解析する」「定量解析する」とあるなら、どのような解析方法で定量解析するのか?その方法まで書く必要がある。 例文2も同じで、簡単に書きすぎている。申請者にはわかっていても、審査委員にはわからないことが多い。いったい何について「ALP染色、ALP活性を測定する」のか?そして測定して、どうするのか?という疑問が生じる。 例文3は「データベースを作成する」で終わっている。これだとデータベースの具体的な中身がわからない。データベースに記録する項目は?実際に申請者はどのようなソフトを使って、どのような内容や機能のデータベースをつくるのか?それを示さないとリアリティが出ず、現実感がない。 研究計画の内容はできるだけ詳しく書くこと。細部をおろそかにせず、細部にこだわり、緻密に書く、その積み重ねがわかりやすい、理解しやすい内容につながる。もちろんこの場合の「詳しく」は細かな実験条件(例えばPCRの条件、酵素反応の条件など)ではなく、詳しい研究計画(例えば、AとBを対象にPCRで比べるなど)である。 ## どのように改良すればよいか? 申請者自身は、自分の研究計画の内容については詳しく知っているため、つい簡単に書いてしまいがちだ。しかし「炎症マーカー」と書かれてある場合、審査委員は自分の知っている範囲のさまざまなマーカーを思い浮かべるだろう。研究計画は読み手によらず意図が伝わるものにしたい。できるだけ具体例をあげたり、解析方法ならばその詳細を書くようにするとよい。また「データベースの作成」を計画した場合、その中身を詳しく書く必要がある。例えば、科研費の申請書の見本ではないが、国立環境研究所の侵入生物データベースを例とすれば - 高次分類群 - 和名(学名) - 法的扱い - 由来 - 国内侵入分布 のような記述がほしい。研究計画こそ最も具体的に書き表したい箇所である。そのため、細かいところまで注意して詳しく書く。それから何度も見直して、不必要であるなら削ればよい。 例文1は炎症マーカーの例として「α1アンチトリプシン」「CRP」「各種サイトカイン」などをあげておく。また、骨密度定量解析の手法名をあげる。 例文2も細部まで緻密に書く。「末梢血中から分離された細胞集団」について「real-time PCRによって解析する」「ALP染色、ALP活性を測定する」ことを通じて、何を「確認」するのか、詳しく書く。 例文3にはデータベースに記録する項目を加える。 ## 改善例 **例文1** > ・炎症反応については、α1アンチトリプシン、CRP、各種サイトカインなどの炎症マーカーによる免疫染色等を行い、どこの部位に炎症が起こっているのかを組織学的に解析する。 > ・移植後に新生骨を形成した骨については、骨密度のデータを動物研究用のpQCT(peripheral Quantitative Computed Tomography)を用いて定量解析する。 **例文2** > 骨芽細胞マーカーであるosteocalcin、ALP mRNAの発現が増加しているかをreal-time PCRによって解析することで、末梢血中から分離された細胞集団が骨芽細胞系細胞であるかどうかを検証する。さらにALP染色を行ったり、ALP活性を測定することによって、得られた細胞集団が骨芽細胞系細胞であることを確認する。 **例文3** > 本研究で明らかになった結果を基に日本国内における鳥マラリアのデータベースを構築する。データベースに記録される項目は、 > ①国内で流行している原虫系統、②その媒介蚊、③宿主鳥類、④原虫系統の塩基配列 > である。これらの情報は国際的な鳥類の血液原虫データベースに登録し、公表する。これによって、海外からの鳥マラリア原虫の侵入監視と流行予測のための基盤を整備する。