--- title: "CASE 44: 研究項目が多すぎて何をしたいかが散漫に見える" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第8章 研究目的、研究方法など:何をどのように case_number: 44 pages: 193-196 images: page_0193.png ~ page_0196.png advice: "関連した項目をまとめシンプルにしよう。応募種目に合った研究項目数でよい" tags: ["ふさわしく", "簡潔に"] --- # CASE 44: 研究項目が多すぎて何をしたいかが散漫に見える ## アドバイス 関連した項目をまとめシンプルにしよう。応募種目に合った研究項目数でよい ## どこがよくないか この例文は基盤研究(C)のものである > (4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか >  本研究では、ES細胞の自己複製の獲得と維持におけるTFCPの機能を明らかにする。一連の研究から、マウスおよびラット由来ES細胞における、TFCPを介したES細胞の自己複製のメカニズムが明らかとなる。計画している研究項目は以下の5項目である。 > > 計画1:ES細胞の自己複製に必須な遺伝子のTFCPによる発現制御を明らかにする。NOD-ES細胞は、血清条件下においてTFCPを含む自己複製に必須な遺伝子の発現が消失するが、TFCPの過剰発現で維持できる。本項目では、TFCPの過剰発現により、血清条件下でNOD-ES細胞が自己複製できる理由を明らかにする。 > > 計画2:STAT3の共役因子としてのTFCPの機能を明らかにする。NOD-ES細胞においてTFCPの過剰発現により、LIF応答性が129-ES型への変換できた理由、すなわちSTAT3の共役因子としてのTFCPの機能を明らかにする。 > > 計画3:エピゲノム修飾によるTFCPの転写活性化能および結合能への影響を明らかにする。ヒト由来ナイーブ様幹細胞ではヒストン脱アセチル化酵素阻害剤とLIFの共存により自己複製することが示されている。すなわち、ヒストンアセチル化によりTFCPのDNA結合能の亢進が予想される。本項目では、TFCPのDNA結合能に対するエピゲノム修飾による影響を明らかにする。 > > 計画4:ES細胞の自己複製能の獲得におけるTFCP依存性を明らかにする。NOD-ES細胞においてTFCPの過剰発現により血清条件下で自己複製が可能となる。本項目では、血清条件下においてES細胞が樹立できないマウス系統由来初期胚において、TFCPを発現させES細胞の樹立が可能かどうかを明らかにする。 > > 計画5:TFCPの発現によりラット由来ES細胞における血清条件での自己複製が可能か明らかにする。ラットES細胞も血清条件下では、NOD-ES細胞と同様に自己複製できない。本項目では、マウスで得られたTFCPを介した自己複製機構をラットES細胞系で明らかにする。 ## 添削例 > (4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか >  本研究では、ES細胞の自己複製の獲得と維持におけるTFCPの機能を明らかにする。一連の研究から、マウスおよびラット由来ES細胞における、TFCPを介したES細胞の自己複製のメカニズムが明らかとなる。計画している研究項目は以下の5項目である。 > > 計画1:ES細胞の自己複製に必須な遺伝子のTFCPによる発現制御を明らかにする。NOD-ES細胞は、血清条件下においてTFCPを含む自己複製に必須な遺伝子の発現が消失するが、TFCPの過剰発現で維持できる。本項目では、TFCPの過剰発現により、血清条件下でNOD-ES細胞が自己複製できる理由を明らかにする。 > > 計画2:STAT3の共役因子としてのTFCPの機能を明らかにする。NOD-ES細胞においてTFCPの過剰発現により、LIF応答性が129-ES型への変換できた理由、すなわちSTAT3の共役因子としてのTFCPの機能を明らかにする。 > > 計画3:エピゲノム修飾によるTFCPの転写活性化能および結合能への影響を明らかにする。ヒト由来ナイーブ様幹細胞ではヒストン脱アセチル化酵素阻害剤とLIFの共存により自己複製することが示されている。すなわち、ヒストンアセチル化によりTFCPのDNA結合能の亢進が予想される。本項目では、TFCPのDNA結合能に対するエピゲノム修飾による影響を明らかにする。 > > 計画4:ES細胞の自己複製能の獲得におけるTFCP依存性を明らかにする。NOD-ES細胞においてTFCPの過剰発現により血清条件下で自己複製が可能となる。本項目では、血清条件下においてES細胞が樹立できないマウス系統由来初期胚において、TFCPを発現させES細胞の樹立が可能かどうかを明らかにする。 > > 計画5:TFCPの発現によりラット由来ES細胞における血清条件での自己複製が可能か明らかにする。ラットES細胞も血清条件下では、NOD-ES細胞と同様に自己複製できない。本項目では、マウスで得られたTFCPを介した自己複製機構をラットES細胞系で明らかにする。 **指摘された問題点:** 1. 研究計画が5つもあり基盤研究(C)には多すぎる、3つに減らす 2. ラットとマウスで似通った内容の計画なのでわかりにくい ## なぜよくないのか? 基盤研究(C)の最短研究期間は3年である、それにしては、研究項目が5つは多すぎる(基盤研究S, A, Bならば多くはない)。 科研費の種目にもよるが、基盤研究(C)で予定する研究項目としては、できれば3点くらいにまとめた方がよい。3点というのは、研究期間を3年〔基盤研究(C)の最短研究期間〕で応募した場合に1年に1点の割合である。 ## どのように改良すればよいか? 基盤研究(C)や若手研究(B)では、研究項目を3点くらいに絞り込むのがよい。研究項目が多すぎると、目標が散漫になって何をやるのかが審査委員にはわかりにくくなる。多すぎる研究項目を3点くらいに収めるには、関連した内容のもの同士を1点にまとめればよい。 例文の場合、計画1と2と3(対象とする因子の機能解明)、計画4(マウスES細胞での対象とする因子の役割)、計画5(マウス以外の動物のES細胞での対象とする因子の役割)とまとめることができるだろう。また、読みやすくなるように、1~3→5→4の順に並びかえる。 ## 改善例 > (4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか >  本研究では、転写因子TFCPが、どのようにして血清条件下でのES細胞の自己複製を可能としているのかを明らかにする。一連の研究から、マウスおよびラット由来のES細胞における、TFCPを介した自己複製のメカニズムが明らかとなる。計画している研究項目は、以下の3項目である。 > > (1)TFCPがどのようにしてES細胞の129-ES型のLIF応答性を支持するか? >  NOD-ES細胞においてTFCPの過剰発現により自己複製が可能となり、かつLIF応答性が129-ES型へと変換されていた。本項目では、NOD-ES細胞において、TFCPの過剰発現により、どのようにLIF応答性が129-ES型へと変換されるのか、そのメカニズムを解析する。これにより、ES細胞において129-ES型のLIF応答性を支持するTFCPの役割を明らかにする。 > > (2)TFCPがどのようにしてES細胞の自己複製に必須な遺伝子の発現を制御しているか? >  NOD-ES細胞を血清条件下で培養すると、TFCPを含む自己複製に必須な遺伝子の発現が速やかに消失する。一方でこのTFCPを過剰発現させると、NOD-ES細胞は血清条件下で自己複製できるようになる。本項目では、ES細胞において、TFCPにより、どのように自己複製に必須な遺伝子の発現を制御しているか、そのメカニズムを明らかにする。また、ラットES細胞もマウスNOD-ES細胞と同様に血清条件下で自己複製できない。このラットES細胞においてTFCPを過剰発現させ、血清条件下で自己複製できるかどうか検討する。これによりラットES細胞の安定な維持が容易になれば、遺伝子改変ラット作製を通じて様々な研究分野へ貢献できる。 > > (3)TFCPを過剰発現させたNOD系統マウスの初期胚からES細胞の樹立が可能となるか? >  NOD-ES細胞において、血清条件下においてES細胞の樹立と維持はできなかった。申請者は、予備的検証から、TFCPの過剰発現によりNOD-ES細胞が血清条件下で自己複製が可能であることを明らかにした。本項目では、血清条件下で初期胚からES細胞が樹立できないマウス系統(NOD、FVB/N、CBA/Ca系統)の初期胚を用いて、TFCPの過剰発現によりES細胞の樹立が可能かどうかを明らかにする。