--- title: "CASE 43: 「国内外の研究動向」と「背景」との違いがわかりにくい" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第7章 研究目的、研究方法など:着想に至った経緯など case_number: 43 pages: 189-191 images: page_0189.png ~ page_0191.png advice: "「国内外の研究動向」には現在行われている研究を記載し、過去から現在までの研究の流れは「本研究の学術的背景」に書こう" tags: ["ふさわしく", "推敲のヒント"] --- # CASE 43: 「国内外の研究動向」と「背景」との違いがわかりにくい ## アドバイス 「国内外の研究動向」には現在行われている研究を記載し、過去から現在までの研究の流れは「本研究の学術的背景」に書こう ## どこがよくないか > 健康社会の鍵となる医療技術は目覚ましい発展を遂げており、長寿命化に貢献している。しかし健康寿命はあまり延びておらず、平均寿命との差である不健康な期間は拡大傾向にある。その主要因が生活習慣病であり、特に近年社会問題となっているのが糖尿病である。糖尿病患者は予備軍を含めると国内で2,000万人(平成28年の厚生労働省のデータ)を数える。糖尿病は血糖値の調節機能を障害する病気であり、その治療・予防においては血糖値の継続的な計測と、測定した血糖値の変化に対応したインスリンの投与が重要である。血糖値の継続的な計測に関しては持続血糖モニタリング(CGM)が普及しており、血糖値に対応したリアルタイムなインスリン投与方法に関してはSAP療法が実用化されているが、機器のサイズが大きいことやメンテナンスの面で問題点も多い。 ## 添削例 > 健康社会の鍵となる医療技術は目覚ましい発展を遂げており、長寿命化に貢献している。しかし健康寿命はあまり延びておらず、平均寿命との差である不健康な期間は拡大傾向にある。その主要因が生活習慣病であり、特に近年社会問題となっているのが糖尿病である。糖尿病患者は予備軍を含めると国内で2,000万人(平成28年の厚生労働省のデータ)を数える。糖尿病は血糖値の調節機能を障害する病気であり、その治療・予防においては血糖値の継続的な計測と、測定した血糖値の変化に対応したインスリンの投与が重要である。血糖値の継続的な計測に関しては持続血糖モニタリング(CGM)が普及しており、血糖値に対応したリアルタイムなインスリン投与方法に関してはSAP療法が実用化されているが、機器のサイズが大きいことやメンテナンスの面で問題点も多い。 **指摘された問題点:** 1. この部分は背景と重なる(ほとんど背景) ## なぜよくないのか? 【本研究の学術的背景】と【国内外の研究動向】の項目は記載内容に共通する部分があり、両者を明確に区別して書きにくい。実際に以前の申請書では「研究の学術的背景(本研究に関する国内・国外の研究動向および位置づけ、応募者のこれまでの研究成果を踏まえ着想に至った経緯、これまでの研究成果を発展させる場合にはその内容等)」とあり、【国内外の研究動向】は【本研究の学術的背景】の一部になっていた。 例文では、研究の「背景」についての記述が大半で、申請者の研究計画について、現在どのような研究が国内外で行われているのかが書かれていない。 ## どのように改良すればよいのか? 現在の申請書では【本研究の学術的背景】と【国内外の研究動向】は別項目になっており、両者の違いを書き分けたいところだ。 では、どのように両者を区別して書き分けたらいいのだろうか?それには時間軸で考えればよい。【本研究の学術的背景】では過去から現在までの今回の研究テーマにつながる研究の流れ(自他問わず)、【国内外の研究動向】では今回の研究テーマそのものに関連する国内外で現在行われている研究について紹介すればよい(case42参照)。 例文では、糖尿病に関する一般的な「背景」はカットして、申請者の研究計画である「血糖に対応したリアルタイムなインスリン投与方法」の開発についての国内外の現状について解説する。 ## 改善例 > 血糖値に対応したリアルタイムなインスリン投与に関しては、現在SAP療法で使われているインスリンポンプがあるが、機器のサイズが大きいことやメンテナンスの面で問題点も多い。 > 現時点でポンプを使用しないインスリン投与方法としては、〇〇大学によるランゲルハンス島細胞を含んだハイドロゲルカプセルの開発や、〇〇大学によるバイオ人工島用埋め込み型細胞デバイスの開発などがある。しかしこれらの方法では、インスリン産生細胞の採取や持続性の維持といった問題点が解決されていない。 > また〇〇大学や海外の〇〇大学によって、いくつかのグルコース応答性ゲルの開発が進められている(〇〇 et al. Biomaterials 2020など)が、生体内での拒絶反応や耐久性が不十分なことなどで、まだ実用化には至っていない。 > 申請者らが研究を進めている血糖値に応じてインスリンを分泌するバイオポリマーは、これらの問題点をクリアできる方法であり、生体内でのインスリン分泌パターンを模倣することが可能な方法である。