--- title: "CASE 40: 「本研究の着想に至った経緯」にオリジナリティがない" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第7章 研究目的、研究方法など:着想に至った経緯など case_number: 40 pages: 177-180 images: page_0177.png ~ page_0180.png advice: "申請者のオリジナルな経験と研究から生まれた着想を書く" tags: ["具体的に", "アピールする"] --- # CASE 40: 「本研究の着想に至った経緯」にオリジナリティがない ## アドバイス 申請者のオリジナルな経験と研究から生まれた着想を書く ## どこがよくないか > (1) 本研究の着想に至った経緯 > 近年、社会的孤立や貧困など、高齢者の権利や福祉を阻害する高齢者福祉の問題が拡大している。この背景には、①家族機能の変化や貧困の拡大などの市民生活が変化していること、②既存の高齢者の福祉や保障制度は社会の変化に応じきれない限界があること、③高齢者支援の実践が制度・政策によって規定され、その枠組みを超えた実践が行われにくい状況があることなどが指摘できる。 > こうした現状と研究から、我が国における高齢者支援の課題を検討し、高齢者の生活と権利を守る社会実践の展開のために、理論的検討や実態把握が必要不可欠であると考え、この研究の着想に至った。 ## 添削例 > (1) 本研究の着想に至った経緯 > 近年、社会的孤立や貧困など、高齢者の権利や福祉を阻害する高齢者福祉の問題が拡大している。この背景には、①家族機能の変化や貧困の拡大などの市民生活が変化していること、②既存の高齢者の福祉や保障制度は社会の変化に応じきれない限界があること、③高齢者支援の実践が制度・政策によって規定され、その枠組みを超えた実践が行われにくい状況があることなどが指摘できる。 > こうした現状と研究から、我が国における高齢者支援の課題を検討し、高齢者の生活と権利を守る社会実践の展開のために、理論的検討や実態把握が必要不可欠であると考え、この研究の着想に至った。 **指摘された問題点:** 1. 一般的すぎる。申請者のオリジナルな点は? ## なぜよくないのか? 申請者個人としての【本研究の着想に至った経緯】が書かれていない。最初の段落には高齢者福祉の一般的な問題点(世間一般によくいわれていること)が書かれている。そして次の段落で「こうした現状と研究」から「理論的検討や実態把握が必要不可欠」であり、「この研究の着想に至った」とあるが、ここもごく一般的な内容で、「現状と研究」がどのようなものなのか、わからない。 ## どのように改良すればよいか? 審査委員が【本研究の着想に至った経緯】を読んだときに、どのような内容が印象に残るだろうか?やはりそれは申請者がどのようにして研究の着想に至ったのか、申請者にしか書けないオリジナルなことだ。研究を行ってきた結果として、これまでの研究内容で足りない点や今後に解明すべき課題として見出したことなどを、申請者の経験から書くべきだ(case41参照)。特にこれまでの研究経過でうまくいかなかったことを正直に書いて、それを解決するためにどうすればいいか、気づいたことなどを書けばよい。 格調高く書く必要はない。あまりに個人的な、取るに足らないような経験であっても、読む側(審査委員)の立場になれば、その方が面白く興味を引く。また申請者のこれまでの発表論文や学会発表などをあげて説明するのもよい。 例文では【本研究の着想に至った経緯】には申請者のオリジナルな経験と研究から、今回の研究計画を思いついた経緯を書き加える。 ## 改善例 > (1) 本研究の着想に至った経緯 > 近年、社会的孤立や貧困など、高齢者の権利や福祉を阻害する高齢者福祉の問題が拡大している。この背景には、①家族機能の変化や貧困の拡大などの市民生活が変化していること、②既存の高齢者の福祉や保障制度は社会の変化に応じきれない限界があること、③高齢者支援の実践が制度・政策によって規定され、その枠組みを超えた実践が行われにくい状況があることなどが指摘できる。 > これまでに申請者は、高齢者対象のソーシャルワーカーや支援者の活動を通して、既存の制度に当てはまらず社会福祉サービスの対象となりにくい、いわゆる「制度の空白地帯」に陥る高齢者に多く出会ってきた。その過程で、高齢者支援に関わる個別支援として生活史の活用を試みる研究を行い(社会福祉研究(2015)などに論文発表)、高齢者支援を行うソーシャルワーカーや研究者と交流する機会を得た。さらに中国や韓国において高齢者支援を行うソーシャルワーカーや研究者と交流するなかで、高齢者支援の問題は日本だけのものではなく、どの国にも起こりうる(起こっている)もので、住宅の確保が困難であることや、とくに女性や移民の高齢者などが「制度の空白地帯」に陥りやすいことなど、各国で共通の問題意識があり(第50回日本医療福祉学会にて発表)、国際比較検討を行うことでより課題が明確になると考えた。 > こうした実践経験と研究から、我が国における高齢者支援の課題を検討し、高齢者の生活と権利を守る社会実践の展開のために、理論的検討や実態把握が必要不可欠であると考え、この研究の着想に至った。