--- title: "CASE 39: 自ら「独自性・創造性がある」といっても説得力がない" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第6章 研究目的、研究方法など:独自性、創造性 case_number: 39 pages: 173-176 images: page_0173.png ~ page_0176.png advice: "「独自性・創造性がある」と直接書かず、研究内容を具体的に書くことで独自性と創造性を示そう" tags: ["具体的に"] --- # CASE 39: 自ら「独自性・創造性がある」といっても説得力がない ## アドバイス 「独自性・創造性がある」と直接書かず、研究内容を具体的に書くことで独自性と創造性を示そう ## どこがよくないか **例文1** 本研究の独自性・創造性は、似たような研究を国内外の誰も行っていないという点である。特に、実際の核酸の重合系を観察して、成長ラジカルの電子スピン共鳴分光スペクトルを観察できるのは申請者だけであり、この結果とモデル系の結果とを比較することが本研究の一番の特徴である。 **例文2** 国際労働力の移動は、これまで主に社会学・経済地理学・ジェンダー論(女性の移動の場合)等の分野で研究されてきた。しかし、経済学の視点から高度人材の国際移動を研究することや、高度人材の国際移動を包括的に解明する点で、本研究には独自性・創造性がある。 ## 添削例 **例文1** > 本研究の独自性・創造性は、似たような研究を国内外の誰も行っていないという点である。特に、実際の核酸の重合系を観察して、成長ラジカルの電子スピン共鳴分光スペクトルを観察できるのは申請者だけであり、この結果とモデル系の結果とを比較することが本研究の一番の特徴である。 **指摘された問題点:** 1. 「誰も行っていない」から独自性があるわけではない **例文2** > 国際労働力の移動は、これまで主に社会学・経済地理学・ジェンダー論(女性の移動の場合)等の分野で研究されてきた。しかし、経済学の視点から高度人材の国際移動を研究することや、高度人材の国際移動を包括的に解明する点で、本研究には独自性・創造性がある。 **指摘された問題点:** 1. 具体的な内容が不十分 ## なぜよくないのか? 例文のように自ら「独自性・創造性がある」と書くのは、若手研究者などの科研費の経験が少ないものによくみられる。しかし、自ら「独自性・創造性がある」といっても説得力がない。必要なのはどのような点で「独自性・創造性がある」のか研究内容を十分に具体的に記載して、審査委員が読んで納得できるかどうかだ。 例文1では、「似たような研究を国内外の誰も行っていない」ことを「独自性・創造性」としているが、もちろん"誰も行っていないから"その研究に「独自性・創造性」があるわけではない。研究内容のどのような点に特色があるのかをしっかりと示す必要がある。 例文2では、「経済学の視点から高度人材の国際移動を研究すること」「高度人材の国際移動を包括的に解明する点」に「独自性・創造性がある」としているが、具体的な内容が不十分である。 ## どのように改良すればよいか? できるだけ「独自性・創造性がある」などと書かない。申請者の研究のどのような点に「独自性」があるのか、「創造性」があるのかを文章で示すこと。 例文1では、「本研究の独自性・創造性は、似たような研究を国内外の誰も行っていないという点である」という文はカットして、研究内容を具体的に示す。2番目の文章で「申請者だけ」という表現も審査委員の反発を招く恐れがあるので、表現を弱める。 例文2では、「経済学の視点から高度人材の国際移動を研究すること」「高度人材の国際移動を包括的に解明する点」に「独自性・創造性がある」のなら、もう一歩踏み込んで研究内容を具体的に文章で詳しく説明することによって、「独自性・創造性がある」ことを示す。 ## 改善例 **例文1** 「誰も行っていない」という表現は削除して書き直す > 特に申請者はこれまで、実際の核酸の重合系を観察して、成長ラジカルの電子スピン共鳴分光スペクトルを観察してきた。この結果とモデル系の結果とを比較して、反応の途中段階において何が起こっているのかを明らかにできることが、本研究の一番の特徴である。 **例文2** 研究内容を文章で具体的に詳しく説明する > 本研究の学術的独自性・創造性には2点ある。第一は、経済学の視点から高度人材の国際移動を研究することである。 > > 国際労働力の移動は、これまで主に社会学・経済地理学・ジェンダー論(女性の移動の場合)等の分野で研究されてきた。しかし、特に高度人材の国際移動の分析には経済学の視点が必須である。それは高度人材の国際移動には、 > > ①産業構造の変化(ICT製造業からAI等へ)に伴い、現在の労働市場が需要する人材と、大学が供給する人材の間でミスマッチが起き、必要な分野の高度人材が不足し海外から人材が流入していること > > ②貿易摩擦の発生で、多くの企業が中国から他の後発国に生産拠点を移す動きが発生し、それに伴い他国との産業交流や人材移動が生じている > > からである。そのため、高度人材の国際移動の問題理解には、経済的事項への理解が必須である。 > > 第二は、高度人材の国際移動を包括的に解明することにある。 > > これまでの高度人材の国際移動の分析は、ICT人材もしくは理系人材に、ほぼ限られていた。しかし、複数の大学が社会科学系研究者を多数引き抜くなど、これまでの研究ではカバーされていなかった現象がみられるようになった。 > > このように先行研究では扱われていなかった2点を経済学の視点から考察することと、文系人材を含んだ国際移動を包括的に解明しようとするところに、本研究の学術的独自性・創造性がある。