--- title: "CASE 34: 「目的」なのか「目標」なのか、わからない" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第5章 研究目的、研究方法など:本研究の目的 case_number: 34 pages: 153-156 images: page_0153.png ~ page_0156.png advice: "最終目標としての「研究目的」を2~3行で簡潔にまとめ、複数の「目標」はその下に補足情報として加えよう" tags: ["ふさわしく", "簡潔に"] --- # CASE 34: 「目的」なのか「目標」なのか、わからない ## アドバイス 最終目標としての「研究目的」を2~3行で簡潔にまとめ、複数の「目標」はその下に補足情報として加えよう ## どこがよくないか **例文1** 本研究の目的は、 ①高脂肪食が視床下部のドーパミン動態に与える影響を明らかにする ②高脂肪食の過剰摂取により視床下部ニューロンに生じる長期的な変化を明らかにし、その結果をグレリン連続投与の結果と比較する ③②によって同定した遺伝子群の役割と、その発現を調節する因子を明らかにすることである。 **例文2** 本研究の目的は、肺がん組織における微小環境、特に腫瘍血管がどのように正常の肺組織の血管と形態や機能が異なっているか、それはどのような機序で起こるのか、腫瘍血管の形態および機能的変化に肺がん組織がどのような影響を与えているのかを明らかにし、肺がん細胞と血管を形成する血管内皮細胞、平滑筋細胞間の細胞情報伝達の存在を証明し、情報伝達の方法として肺がん細胞が分泌する生理活性物質がどのように利用されているかを明らかにすることである。 ## 添削例 **例文1** > 本研究の目的は、 > > ①高脂肪食が視床下部のドーパミン動態に与える影響を明らかにする > > ②高脂肪食の過剰摂取により視床下部ニューロンに生じる長期的な変化を明らかにし、その結果をグレリン連続投与の結果と比較する > > ③②によって同定した遺伝子群の役割と、その発現を調節する因子を明らかにすることである。 **指摘された問題点:** 1. 「目的」としているが、どちらかというと「目標」(研究方法) **例文2** > 本研究の目的は、肺がん組織における微小環境、特に腫瘍血管がどのように正常の肺組織の血管と形態や機能が異なっているか、それはどのような機序で起こるのか、腫瘍血管の形態および機能的変化に肺がん組織がどのような影響を与えているのかを明らかにし、肺がん細胞と血管を形成する血管内皮細胞、平滑筋細胞間の細胞情報伝達の存在を証明し、情報伝達の方法として肺がん細胞が分泌する生理活性物質がどのように利用されているかを明らかにすることである。 **指摘された問題点:** 1. ①②は「目的」だが、わかりにくくて不十分 2. ③~⑤は研究目標 ## なぜよくないのか? 【本研究の目的】に3つくらいの複数の「目的」をあげている例がしばしばみられる。例文1のようなものだ。また書き方は異なっているが、例文2も複数の「目的」を【本研究の目的】に書いている。しかしそれらは本当に「研究目的」なのだろうか? 辞書を引くと、「目的」は「最終的に成し遂げようとめざす事柄」、「目標」は「目的を達成するために設けた目あて、(最終的な)目的に対し、そこに至るための中間的なものをいうことが多い」とある。「目的」と「目標」は次の図のようなイメージだ。 **目標と目的のイメージ:** 目標1 → 目標2 → 目標3 → 目的 例文1と2のような複数の「目的」は、どちらかといえば「目標」(「研究方法」といってもいいだろう)であることが多い。つまり「研究目的」を実現するためのステップだ。 【本研究の目的】に書くべきことは、「研究目的」を実現するために至る中間的なもの(目標)ではなく、申請者が最終的に何を明らかにしようとするのかだ、つまり「最終目標」だ。それが例文1では、何をやるのかという「目標」だけを並べて、最終的に何をめざすのか(=「研究目的」)が書かれていない。 ## どのように改良すればよいか? 最終目標としての「研究目的」をまず2~3行で簡潔にまとめる。長すぎる【本研究の目的】はよくない。「研究目的」は「こういうことをやるんです」とひと言でまとめるべきだ。まず「研究目的」をしっかりと書く。その後補足情報として、複数の「目標」(「研究方法」)を書き加えると収まりがよく、研究をイメージしやすくなる(case31参照)。 例文1では、「目的」として「本研究では、高脂肪食などの高嗜好性食品の過剰摂取のメカニズムを、ドーパミンニューロンの遺伝子発現の変化から解明する」ことをまず書いて、もとの①~③を目的を実現するためのステップ(「目標」)として書き直す。 例文2では、「目的」として「本研究では、肺がん組織から分泌される生理活性物質がどのようにして正常血管を、形態および機能的に異なる腫瘍血管に変化させるのか、そのメカニズムを解明する」ことをしっかり示し、その後にどのように研究を進めていくのかを箇条書きにして書き直す。 ## 改善例 **例文1** 冒頭に「目的」を簡潔に加える > 本研究では、高脂肪食などの高嗜好性食品の過剰摂取のメカニズムを、ドーパミンニューロンの遺伝子発現の変化から解明する。 > > そのために、 > > ①高脂肪食を過剰摂取したときの視床下部におけるドーパミン濃度の経時的な変化を調べ、ニューロンでの遺伝子発現や視床下部ニューロンの形態変化を明らかにする。 > > ②グレリン投与時の変化と比較し、共通の変化やそれぞれに特異的な変化を見出す。 > > ③高脂肪食の過剰摂取の原因となる遺伝子を明らかにする。 > > これらの研究によって、高嗜好性食品への依存や、肥満の改善につなげていく。 **例文2** 冒頭に「目的」、その下に「目標」(ステップ)を箇条書きにする > 本研究では、肺がん組織から分泌される生理活性物質がどのようにして正常血管を、形態および機能的に異なる腫瘍血管に変化させるのか、そのメカニズムを解明する。 > > そのために、次のことを明らかにしていく。 > > ①腫瘍血管の形態および機能的変化に、肺がん細胞がどのような影響を与えているのか > > ②肺がん細胞と、正常の血管内皮細胞や平滑筋細胞の間の細胞間情報伝達はどのようになっているのか > > ③がん細胞が分泌する生理活性物質が、情報伝達の方法としてどのように利用されているのか