--- title: "CASE 33: 科研費の目的としてふさわしいか(2)" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第5章 研究目的、研究方法など:本研究の目的 case_number: 33 pages: 149-151 images: page_0149.png ~ page_0151.png advice: "科研費でしかできない研究者個人で行える研究目的をまとめる。臨床試験や産学連携を「目的」にはしない" tags: ["ふさわしく", "推敲のヒント"] --- # CASE 33: 科研費の目的としてふさわしいか(2) ## アドバイス 科研費でしかできない研究者個人で行える研究目的をまとめる。臨床試験や産学連携を「目的」にはしない ## どこがよくないか **例文1** 本研究の目的は、歯科心身症に対する薬物療法が有効かどうかの評価を行う。また、発症の原因や患者の分類を行うことによって、適切な診断を行えるようにする。 **例文2** 〇〇大学と〇〇医療センターの2施設で医師主導の共同臨床試験を実施し、DOS装置を用いた術前化学療法の早期治療効果モニターリングを行い、病理学的治療効果との相関についてFDG-PETとMRIの結果と比較する。 **例文3** 本研究の具体的な目的として、密接な産学連携を構築し、乳房計測に最適な計測システムを考案する。 ## 添削例 **例文1** > 本研究の目的は、歯科心身症に対する薬物療法が有効かどうかの評価を行う。また、発症の原因や患者の分類を行うことによって、適切な診断を行えるようにする。 **指摘された問題点:** 1. 科研費にふさわしい研究課題か? **例文2** > 〇〇大学と〇〇医療センターの2施設で医師主導の共同臨床試験を実施し、DOS装置を用いた術前化学療法の早期治療効果モニターリングを行い、病理学的治療効果との相関についてFDG-PETとMRIの結果と比較する。 **例文3** > 本研究の具体的な目的として、密接な産学連携を構築し、乳房計測に最適な計測システムを考案する。 **指摘された問題点:** 1. 科研費には必要ない ## なぜよくないのか? 例文1では研究目的が「薬物療法が有効かどうかの評価」となっている。また例文2には「医師主導の共同臨床試験」とある。薬物療法の有効性を評価する、あるいは臨床試験を行うことを強めに書かれると、"科研費で本来にすべき研究なのだろうか""他にもっと適した研究費申請先(例えば厚生労働科学研究費)があるのではないだろうか"と思う審査委員も出てくる。この研究が科研費でなければならない点の説明が足りない。 例文3の産学連携も科研費の主旨とは異なり、ふさわしくない。科研費は、あくまでも研究者の提案する研究のためにあり、企業との共同研究で機器開発することが目的ではない。例文の書き方では、「企業との共同研究」のように読め、審査委員は違和感を感じる(「企業からの研究費で研究を行えばよいのでは」)。 ## どのように改良すればよいか? 研究内容が臨床試験に近いものであっても、「研究目的」が臨床試験にならないように注意して書くこと。また、たとえ将来的に産学連携につながるような研究であっても、科研費の提案段階では大学などに所属する個人研究者が中心となる研究であると書く。 例文1では、評価ではなく原因の解明に焦点を当てる。こうすると臨床試験的なニュアンスが少しは抑えられる。 例文2では「医師主導の共同臨床試験」という言葉は使わないで、あくまで治療効果を高めるための研究を行うことに主眼を置いた記述とする。同じ内容でも、書き方の問題で受けとり方が異なる。 例文3の場合「密接な産学連携を構築し」をカットすればよい。 ## 改善例 **例文1** 「原因の解明」にフォーカスをあてた書き方にする > 本研究の目的は、歯科心身症の発症の原因を解明したり、患者を分類し適切な診断を行えるようにするとともに、薬物療法の有効性を調べることである。 **例文2** 科研費以外の研究費を想起させるような記述は使わない > 〇〇大学と〇〇医療センターの2施設で共同研究を実施し、DOS装置を用いた術前化学療法の早期治療効果モニターリングを行い、病理学的治療効果との相関についてFDG-PETとMRIの結果と比較する。 **例文3** > 本研究の具体的な目的として、これまでにない乳房計測に最適な計測システムを考案する。