--- title: "CASE 25: 「(1)本研究の学術的背景」の解説が長すぎてわかりにくい" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第3章 研究目的、研究方法など:背景 case_number: 25 pages: 113-116 images: page_0113.png ~ page_0116.png advice: "見出しを活用して「イントロ」「申請者のこれまでの研究」「解決すべき課題」(学術的「問い」)などに分割し,構成を明示しよう" tags: ["はっきりと", "レイアウト"] --- # CASE 25: 「(1)本研究の学術的背景」の解説が長すぎてわかりにくい ## アドバイス 見出しを活用して「イントロ」「申請者のこれまでの研究」「解決すべき課題」(学術的「問い」)などに分割し,構成を明示しよう ## どこがよくないか > (1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」 > > 平成25年度及び平成26年度の全国学力・学習状況調査のクロス集計結果では、「総合的な学習の時間」において、探求の過程を意識した指導を行なっている学校ほど平均正答率が高く、特に記述式問題の平均正答率が高い傾向が見られた。また、平均正答率を高い群と低い群に分けた比較においても、高い群は探求の過程を意識した指導を積極的に行なっている傾向にあった。 > > この結果は、「総合的な学習の時間」を懐疑的に見ていた教育関係者に対して、意識の転換を促すものである。そして、思考力を中核とした「21世紀型能力」(国立教育政策研究所)の育成を追求するとき、次期学習指導要領における「総合的な学習の時間」のより一層の充実が求められるものと考えられる。 > > 応募者は、中学校教員を対象とした質問紙調査を通して、「総合的な学習の時間」に肯定的な意識を持っている教員であっても準備の負担が増えていると感じており、専門教員の配置を望んでいる現状を明らかにしている。また、完全実施から10年以上が経過した現在、教職員の初期の関心が薄らぎ、多くの学校において、「総合的な学習の時間」が形骸化している現状も明らかにしている(山崎:2013c・2012c)。さらに応募者は、日本生活科・総合的学習教育学会の福岡県地域世話人、福岡県生活科・総合学習研究会の事務局長を務めたり、福岡市内の幼・小・中学校の学校評議員を務めたりしている。また、過年度の基盤研究(C)において、中・高等学校の「総合的な学習の時間」で体験型キャリア教育を促進させる要件を研究し、その理論を解明してきている(山崎:2013b、Yamasaki: 2013d,山崎:2012cd)。 > > 教職員のニーズと地域住民等のシーズとが「つながる」時、「総合的な学習の時間」は児童生徒にとってより一層、魅力的な時間に変容する。応募者は、地域コーディネーターが配置されている学校では教職員と連携・協働するストラテジーを、配置されていない学校では教職員や関係者が地域住民等と連携・協働するストラテジーを明らかにすることで「総合的な学習の時間」を再び活性化させることができると考え、本研究課題を着想するに至った。 ## 添削例 > (1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」 > > 平成25年度及び平成26年度の全国学力・学習状況調査のクロス集計結果では、「総合的な学習の時間」において、探求の過程を意識した指導を行なっている学校ほど平均正答率が高く、特に記述式問題の平均正答率が高い傾向が見られた。また、平均正答率を高い群と低い群に分けた比較においても、高い群は探求の過程を意識した指導を積極的に行なっている傾向にあった。 > > この結果は、「総合的な学習の時間」を懐疑的に見ていた教育関係者に対して、意識の転換を促すものである。そして、思考力を中核とした「21世紀型能力」(国立教育政策研究所)の育成を追求するとき、次期学習指導要領における「総合的な学習の時間」のより一層の充実が求められるものと考えられる。 > > 応募者は、中学校教員を対象とした質問紙調査を通して、「総合的な学習の時間」に肯定的な意識を持っている教員であっても準備の負担が増えていると感じており、専門教員の配置を望んでいる現状を明らかにしている。また、完全実施から10年以上が経過した現在、教職員の初期の関心が薄らぎ、多くの学校において、「総合的な学習の時間」が形骸化している現状も明らかにしている(山崎:2013c・2012c)。さらに応募者は、日本生活科・総合的学習教育学会の福岡県地域世話人、福岡県生活科・総合学習研究会の事務局長を務めたり、福岡市内の幼・小・中学校の学校評議員を務めたりしている。また、過年度の基盤研究(C)において、中・高等学校の「総合的な学習の時間」で体験型キャリア教育を促進させる要件を研究し、その理論を解明してきている(山崎:2013b、Yamasaki: 2013d,山崎:2012cd)。 > > 教職員のニーズと地域住民等のシーズとが「つながる」時、「総合的な学習の時間」は児童生徒にとってより一層、魅力的な時間に変容する。応募者は、地域コーディネーターが配置されている学校では教職員と連携・協働するストラテジーを、配置されていない学校では教職員や関係者が地域住民等と連携・協働するストラテジーを明らかにすることで「総合的な学習の時間」を再び活性化させることができると考え、本研究課題を着想するに至った。 **指摘された問題点:** 1. 見出しがないひと続きの文章として書いている。見出しを加え分割する ## なぜよくないのか? 例文は、ひと続きの文章として書かれており、この内容(書き方)だと審査委員は理解しにくい。 【本研究の学術的背景】は【研究目的、研究方法など】の【本文】で最初に書くところなので、非常に大切である。申請書では【概要】に続いて最初の1ページ以内に書かれていることが多い。それだけのスペースにひと続きの文章として書いて、審査委員に読ませるには相当な文章力が必要だ。文章力に自信があれば気にしなくてよいが、そうでない場合、どうすればいいか? ## どのように改良すればよいか? ひと続きの文章よりも、見出しで区切って書かれた文章の方が読みやすいし理解しやすい(case35参照)。パラグラフに分けたり、適宜見出しを挿入したりすることで、何について書いている項目なのか視覚的にも示す。【研究目的、研究方法など】が小分けに書かれた申請書は、審査委員にとって非常にわかりやすい。科研費申請書の書き方もアイデア勝負。よりわかりやすい申請書にするために新しい工夫を試みること!【(1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」】は、慣れないうちは次のような順番で書いていけばよい。「これまでの研究(他の研究者によってなされた研究の背景)」→「申請者がこの研究分野にどのように貢献してきたか、これまでの研究成果」→「いまだわかっていないこと、解決すべき課題は何か」。最後の「解決すべき課題」(すなわち、【研究課題の核心をなす学術的「問い」】は特に重要である(case26参照)。なお、挿入する見出しは申請書の説明欄に書かれている項目そのままでなくてかまわない。申請書がわかりやすくなるように項目を設ければよい(申請者のギモン21参照)。例えば、「この研究についてのこれまでの研究経過」「この研究について申請者はどのような研究を行ってきたか」「何が未解明な問題か?何を明らかにすべきか?」などでよいのである。 例文は「研究の背景」「応募者のこれまでの研究」「研究課題の核心をなす学術的「問い」」を見出しとして加えるとよい。 ## 改善例 > (1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」 > > 【研究の背景】平成25年度及び平成26年度の全国学力・学習状況調査のクロス集計結果では、「総合的な学習の時間」において、探求の過程を意識した指導を行なっている学校ほど平均正答率が高く、特に記述式問題の平均正答率が高い傾向が見られた。また、平均正答率を高い群と低い群に分けた比較においても、高い群は探求の過程を意識した指導を積極的に行なっている傾向にあった。 > > この結果は、「総合的な学習の時間」を懐疑的に見ていた教育関係者に対して、意識の転換を促すものである。そして、思考力を中核とした「21世紀型能力」(国立教育政策研究所)の育成を追求するとき、次期学習指導要領における「総合的な学習の時間」のより一層の充実が求められるものと考えられる。 > > 【応募者のこれまでの研究】応募者は、中学校教員を対象とした質問紙調査を通して、「総合的な学習の時間」に肯定的な意識を持っている教員であっても準備の負担が増えていると感じており、専門教員の配置を望んでいる現状を明らかにしている。また、完全実施から10年以上が経過した現在、教職員の初期の関心が薄らぎ、多くの学校において、「総合的な学習の時間」が形骸化している現状も明らかにしている(山崎:2013c・2012c)。さらに応募者は、日本生活科・総合的学習教育学会の福岡県地域世話人、福岡県生活科・総合学習研究会の事務局長を務めたり、福岡市内の幼・小・中学校の学校評議員を務めたりしている。また、過年度の基盤研究(C)において、中・高等学校の「総合的な学習の時間」で体験型キャリア教育を促進させる要件を研究し、その理論を解明してきている(山崎:2013bc, Yamasaki: 2013d,山崎:2012cd)。 > > 【研究課題の核心をなす学術的「問い」】教職員のニーズと地域住民等のシーズとが「つながる」時、「総合的な学習の時間」は児童生徒にとってより一層、魅力的な時間に変容する。応募者は、地域コーディネーターが配置されている学校では教職員と連携・協働するストラテジーを、配置されていない学校では教職員や関係者が地域住民等と連携・協働するストラテジーを明らかにすることで「総合的な学習の時間」を再び活性化させることができると考え、本研究課題を着想するに至った。