--- title: "CASE 22: 概要には必要ないもの(2)" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第2章 研究目的、研究方法など:概要 case_number: 22 pages: 101-104 images: page_0101.png ~ page_0104.png advice: "概要部分は論文のサマリーとみなそう。太字、下線はここになくてよい" tags: ["ふさわしく", "アピールする"] --- # CASE 22: 概要には必要ないもの(2) ## アドバイス 概要部分は論文のサマリーとみなそう。太字、下線はここになくてよい ## どこがよくないか **例文1** > (概要) > **脊椎アライメントの不整と、運動機能低下の関連について**今までにも検討が行われ、これらに相互に作用する因子として筋量の低下(サルコペニア)が示唆されているものの、解析対象と評価体系に問題があるため、因果関係が証明されるまでにはいたっていない。本研究では、**1)代表者が確立した住民健診をサルコペニア・脊椎アライメントと運動機能をターゲットにしたコホート調査へと拡大したデータベースを構築すること、2)新たに「腰椎単純MRI定量評価システム」を開発して、評価を行うことにより、サルコペニアと脊椎アライメント・運動機能の因果関係を明らかにすること、3)評価基準値の設定を行い、運動機能低下ハイリスク群の効率的選択法に関するエビデンスを構築すること**、の3点を目的とする。 **例文2** > (概要) > 申請者は、高齢者の運動介入が身体機能、健康関連QOLさらに身体活動に対する自己効力感(セルフ・エフィカシー)を向上させることを明らかにした。本研究では、地域で実施される介護予防事業に参加した高齢者の基礎情報(基本チェックリスト、身体レベル、既往歴、疼痛の有無、家族環境、自己効力感(セルフ・エフィカシー)など)を調査し、さらに**高齢者自身の健康に対する意識やニーズ(運動内容、転倒、体力、骨・関節、体力の維持など)を調査し、高齢者が参加し共に介護予防教育プログラムを開発すること、および従来の運動プログラムに教育プログラムを加えた介護予防「運動+教育プログラム」を実施し、従来の運動プログラムと比較し、効果を検証すること**を目的とする。 ## 添削例 **例文1** > (概要) > ~~**脊椎アライメントの不整と、運動機能低下の関連について**~~今までにも検討が行われ、これらに相互に作用する因子として筋量の低下(サルコペニア)が示唆されているものの、解析対象と評価体系に問題があるため、因果関係が証明されるまでにはいたっていない。本研究では、~~**1)代表者が確立した住民健診を……3)評価基準値の設定を行い、運動機能低下ハイリスク群の効率的選択法に関するエビデンスを構築すること**~~、の3点を目的とする。 **指摘:** 1. 太字にする必要はない。太字は外す 2. 「~とは?」(効率的選択法の意味が不明確) 3. 研究の「展開」がない **例文2** > (概要) > [下線+太字の部分が多い! 下線と太字を外す] **指摘:** 1. 下線+太字の部分が多い! 下線と太字を外す 2. 「背景」に解決すべき課題が書かれていない ## なぜよくないのか? 例文1の場合は【概要】に太字が多く、半分が太字になっている。研究目的を太字にして強調する意義はよくわかる。しかし【概要】には基本的に太字は必要ない。 例文2では、【概要】に下線+太字が2カ所あり、全体の約半分を占める。【概要】に下線や太字は必要ない。 ## どのように改良すればよいか? 太字、下線などはここになくてよい。概要部分は論文のサマリー(アブストラクト)とみなそう(case21参照)。 例文1では太字を使わない。使わないでも問題ない。そのかわりに改行して目立たせる(case23参照)。そのうえで「効率的選択法」という書き方を簡単に「選び出す」に改め、また研究の「展開」を本文中から抜き出して加えたい。 例文2では、太字や下線を使わない。「背景」「目的」と「方法」、少々の「展開」という順で書かれている。しかし「背景」の「高齢者の運動介入が身体機能、健康関連QOLさらに身体活動に対する自己効力感(セルフ・エフィカシー)を向上させることを明らかにした」には、解決すべき課題が書かれていない。本文中から解決すべき課題の記述を抜き出してきて、さらにこの研究計画で行う運動プログラムの特徴や「展開」がもう少しわかりやすいように書き改めるとよいだろう。 ## 改善例 **例文1**(改行することで目立たせ、太字をやめる。簡単な言葉に言い換える) > (概要) > 脊椎アライメントの不整と運動機能低下との関連について検討が行われ、これらに相互に作用する因子として筋量の低下(サルコペニア)が示唆されている。しかし、解析対象と評価体系に問題があるため、因果関係は証明されていない。 >  本研究では、1)代表者が確立した住民健診をサルコペニア・脊椎アライメントと運動機能をターゲットにしたコホート調査へと拡大しデータベースを構築すること、2)新たに「腰椎単純MRI定量評価システム」を開発して、サルコペニアと脊椎アライメント・運動機能の因果関係を明らかにすること、3)評価基準値の設定を行い、運動機能低下ハイリスク群を選び出すエビデンスを構築すること、の3点を目的とする。 >  この研究によって高齢者のサルコペニア・脊椎アライメント・運動機能低下の因果関係が明らかになり、これらの効果的な予防法の開発につながると期待される。 「展開」を加える。 **例文2**(「背景」に解決すべき課題を加える) > (概要) > 申請者は高齢者が運動プログラムを行うことで、身体機能、健康関連のQOL、身体活動の自己効力感などが向上することを明らかにしてきた。しかし既存の運動プログラムは、指導者側からの一方向での提供型プログラムであり、高齢者のニーズを基にしたものではない。 >  本研究では、高齢者の基礎情報(基本チェックリスト、身体レベル、既往歴、疼痛の有無、家族環境、自己効力感(セルフ・エフィカシー)など)を調査し、さらに高齢者自身の健康に対する意識やニーズを調査し、従来の運動プログラムに教育プログラムを加えた介護予防のための「運動+教育プログラム」を高齢者と共に開発することが目的である。高齢者との共創型介護予防プログラムの開発は、今までにないものであり、サービスを受ける高齢者の自立支援に対しても意義があると考える。 下線と太字をやめ、「展開」がわかりやすくなるよう書き直す。