--- title: "CASE 20: 研究のキーワードが埋もれて重要度が伝わってこない(2)" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第2章 研究目的、研究方法など:概要 case_number: 20 pages: 93-96 images: page_0093.png ~ page_0096.png advice: "理解に役立つキーワードはなるべく冒頭で提示しよう" tags: ["推敲のヒント", "アピールする"] --- # CASE 20: 研究のキーワードが埋もれて重要度が伝わってこない(2) ## アドバイス 理解に役立つキーワードはなるべく冒頭で提示しよう ## どこがよくないか **例文1** > (概要) > 本研究は、日本国内の鳥類および蚊から検出される鳥マラリア原虫のうち、国内で流行している原虫系統を明らかにするために、媒介蚊における鳥マラリア原虫の特定方法を確立して、新たな病原体の侵入および流行の拡大防止につなげることを目的とする。鳥マラリアは、蚊が媒介する鳥類の感染症で、日本では50系統以上の鳥マラリア原虫が報告されている。しかし、その原虫系統が国内で流行している(在来性)かは不明であり、在来性と外来性の鳥マラリア原虫を区別することはできていない。本研究では、PCR法による蚊からの原虫遺伝子の検出に加え、顕微鏡検査により蚊の体内における原虫の発育段階を観察することで、日本産の蚊がベクターとして機能しているかどうかを調べる。これらの成果は、外来性の病原体の侵入経路の特定や、流行予測に必要な基礎データを提供し、希少鳥類の保全管理に役立つと考える。 **例文2** > (概要) > 本研究では、ES細胞の自己複製の獲得と維持における転写因子PCFTの機能を明らかにする。一連の研究から、マウスおよびラット由来ES細胞における、PCFTを介したES細胞の自己複製のメカニズムが明らかとなる。 ## 添削例 **例文1** > (概要) > 本研究は、日本国内の鳥類および蚊から検出される鳥マラリア原虫のうち、国内で流行している原虫系統を明らかにするために、~~媒介蚊における鳥マラリア原虫の特定方法~~を確立して、新たな病原体の侵入および流行の拡大防止につなげることを目的とする。鳥マラリアは、蚊が媒介する鳥類の感染症で、日本では50系統以上の鳥マラリア原虫が報告されている。しかし、その原虫系統が国内で流行している(在来性)かは不明であり、在来性と外来性の鳥マラリア原虫を区別することはできていない。本研究では、PCR法による蚊からの原虫遺伝子の検出に加え、顕微鏡検査により蚊の体内における原虫の発育段階を観察することで、日本産の蚊がベクターとして機能しているかどうかを調べる。これらの成果は、外来性の病原体の侵入経路の特定や、流行予測に必要な基礎データを提供し、希少鳥類の保全管理に役立つと考える。 **例文2** > (概要) > 本研究では、ES細胞の自己複製の獲得と維持における~~転写因子PCFT~~の機能を明らかにする。一連の研究から、マウスおよびラット由来ES細胞における、PCFTを介したES細胞の自己複製のメカニズムが明らかとなる。 **指摘された問題点:** 1. 例文1:下線は不要。大切なキーワード「媒介蚊における鳥マラリア原虫の特定方法」が目立たない。より冒頭に移動する 2. 例文1:「目的」「背景」「方法」「展開」の構成は書かれているが、キーワードがもっとアピールできる 3. 例文2:重要なキーワード「転写因子PCFT」が文章の後ろの方にあるので主題がはっきりしない 4. 例文2:文章が堅い ## なぜよくないのか? 例文1は大切な単語(キーワード)が文章のなかに少々埋もれている。この研究のキーワードは「媒介蚊における鳥マラリア原虫の特定方法」だが、それが目的を説明した文脈であまり目立たない。「目的」「背景」「方法」「展開」ときちんとわかりやすく書かれていて、もちろんこのままでも問題ない。だが、もう少しアピールしたいところである。どうするか? 例文2は重要な研究のキーワード(この場合、「転写因子PCFT」)が文章の後ろの方にあるので主題がはっきりしない。 キーワードは、分野外の読み手でもそれを頼りに本文を読み進めていける手がかりの1つである。しかし、ただ本文中に登場させればよいというのではなく、効果的に使うことが申請書では求められる。そして細かいことだが、文章を書くときには単語の順番にも注意を払うこと、文学的な文章とは異なり、研究に関する文章は重要な単語やキーワードは先にする。 ## どのように改良すればよいか? まず主題となるキーワードを意識しよう。そしてそれをできるだけ文章の冒頭部分に置く、あるいは、冒頭に移動して主語にする。これが重要と認識されやすくなり、審査委員もそれを念頭に読み進めることができるようにするポイントである。 例文1ではキーワード「媒介蚊における鳥マラリア原虫の特定方法」を先にもってこよう。 例文2では「転写因子PCFT」を冒頭に置く。 ## 改善例 **例文1**(下線を削除して、キーワードを前にもってくる) > (概要) > 本研究では、媒介蚊における鳥マラリア原虫の特定方法を確立して、日本国内の鳥類および蚊から鳥マラリア原虫を検出し、国内で流行している鳥マラリア原虫の系統を明らかにする。鳥マラリアは、蚊が媒介する鳥類の感染症で、日本では50系統以上の鳥マラリア原虫が報告されている。しかし、その原虫系統が国内で流行している(在来性)かは不明であり、在来性と外来性の鳥マラリア原虫を区別することはできていない。 >  本研究では、PCR法による蚊からの原虫遺伝子の検出に加え、顕微鏡検査により蚊の体内における原虫の発育段階を観察することで、日本産の蚊がベクターとして機能しているかどうかを調べる。これらの成果は、外来性の病原体の侵入経路の特定や、流行予測に必要な基礎データを提供し、希少鳥類の保全管理に役立つと考える。 【概要】に下線は必要ないので取る。さらに2つめの「本研究では、」のところで改行を入れると、もっと読みやすくなる(case21~23、申請者のギモン30参照)。 **例文2**(キーワードを前にもってくる。少しやわらかい表現にする) > (概要) > 本研究では、転写因子PCFTの機能によって、ES細胞がどのようにして自己複製能を獲得するのか、そして自己複製能を維持するのかを明らかにする。一連の研究から、マウスおよびラット由来ES細胞における、PCFTを介したES細胞の自己複製のメカニズムが明らかとなる。 例文2は文章が堅く、例えば「自己複製の獲得と維持」など印象に残らない。文章は人に説明するように書く、そうすると堅い文章を避けることができる(case12参照)。