--- title: "CASE 13: キーワードの意味がわからない" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第1章 総論 case_number: 13 pages: 65-68 images: page_0065.png ~ page_0068.png advice: "研究のキーワードが一般的ではない場合、その意味を最初に文章で定義しておこう" tags: ["はっきりと", "具体的に"] --- # CASE 13: キーワードの意味がわからない ## アドバイス 研究のキーワードが一般的ではない場合、その意味を最初に文章で定義しておこう ## どこがよくないか **例文1** ほ乳類視床下部の体内時計によって生体の24時間周期のリズム(サーカディアンリズム)はコントロールされている。申請者が研究の対象としているニューロメジンU(NMU)については、サーカディアンリズムの位相の変化や、時計遺伝子の発現への影響などの詳しい解析はなされておらず、その生理機能はまだ十分に明らかではない。 **例文2** リフレクションは、中教審答申中でも「省察」という言葉で登場し、教師の資質・能力の育成に不可欠なことが指摘されている。しかし、教師自身の自己探求を支えるリフレクションへの志向性形成をどのように育てればよいのかは、まだ十分に研究されていない。 ## 添削例 **例文1** > ほ乳類視床下部の体内時計によって生体の24時間周期のリズム(サーカディアンリズム)はコントロールされている。申請者が研究の対象としている**ニューロメジンU(NMU)**については、サーカディアンリズムの位相の変化や、時計遺伝子の発現への影響などの詳しい解析はなされておらず、その生理機能はまだ十分に明らかではない。 **例文2** > **リフレクション**は、中教審答申中でも「省察」という言葉で登場し、教師の資質・能力の育成に不可欠なことが指摘されている。しかし、教師自身の自己探求を支えるリフレクションへの志向性形成をどのように育てればよいのかは、まだ十分に研究されていない。 **指摘された問題点:** 1. 研究のキーワードが説明なしにいきなり出てくるので戸惑う ## なぜよくないのか? どの研究計画でも中心となる単語、つまりキーワードがある、そのキーワードが当該分野の研究者ならまず間違いなく知っているものなら、そのまま説明なしに進めていってよい。医学系の例なら、iPS細胞とかアルツハイマー型認知症とかは誰でも知っているので説明は不要だ。しかし例文1のような「ニューロメジンU」については、よく知られていない。このような場合、キーワードの定義なしで説明を進めていくと、"このキーワードは何?"とフラストレーションを抱えたまま読んでいくので、理解はあやふやになってしまう。 また例文2でも「リフレクション」というキーワードが説明なしに、いきなり出てくるので、読む側は少々戸惑ってしまう。 ## どのように改良すればよいか? あまりポピュラーでないキーワードならば、その意味をキーワードが出てくる段落の最初に文章で定義しておくのがよい。キーワードの要点を簡潔に説明する。できれば一文で説明する。キーワードの説明が長くなるのは避けた方がよい。最初にキーワードの意味が定義されていると、読む側は(ある程度の)心構え(メンタルモデル)ができた状態で読み進めるので理解しやすい。 申請書に使うキーワードの説明が必要かどうかの判断はキーワードに関する研究の頻度で判断すればいいが、判断に迷うときには定義しておけばよい。その方が審査委員にも親切だ。 例文1および例文2では、それぞれ中心となるキーワード「ニューロメジンU」と「リフレクション」について、まず簡単な解説を書いて、その後の背景の説明につなげていく。 ## 改善例 **例文1** > ニューロメジンU(NMU)はオーファン受容体FM3の内因性リガンドであり、摂食抑制作用およびストレス反応を調節する神経ペプチドである。われわれはNMUが視交叉上核に存在し、生体のサーカディアンリズムに関与することを見出した。しかし、NMUによるサーカディアンリズムの位相の変化や、時計遺伝子の発現への影響などの詳しい解析はなされておらず、その生理機能はまだ十分に明らかではない。 **例文2** > リフレクションとは、自己と繰り返し対面して葛藤や気づきを経ながら意識的に自己の意識の変容に向かうことである。リフレクションは、中教審答申中でも「省察」という言葉で登場し、教師の資質・能力の育成に不可欠なことが指摘されている。しかし、教師自身の自己探求を支えるリフレクションへの志向性形成をどのように育てればよいのかは、まだ十分に研究されていない。