--- title: "CASE 10: 指示代名詞が何を指しているのかわかりにくい" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第1章 総論 case_number: 10 pages: 53-56 images: page_0053.png ~ page_0056.png advice: "指示代名詞を使いすぎない。くどくてももとの名詞にすることも検討しよう。どうしても使う場合はどこにかかるか明確に" tags: ["はっきりと", "推敲のヒント"] --- # CASE 10: 指示代名詞が何を指しているのかわかりにくい ## アドバイス 指示代名詞を使いすぎない。くどくてももとの名詞にすることも検討しよう。どうしても使う場合はどこにかかるか明確に ## どこがよくないか **例文1** 心臓の筋肉量とミトコンドリアDNA数が相関すること、また、細胞のゲノムにコードされる心筋由来の転写因子の発現量とミトコンドリアDNA数が相関することから、これらの動態の関連が示唆されているが、その詳細はあまり解析されていない。 **例文2** △Qが閾値を超える加速を行うと、流れが再層流化することが知られており、その時間が長ければ長いほど、流体抵抗の低減効果も高くなる傾向が確認できる。しかし、もっとも高い低減効果を確認した条件では、何故かその期間がそれほどまで長くない。さらに、最も高い低減効果はその他の条件における低減率を大幅に上回っているが、その原因は明らかではなく、圧力勾配△Qのみで再層流化の条件が決定されるわけではないことが分かる。 ## 添削例 **例文1** > 心臓の筋肉量とミトコンドリアDNA数が相関すること、また、細胞のゲノムにコードされる心筋由来の転写因子の発現量とミトコンドリアDNA数が相関することから、**これら**の動態の関連が示唆されているが、**その**詳細はあまり解析されていない。 **指摘された問題点:** 1. 例文1:「これら」「その」がそれぞれ何を指すのか不明確(「とは?」「とは?」) 2. 例文1:「その詳細」が「どちらにかかる?」 3. 例文2:「その」が多すぎる!(「その時間」「その期間」「その他」「その原因」) **例文2** > △Qが閾値を超える加速を行うと、流れが再層流化することが知られており、**その**時間が長ければ長いほど、流体抵抗の低減効果も高くなる傾向が確認できる。しかし、もっとも高い低減効果を確認した条件では、何故か**その**期間がそれほどまで長くない。さらに、最も高い低減効果は**その**他の条件における低減率を大幅に上回っているが、**その**原因は明らかではなく、圧力勾配△Qのみで再層流化の条件が決定されるわけではないことが分かる。 ## なぜよくないのか? 例文1の「これらの動態」の「これら」とは?「心臓の筋肉量とミトコンドリアDNA数」なのか、「心筋由来の転写因子の発現量とミトコンドリアDNA数」なのか?あるいは両方か?さらに「その詳細」の「その」は何か?「細胞のゲノムにコードされる」のは「心筋由来の転写因子」なのか「心筋由来の転写因子の発現量」なのか「心筋由来の転写因子の発現量とミトコンドリアDNA数」なのか?(おそらくは「心筋由来の転写因子」だろう) 例文2も同じく指示代名詞が多い。読んでわかるように、「その」が多すぎる!このようになると、「その」がいったい何を指しているのか、わかりにくい。 いずれも前後の文脈から判断するしかないが、審査委員など読む側にとってはストレスがかかる文章といえる。指示代名詞が多いと、文章が明確にならないし、はっきりしない。 ## どのように改良すればよいか? 指示代名詞は何を指すのか、語句がどこにかかるのか、あいまいにとられないように文章を工夫する。特に指示代名詞を使うときには、それが何を指しているのか明確にわかるようにしなければ審査委員に意図が正しくは伝わらない。細部をおろそかにしない! 例文1の「これら」は「心臓の筋肉量・ミトコンドリアDNA・心筋由来の転写因子の3つの動態」であり、「その」は「どのように関連しているのか」である。この2カ所は指示代名詞を使わない方がよい。 例文2の指示代名詞は、くどいようでももとの名詞を書いておく方がよい。 ## 改善例 **例文1** > 心臓の筋肉量とミトコンドリアDNA数が相関すること、また、心筋由来の転写因子(これは細胞のゲノムにコードされている)の発現量とミトコンドリアDNA数が相関することから、心臓の筋肉量・ミトコンドリアDNA・心筋由来の転写因子の3つの動態の関連が示唆されているが、どのように関連しているのかの詳細はあまり解析されていない。 **例文2** > △Qが閾値を超える加速を行うと、流れが再層流化することが知られており、加速時間が長ければ長いほど、流体抵抗の低減効果も高くなる傾向が確認できる。しかし、もっとも高い低減効果を確認した条件では、何故か加速時間がそれほどまで長くない。さらに、最も高い低減効果はその他の条件における低減率を大幅に上回っているが、原因は明らかではなく、圧力勾配△Qのみで再層流化の条件が決定されるわけではないことが分かる。