--- title: "CASE 09: 具体的に何を指しているかがわからない" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第1章 総論 case_number: 9 pages: 49-52 images: page_0049.png ~ page_0052.png advice: "具体的な例をあげて詳細に書く" tags: ["具体的に"] --- # CASE 09: 具体的に何を指しているかがわからない ## アドバイス 具体的な例をあげて詳細に書く ## どこがよくないか **例文1** 申請者らの結果は、末梢血中の骨芽細胞系細胞が炎症性サイトカインにより活性化されることで、象牙質上に石灰化組織が形成されたことが予想されるが、末梢血中の骨芽細胞系細胞が他の因子により活性化され、石灰化組織の形成がさらに増大するなどという機能について調べた報告はない。 **例文2** そのため、痛みや異常感を呈するそれぞれの症例に対する薬物療法の解析を行うことで、処方を行う際の指標となる因子の同定を試みる。 **例文3** 仮想立体モデル化は、効率化や経費削減だけでなく人の心を豊かにする製品作りに大きく貢献し重要である。 ## 添削例 **例文1** > 申請者らの結果は、末梢血中の骨芽細胞系細胞が炎症性サイトカインにより活性化されることで、象牙質上に石灰化組織が形成されたことが予想されるが、末梢血中の骨芽細胞系細胞が**他の因子**により活性化され、石灰化組織の形成がさらに増大するなどという機能について調べた報告はない。 **指摘された問題点:** 1. 例文1:「具体的にどのような因子なのか?」(「他の因子」が不明確) 2. 例文1:「主語はどれ?」(主語が不明確) 3. 例文2:「指標となる因子」が具体的に何を指すのか不明 4. 例文3:「抽象的!具体的な研究の意義は?」(「人の心を豊かにする」が抽象的) **例文2** > そのため、痛みや異常感を呈するそれぞれの症例に対する薬物療法の解析を行うことで、処方を行う際の**指標**となる因子の同定を試みる。 **例文3** > 仮想立体モデル化は、効率化や経費削減だけでなく**人の心を豊かにする**製品作りに大きく貢献し重要である。 ## なぜよくないのか? 例文1の「他の因子」や例文2の「指標となる因子」とは何か、審査委員にはわからない。 例文3は、「人の心を豊かにする」という部分が抽象的、研究は具体的なものである。「人の心を豊かにする」ことは、あまりに広い概念で、審査委員によってその意味は異なるだろう。 「~の基礎研究を行う」と書いている申請書はしばしばあるが、単に「基礎研究」といってもたいへんに研究範囲が広く、このままでは抽象的なイメージしかもつことができない。もっと具体的に書くこと、申請しようとしている研究ならいくつかの例をあげられるはずだ。申請書を書いている申請者にはわかっていても、審査委員にとっては「他の因子」や「指標となる因子」から想像する対象はバラバラである、審査委員によって受けとり方が異なってしまう。 ## どのように改良すればよいか? 「他の因子」や「指標となる因子」について、これが何を指すのか具体的な例をあげて示す。例えば「他の因子」であれば「炎症性サイトカインなどの因子」「炎症性サイトカイン」、「指標となる因子」であれば「痛みの頻度」「しびれの強さ」など、そうすると因子がある程度限定されて、読む側にも対象がはっきりとする。また具体的な研究の応用や展開、例えば何に役立つのかをしっかりと書く。 例文3の場合、「人の心を豊かにする」の言い換えとして、「それぞれの人に応じたさまざまなオーダーメイドの製品」という説明もあるだろうし、「誰もが使いやすいユニバーサルデザインの製品」という説明もあるだろう。こうした具体化の方向性の違いによって申請書のオリジナリティができていく。 ## 改善例 **例文1** > 申請者らの結果は、末梢血中の骨芽細胞系細胞が炎症性サイトカインにより活性化されることで、象牙質上に石灰化組織が形成されたことが予想される。しかし末梢血中の骨芽細胞系細胞が炎症性サイトカインなどの因子により活性化され、石灰化組織の形成がさらに増大するという現象について調べた報告はない。 なお、「調べた報告はない」の主語は「骨芽細胞系細胞」なのか、「石灰化組織の形成」なのかわからない、という問題もあった。並列した文章で主語が変わるのは文章の流れを妨げ、文章をわかりにくくする。並列した文章では主語が同じになるように注意するか、あるいは文章を2つに分ける(例文1は文章を2つに分けている)。 **例文2** > そのため、痛みや異常感を呈するそれぞれの症例に対する薬物療法の解析を行うことで、処方を行う際の指標となる因子(痛みの頻度やしびれの強さなど)の同定を試みる。 **例文3-a** > 仮想立体モデル化は、製造の効率化や経費削減だけでなく、多種多様な製品作りに大きく貢献し重要である。 **例文3-b** > 仮想立体モデル化は、製造の効率化や経費削減だけでなく、だれでもが使いやすい製品作りに大きく貢献し重要である。