--- title: "CASE 07: 美しくない申請書は読むのが苦痛(2)" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第1章 総論 case_number: 07 pages: 41-44 images: page_0041.png ~ page_0044.png advice: "審査委員の目を意識して、常に読みやすいかどうか考えながら工夫しよう" tags: [] --- # CASE 07: 美しくない申請書は読むのが苦痛(2) ## アドバイス 審査委員の目を意識して、常に読みやすいかどうか考えながら工夫しよう ## どこがよくないか (概要) 抗血小板薬によって心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが低下することが大規模調査で明らかになっている。しかし血小板に対してより高い特異性を有し、副作用の少ない薬剤の開発のためには、ADPレセプターより下流に位置する血小板凝集のシグナル分子をターゲットにする必要がある。その候補分子のひとつが、血小板の膜表面上のインテグリンの活性化に関与しているRap1であるが、その詳細な機能については不明である。 本研究の目的は、Rap1が関わるシグナル伝達経路において、血小板内顆粒の放出反応に関与するタンパク質とその機構を明らかにすることである。これによって、新しいメカニズムの抗血小板薬の開発につながり、心筋梗塞や脳梗塞の予防・治療に貢献できると考える。 (本文) 【本研究の学術的背景】 わが国においては悪性新生物、心疾患、脳血管疾患が死因の第1位から第3位を占める。そのうち、死因の第2位、第3位を占める心疾患、脳血管疾患は血管障害および血栓形成に関わる疾患という共通点があり、なかでも心筋梗塞や脳梗塞などの虚血性疾患は人口の高齢化や食事の欧米化により近年増加の傾向にあり、その死亡者数の合計は悪性新生物による死亡者数に匹敵するため、これらの疾患についての基礎研究には大きな関心が払われなければならないものと考えられる。 虚血性疾患の病因は動脈硬化などの血管病変に加え、血小板や凝固系、線溶系などが関与した血栓形成反応が直接的な原因となっている。アスピリンなどの抗血小板薬によって血栓形成反応を阻害することで心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが低下することが欧米での大規模調査で明らかになり、現在、より有効な抗血小板薬を求めて多くの研究が進められている。 【申請者のこれまでの研究成果】 我々の研究室では1989年にコラーゲンとの反応性を欠損している患者の血小板より、血小板糖タンパク質のGPVIを初めて同定するとともに、GPVIがコラーゲンレセプターとして機能していることを示した。GPVIがそのリガンドであるコラーゲンと結合し、その情報は血小板内へ伝えられて血小板中に存在する顆粒の放出を引き起こし、顆粒中に含まれていたADPがさらに血小板膜表面上に存在するADPレセプターを介して周囲の血小板を活性化し、血小板の凝集反応が進行していく。抗血小板薬として以前より使用されてきたチクロピジンと比較して、より副作用が少ない優れた抗血小板薬として本年より国内承認が下りたクロビドグレル、2007年販売開始予定のプラスグレルはともにADPレセプターをターゲットとした薬剤であるが、抗血小板薬として、血小板に対してより高い特異性を有し副作用の少ない薬剤の開発のためにはADPレセプターより下流に位置する血小板凝集のシグナル伝達に関与する分子をターゲットにする必要があると考えている。 ## 添削例 > (概要) > > 抗血小板薬によって心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが低下することが大規模調査で明らかになっている。しかし血小板に対してより高い特異性を有し、副作用の少ない薬剤の開発のためには、ADPレセプターより下流に位置する血小板凝集のシグナル分子をターゲットにする必要がある。その候補分子のひとつが、血小板の膜表面上のインテグリンの活性化に関与しているRap1であるが、その詳細な機能については不明である。 > > 本研究の目的は、Rap1が関わるシグナル伝達経路において、血小板内顆粒の放出反応に関与するタンパク質とその機構を明らかにすることである。これによって、新しいメカニズムの抗血小板薬の開発につながり、心筋梗塞や脳梗塞の予防・治療に貢献できると考える。 > > (本文) > > 【本研究の学術的背景】 > > わが国においては悪性新生物、心疾患、脳血管疾患が死因の第1位から第3位を占める。(中略)...ADPレセプターより下流に位置する血小板凝集のシグナル伝達に関与する分子をターゲットにする必要があると考えている。 **指摘された問題点:** 1. 太字 -- 見出しの太字が目立ちすぎる 2. 白抜き文字は不要 3. 下線 -- 下線の使用が多い 4. 下線+太字 -- 強調が過剰 5. 図の解像度が低い 6. 行が詰まり過ぎ 7. 下線が多すぎて煩わしく見える 8. 下線+太字 -- 強調の種類が混在 ## なぜよくないのか? 例文はcase06と同じ内容だが、ずいぶんと印象が違うだろう。例文は白抜き文字を使ったり、下線、下線太字などを使って工夫しているが、下線が多すぎて煩わしく見えるし、太字も文中に複数が存在し、種類も混在していてわかりにくい(強調しすぎで、きれいでない)(case11、72、申請者のギモン25~27参照)。 読みやすい申請書の方が印象がよい。読み進めてもらえても心証が悪ければ評価は低くなりやすい。 ## どのように改良すればよいか? 申請書はきれいに仕上げよう。きれいでない申請書にはほとんど共通のパターンがある(case06参照)。 例文は、本文を「ヒラギノ明朝Pro」、見出しを「ヒラギノ角ゴPro太字」にし、行間は15ポイント、余白行は8ポイントにしている(申請者のギモン2、15、16参照)。図がクリアでないので解像度の高いものに差し換える(申請者のギモン17参照)。 ## 改善例 > 【本研究の学術的背景】 > > わが国においては悪性新生物、心疾患、脳血管疾患が死因の第1位から第3位を占める。そのうち、死因の第2位、第3位を占める心疾患、脳血管疾患は血管障害および血栓形成に関わる疾患という共通点があり、なかでも心筋梗塞や脳梗塞などの虚血性疾患は人口の高齢化や食事の欧米化により近年増加の傾向にあり、その死亡者数の合計は悪性新生物による死亡者数に匹敵するため、これらの疾患についての基礎研究には大きな関心が払われなければならないものと考えられる。 > > 虚血性疾患の病因は動脈硬化などの血管病変に加え、血小板や凝固系、線溶系などが関与した血栓形成反応が直接的な原因となっている。アスピリンなどの抗血小板薬によって血栓形成反応を阻害することで心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが低下することが欧米での大規模調査で明らかになり、現在、より有効な抗血小板薬を求めて多くの研究が進められている。 > > 【申請者のこれまでの研究成果】 > > 我々の研究室では1989年にコラーゲンとの反応性を欠損している患者の血小板より、血小板糖タンパク質のGPVIを初めて同定するとともに、GPVIがコラーゲンレセプターとして機能していることを示した。