--- title: "CASE 05: 概要と本文で研究目的が異なる" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第1章 総論 case_number: 05 pages: 33-36 images: page_0033.png ~ page_0036.png advice: "「概要」と「本文」の研究目的がはっきりと同じ内容だとわかるようにすること。完全に同じ文章でもよい" tags: ["ふさわしく", "推敲のヒント"] --- # CASE 05: 概要と本文で研究目的が異なる ## アドバイス 「概要」と「本文」の研究目的がはっきりと同じ内容だとわかるようにすること。完全に同じ文章でもよい ## どこがよくないか ### 例文1 **(概要)に書かれた研究目的** 本研究は、地域で展開されている自治会活動の事例を分析することで、住民主体の地域づくりを推進するためのコミュニティワークの要素や方法について明らかにする。 **(本文)に書かれた研究目的** 本研究の目的は、地域の自治会活動における住民の主体形成の構築プロセスについて、地域で行われている福祉実践の事例を分析を通して明らかにすることである。 ### 例文2 **(概要)に書かれた研究目的** 本研究は腫瘍内の硫黄代謝細菌群を定量化し、硫黄代謝細菌群の多い腫瘍における腫瘍関連炎症に関わる分子学的特徴を明らかにする。同時に腫瘍内の免疫細胞も評価し、硫黄代謝細菌群がもたらす抗腫瘍免疫抑制作用を介した腫瘍増殖メカニズムを解明する。 **(本文)に書かれた研究目的** 本研究の目的は、大腸がん治療の新規ターゲットとなり得る、硫黄代謝細菌群が関わる腫瘍増殖メカニズムを明らかにすることである。 ## 添削例 ### 例文1 > 内容は同じなのに異なる研究目的にみえる > > **(概要)に書かれた研究目的** > > 本研究は、地域で展開されている自治会活動の事例を分析することで、住民主体の地域づくりを推進するためのコミュニティワークの要素や方法について明らかにする。 > > **(本文)に書かれた研究目的** > > 本研究の目的は、地域の自治会活動における住民の主体形成の構築プロセスについて、地域で行われている福祉実践の事例を分析を通して明らかにすることである。 **指摘された問題点:** 1. 内容は同じなのに異なる研究目的にみえる ### 例文2 > 概要の研究目的は2つにみえる > > **(概要)に書かれた研究目的** > > 本研究は腫瘍内の硫黄代謝細菌群を定量化し、硫黄代謝細菌群の多い腫瘍における腫瘍関連炎症に関わる分子学的特徴を明らかにする。同時に腫瘍内の免疫細胞も評価し、硫黄代謝細菌群がもたらす抗腫瘍免疫抑制作用を介した腫瘍増殖メカニズムを解明する。 > > **(本文)に書かれた研究目的** > > 本研究の目的は、大腸がん治療の新規ターゲットとなり得る、硫黄代謝細菌群が関わる腫瘍増殖メカニズムを明らかにすることである。 **指摘された問題点:** 1. 概要の研究目的は2つにみえる 2. 本文の研究目的は1つだけ ## なぜよくないのか? 「研究目的」は、申請者が何を「目的」として研究を行うのかを書いたものである。当然、申請書全体にわたって「研究目的」は明確な1つのものであるはずだ。ところが、【概要】に書かれた「研究目的」と【本文】に書かれた「研究目的」が異なるものが実に多い。その異なり方は文章表現が少し違う程度のものから、とても同じ「研究目的」とは思えないものまで、さまざまである。このように【概要】と【本文】に書かれた「研究目的」が異なったものになっていると、審査委員は「研究目的」が何かわからなくなって戸惑ってしまう。 【概要】と【本文】に書かれた「研究目的」が異なったものになっている原因は、【概要】と【本文】を別々に書いているためであることが多い。【概要】を【本文】の要約として仕上げていくと、「研究目的」は同じになるはずだ(もちろん同じ内容だとはっきりわかるなら表現は少し異なってもかまわない)。審査委員は、その日そのときにはじめてその申請書を読む。そのため"研究目的はこれだ"と【概要】でも【本文】でも同じだとはっきりわかるように書いて、印象づけることが大切だ。 例文1は文系の方の例。「事例を分析」することと「住民主体の地域づくり」の順番が、【概要】と【本文】とでは逆になっていて同じ内容なのに異なるものに思えてしまう。 例文2は医学系の方の例。【概要】では「分子学的特徴を明らかにする」と同時に「腫瘍増殖メカニズムを解明する」と2つの「目的」になっているが、【本文】では「腫瘍増殖メカニズムを明らかにする」だけである。 ## どのように改良すればよいか? 【概要】と【本文】の「研究目的」はほぼ同じ文章・表現にしてはっきりと同じ内容だとわかるようにすること。もちろん完全に同じ文章でもよい。「研究目的」は2~3行以内で簡潔にまとめる。【概要】にはスペースがないが、【本文】は「研究目的」にプラスして、どうやって「研究目的」を実現するのか、「研究方法」の進め方などの補足情報を加えればよい。 例文1では【概要】に書かれた文章を活かして書き直す。「事例を分析」し「住民主体の地域づくり」を行うという順番にする。【概要】でも【本文】でも同じ文章でよい。 例文2で中心となる「研究目的」は「硫黄代謝細菌群による腫瘍細胞の増殖メカニズムを解明すること」なので、これをしっかりと示す。他に必要なことは補足情報として【本文】の【研究目的】に書き加える。 ## 改善例 ### 例文1 > **(本文)と(概要)に書かれた研究目的** > > 本研究の目的は、自治会活動の事例を分析することで、住民主体の地域づくりを推進するためのコミュニティワークについて明らかにすることである。 ### 例文2 > **(本文)と(概要)に書かれた研究目的** > > 本研究の目的は、硫黄代謝細菌群によって抗腫瘍免疫がどのように抑制されるのかを明らかにし、硫黄代謝細菌群による腫瘍細胞の増殖メカニズムを解明することである。