--- title: "CASE 04: 概要と本文で研究項目の数が揃っていない" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 第1章 総論 case_number: 04 pages: 29-32 images: page_0029.png ~ page_0032.png advice: "項目数や番号に対応する内容は、申請書のどの部分でも同じになるように書く" tags: ["ふさわしく"] --- # CASE 04: 概要と本文で研究項目の数が揃っていない ## アドバイス 項目数や番号に対応する内容は、申請書のどの部分でも同じになるように書く ## どこがよくないか ### 例文1 **(概要)から抜粋** 本研究の具体的な目的:(1)グレリン受容体に対するナノボディを作製する。(2)作製したナノボディのうちグレリン受容体を活性化するものを選び出す。(3)選択したナノボディを用いてグレリン受容体を活性型に固定する。 **(本文)から抜粋** 研究期間内には以下のことを明らかにする。 (1)アルパカに免疫する抗原のグレリン受容体を昆虫細胞を用いて合成する。 (2)合成したグレリン受容体をアルパカに免役し、リンパ球を得る。 (3)リンパ球からファージディスプレイ・ライブラリを作製する。 (4)グレリン受容体に反応するナノボディをピックアップする。 (5)作製したナノボディのうちグレリン受容体を活性化するものを選び出す。 (6)選択したナノボディを用いてグレリン受容体を活性型に固定する。 以上の方法によって、グレリン受容体の結晶を作る。 ### 例文2 **(概要)から抜粋** 医療ソーシャルワーカーの仕事内容は、高齢者の増加とニーズの多様化のために現状のシステムでは様々な困難が生じている。本研究の目的は、医療ソーシャルワーカーの医療現場における困難を克服するプログラムを開発することである。本研究目的を達成するために、以下の5点の研究を行う。 第1に、医療ソーシャルワーカーの医療現場における困難の内容を精査するために、国内外の先行研究の分析を行う。第2に、第1と並行して、医療現場で遭遇する困難と困難克服方法のケーススタディに向けて医療ソーシャルワーカーへのインタビュー調査を行う。第3に~(以下略) **(2)本研究の目的(本文)から抜粋** 本研究の目的は、医療ソーシャルワーカーの医療現場における困難を克服するプログラムを開発することである。本研究を遂行していく上での具体的工夫は次のとおりである。 第1に、医療ソーシャルワーカーの医療現場で遭遇する困難に関する枠組みを設定するところである。これまでの研究および先行研究から、困難の枠組みとなりうる知見が見出されている。その点も踏まえ、先行研究にはない困難も明らかにしながら研究を行うことで、包括的に困難を探ることが可能となる。 第2に、医療ソーシャルワーカーへのインタビュー調査に基づいて医療現場の困難と困難克服方法を明らかにするが、その際、研究協力者の指導を受けることである。インタビュー調査では、調査する研究者の主観が無意識のうちに影響することがある。そこで、これまでの同様な研究蓄積の多い研究協力者による指導を絶えず受けることで、客観性を高める。 第3に、困難克服方法を具体的行動レベルの指標にし、かつ、成果(アウトカム)を作成する段階に ## 添削例 ### 例文1 > **(概要)から抜粋** > > 本研究の具体的な目的:(1)グレリン受容体に対するナノボディを作製する。(2)作製したナノボディのうちグレリン受容体を活性化するものを選び出す。(3)選択したナノボディを用いてグレリン受容体を活性型に固定する。 > > **(本文)から抜粋** > > 研究期間内には以下のことを明らかにする。 > (1)アルパカに免疫する抗原のグレリン受容体を昆虫細胞を用いて合成する。 > (2)合成したグレリン受容体をアルパカに免役し、リンパ球を得る。 > (3)リンパ球からファージディスプレイ・ライブラリを作製する。 > (4)グレリン受容体に反応するナノボディをピックアップする。 > (5)作製したナノボディのうちグレリン受容体を活性化するものを選び出す。 > (6)選択したナノボディを用いてグレリン受容体を活性型に固定する。 **指摘された問題点:** 1. 概要では3点、本文では6点 -- 概要と本文で研究項目が対応していない。3項目に揃える ### 例文2 > **(概要)から抜粋** > > 医療ソーシャルワーカーの仕事内容は、高齢者の増加とニーズの多様化のために現状のシステムでは様々な困難が生じている。本研究の目的は、医療ソーシャルワーカーの医療現場における困難を克服するプログラムを開発することである。本研究目的を達成するために、以下の5点の研究を行う。 > > **(本文)から抜粋** > > 本研究の目的は、医療ソーシャルワーカーの医療現場における困難を克服するプログラムを開発することである。本研究を遂行していく上での具体的工夫は次のとおりである。 > > 第1に、医療ソーシャルワーカーの医療現場で遭遇する困難に関する枠組みを設定するところである。 > > 第2に、医療ソーシャルワーカーへのインタビュー調査に基づいて医療現場の困難と困難克服方法を明らかにする。 > > 第3に、困難克服方法を具体的行動レベルの指標にし、かつ、成果(アウトカム)を作成する段階に **指摘された問題点:** 1. 概要に5点の研究を行うとある 2. 本文では3点しか書いていない(申請書の他の部分にもなかった) ## なぜよくないのか? 例文1の【概要】では具体的な目的として3点あげているが、【研究目的、研究方法など】の本文中では研究項目として「(1)~(6)」の6点あげており、目的の数が異なっている。 例文2も【概要】では「5点の研究を行う」とあるのに、本文中では3点しか書かれていない。数が合わない! 【概要】と本文中での項目の数が異なると、審査委員は混乱する。 ## どのように改良すればよいか? 研究目的や研究項目を書くときには、その項目の数や番号に対応する内容を、申請書のどの部分でも同じになるように書くこと。 例文1は、基盤研究(C)に応募したもので、研究項目として3点あれば十分(case44参照)なので、6点を整理して3点にまとめる。 例文2では逆に本文の3点に合わせて【概要】を書き換える。 ## 改善例 ### 例文1 > **(概要)から抜粋** > > 本研究の具体的な目的:(1)グレリン受容体に対するナノボディを作製する。(2)作製したナノボディのうちグレリン受容体を活性化するものを選び出す。(3)選択したナノボディを用いてグレリン受容体を活性型に固定する。 > > **(本文)から抜粋** > > グレリン受容体の結晶構造解析のために、アルパカのナノボディでグレリン受容体を活性型に固定できるものを選択し、グレリン受容体と共結晶化させる。以下のように研究を進める。 > > (1)グレリン受容体に対するナノボディを作製する。 > アルパカに免疫するグレリン受容体の抗原は昆虫細胞で合成する。リンパ球からファージディスプレイ・ライブラリを作製し、グレリン受容体に反応するナノボディを選ぶ。 > > (2)作製したナノボディのうちグレリン受容体を活性化するものを選び出す。 > グレリン受容体発現細胞を使って、グレリン受容体を活性化するナノボディをスクリーニングする。 > > (3)選択したナノボディを用いてグレリン受容体を活性型に固定する。 > ナノボディを共結晶化に使って、グレリン受容体の結晶を作る。 ### 例文2 > **(概要)から抜粋** > > 医療ソーシャルワーカーの仕事内容は、高齢者の増加とニーズの多様化のために現状のシステムでは様々な困難が生じている。本研究の目的は、医療ソーシャルワーカーの医療現場における困難を克服するプログラムを開発することである。本研究目的を達成するために、以下の3点の研究を行う。 > 第1に、医療ソーシャルワーカーの医療現場における困難の内容を精査するために、国内外の先行研究の分析を行う。第2に、第1と並行して、医療現場で遭遇する困難と困難克服方法のケーススタディに向けて医療ソーシャルワーカーへのインタビュー調査を実施する。第3に、困難克服方法をプログラムとして活用できるように、行動レベルの指標を作成し、困難克服によってもたらされる成果(アウトカム)を特定する。最終的に得られた結果を総合して、有効性かつ実用性のある困難克服プログラムを開発し、マニュアルを作成する。 > > **(2)本研究の目的(本文)から抜粋** > > 本研究の目的は、医療ソーシャルワーカーの医療現場における困難を克服するプログラムを開発することである。本研究を遂行していく上での具体的工夫は次のとおりである。 > > 第1に、医療ソーシャルワーカーの医療現場で遭遇する困難に関する枠組みを設定するところである。これまでの研究および先行研究から、困難の枠組みとなりうる知見が見出されている。その点も踏まえ、先行研究にはない困難も明らかにしながら研究を行うことで、包括的に困難を探ることが可能となる。 > > 第2に、医療ソーシャルワーカーへのインタビュー調査に基づいて医療現場の困難と困難克服方法を明らかにするが、その際、研究協力者の指導を受けることである。インタビュー調査では、調査する研究者の主観が無意識のうちに影響することがある。そこで、これまでの同様な研究蓄積の多い研究協力者による指導を絶えず受けることで、客観性を高める。 > > 第3に、困難克服方法を具体的行動レベルの指標にし、かつ、成果(アウトカム)を作成する段階において、医療実践家との議論を行うことである。プログラム評価の研究において、プログラム評価の科学性追求を加速させるとともに、医療実践家の参画型協働型研究の必要性が強調されている。そこで、本研究は試行調査によって、有効性あるプログラムを提示することに加えて、現場で使えるように、医療の実践家の意見を最大限に取り入れる。