--- title: "はじめに" book: 科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック 第3版 chapter: 前付け pages: 3-5 images: page_0003.png ~ page_0005.png --- # 第3版のはじめに この「科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック」の第2版が発行されてからこの6月(2023年6月)で早くも4年になる。長くはない期間だが、その間、毎年のように科研費の制度や申請書フォーマットの変更が続いた。その「科研費改革」もほぼ完了し、今後、当分の間は申請書フォーマットの変更はないようだ。 今回の改訂の目的は、現在の申請書フォーマットに対応した構成に変えることと、いくつかの新しいcaseを追加することによって、申請書作成の際により使いやすくすることだ。また、新しいcaseの追加だけでなく、既存のcaseにも理系と文系の例文を追加し、理系文系どの分野の申請者にもさらに役立つようにした。姉妹書の「科研費獲得の方法とコツ」とともに使うことで、申請書の作成時により一層参考になることと思う。 科研費制度の大きな改革はほぼ完了したが、まだ効率化する部分は残っており、(遅ればせながら)今後は審査においてもデジタル化の時代になるようだ。一部の種目では令和6年度公募から、審査において従来の冊子体ではなく、PDFファイルをダウンロードしてタブレット等で行うようになる。いずれは全種目がそうなるのだろう。 このように審査はデジタル化されていくのだが、申請書に記載するように求められている内容自体にはなんら変更はない。デジタル化された一部の種目はカラーで審査されるようになるが、審査委員にわかりやすく書くという点で、書く際に気をつけることは同じである。自分の研究内容を審査委員にきちんと評価してもらえるかどうかだ。ぜひとも科研費を獲得して自分の研究を進めていきたいという研究者のために、本書が役立つことを願っている。 2023年6月 児島将康 --- # 初版のはじめに 先に出版した「科研費獲得の方法とコツ」が長編小説だとすると、今回の「科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック」は短編小説集だ。 この本は、ひととおり書かれた科研費の申請書をよりよいものにしていくために、どのように直していけばよいか、その方法論を豊富な例文を使って解説したハンドブックだ。申請書をゼロから作成するために参考にするための本ではない。 私が姉妹書「科研費獲得の方法とコツ」の初版を出版したのは2010年のことである。幸い、この本は研究者、特に科研費応募の初心者の方々や、応募経験が浅い方々に好評で、多くの方々から役に立ったとの言葉をもらった。また本の出版を契機として、全国のいろんな大学や研究機関で、科研費申請書の書き方についてのセミナーを行ったり、申請書のチェックを頼まれたり、申請者とワークショップでともに勉強したりした。それは非常に得がたい経験であり、私自身おおいに勉強になることが多かった。また私は理系の研究者で、先の本は理系の例文が中心だったにもかかわらず、予想外のことに文系の方にもよく参考にしてもらい、また文系学部しかもたない大学でのセミナーの機会もいただいた。 このような経験から、研究者の方々が申請書の作成において悩む箇所やどうしたらいいのかわからなくなる部分などに、ある共通のパターンがあることがわかってきた。つまり理系文系にかかわらず、申請書の重要なポイントは同じだということだ。それは私の頭で考えたことではなく、実際の研究者の方々との話し合いや申請書のチェックによってわかってきたことである。また、いったん出来上がった申請書について、どこがよくない部分なのか、それをどのようにして改良していったらいいのかなどを参考にできるような本があれば便利だろうということもみえてきた。つまり、自分が書いた申請書にもあてはまる共通のパターンが含まれた例文とその改良法(アドバイス)がまとまっていれば、申請書の自己チェックにおおいに役立つだろう。この本はそのような考えのもとで作成した(ただし、内容は私の独断と偏見も含まれることに注意してほしい。審査が合議である以上、私の考えがすべて正しいとは限らないのだ)。 例文はさまざまな分野の実際の申請書からの抜粋を基本とした。いくつかの例文は私自身の申請書を変更して使ったものもある。科研費の性質上、申請者が特定できないようにかなり変更を加えている。そのため、内容に関しては架空の化学反応・テーマ・語句になっている箇所がある。専門の方々には非常に違和感を感じる例文もあると思うが、ご容赦願いたい。 最後になるが、本書のアイデアを一緒に考えてくれた羊土社編集部の吉田さん、まとめにくい内容を一冊の本にまでもっていってくれた冨塚さん、そして例文のもととなった申請書を使わせていただいた多くの研究者に感謝する。 科研費の採択は年々難しくなってきている。しかし私自身が多くの申請者とワークショップなどで勉強した経験から言えることは、研究計画のアイデアをしっかりもったうえで、きちんと書いていれば、いつか必ず採択されるということだ。この本を参考にして、申請書をよりよいものに仕上げてほしいと思う。皆さんの健闘を祈る。 2016年7月 児島将康