===== Page 34 ===== 第2章 何を・どこに書くか 2.1一節 申請書の原則 #科研費のコツ11伝えてからがスタートライン #料研費のコツ12理解してもらううえで必須の情報は何かを考える #料研費のコツ13 申請書は論文とは違うのです #科研費のコツ14科学的な文章であっても、まとまった「お話」です #科研費のコツ15申請書にはストーリーが必要だ #科研費のコツ 16 デルブリュックの教えを思い出そう 申請書が採択に至るまでには多くの関門があります。本書を手にしているという ことは、最初の関門である「申請書の提出」についてはモチベーション十分と考え てよいでしょう。しかし、申請者を提出した後にも、「申請書を読んでもらう」「申 請者が伝えたいことを審査員に正しく伝え、内容を理解してもらう」といった関門 があり、それらを通過して初めて「申請書の価値を認めてもらう」という最終関門 にたどりつけます。 たとえどんなに素晴らしい研究であっても、審査員に伝わらなければ書いていな いのと同じです。申請書の審査は相対的なものですから、最終段階で他との兼ね合 いで不採択になるのはしょうがないとしても、何がどこに書いてあるのかわからな い、読んでもわからない、といった理由での不採択はもったいないです。 このステップで不採択になるなら、納得できるが 他の理由で不採択なるのはもったいない! 申請書を 提出した 申請書を 読む 申請書を 理解する 申請書を 評価する 着いていない 出していない 読む気に ならない ↓ 読んだが 理解できない 採択 価値が 見出せない 図2.1 不採択 申請書の評価には複数の関門が存在する 34 ===== Page 35 ===== とくに非専門家が審査する申請書においては、「わかりやすい」文章であること が第一に求められます。では、わかりやすい文章とはどんな文章でしょうか? 誰に向けての文章なのかを明確にする 具体的な読者を想定せずに文章を書き始めると、説明が足りなかったり、冗長 だったりして、わかりにくくなります。新聞やブログのように読者がどれくらいの 知識を持っているか予想しにくい場合とは異なり、審査員像はかなり具体的に想定 することが可能です。審査は研究者が担当することがほとんどですし、過去の審査 員が公開されている場合も多いですから、どんな人たちが審査員なのか、知識レベ ルはどれくらいなのかについては事前に調べておきましょう。 ほとんどの場合、審査員はあなたの研究分野の専門家ではありませんが、きちん と説明されれば理解することが可能な経験を積んだベテラン科学者です。そうした 審査員に向けて申請書を書く際には「デルブリュックの教え」を胸に刻みましょう。 ひとつ。聴衆(審査員)は完全に無知であると思え。 ひとつ。聴衆(審査員)は高度な知性を持つと想定せよ。 専門分野に関する説明は丁寧に、ただし余計な情報を詰め込みすぎないようにし、 科学者であれば知っていると想定できることの説明はシンプルに、が基本です。 審査員の目線に立ったシンプルな内容である 論文を読むときと申請書を読むときの違いを考えてみましょう。 論文を読むときは、 ■ 自分が興味を持っている分野の論文を、自分で探し、自分の意思で読み始める ■多少読みづらくても、興味があるので頑張って読もうとする ■ 多少ごちゃごちゃしても、知りたい情報が網羅されている方がありがたいし、 詳しければ詳しいほど暮しい 申請書を読むときは、 ■ 自分の専門とは異なり、とくに興味がある分野でもない申請書が仕事として 割り当てられる ■ とくに興味があるわけでもないので、細かな内容について積極的に知りたい とは思わない ■ 申請書を評価することが目的であるため、要点は整理して書いておいて欲し いし、必要最小限の情報にして欲しい 2.1 節 35 ===== Page 36 ===== 申請書は、あなたが伝えたいことを審査員に一方的に伝えるために書くためのも のではなく、審査員に申請書の内容を理解してもらい、正しく評価してもらうため に書くものです。審査員は、仕事としてしぶしぶ申請書を読んでいるため、そもそ も研究の詳細な内容を知りたいとは考えていませんし、たとえ説明があったとして も専門分野外の内容を十分には理解できません。 審査員としては、申請内容をおおよそ理解し、審査できればそれで十分ですので、 評価に必要となる最低限の情報だけを知りたいと考えています。それ以上の情報は 審査員にとっては不要であるばかりか、審査員をかえって混乱させ、何が重要なの かを見失わせ、読む気を削ぎます。また、理解できないものについては評価できま せんので、どうしても厳しい評価になってしまいます。一方で、内容がシンプルで あれば理解しやすくなり、理解できたものに対して初めて適切な評価がなされます。 同じ理由で、審査員を教育しようとして詳しすぎる説明をするのも逆効果です。 審査員には知りたいというモチベーションはありません。また、難しいことを書く ことで研究内容を高尚なものに見せようとするものも見かけますが、こうした戦略 もほとんどの場合は逆効果です。 文章構成が明快である 物語には起承転結などの「型」があり、論文にも序論(Introductio (Methods)-結果(Results)-考察(Discussion)のような「型」があります うした「型」に沿った文章は、何がどこに書いてあるのか(何をどこに書くべき か)がわかりやすいという点で、書き手・読み手の両者にとってメリットがありま す。 申請書にも「型」は存在しており、学振や科研費などでは何をどこに書くべきか が注意書きとして指示されています。研究費の種目によって順序は前後しますが、 書くべき内容はどの申請書でもほとんど同じです。 この申請書の「型」さえ理解してしまえば、素早くそれなりのレベルで申請書を 書けるようになるのですが、「独自性」や「着想の経緯」、「学術的『問い』」などは 何を書いてよいのかがわかりにくく、慣れない人は苦労しているようです。何を書 くかを明確にしないまま書き始め、気づけば同じような内容が繰り返しになってし まい、せっかくの「型」が崩れてわかりにくくなっている申請書をたくさん見てき ました。各項目で聞かれていることだけに明快に答えることを強く意識してくださ い。 36