--- title: "4.2節 推敲" book: 科研費申請書の教科書 chapter: 第4章 申請書を書いた後に pages: 212-214 images: page_0212.png ~ page_0214.png --- ## 4.2節 推敲 > **#科研費のコツ 107** 早く書け > **#科研費のコツ 108** 枠を決めて収まるように推敲する 文章のブラッシュアップには大きく3つのレベルがあります。基本的には内容を固めてから体裁を整え、最後に微調整をして完成ですが、これらは必ずしも一方通行とはならず、必要に応じて各レベルを行ったり来たりして推敲を繰り返すことになります。 自分でするにせよ、他人と一緒に進めるにせよ、**1回の推敲(添削)で全部を修正することは不可能**です。修正して、全体のバランスを見て、また修正しての繰り返しです。そのため、修正作業にはかなりの時間を必要とします(だから、冒頭の Quick & Dirty が重要なのです)。とくに、初稿に対する修正作業は構成を大胆に変える必要がある場合が多いため、瞬間的にですが、完成度は下がります。締め切り直前に修正作業に入って時間切れで中途半端なものにならないように、早め早めに原稿を完成させることが大切です。 イメージとしては、推敲直後はいったん散らかった状態となり、そこから少しずつ修正されていき、5回か6回で提出できるレベルになる、という感じです。申請書に正解がないので、こだわる人であればもう少し時間をかけて7回か8回くらいを目指す人もいるでしょう。ただし、ある程度以上になると、迷走しだしたり、費用対効果が釣り合わなかったりしてくるので、**10回以上の推敲はよほどのことがない限り不要**です。エイヤと出してしまって、他のことをする方がよいでしょう。 ### 図4.1 推敲回数と完成度の目安 | 推敲回数 | 完成度(目安) | |:---:|:---:| | 0回目 | 0% | | 1回目 | 約30%(初稿完成) | | 2回目 | 約55% | | 3回目 | 約70% | | 4回目 | 約80% | | **5回目** | **95%** | | **6回目** | **97.5%** | | **7回目** | **99%** | | **8回目** | **99%** | ※ 推敲の過程で一時的に完成度が下がる(構成の大幅変更時)こともあるが、回数を重ねるごとに収束していく。5〜6回で提出可能レベル、7〜8回でほぼ完成。10回以上は費用対効果が低い。 --- ### レベル1. 内容(文章の論理構成・展開) 細かい点は目につきやすく、また、修正も楽なので先に手をつけてしまいがちですが、文章の内容や構成が変わってしまえばすべての努力は水泡に帰してしまいます。まずは、細かなところはいったん置いておいて、論理構成に穴はないか、審査員にもっともアピールできるような展開になっているのか、いいたいことをいえているのか、余計なことをいっていないか、などの内容面から検討しましょう。 いずれの方法でも推敲にはそれなりに時間がかかります。推敲の過程こそが本番なので、初稿はなるべく早めに完成させるようにしましょう。 #### 方法1|客観的な第三者に読んでもらう 他の人に読んでもらうのはシンプルかつ効果的な方法です。とくに経験の浅い人にとっては、経験豊富な先達からのフィードバックから得られる気づきは成長を早めてくれるでしょう。依頼する場合には、誤字脱字など細かい点ではなく、内容が理解できたかどうか、論理構成に無理がないか、提案する方法の実現可能性、問題設定の妥当性を中心に教えて欲しいと伝えておきましょう。 完成間際で読んでもらってもよいのですが、細かい調整をした後で文章を書き直したりすると色々ずれたりもしますので、意見は早めにもらっておく方が効率よく推敲できます(p.5 参照)。 #### 方法2|寝かせてから読む 書いた直後は、本人の頭の中ではすべてのロジックがつながっているため、その状態でいくらチェックしても、読み手が理解できるかどうかの判断はできません。文章を書き上げたら、**2〜3日程度は申請書から離れて**凝り固まった思考をリセットしましょう。そして、再び申請書を読む際には、自分の申請書ではなくライバルの申請書のつもりで極力否定的に読み、どのような視点が不十分かについて自分で自分の書類に突っ込みを入れるようにします。この方法は、ある程度の経験がないとうまくいきません。 --- ### レベル2. だいたいの体裁(フォントサイズ、行間、図表、など体裁全体) 内容が決まったら、規定の書式に収めていきます。フォントサイズや行間を微調整してページ数ぴったりにし、併せて、表現や内容も調整します。 #### 目を細めて見る 紙面が黒すぎたり、白すぎたりしませんか? 漢字・かな比がおかしい可能性や余白が多すぎる・少なすぎる可能性があります。審査員が頑張って読もうと集中していなくても、流し読みで理解できるような図や内容が理想です。 #### 意識して誤字・脱字を見つける 流し読みでは誤字脱字は見つけにくくなります。 > ほんけゅきんうの けっかだがいくのけゅきうんひはまといしへっいてる ことがわかりしまた。 音読する、文節ごとに逆から読む、指で差しながら読む、ペンで印をつけながら読む、など意識レベルを上げる工夫により、読み飛ばしはかなり減らせます。また、文献リストはとくにスタイルの不統一が起こりがちなので、軽んじずにしっかりチェックしてください。 #### 印刷する 簡単かつ、もっとも効果的なチェック方法です。印刷してペンを片手に読むと、パソコンとは異なる印象を持つでしょう。誤字脱字を見つけやすく全体のバランスもひと目でわかります。 --- ### レベル3. 微調整(行末調整、こまかな表現の修正) 最後に本当に細かいところを微調整します。時間対効果はそれほどよくないかもしれませんが、最後の最後まで諦めたくない人や1%でも可能性を上げたい人はぜひ。 #### 黙読する 自分の視線の流れを意識しながら、申請書を黙読してみましょう。どこかで引っかかって、文章を読み直すようなことがあれば、そこは潜在的にわかりにくいところです。内容が難しすぎるのかもしれませんし、漢字やひらがなが連続して区切りがわかりにくいのかもしれません。いずれにせよ、どこにも引っかかる場所がなくなるまで修正を繰り返すべきです。 人間は極力あたまを使いたくない生き物です。読み手に考えさせることなく意見を受け入れてもらうのが極意です。そのためには、読みやすいことが何よりです。 #### 調整で読みやすく 行末調整したり細かな表現を修正したり、段落間や見出し間の微調整を行います。 #### 図表を作り直す 図表のクオリティを上げることは美しい申請書にするための比較的簡単な方法です。適当に四角や矢印を組み合わせるのではなく、デザインを意識して作ってください。