--- title: "3.1節 図表のテクニック" book: 科研費申請書の教科書 chapter: 第3章 申請書のデザイン pages: 161-166 images: page_0161.png ~ page_0166.png --- # 第3章 申請書のデザイン 申請書の内容が良ければ評価される、という考えは甘く、申請書の見せ方、読ませ方はとても重要です。極論すれば、内容が普通であっても、美しく作られた申請書はそれなりに読めてしまい、評価されてしまいます。これは、申請書の審査には「読む気になるか」「理解できるか」「評価できるか」と複数の段階があるなかで、読まれない申請書はそもそも内容の良し悪し以前の段階で評価の枠から漏れてしまうからです(図2.1参照)。 内容が良いことはもちろんですが、見せ方や読ませ方(これを申請書のデザインと呼ぶことにします)にも同じように時間をかけるべきであり、これらはちょっとした工夫で劇的に改善し、即効性があります。 # 3.1節 図表のテクニック > **#科研費のコツ 69** 科研費の審査はカラー対応したグレースケール > > **#科研費のコツ 70** 図表はすっきりと豊かに > > **#科研費のコツ 71** ラベル名の長い棒グラフは横倒しに > > **#科研費のコツ 72** 興味がなくても分野外でも、「理解できてしまう」図にする > > **#科研費のコツ 73** 幅いっぱいの図は区切りとして使う > > **#科研費のコツ 74** 回り込む文章の読みやすさまで考えて > > **#科研費のコツ 75** テキストボックスの余白は削れ > > **#科研費のコツ 76** 図の位置 ### 図表の貼り付け・挿入 いろいろな図表の貼り付け・挿入方法がありますが、PowerPointで図を作成し、そのスクリーンショットを貼り付ける方法が手軽でおすすめです。Wordで複数の図形を扱うと、その後の操作が大変です。 基本的なWordの使い方が中心ですので、知っている人は飛ばしても構いません。 ### 1. PowerPointで実際のサイズで図を作成する Wordに貼り付ける実際のサイズですべての図をPowerPointで同じように作っておくと、図の大きさや図中文字の大きさを揃えることが簡単になり、美しい見た目になります。図番号と説明文(legend)以外の図中文字を画像にしてしまうことで扱いやすくします。 > **図3.1:** 申請書の幅の35〜40%(60〜70mm)もしくは申請書の幅の100%(177mm)で図の横幅を統一すると美しい。実際のサイズで図を作っておく。 ### 2. 図として保存、またはスクリーンショットを貼り付ける PowerPointで作った図をそのままコピー・ペーストすると図形のままコピーされてしまいますが、Wordでは図形を扱いづらく、図を画像として扱う方が便利です。 「図として保存」で図を保存すると解像度が低くなってしまったり(初期設定では96 dpi)、グループ化によって意図しない余白ができたりしてしまいます。こうした場合、スクリーンショットを利用することで簡単に十分な解像度の画像を得ることができます。 **手順** 1. PowerPoint上で作成した図をディスプレイいっぱいに拡大して表示する 2. 指定した範囲をスクリーンショットする(Windowsなら、切り取り&スケッチなど) 3. スクリーンショットした画像をWordに貼り付ける 4. 図を選択し、[図の形式]タブ→[文字列の折り返し]または[レイアウトオプション]から、[四角形]か[上下]を選択する 5. 図を選択し、[図の形式]タブ→[サイズ]から幅を整数値で入力する この方法では、図の大きさを完全に同一にすることは困難です。ただし、もともと同一のサイズで作っていた図を同一の倍率で拡大してスクリーンショットを撮るため、図の大きさはほとんど狂いません。高さを変更したい場合は作図からやり直してください。 ### 3. トリミング Word上でも挿入した図にマージンを設定できるので、図のスクリーンショットを撮る際には余白を設けず、ギリギリのサイズで切り抜く方がよいです。 たとえばWindowsの標準ソフトである「切り取り&スケッチ」の場合、スクリーンショット後の画面で画像のトリミングを選択し、トリミングを実行し、適用(✓)を押すことで目的を達成できます。 Wordの場合は、図を選択し、[図の形式]→[トリミング]から図形のトリミングを行えます。こちらの方法の場合、トリミングされた部分は表示上見えなくなっているだけで、データとしては残っているのでファイルサイズが大きくなりがちな点は注意が必要です。トリミングした部分のデータを破棄したい場合は、[図の形式]→[調整]→[図の圧縮]→[圧縮オプション]の「図のトリミング部分を削除する」にチェック(✓)を入れることで削除されます。 PowerPointで作った複数の図をまとめてスクリーンショットし、Word上で必要な部分だけをそれぞれ切り取れば、完全に同一の倍率で拡大縮小をすることも可能です。 > **図3.2:** 「文字列との間隔」として図形の外側にマージン(余白)が設定されているので、図形そのものに余白は不要。図を切り抜いて貼り付ける際には、余白なしがその後の調整をしやすい。 > **図3.3:** スクリーンショットソフトの機能でトリミングする(Windowsの切り取り&スケッチの場合) > **図3.4:** Wordの機能でトリミングする ### 図の挿入位置とサイズ 申請書の本体はあくまでも文章であり、図は文章を理解するための補助資料です。そのためには、図のサイズはなるべく統一して本文を読みやすくするとともに、黙読の流れを断ち切らないような場所に配置することが重要です。本書では図のサイズを2種類に限定することで、統一感を持たせています。 #### 申請書の幅の35〜40%(60〜70 mm) 図の横幅が広いと優先すべき本文が短く折り返されてしまい、読みにくくなってしまいます。図の形は比較的調整が効くので、**図の幅を60〜70mmで固定して、申請書の右端に配置します**。こうすることで、行頭だけでなく行末も揃うので、読みやすくなるとともに申請書に統一感が生まれます。 申請書全体を通して同じ幅の図を用いるのが理想的ですが、最低でも同じページ内の同じようなサイズの図については、幅を揃えるようにしましょう。これだけのことで見た目の改善効果は著しく、非常に効果的です。 #### 申請書の幅の100%(176 mm) 文章を視覚的に区切ることができる、**横幅いっぱいの図**も効果的です。この場合は大見出しの最後や段落最後の内容的にキリのよいところに配置するとよいでしょう。その分どうしても図の縦の長さを抑えなければいけないので、図の配置や説明文の位置は工夫する必要があります。 ### 図やイラストは申請書用に作り直す 図を作る際に、論文や教科書からの図をそのまま用いたり、フリーイラスト素材を用いたりする人も多いですが、統一感を生みにくく美しくありません。ほかにも、 - 著作権を考える必要がある - 異分野の審査員にとって、論文からとってきた英語の図表は理解しにくい - 申請書を(おおよそ)理解するためにピッタリの図やイラストはほぼ存在しない - 図中文字の大きさを揃えながら図やイラストの横幅を調節することは難しい - 論文からとってきた図やグラフの図中文字は小さく読みづらい(読めない) など多くのデメリットがあります。 申請書を(おおよそ)理解するうえで必要最小限の情報だけを示す図やイラストを、**申請書のためだけに作り直す**ことのメリットはかなり大きいです。 **表3.1**のように、論文の図と申請書の図は基本的なコンセプトが異なります。とくに情報量の違いには注意してください。作図に必要な元のデータが手元にある場合は、それを用いて申請書用の図表を作り直すことを考えましょう。また論文ほど正確性を要求されるわけではないので、元のデータがなくても極力同じになるようにトレースすればよく、かなり自由に図表を作ることが可能です。 #### 表3.1 申請書と論文の違い | | **申請書** | **論文** | |---|---|---| | **情報量** | 仕事としてしぶしぶ読んでいるので、必要最低限の情報でよい | 知りたくて読んでいるので、情報が多いのは歓迎 | | **理解のしやすさ** | 論文ほど時間をかけて読まないので、主張をひと目で理解したい | コントロールや検定、網羅性など形式が整っている必要がある | | **図の大きさ** | 狭い紙面に押し込むので、図はオリジナルよりも小さくなりがち | サイズが決まっており、編集段階で調節される | | **カラー** | 基本はグレースケール | 必要であればカラーを選択可能 | | **書き込み** | →を書いたり、文字による補足説明を入れたりすることも可能 | しない | 細かな図の描き方についてはここでは割愛しますが、PowerPointを用いる方法が簡単で、トレース、曲線および頂点の編集、パスを開くあたりが使いこなせると作図の幅が広がります。 ### 図の色 > **【Q2202】** 研究計画調書の記載にあたって、強調したい部分にアンダーラインを付したり、カラーの図表を挿入したりすることは構いませんか? > > **【A】** 構いませんが、審査に付される研究計画調書は全てグレースケールでモノクロ印刷されたものになります(国際先導研究を除く)。したがって、あらかじめモノクロ印刷した研究計画調書で確認してから応募されることをおすすめします。 > > *参考 科研費 FAQ(令和4年8月版)* > 申請内容ファイルを含む申請書一式はモノクロ(グレースケール)印刷を行い審査委員に送付するため、印刷した際、内容が不鮮明とならないよう留意してください。 > > *参考 特別研究員 申請 作成要領* このように、科研費・学振の申請書はグレースケールで印刷され、審査されることが繰り返し強調されています。FAQを読むとわかるように、カラーのpdfで申請書を提出することに問題ありませんし、申請書の一部は提出したpdfがそのまま審査員に回されるケースもあるようです。 このため、最良の戦略は、**グレースケールで印刷されたとしても耐えられることを確認したカラー版の図を用意する**ことになります。ほとんどの場合はグレースケール印刷なので、カラー版が審査される可能性を過度に期待してはいけません。 ### 図中文字 フォントの種類にもよりますが、**8pt程度がストレスなく読める下限**です。頑張れば6ptでも読めますが、老眼になりつつある審査員に対して、本当にそのサイズのフォントで提出しますか? 1ptは約0.35mmなので、「8ptだと2.8mm」「6ptだと2.1mm」の文字の大きさです。 また、申請書は印刷されて審査員に送付されるので、小さすぎるフォントはつぶれてしまい画面上で見ていた時以上に読みにくくなります。 **印刷したときに読めるかどうか、読む気になるかどうかはとても重要です。** 読んでもらえないのであれば、書いていないのと同じです。自分が伝えたいことを一方的に載せるのではなく、審査員に伝わるかどうか、本当に伝える必要があるのかを十分に検討し、余裕をもったフォントサイズになるように内容を吟味してください。これは本文でも同じです。 とくに論文の図をそのまま載せる際に、小さくしたために、縦軸の数字や凡例、ラベル等がまったく読めないケースをよく見かけます。