--- title: "(N) 自己分析・自己PR" book: 科研費申請書の教科書 chapter: 第2章 何を・どこに書くか pages: 148-154 images: page_0148.png ~ page_0154.png --- # (N) 自己分析・自己PR > **#科研費のコツ 65** 自己分析・自己PRはネタ探しから > > **#科研費のコツ 66** 自己分析は首尾一貫させることが大切 ### 「自己分析・自己PR」に迷ったらこう考えよう 「自己分析・自己PR」を言い換えると……**どこに申請者の強みがあるのか、強みを生かしてどのような研究者になりたいか** 学振は業績で差がつかないことが多いので、申請者の「熱い思い」を示す場が設けられています。とはいえ、申請者がどう考えているか、については良いも悪いもなく、こう考えているから採択あるいは不採択、なんてことはありえません。 ある程度の常識的な内容であるならば、いかに論理的に申請者の考えを説明できるか、いかに他の人とは異なるキラリと光るものを示せるかがポイントになります。 #### 具体例 > **(1) 研究に関する自身の強み** > > **主体性と実行力** > 私はかねてより現在の研究テーマに興味を持っていましたが、当時の研究室には専門家がおらず、本研究テーマを進めるにあたって先輩や同僚に相談することもできませんでした。そこで、私は自らのアイデアに基づいて本研究計画を着想し、当時は面識がなかった現在の共同研究先に連絡をとって教えを請いに行きました。現在は、共同研究者として一緒に研究に携わるようになり、これによって研究は飛躍的に進展し、昨年度には学術論文の出版と国際学会での発表が実現しました(業績①、④)。 > これは私の主体性と実行力を示すものであり、本研究においてもこうした能力を発揮することで、研究を強力に推進できると確信しています。 > > **発想力と問題解決力** > 私が取り組む以前の方法では、〇〇〇を1分子レベルで免疫染色することは難しく、実施例はほとんど報告されていませんでした。私は、神経科学分野以外を含めてさまざまな文献や研究結果を綿密に分析した結果、ゼブラフィッシュの〇〇〇で用いられている方法が、現在の課題を解決できることに気が付きました。まったく異なる生物種での実験手法を新たに導入することは大変でしたが、これにより簡便かつ短時間で1分子レベルの免疫染色が可能になり、私自身の研究が進んだだけでなく、研究室全体の研究を大きく進めることに貢献できました。 > > **コミュニケーション力と支援力** > 申請者の所属する研究室では研究テーマが一人ずつ異なっており、お互いがどのような研究をしているのか十分には理解できていませんでした。私は、メンバー間のコミュニケーションを活発化させるために学生同士の定期的なミーティングの場を自主的に設け、進捗報告や意見交換を行うなど、情報共有を徹底しました。また、困難な課題に取り組むメンバーに対しては、個別のサポートや気軽に質問できるような雰囲気づくりに努めました。課題解決に向けて、ディスカッションやアイデアの出し合いを促し、相互理解に向けた環境を作った結果、メンバーが互いに支援し合う土壌が生まれ、課題に対する解決策がより多角的に考えられるようになり、研究の質が向上しました。 > **論文発表** > 1. Smith, J., Johnson, A., & **Suzuki, T.** (2023). The Effects of Exercise on Cardiovascular Health. *Journal of Medicine*, 45(3), 78-92. 査読あり > 2. Johnson, A., Smith, J., & **Suzuki, T.** (2022). The Role of Diet in Preventing Cardiovascular Diseases. *Journal of Nutrition*, 32(1), 45-58. 査読あり > 3. **Suzuki, T.**, Smith, J., & Johnson, A. (2022). Exercise Prescription for Cardiac Rehabilitation: Current Guidelines and Future Directions. *Cardiology Today*, 15(2), 112-128. 査読あり > **学会発表** > 4. **鈴木太一**、田中太郎、山田健太(2023)、運動が心血管健康に及ぼす影響、日本医学学会誌、45(3)、78-92. > 5. 山本健一、**鈴木太一**、田中太郎(2022)心臓リハビリテーションのための運動処方:現行のガイドラインと将来の展望.心臓病学ジャーナル、15(2)、112-128. > **受賞歴** > 6. 日本〇〇学会 第50回大会「高タンパク質食の心疾患リスク」若手優秀発表賞、東京、2021年 > **(2) 今後研究者としてさらなる発展のため必要と考えている要素** > 独自の視点から研究に取り組むことのできる自身の特性をさらに磨き、世界レベルでの研究者となるためには、語学力と分野横断的な知識が必要だと考えています。現在も、英語論文の読み書きやディスカッションに支障のない語学力(TOEIC890点)ですが、今後、海外での発表や国際共同研究を行うためには、より深い議論をする必要があり、まだ十分な語学力ではないと考えています。さらに、独自の視点は関連分野の豊富な知識に裏付けられるものであるため、関連分野の論文を読むとともに学会への参加、ディスカッションを通じてさらに知識を深める必要があります。 ### 種目別のフォーマット #### 学振 - **該当する項目:** 研究遂行能力の自己分析、目指す研究者像等(6、7、8ページ目) - **分量:** それぞれ1ページ程度 - 他の要素と比べて書けるスペースが非常に多い。 - **要素:** (11) 申請者の優位性(11-4, 11-5, 11-6, 11-7) - 業績はどんぐりの背比べになりがちなので、自己分析、自己PRでキラリと光るものを見せられるとよい。 ## 「目指す研究者像」の要素 ### (11-4) 申請者の優位性|研究に関する自身の強み 学振では自己PRを求められます。学振申請書の注意書きには、次の記載があります。 > 記入にあたっては、例えば、研究における主体性、発想力、問題解決力、知識の幅・深さ、技量、コミュニケーション力、プレゼンテーション力などの観点から、具体的に記入してください。また、観点を項目立てするなど、適宜工夫して記入してください。 > なお、研究中断のために生じた研究への影響について、特筆すべき点がある場合には記入してください。 > > *参考 学振申請書中の注意書き* この注意書きに従って、多くの人が「主体性」、「発想力」……と注意書きと同じ順で書くため、あまり差がついていない印象です。そもそも、ここに挙げられている7項目すべてを書くと、一つひとつのエピソードが薄くなるばかりか、あまりにも総花的であり申請者の得意なところがどこなのかが見えにくい文章になってしまいます。 注意書きにも「……などの観点から」とあるように、これらの項目はあくまでも例であり、必ずしもすべてについて書く必要があるわけではありませんし、これに従う必要もありません。 まずは**3つ4つの項目に絞って深い記述**を心がけてください。以下は、書かれがちな内容です。別の内容として書けそうな内容もありますが、何を書いたらよいのか迷う人は参考にしてみてください。別の見方をするとこの辺の内容は被りがちなので、ひと工夫するかまったく新しいエピソードを書いた方が目立つと思います。 #### 主体性 - 〇〇〇の研究は〇〇〇として、世界的に高い評価を受けた。 - 自身が主体的に{研究課題を設定した/研究計画を立案した}。 - 自主的な勉強会を開いている。 - メインの学会以外にも積極的に参加し、{発表/議論}した。 - {分野外/一般}の人に自身の研究を伝える活動に取り組んだ。 #### 発想力 - 新しいアイデアや研究アプローチを考えた(それによって結果を出した) - 他分野での経験・知識が生かされた #### 問題解決力 - 同僚、先輩、指導教員に対して積極的に相談や議論をし、自ら問題解決に動く - 新しい技術を独学で習得した - 自ら解決方策を提案した - 自力で論文を書き上げた #### 知識の幅・深さ、論理的な思考能力 - 授業・入試成績が良い - 数多くの論文を読んでいる - 他分野の研究者との交流 #### 技量 - プログラミング・統計に強い - 数理モデルに強い #### コミュニケーション力 - 一般講演、サイエンスカフェ等で科学者以外への説明能力を養った - 若手の会、サマースクール等で議論をした - 国際学会等で研究成果を発信し、議論した - 批判的な意見であっても良い意見を柔軟に取り入れることができる - 高い語学力とそれが生きた経験 #### プレゼンテーション力 - これまでに〇〇〇回、学会発表を行った - 国際学会で発表し、英語で議論した - 大きな場での発表は反響を呼んだ - 優秀発表賞/ポスター賞などを受賞した #### 熱意 - 早くから研究室に所属し、研究を開始した - 指導教員や先輩に質問し、技術等をすぐに自分のものにした - 学会で積極的に質問する #### コミュニティ・社会への貢献、アウトリーチ - 若手の会の支部長 - 留学生のお世話係を積極的に行った - メディアへの出演 #### 実績 - 〇〇〇で1位をとった(コンテスト、コンペなど) - 研究助成、旅費支援を得た - 論文を発表した ### (11-5) 申請者の優位性|今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素 申請者が自分の能力をどのように自己評価しているかを書くところです。単に欠点や短所を書いただけではネガティブな印象になります。 ここで書く内容は**目指す研究者像と一致させることが重要**で、目指す研究者像(長期)に対して、必要と考えている要素(中期)、特別研究員の採用期間中に行う研究活動の位置づけ(短期)という関係にあります。目指す研究者像に近づくためにはどこを発展させ、どこを克服するのかを明確にしてください。必ずしもオールラウンダーがよいとは限りません。 「更なる発展のため必要と考えている要素」を書く欄は評価書にもあります。必須ではありませんが、内容を合わせておくと、申請者が課題と思っている点と第三者が課題と思っている点が一致していることになり、正しく自己評価できているとの判断につながるかもしれません。 > **ポイント**: 現在の取り組みも書けると◎ > > 今後研究者として必要となる要素を自覚しており、本気で研究者を目指すというのであれば、学振の採択を待たずにすでにそれに取り組んでいるはずです。そうした熱意をアピールするうえでも、必要と考えている要素とそれに向けての取り組みをセットで書ければ最高です。 > **OK** 〇〇〇は〇〇〇であることから、これから申請者が〇〇〇で飛躍するためには〇〇〇が必要である。これに向けて申請者はすでに〇〇〇を開始しており…… ### (11-6) 申請者の優位性|目指す研究者像 どのような研究者を目指すかはひとそれぞれですが、なぜそれを目指すのかの理由は必要です。 現在の申請書にはありませんが、かつては「研究者を目指すきっかけ」がありました。「本研究に申請したきっかけ」という形で聞かれることもあります。 この際に、「自身や身内が病気だから」のような個人的な理由は研究者を目指すきっかけとして書かれがちです。しかし、それだけだと評価しづらく「個人的に興味があるから、知りたいから」では理由になっていません。**学術的あるいは社会的に重要であることと申請者の興味が合致しているから**、としなければなりません。 - 研究は一人ではできず、一緒に研究する人や後継者を教育することも重要であるため、一流の研究者であると同時に一流の教育者でありたい - 0→1のアイデアを生み出せるゲームチェンジャー - 未開の研究領域を自ら開拓できる先駆者(先導者) - 国際的に活躍できる研究者 - {複眼的な/多面的な/多角的な}視点を持つ研究者 - 科学を通じて社会をより良くするための具体的な行動を伴う研究者 また、「基礎と応用・臨床・社会実装の両方ができる研究者を目指す」、「〇〇〇と△△△の両分野で世界の第一線で活躍できる研究者を目指す」などは書かれがちな内容ですが、現実的な目標設定なのか?という点は意識しておく必要があります。能力うんぬん以前に、2人分の人生を生きないと到達できないような目標設定には無理があるといわざるをえません。聞かれているのは限られた時間の中でのリソース配分・方向性の話であり、2倍頑張るとか万能になるといった話とは異なります。 ### (11-7) 申請者の優位性|目指す研究者像に向けて特別研究員の採用期間中に行う研究活動の位置づけ どうしても以下のような書き方になり、ほとんど差はつきません。それでもまったく書いていなかったり、あさっての内容を書いてしまうと評価につながりませんので、10行弱くらいでしっかりと書いてください。 - 目指す研究者像へとステップアップするための{修練/基盤固め}の期間 - 失敗から多くのことを学び、研究者として教育者としての基盤を形成するための期間 - 自らの立ち位置を見定め、今後の研究の方向性を探る期間