--- title: "(L) 研究室の選定理由" book: 科研費申請書の教科書 chapter: 第2章 何を・どこに書くか pages: 133-139 images: page_0133.png ~ page_0139.png --- # (L) 研究室の選定理由 > **#科研費のコツ 61** 研究室の選定理由は逆算で > > **#科研費のコツ 62** PI礼賛に終始しない 学振PDや海外学振ではなぜその研究室を選定したのかの理由を書く必要があります。こういう理由だから良い・悪いというのはありませんが、あまりにも関連が低い分野(宇宙物理の研究者が中世の貨幣史研究を始めるなど)だと、これまでの専門性が生かせないため、高い評価にはつながりません。また、研究者の流動性の観点から、まったく同じ分野で同じような研究をすることは高く評価されない可能性があります。軸足を申請者の専門分野に置きつつも、もう片方の足を別分野に移すくらいがちょうどよいバランスだと思います。 ### 「研究室の選定理由」に迷ったらこう書こう #### 具体例 > **受入研究室を知ることとなったきっかけ、及び、採用後の研究実施についての打合せ状況** > 申請者はこれまで、マウスを用いた認知行動学と電気生理学を組み合わせて研究を展開してきた。こうした手法により、〇〇〇の〇〇〇については明らかになった一方で、個々の細胞のふるまいの可視化や因果関係を検証する実験ができないため、神経細胞を実際に計測しながら活動を操作する必要性を強く感じていた **(10-4)研究の適切性:研究との関連性**。学会発表や論文検索を通じて、こうした研究を行っている研究室を探していたところ、鈴木博士を知った。鈴木博士はAAAや□□□で世界的に有名であり、神経操作の分野で大きな影響をもたらしている **(10-5)研究の適切性:知ったきっかけ、決めたきっかけ**。 > 鈴木博士に連絡をとったところ、認知行動学にも研究を拡大する予定であることを知り、ここでなら申請者のこれまでの知見や経験を生かしつつ、申請者自身も新たな研究分野に挑戦できると考え本研究室を選択するに至った。鈴木博士は、学会や研究会で面識があり、すでに、研究室を何度か訪問し、本研究の内容や進め方について打合せをしただけでなく、ZOOM等を活用した議論を始めてあり、スムーズに研究を開始する準備は整いつつある **(10-6)研究の適切性:打合せ状況**。 > **申請の研究課題を遂行するうえで、当該受入研究室で研究することのメリット、新たな発展・展開** > 鈴木博士の研究室では、行動中の動物における神経細胞を1細胞レベルで可視化しながら神経活動を計測し、操作する実験手法が確立されており、それらの解析技術においても世界で優位性をもっている。さらに、鈴木博士のもとには生物学以外にも情報学、数学、工学など多様なバックグラウンドをもった研究者が集まっており、申請者の研究を発展させる大きな原動力となることが期待されるだけでなく、ここで形成される人脈は、申請者の研究の継続的な発展に寄与すると考えられる。そのため、こうした環境で申請者が研鑽を積むことで、研究者としてさらなる飛躍が可能になるだけでなく、研究室マネジメントを間近で学べる点でも大きなメリットがある **(10-7)研究の適切性:メリット・意義**。 > 鈴木研究室において、細胞レベルでの神経操作と行動神経科学を結びつけることにより、細胞レベルの知見と個体レベルの知見の統合が可能となり、申請者が目指す「細胞から行動までの一気通貫」を体現できる。さらに、情報学等のエッセンスに触れることで、何ができ、何ができないかを知ることにより、適切な共同研究を実施し、研究をさらに大きく飛躍させられると考えている。 #### 一般化例(2つのパターン) > **知りたいこと、したいことをするためには新しい分野に行く必要がある** > これまで申請者は〇〇〇してきた(背景、現在の状況)。しかし、〇〇〇するためには〇〇〇が必要である(そして、それは現在の研究の延長では難しい)(残された課題)。学会や論文で〇〇〇博士の研究を知った(きっかけ)。〇〇〇博士のもとで研究することで〇〇〇を実施できると考えた(アイデア)。訪問、打ち合わせ、研究内容についての議論をし、受け入れ許可を得ている(連絡状況)。以上のことから、申請者の研究を進めるうえで最適な研究室である(まとめ)。 > **申請者が得てきた技術や知見は別の分野でも活用できる** > 申請者は〇〇〇してきた(背景、現在の状況)。こうした方法は〇〇〇や〇〇〇にも応用可能である(考えられる展開)。学会や論文で〇〇〇分野には〇〇〇といった課題があることを知った(きっかけ)。〇〇〇を利用することで、こうした課題に答えを出せると考えた(アイデア)。訪問、打ち合わせ、研究内容についての議論をし、受け入れ許可を得ている(連絡状況)。以上のことから、申請者の技術・知見を活かすことのできる最適な研究室である(まとめ)。 ### 種目別のフォーマット - **該当する項目:** 受入研究室の選定理由(4ページ目) - **分量:** それぞれ0.5ページ程度 - 分量は状況に応じて変更可能だが、どちらも重要なので、極端な配分にならないようにする。 - **要素:** (10) 研究の適切性 ## 「研究室の選定理由」の要素 学振PDと海外学振では注意書きに書かれている内容が微妙に異なりますが、聞かれていることの本質は同じなので、2つを見比べながらその両方を書くとバランスがよくなります。注意書きをまとめると、 - 受入研究者はどんな研究をしていて、その研究は今回の研究計画とどのような関係にあるのか、どうやって知ったのか、受入研究者との意思疎通はできているのか - 他の研究室ではなくその研究室で研究する必要性やメリット について書いてくださいという指示です。 ### (10-4) 研究の適切性|受入研究室での研究との関連性 申請者のこれまでの研究と受け入れ先の研究室での研究がどう関連しているのかを聞かれています。まずは、申請者がどういった分野でどのような研究をしてきたのかを簡単にまとめます。 > **OK** 申請者はこれまで、〇〇〇の研究を行い、〇〇〇を明らかにしてきた。 続けて、どのような研究が必要なのかを書きます。 #### 研究が完結しておらず、継続して研究する必要があると考えている まず、どういった点が未解明のままなのかを書き、 > **OK** しかし、〇〇〇については未解明のままである。 続けてどうすればよいと考えているのかを書きます。ここは研究室の選定理由の話ですから、純粋な研究のアイデアというよりは、 > **OK** これまでの考え方から脱却して新たな〔解析方法/視点〕が必要であると考えた。〇〇〇研究室では、これまでに…… > > **OK** 〇〇〇博士が〇〇〇年に開発した〇〇〇を用いれば、この問題に答えを出せると考えた。 > > **OK** 〇〇〇にある未公開資料を用いることで、より高い精度での解析が可能になると考えた。 のように、その研究室・研究機関で研究する必要性がわかるように書きます。 #### 研究はいったん完結したと考えている これまでの研究で得られた技術やアイデア、知見など申請者の強みがほかにどういったところで活用でき、どのような課題に貢献できるのかを書きます。 > **OK** 〇〇〇は〇〇〇であることから、こうした方法は〇〇〇や〇〇〇にも応用が可能である 続けて受入研究室で行われている研究に関連して、どういった課題に使えると考えているのかを書きます。 > **OK** 〇〇〇分野では、〇〇〇が課題となっており、〇〇〇であることから…… > > **OK** 〇〇〇博士の研究室では長年〇〇〇に取り組んでおり、〇〇〇を〇〇〇するうえで…… 最後に、申請者の研究と受入研究者の研究がどのような関係にあるのかを書きます。 - 申請者のこれまでの〇〇〇に関する研究だけからは到達できない〇〇〇の解明に向けて、さらに研究を発展させることができる。 - 〇〇〇に限らず様々な分野の優れた研究者が日々研鑽している場で申請者が研究を行うことで、様々な分野の博識を広め、〇〇〇研究の新たな課題の発見につながる。 - 〇〇〇を〇〇〇する研究スタイルは本研究と深く関連しており、相乗効果が期待できる。 ### (10-5) 研究の適切性|研究室を知ったきっかけ、決めたきっかけ 受入研究室を知ることとなったきっかけを書く場合には、 - 学会・研究会で知り合った、発表を聞いた - 発表された論文・著書を読んだ - 指導教員が旧知の仲である - 共同研究者である(であった) - 申請者が〔用いてきた/用いる予定の〕方法やアプローチの第一人者・開発者である など、できるだけ申請者が主体的な行動を起こした結果、知ったという感じで書くとよいでしょう。単に紹介してもらった、有名だからだけだと、その研究室である理由がなくなってしまいます。 さらに、受入研究室を知り、最終的にそこで応募しようと決めた理由についても書いておくようにしましょう。 - 〇〇〇であることから、ここでなら申請者の研究を発展させられると考えた - 〇〇〇するのに最高の環境である ### (10-6) 研究の適切性|打合せ状況 受入研究者の下で計画している研究の実施計画について、受け入れてくれるかどうか(席が用意できるか)について書きます。これは、計画している研究を受け入れ研究室では実際にはできない(研究室主催者にその気はない)、席を確保できないなどの不具合がないことを確認するためのものです。 また、本気であればすでに打ち合わせをしているはずなので、それを示すために - 研究室に赴き、直接議論した(研究室も見学した) - ZOOM等で面談し、研究計画について議論した - 学会等で何度か会い、議論した - 共同研究者でありこれまでにも研究内容についての議論をしている - 指導教員と受入研究室の主催者は旧知の仲であり、申請者の研究もよく知っている など、十分にコミュニケーションが取れていることを示します。どう書いたから正解ということはありませんので、正直に書けばよいでしょう。 ### (10-7) 研究の適切性|そこで研究する必要性、メリット、意義 実際には勤務地など研究以外の価値を重視する場合も少なくありませんが、なぜその研究室を選んだのかについては、個人的な事情はなるべく控え、研究を前に進める理由や研究や社会に対する意義を書くようにしてください。よくある理由・意義は以下の通りです。 - 近くに複数の研究機関があり、共同研究を進めやすい環境である。 - 研究室の主催者は研究業界の中心的な人物であるため、分野の研究動向を把握しやすく、基礎研究を進めるうえで有利である。 - 共同研究施設、サービスが充実しているなど、高いレベルでの研究が可能である。 - 研究の最先端であるため、世界中から優れた同世代の研究者が集まっており、多種多様な考え方に触れることのできる点や、共同研究を含めたネットワーク形成に有利である点で優れている。 - ここにしかない独自の資料やデータベース、実験材料、技術、装置にアクセスできるため、研究を進めることができる。 - 過去にも日本人の研究者を受け入れた実績があり、問題なく留学に関わる手続きを進められ、スムーズに研究のスタートを切ることができる。 - 指導教員の教育には定評があり、申請者の研究を導いてくれる。 - すでに長年の付き合いがあり、研究内容もよく理解してくれている。 - 受入研究室が大きな研究プロジェクトに採択されており、そのプロジェクトに申請者が関わることは申請者の研究を進めるうえで有利に働く。 ### (10-8) 研究の適切性|研究室の選定理由(最後のアピール) 科研費は税金が原資ですから、自分の興味を満たすだけでなく、研究分野や社会に対しての貢献があるとなお良いです。 > **OK** こうした理由から、申請者は〇〇〇研究所の〇〇〇博士の下で研究を行い、〇〇〇を発展させるための第一歩を踏み出すことを希望する。他国・多分野の研究者との積極的な交流やさまざまな視点による新たな課題発見を通じて、〇〇〇分野の発展に貢献したいと考えている。 > > **OK** このように、〇〇〇研究室が強みを持つ〇〇〇と申請者がこれまでの研究で培ってきた〇〇〇を融合させることで、新たな研究展開が期待できる。また、〇〇〇研究室で得られる知識・技術・人脈を生かして、〇〇〇研究と〇〇〇治療に大きく貢献したい。 ### 余計なことを書かない、必要なことを書く > **NG** 〇〇〇教授の下で研究させていただく機会を得た のような謙譲表現はやりすぎであり、もっとシンプルに「〇〇〇博士の研究室で研究する」と書けば十分ですし、 > **NG** 〇〇〇博士は〇〇〇賞を受賞している。 > > **NG** 〇〇〇博士の研究室から世界的な研究者が何人も輩出されている。 だけだと、「すごいのは研究室の主催者あるいはそこで頑張った他の研究者らでは」と言われかねず、申請者がその研究室を選ぶ理由としては物足りません。 > **OK** 〇〇〇博士はすぐれた指導者に与えられる〇〇〇賞を受賞していることから、最適な研究指導を受けることができると期待できる。 > →欲をいえば自ら学ぶ姿勢を前に出して欲しいところ。 > > **OK** 〇〇〇博士の研究室から世界的な研究者が何人も輩出されており、こうした卒業生によるネットワークは申請者が今後、この分野で活躍するうえで役立つと期待される。 のように、理由までセットで書いてあると研究室を選定する理由としては納得がいきます。