--- title: "(I) 創造性・将来展望" book: 科研費申請書の教科書 chapter: 第2章 何を・どこに書くか pages: 120-124 images: page_0120.png ~ page_0124.png --- # (I) 創造性・将来展望 > **#科研費のコツ 57** 創造性とはインパクト・展望 > **#科研費のコツ 58** 創造性は3つの視点から考える 申請者の研究を進めることで喜ぶのが申請者だけなら、研究の波及効果は極めて限定的といわざるをえません。申請者だけが嬉しい研究よりも他の人も嬉しい研究の方が高く評価されます。 このように、申請者以外の人たちに対して、これからの研究の方向性や考え方、社会全体に対して良い影響を与える研究は、新たな価値をもたらします。このことを指して「創造的である」「創造性がある」といっています。 ### 「創造性・将来展望」に迷ったら、こう書こう 「創造性」を言い換えると……展望、インパクト、発展性、この研究が最大限うまくいったとき研究分野や社会がどうなればよいと考えているのか #### 具体例 > **本研究の目的および学術的独自性と創造性** > ●[目的] > ●[独自性] > 本研究により、ダイズでのみ深刻なSDSが観察される分子メカニズムを明らかにできれば、FvTox1とFvNIS1遺伝子の機能を特異的に阻害するSDS予防薬の開発にも利用可能であり、ダイズの生産性の向上や、農業における環境負荷の軽減に貢献することが期待される。また、同様のアプローチは、他の作物においても応用可能であり、今後の農業における新しい病害予防技術の研究と開発が進展すると期待される。 > > **(9-3)** 未来の状況|社会への影響 > **(9-2)** 未来の状況|周辺関連分野への影響 #### 一般化例 > **OK** 本研究により〇〇〇が明らかにされれば、〇〇〇{になる/の基盤になる}と期待される。 > **OK** 本研究成果は〇〇〇に対する理解を深めるだけでなく、〇〇〇を〇〇〇するための基盤としても活用されると期待される。 ### 種目別の創造性・将来展望フォーマット **科研費|基盤、若手、スタートアップ** - 該当する項目:本研究の目的および学術的独自性と創造性(2ページ目) - 分量:5〜8行(0.2ページ)程度で1段落 - 科研費では、「研究目的」「独自性・妥当性」「未来の状況」を1つの項目として書き、最後の段落にコンパクトに書く。未来の状況(創造性)よりも独自性・妥当性をしっかり書く方がアピールにつながる。 - 要素:(9)未来の状況 - 当該研究分野・周辺関連分野・社会の中から2つくらいに対して、どのような良い影響を及ぼしうるかを2〜3行ずつ書く。基礎と応用(臨床)、ローカルな効果とマクロな効果のように対比構造をはっきりさせるとよい。 **科研費|挑戦的研究(萌芽)** 明確な該当箇所はありませんが、研究種目の性格上創造性はとても重要ですので、申請書全体を通して説明するよう心がけてください。 **学振** 該当なし。どうしても書きたいならば、特色の一部として「このように大きなインパクトをもたらしうる研究を行うことこそが本研究の特色である」のように書きます。 ## 「創造性・将来展望」の要素 創造性を考えるときには、本研究は、**誰(何)に対してメリットをもたらすのか**、**どのようなメリットをもたらすのか**、の2つを考えるとうまくいきます。自分の研究が自分にとって価値があるのは当然なので、「他の研究者、他の分野、社会に対しても良い影響があることを示してください」と問われていると考えてください。 ### (9-1) 未来の状況|当該研究分野の他の研究者に対するメリット 本研究が成功したら、同じ分野の他の研究者に対してどのようなメリットをもたらすことができるのか?を書きます。これを書くことで自分だけが興味があるのではなく、他の人にとっても興味深いものであることを示し、「みんなが喜ぶ研究=高い価値を持つ研究」であることを示します。 **今回の研究で示す新たな技術・コンセプトは、今後の研究に大きな影響を与える** 学問は時として非連続的に発展します。すなわち、これまでなかった物・できなかったこと・まったく新しい考え方によって、既存の研究に大幅な見直しを迫ったり、まったく新しい方向性が有望であることが示されたりします。 > **OK** 本研究は〇〇〇による〇〇〇というまったく新しい方法で〇〇〇の実現を目指すものである。すでに〇〇〇は示されており、これまで問題となっていた〇〇〇も解決されているため、これにより〇〇〇の精度を飛躍的に高めることが期待される。 > **OK** 〇〇〇によって〇〇〇を制御するというアイデアは、まったく新しい原理による〇〇〇制御アプローチであることから、現在主流となっている〇〇〇や〇〇〇に加えて、新たな選択肢を提供できると期待される。 > **OK** この〇〇〇理論は、〇〇〇と比べてより現実を反映していると考えられることから…… **議論が割れている問題に決着をつけた** 長年のあいだ議論が戦わされてきた問題に決着をつけることができれば、自分の分野だけにとどまらず多くの分野に影響を与えることになります。とくに、長年ということがミソで、それはこれが重要な問題であること、多くの人が関わっており潜在的に興味を持たれやすいことが担保されているのは大きなメリットです。 > **OK** これまで〇〇〇は△△△と□□□の2通りの解釈があり、それを巡ってさまざまな研究がなされてきた[文献]。本研究は、〇〇〇からこの問題に取り組み、おそらく△△△が正しいことを世界で初めて実証した。□□□の根拠とされてきた〇〇〇についても〇〇〇でうまく説明できることから…… ### (9-2) 未来の状況|周辺関連分野に対するメリット **今回の研究で開発する技術・手法は他の分野にも適用可能である** いままでに成されていないことをするわけですから、何かしらの新しいアイデアや技術があるはずです。そうした考え方や手法は他の分野でも利用できないでしょうか?この場合、あまり遠い分野を指摘しても現実的ではありませんので、いいすぎないようにします。 > **OK** 本研究で開発する〇〇〇は〇〇〇という特徴を持つことから、〇〇〇や〇〇〇にも適用が可能である。これを利用することで、〇〇〇の理解がさらに深まることが期待される。 > **OK** 本研究のアプローチは〇〇〇や〇〇〇にも利用可能であり…… > **OK** 〇〇〇を〇〇〇という側面から捉え直すことで、〇〇〇や〇〇〇といった解析も可能となると期待される。 > **ポイント**: 「他の分野にも適用可能である」の幅は広い > > 「他の分野」は当該分野の他の研究という場合もあるでしょうし、たとえば生物学分野の他の研究、あるいはもっと広く理学分野の他の研究の場合もありえるでしょうし、産業分野や医療分野のこともあるでしょう。広い分野の全員に影響を与える成果はそんなにはないはずなので、実際には対象を絞って書くことになるでしょうが、なるべく多くの人にポジティブな影響を与えるものである、と書くことが重要です。 **今回の研究で得たデータや作ったデータベースは他の分野にも活用できる** 研究を進める中で大規模にデータを集めたり、データベースを作ったりすることもあるでしょう。そうしたものは自分の研究そのものや自分の分野の研究を支援するために行うのですが、それらは他の分野の人にとっても有用かもしれません。また、それ単体では価値がなくても、別のものと組み合わせることで価値が生まれることもあります。たとえば、行動データと購買データを結びつけることで、新たなマーケティングが可能になるなどは良い例です。 > **OK** 本研究で得た大規模な遺伝子発現データは、〇〇〇や〇〇〇のための基礎データとしても有用であり、実際にこのデータベースを用いた共同研究も開始している。 > **OK** 本研究では〇〇〇における〇〇〇を網羅的に収集し〇〇〇ごとに分類・整理することから、申請者が着目する〇〇〇以外にも、〇〇〇や〇〇〇といった研究が想定され、本研究分野の進展に大きなインパクトを与えると期待される。 > **OK** 本研究では、同一条件で網羅的に〇〇〇の条件検討を行うことから、得られるデータは機械学習による〇〇〇予測におけるデータセットとしても活用が可能である。 ### (9-3) 未来の状況|社会に対するメリット 社会からの要請を解決するタイプの研究は、研究の意義を書きやすく社会に対するメリットを強調できます。社会に対するメリットは比較的遠い将来の話になりがちなので、漠然と書くのではなく、ある程度以上の具体性をもって書くとよいでしょう。 > **OK** 本研究が対象とする〇〇〇を標的とした治療法の確立は他の〇〇〇へも応用可能であり、将来的に〇〇〇を見据えた〇〇〇につながることが期待できる。 > **OK** また、〇〇〇や〇〇〇阻害薬の創薬につながると期待される。また、〇〇〇を〇〇〇させる〇〇〇療法や〇〇〇開発への応用展開も視野に入れた研究の橋頭保となりうる。 > **OK** 〇〇〇や〇〇〇は世界的に使用されている〇〇〇であり、これらの〇〇〇の〇〇〇メカニズムが明らかになれば、〇〇〇だけでなく〇〇〇においても大きなインパクトがある。 ### 書きすぎない・遠すぎない・微妙すぎない 創造性は、将来展望のことですが、論文の考察で書く展望とは異なります。申請書を書いている時点では、まだ結果が出ていないことに対して「こんな結果が出たら(仮定1)、こうなるだろう(仮定2)」と仮定の上に仮定を重ねている状態です。そのため、どんなことでも書こうと思えば書けますので、展望について熱く長々と語っても、大したプラス評価にはなりません。研究が直接的にもたらす良い効果と、5年程度先の効果を分けて書くとよいでしょう。 > **NG** 本研究が完成すれば人類から食料問題は完全に無くなる。 > **NG** 本研究により、50億年後に太陽に飲み込まれる運命にある地球を救える。 > **NG** 本研究によりがんを完全に撲滅することができる。 ここでは、この研究が大きな成果につながりうることを示せれば十分です。自分の研究テーマの価値について、立ち止まってよく考えてみるだけでなく、第三者に意見を聞くなどもして、研究の価値の本質を見誤らないようにする必要があります。 あまり長く書いても、貴重なスペースを消費するだけでよいことはありません。**1段落程度6〜8行程度でさっと書いて、書きすぎないようにしましょう。**