--- title: "(G) 準備状況" book: 科研費申請書の教科書 chapter: 第2章 何を・どこに書くか pages: 110-114 images: page_0110.png ~ page_0114.png --- # (G) 準備状況 > **#科研費のコツ 55** 準備状況で書けることは決まっている ### 「準備状況」に迷ったらこう書こう 申請者の研究計画がいくら優れていても、研究を行うために必要な機材や資料・材料・環境・人的リソース・技術・時間などが十分でなければ、研究を計画通り実施することは困難です。もちろん「十分に準備しています、やれます」と答える一択であり、微妙なことは書いてはいけません。 予備データはなるべく研究計画に書き、申請者の実績アピールは研究遂行能力に書き、ここは長々と書かないようにしましょう。 #### 具体例 > **本研究の目的を達成するための準備状況** > 本研究で用いるALSモデルマウスは、研究センターにおいて系統が維持されているため、必要な試料の入手が容易であり、すでに手続きを完了している。また、これまでの解析から得た遺伝子発現データの再解析により神経変性や神経保護に関連する遺伝子群を明らかにしており、本研究ではこれらの候補遺伝子を中心に解析を進めることで、効率よく研究を進めることができる。こうした再解析にくわえて、本研究でも新たにRNAseq解析を行う。その解析は申請者自身が行うが、より高度な解析が必要になった場合には、共同研究者の助力を借りることができる状況であり、着実に研究を行える。すでに、メタボローム解析の打ち合わせも進めており、すぐにでも研究を開始できる状況にある。このように、必要な準備は整っており、本研究はスムーズに開始できる。 > > **(8-6)** 研究計画|準備状況(有形) > **(8-7)** 研究計画|準備状況(無形) > **(8-8)** 研究計画|最後のアピール #### 一般化例 > 本研究を実施するうえで必要となる、〇〇〇などの〇〇〇はすでに揃っている。また、〇〇〇に用いる〇〇〇なども〇〇〇済みである。〇〇〇については、〇〇〇大学の〇〇〇博士と〇〇〇する予定であり、すでに打合せも済んでいる。 > 以上のように、本研究をスムーズに開始するための準備はすでに整っている。 > 本学術振興会特別研究員として/領域への参加を通じて/さきがけ研究者として/……さらに研究を加速させたい。 ### 種目別の準備状況フォーマット **科研費|基盤、若手、スタートアップ** - 該当する項目:本研究の目的を達成するための準備状況(基盤C:4ページ目) - 分量:4ページ目の最後 数行程度 - ここに予備データを入れてしっかり書く場合もあるが、背景や研究計画で説明した後なので、あまり長く書かず短くまとめる方がよい。 - 要素:(8)研究計画|準備状況 - 予備データは着想の経緯または研究計画の一部として書き、準備状況では書くにしても予備データの存在を示す程度で十分。一般的には形式的な内容だけの場合がほとんど。 ## 「準備状況」の要素 準備状況で書くべき内容はおおむね決まっており、誰が書いてもほぼ同じ内容です。準備できていることをしっかりとアピールしましょう。 ### (8-6) 研究計画|準備状況(機材・資料・施設・材料など有形のもの) **最低限必要なもの(機材・資料、協力施設、協力者、サンプルなど)が揃っている** > **OK** 本研究で取り扱う〇〇〇や〇〇〇については、すでに〇〇〇しており、本研究計画を速やかに実施できる状況にある。 > →「すぐにでもできるなら、なぜしないのか?」という声が聞こえてきそうなので、そこに対するケアはあるとよい。 > **OK** 本研究を進めるうえで重要となる〇〇〇装置は、所属研究室が占有しており、長期間の計測も支障がない。 > **OK** 研究スペース、電源、共通機器など基本的な研究環境が整っている。 **研究開始前あるいは研究開始後の比較的早い時期に研究の準備が整う見込みが立っている** > **OK** すでに〇〇〇と〇〇〇については〇〇〇を終えており、〇〇〇についても研究開始までには〇〇〇できる見込みである。 > **OK** 本研究の実施に必要な〇〇〇以外の機器については所属研究室あるいは共通機器として利用が可能である。〇〇〇を本研究費で購入することで、〇〇〇は速やかに実施できる。 > **OK** 本研究計画を実施するために必要となる機器はすべて利用可能である。[研究室の拡大に伴い不足する分については追加で購入し、確実に研究を遂行できる環境を整える/しかし、〇〇〇は導入からすでに〇〇年が経過していることから、本研究費で新たに〇〇〇を購入する。] > →すべての機器があり研究できると書いてしまうと、今回の研究費で機器を購入する理由がなくなってしまうので注意。 ### (8-7) 研究計画|準備状況(予備データ・研究の方向性・知見・実績・研究環境・技術など無形のもの) **予備データ、実績など** > **OK** 〇〇〇によって〇〇〇を〇〇〇する方法をすでに確立して{いる/おり、本研究計画を速やかに実施できる}。 > **OK** 〇〇〇をすでに終えており、本研究は〇〇〇から実験を開始できる。 > **OK** すでに、〇〇〇が〇〇〇であることを見出しており、研究の方向性に間違いはない。 > **OK** 〇〇〇の研究にすでに着手している。 > **OK** 〇〇〇の分野で〇〇〇の実績があり[文献]、本研究で行う〇〇〇についても問題はない。 **技術** > **OK** 本研究の基盤となる〇〇〇や〇〇〇の研究の大部分は申請者(ら)のグループで行ってきたものであり、〇〇〇や〇〇〇などの材料はすでに揃っている。 > **OK** 申請者らはこの研究に長年にわたって携わっており、扱いに慣れている(ノウハウが蓄積している)ので、本研究もスムーズに進められる。 > **OK** 今回の研究を進めるために必要な手技はこれまでの研究などで身につけている。 **研究環境・人材** > **OK** 研究に専念する時間を確保でき(てい)る > **OK** 十分なエフォートを割いている(プロジェクト雇用の場合など) > **OK** 独立して研究を遂行することが可能である(若手、学振PDなど) > **OK** {周囲/研究室内/研究所内}に多様なバックグラウンドを持った研究者がおり、{さまざまな視点からのフィードバックを得やすい/共同研究が容易である}。(海外学振など) > **OK** 派遣先の受入教員である〇〇〇博士は指導教員(申請者)と旧知の仲である(だから大丈夫だ)。(海外学振など) > **OK** 研究代表者に加えて、〇名の大学院生と技術補佐員が〇〇〇を担当する予定であり、研究体制も整えられている。 **共同研究** > **OK** {共同研究者と密に連絡を取り合っており/研究の打ち合わせを終えており}、採択後すぐにでも解析を始めることが可能である。 > **OK** すでに共同研究を開始している。 > **OK** {共同研究/研究協力者}の〇〇〇氏とはすでに共著論文を発表しており、本研究の解析についても問題なく実施できることを確認している。 > **OK** {〇〇〇解析については/〇〇〇を明らかにするため}、〇〇〇大学の〇〇〇博士と共同研究を{行う予定である/行っている}。 > **NG** 本研究の遂行に必要なすべての機材は揃っており、研究費だけが不足している。 > →こう書いたところで審査においてプラスに働くことはありません。申請書の性格上、研究費の必要性は自明であり書く必要がないばかりか、印象を悪化させる可能性すらあります。 ### (8-8) 研究計画|最後のアピール > **OK** 以上のように、本研究を速やかに実施するための環境は十分に整っている。 > **OK** したがって、準備状況に問題はなく、研究を円滑に行うことができる。 > **OK** 採択後に本研究をスムーズに開始するための研究体制の構築および機器等の準備を終えている。 > **OK** 申請者は〇〇〇に〇〇〇として参加し、〇〇〇といった成果をあげてきた。 > →新学術領域のように公募での入れ替え時や、実質的に後継として立ち上がった領域の公募の場合には、これまでに参加して成果を上げてきたことを準備状況として書いてもよい(研究遂行能力で書く方が一般的)。 > **OK** 〇〇〇との共同研究を通じて、〇〇〇の研究を加速させたい。 > →新学術領域、学術変革、さきがけなど他のメンバーとの共同研究を期待されているような研究費の場合は書いておくとよい。 > **OK** 申請者は{昨年/今年}に独立した研究室を構えており、〇〇〇〇〇〇については現有の装置で対応可能であるが、〇〇〇などが不足している。研究を効率的に進めるためにも、〇〇〇を強く希望する。 --- > **ポイント**: 申請書の文例の探し方 他人の申請書を目にする機会はそんなに多くはありませんが、たとえ分野が違っていたとしても、人ごとに書き方の工夫があり、勉強になります。ここではどうやったら申請書を見る機会を増やせるかについてのコツを紹介します。 **1. 先輩、同僚、知人に見せてもらう** 研究室内であれば申請書を見せてもらうハードルは低いですし、そうでなくとも「書き方の参考にしたいので見せて欲しい。他の人には見せないし、内容も伝えない」旨を言えば、知り合いであれば見せてくれる可能性は高いでしょう。似たような研究をしている場合は「研究遂行能力」や「人権の保護及び〜」の書き方などはとても参考になるでしょう。 **2. URAを活用する** 各大学等にあるURA(University Research Administrator)には過去の申請書が蓄積されており、学内限定で閲覧できたりします。そのようなサービスがない場合でもURAは多くの申請書を見ていますので、きっと役に立つアドバイスをくれることでしょう。 **3. 報告書を見る** KAKENや大学図書館では科研費などの成果報告書等が公開されています。研究の背景や問題点の指摘、研究目的、研究計画までは申請書も報告書も同じですので、多くの場合似た表現になり参考になります。 **4. ネットを探す** Google、X(旧Twitter)、Note、YouTubeなどを検索します。「{学振/科研費}{公開/書き方}」などで検索する方法のほかに、科研費や学振の注意書きの文言をそのままを完全一致で検索する方法も有効です。申請書ファイルをそのままアップロードしている場合は、注意書きで申請書を引っ掛けてくることが可能です。こうして見つけた申請書については科研費.comでも公開しています。