--- title: "(F) 研究方法・研究計画" book: 科研費申請書の教科書 chapter: 第2章 何を・どこに書くか pages: 99-109 images: page_0099.png ~ page_0109.png --- # (F) 研究方法・研究計画 > **#科研費のコツ 44** 仮説ドリブンは独りよがり、データドリブンは手段の目的化になりがち > **#科研費のコツ 45** 独りよがりの計画は避ける > **#科研費のコツ 46** ゴールを間近に感じさせる > **#科研費のコツ 47** 分野外の読み手には、背景や意義を中心に説明する > **#科研費のコツ 48** 研究のゴールを明確にする > **#科研費のコツ 49** 読み手に、行間を推察してあげる義理はない > **#科研費のコツ 50** 研究のイメージがわく程度には具体的に! > **#科研費のコツ 51** 何が求められているのかを考えよ > **#科研費のコツ 52** 研究計画をちゃんと書き、ごまかさない > **#科研費のコツ 53** どこまで明らかにしようとするのか > **#科研費のコツ 54** 研究ゴールは具体的&根拠を明確に ### 「研究方法・研究計画」に迷ったらこう書こう 研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか #### 具体例 > **(1) *F. virguliformeの*ダイズ根組織への侵入様式の特定** > *Fv*の感染成立後のシグナル伝達経路については理解が進んでいる一方で、感染成立に至る過程はほとんど理解されていない。そこで、*Fv*のダイズの根への感染プロセスの時系列的な記述をするため、GFPで蛍光ラベルした*Fv*をダイズの根に感染させ蛍光量から感染成立に至るまでの初期過程を明らかにする。まず、*F. virguliformeの*蛍光株を作製し、蛍光顕微鏡を用いてダイズの根における付着器の形成を観察し、その詳細な過程を記録する。さらに、根における時系列RNA-seqを行い、観察の結果と突き合わせることで、感染に伴う遺伝子発現パターンと感染プロセスの対応を明らかにする。 > 申請者はすでに、いくつかの機能的な蛍光株の作出に成功しており、速やかに実験を開始することが可能である。 > > - **(8-1)研究計画** 研究計画の見出し1 > - **(8-2)研究計画** 研究背景のリマインド > - **(8-3)研究計画** 何をどうするのか > - **(8-5)研究計画** 予備データ > **(2) 葉面SDS症状を誘発するFvTox1およびFvNIS1と相互作用するタンパク質の同定** > *Fv*の感染成立後のシグナル伝達経路については理解が進んでいる一方で、感染成立に至る過程はほとんど理解されていない。そこで、FvTox1およびFvNIS1と相互作用するタンパク質のうち葉面SDS症状の誘発に関わる因子を同定するため、FvTox1およびFvNIS1を根で特異的に発現させそこから抽出したタンパク質を明らかにする。 > まず、*fvtox1*変異体および*fvnis1*変異体の病原性の低い表現型を確認する。次に、FvTox1とFvNIS1に蛍光マーカーを付加する。さらに、共免疫沈降法とLC-MS、酵母ツーハイブリッド法を行うことで、相互作用する可能性のあるタンパク質を同定する(図2)。仮に本研究がうまくいかない場合は、アルファスクリーンなど別の方法を試すとともに、すでに結合することが示されている因子に対象を絞って以降の解析を行う。 > > - **(8-1)研究計画** 研究計画の見出し2 > - **(8-2)研究計画** 研究背景のリマインド > - **(8-3)研究計画** 何をどうするのか > - **(8-5)研究計画** 予備データ > **(3) ダイズ以外ではSDSに耐性を示すメカニズムの研究** > *Fv*は広く他の一般的な畑作物や雑草にも感染しうるものの、ダイズでのみ深刻なSDS症状が見られる。ダイズにのみ存在すると考えられるFvTox1とFvNIS1と相互作用する因子を同定する。具体的には、ダイズおよび他の作物における課題1、2で同定した遺伝子および相同遺伝子の同定に取り組む。 > まず、既存のゲノムデータベースから、他の作物における相同遺伝子を特定する。その後、共免疫沈降や酵母ツーハイブリッド法を用いて、ダイズの遺伝子とは相互作用するが他の作物の相同遺伝子とは相互作用しない因子を探索する。これにより、ダイズとそれ以外の作物における相互作用の違いがSDS症状を生み出していることを明らかにし、ダイズにおけるSDS症状の発症機構を明らかにする。 > > - **(8-1)研究計画** 研究計画の見出し3 > - **(8-2)研究計画** 研究背景のリマインド > - **(8-3)研究計画** 何をどうするのか > - **(8-4)研究計画** どうなれば良いか #### 一般化例 > **1. 研究計画1** > これまでの研究から、〇〇〇は〇〇〇であることが明らかにされている。そこで、〇〇〇によって、〇〇〇の〇〇〇を明らかにする。また、〇〇〇についても、〇〇〇がどのように〇〇〇であるかを明らかにする。 > 〇〇〇については、申請者の予備的な研究からすでに〇〇〇であることを見出していることから(図○)、この知見をもとに、〇〇〇を〇〇〇する。 > 仮に〇〇〇である場合には、〇〇〇を〇〇〇することで対応する。 > > **2. 研究計画2** > …… > > **3. 研究計画3** > …… ### 種目別の研究計画フォーマット **科研費|基盤、若手、スタートアップ** - 該当する項目:研究目的、研究方法など(基盤C:3〜4ページ目) - 分量:それ以外の項目を書いた残りのスペース - 見出し案:本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか - 内容:研究計画の背景、研究方法、研究計画、研究のゴール、うまくいかない場合の対応 - コメント:研究費の種類によって使えるページ数は異なる。ページ数が増えるにしたがって背景などに書くべきことも増えるが、基本的には研究計画の分量の差である。 **科研費|挑戦的研究(萌芽)** - 該当する項目:目的及び研究の方法(様式S-42-1、1ページ目)、研究目的を達成するための研究方法(様式S-42-2、1、2ページ目) - 分量:0.4〜0.5ページ程度(様式S-42-1)、1ページ強(様式S-42-2) - S-42-1は1ページ目終わりまで書いて2ページ目冒頭から「研究遂行能力」を書くとキリよく収まる。ただし計画が0.5ページは心許ないので、2ページ目にまたがってしまう場合もある。S-42-2では2ページ目末の「研究遂行能力」を先に書いて残りの部分を研究計画で埋めるようにするとよい。 - 要素:(8)研究計画 - 挑戦的研究は書ける分量が非常に少ないので、余計なことを書かず、いかにしてアピールするかを考える。 **学振** - 該当する項目:研究方法、研究内容(2〜3ページ目) - 分量:3ページ目の半分くらいまで - 研究計画の背景、研究方法、研究計画、研究のゴール、うまくいかない場合の対応 - コメント:研究方法と研究内容を分けて書く人も見かけるが、同じ内容を繰り返しがちになるので、まとめて書くことですっきりとさせる。 ## 「研究方法・研究計画」の要素 研究計画では、研究項目ごとに小見出しを立てて説明します。年度ごとに小見出しを立てる場合もありますが、研究内容が複数年度にわたる場合には、同じ見出しが何度も出てくることになってしまうため、おすすめしません。 研究項目の基本は3つです。研究項目を細分化して5つやそれ以上も書いてくる人がいますが、**研究項目が多すぎると** **(1) 全体としてどこに向かっているのかが見えなくなる** 個々の研究項目がどのような関係にあるのかが見えづらくなり、結局、申請者は何を知りたいと思っているのかが曖昧になってしまいます。さらに、限られた期間内にすべての方向にエネルギーを注げば、全部が中途半端になってしまう可能性があります。 **(2) 単純に書くスペースが減る** 限られた紙面に数多くの計画が並べば、当然1つあたりに割けるスペースは減ります。個々の研究について表層しか語らないのであれば、ほとんど理解はしてもらえないでしょう。 **(3) 読む気が失せる** (1)や(2)の結果、全体として何をしたいのかがわからなくなり、時間がない審査員は理解することを諦めてしまいます。研究項目とは研究内容のまとめです。項目数が多すぎるのは、まとめとはいえません。 **研究項目が1つだけだと** **(4) 研究が失敗したときのバックアップがなくなる** 現実的には100%成功することはありえません。うまくいかないケースも当然あります。研究をはじめて最初の年にうまくいかないことが発覚した場合、どうしようもなくなってしまいます。 **(5) 研究の発展性がなくなる** あまりにも簡単な課題を設定すると、早々に研究計画を達成してしまった場合にすることがなくなりますし、科学的な前進もわずかにとどまってしまいます。逆に、非常に挑戦的で難しい課題を設定すると、研究期間を通して成果が何もないという事態が起きてしまいます。大きなところを見据えつつ、着実に進んでいくためには一点突破はリスクが高すぎます。 こうしたことから、**おそらく大丈夫だと思われる手堅い研究項目と挑戦的な研究項目を組み合わせた、2〜3個の研究項目を組み合わせて、研究計画全体のリスクをコントロールする**ことがもっとも安定しています(図2.11)。 また、2つ目以降の研究計画がそれ以前の研究の成功を前提としている場合は高リスクな研究ですので、そうしたものを含めても構いませんが、手堅い研究計画と組み合わせることでうまくいかない場合でも最低限の成果を確保できるようにしておくことが重要となります。 > 図2.11は研究計画の手堅さと達成度の関係をイラストで示している。(1)安全・確実だがインパクトのない研究、(2)リスクの高い研究を土台にした計画、(3)手堅い計画を積み上げつつインパクトのある成果を出す理想的なケース、(4)確実な計画とリスクの高い計画を組み合わせるパターン、の4つを比較。(4)が推奨される。 安全・確実ではあるけどインパクトのない研究ばかりしていても、まとまった成果にはつながりません(図2.11の(1))。かといって、リスクの高い研究計画を土台として次の計画を立てても安定度は増しません((2))。成功すれば結果オーライですが、そうなるかどうかは誰も判断できません。転倒してしまうと何も残りません。 一番よいのは、おそらく達成できるだろうと思える計画を積み上げつつも、インパクトを与えるような大きな仕事をすることです((3))。しかし、そのように都合よくいくケースは稀ですので、確実そうな計画とリスクの高い計画を組み合わせることで一定程度の成果を確保しつつ、うまくいけばかなりの進展が見込める計画を立てるようにしましょう((4))。高リスクの研究が仮にうまくいかなくても、ここまでは大丈夫という担保があればリスクを取りにいきやすくなります。 > **OK** うまくいかない場合には〇〇〇を行う > **OK** すでに〇〇〇という予備的な結果を得ている のように、プランBを書くパターンだけでなく、予備データを書くことで研究の方向性がおおむね正しい(正しそうである)ことを書くパターンもあります。いずれにしても、「審査員に指摘されるまでもなく申請者自身もリスクについては考えており、その対策をしている」あるいは「予想されるリスクについては問題なさそうだ」と示しておくことで、採択してもうまくいかないのではないか、という審査員の不安を和らげる必要があります。 ### (8-1) 研究計画|研究計画の見出し 研究計画の見出しには、研究内容がわかるような研究項目を書きます。 > 〇〇〇の{解析/解明/理解/開発/制御機構/局在解析/同定/調査/確立……} 多くの場合は**体言止めの見出しで、1行に収めます。** 研究担当者名と役割を体制図に書いたり、研究の実施年度をタイムテーブルにまとめたりして研究計画や申請書の末尾につけることがありますが、かなりスペースを使ってしまいます。以下のように、研究計画の見出しの横にシンプルに書き添えるだけでも十分です。 > **OK** 1. 〇〇〇による〇〇の誘導機構の解明(令和〇年度) > **OK** 1. 〇〇〇による〇〇の誘導機構の解明|佐藤(申請者)、鈴木(研究分担者) また、スペースが足りなくなってくると見出しに続ける形で本文を書きたくなってきますが、とても見にくくなるので、まずは内容の精査を行い、それでもダメなら行間や文字間、図のサイズで調節できないかを考えた後の最終手段として行います。 > **NG** ではないが紙面が詰まってしまい読みづらくなるので、できるだけ避けたい > 1. 〇〇〇による〇〇の誘導機構の解明:〇〇〇を〇〇〇することで、〇〇〇における〇〇〇の時系列解析を…… さらに、見出しをゴシック体で書いているにもかかわらず、英数字がセリフ体になっていてちぐはぐな印象を受ける例があります。せっかくこだわるなら細部までこだわってください。 > **NG** 1. ABC と DEF の標的遺伝子の同定と mRNA 分解制御メカニズムの解明 p.193にあるようにWordでは日本語用フォントと英数字用フォントは別に設定するので、日本語用フォントをゴシック体にするなら、英数字用フォントもサンセリフ体にしておきましょう。長い英単語が含まれていないなら、英数字も日本語用のフォントを使えば十分です。 ### (8-2) 研究計画|研究背景のリマインド、申請者らのこれまでの成果 研究の背景は「背景」で説明済みなので、詳しい背景説明は不要です。しかし、分野外の審査員が説明したことをすべて覚えているとは思えません。研究内容をスムーズに理解してもらうためにも1〜2行程度で構いませんので、簡単なリマインドから研究計画を書き始めましょう。 > **OK** 〇〇〇は〇〇〇である。そこで、…… > **OK** 申請者らはこれまでに〇〇〇から、〇〇〇を見出した[文献]。そこで、本研究では、…… ### (8-3) 研究計画|何をどうするのか 何をどうするかの手順を書くパートです。しかし、書き慣れていない人は詳しく書きすぎる結果、かえってわかりにくくなってしまう傾向にあります。 たとえば、タイ料理であるパッタイに関する研究をするとして、申請書に以下のように書かれていたらどうでしょうか? > **NG** 1. センレックはぬるま湯に15分ほどつけて戻し、ザルに上げて水気を切ります。 > 2. むきえびは背わたを取って洗い、キッチンペーパーで水気をふき取ります。厚揚げは1cm角に切ります。もやしは洗ってザルに上げ、水気を切ります。ニラは4cm長さに切ります。ピーナッツは保存袋に入れ、めん棒でたたいて細かくします。 > 3. フライパンに卵用のサラダ油を引いて中火にかけ、卵を流し入れます。大きくかき混ぜ、半熟状になったら一度取り出します。 審査員はこれを読んで採択したいと思うでしょうか。分野外の審査員にとっては、研究の手順を詳しく説明されても十分には理解できません。審査員としては「専門家である申請者が適切にするんでしょう」くらいの感想しかなく、よく知らないことについて、手順の細かいところで採否を決めるなんて怖くてできません。 同様に、やたらと数字が細かかったり、明らかに無謀だったりする研究計画も見かけます。 > **NG** 令和〇年の6月までに、〇〇〇を〇〇〇し、7月には〇〇〇する。得られた成果は〇〇〇誌に投稿し、〇〇〇学会で発表する。 > **NG** 年金問題を解決する > **NG** まず難治性がんの治療法を確立し、次に…… 研究が予定通りにいかないことは審査員を含め誰もが知っていることですし、まだ結果を得てもいないのに投稿先を決めているのもナンセンスです。 むしろ、「**目的を達成するうえで、なぜこの研究をする必要があるのだろうか?**」とか「**どうなればこの研究が成功したといえると申請者は考えているんだろうか?**」といったことの方が気になるはずです。 **How(どうやるのか)**や**When(いつするのか)**を研究計画として書くのではなく、**Why(なぜするのか)**や**What(どうなればよいのか)**、**Where(どこに工夫があるのか)**、**Who(誰とするのか)**、についての答えを書くようにしてください。 ### (8-4) 研究計画|何がどうなれば本研究は成功だとするのか 研究の究極のゴールは未解決問題の解決や新たな価値の創造です。しかし、それらは一朝一夕では実現できないので、問題を分割し、その一部について解決することを目的とします。 こうしたなかで、申請者が明らかにしないといけない問題は、どうなれば「この研究は成功した」あるいは「研究がうまくいった」といえるのか、です。**どうなると成功で、どうなると失敗か**、のゴールラインを設定するのは審査員ではなく、申請者自身です。申請者は、「何をするのか」だけでなく「**どのような結果を期待しているのか**」および「**どこに研究のゴールを設定するのか**」について書かないといけません。科研費申請書でいうところの「どこまで」に当たります。たとえば > **NG** 〇〇〇を材料に、遺伝子発現解析を行う。 > **NG** 〇〇〇を対象としたアンケート調査を行う。 といった計画が書かれてあっても、審査員は遺伝子発現解析やアンケートを実施した結果どうだったらこの研究は成功で(予想通りで)、どうだったらダメだ(うまくいっていない)と判断するのかがわからず、解析することやアンケートを取ることそれ自体が目的のようにも読めてしまいます。 > **OK** 〇〇〇を材料に遺伝子発現解析を行い、〇〇〇の条件で〇〇〇よりも有意に発現が上昇する転写因子を同定する。 > **OK** 〇〇〇を対象としたアンケート解析を行い、〇〇〇に対する意識変化が見られるかどうかを確認する。 のように、何かをした結果、どうだったら成功と考えるのか?を明示する必要があります。分野外の審査員は基本的にはあなたの研究のことはわからず、審査において審査員が評価できることは限られています。 - **この研究内容は価値があるか**(研究の方向性) - **この研究で得られるであろう成果は十分にインパクトをもたらすか**(ゴールの位置) - **どうやってゴールに到達するか**(アイデア) の3点については判断できますが、具体的にどんな手順で実験をするかについては、「専門家である申請者が適切にするのでしょう」くらいしか判断できません。そのため、こうなればこの研究は成功で(ゴールに到達したと判断する)、こうなれば失敗だ(ゴールに到達できない)、という具体的なゴール位置を申請者自身で設定する必要があります。 ### (8-5) 研究計画|うまくいかない場合はどうするつもりか、予備データ 申請書の評価は2つの意味で難しい作業です。 - 分野や内容がまったく異なるものに優劣をつける必要がある - よく知らない分野における研究計画の実現可能性を評価する必要がある 明らかに不備のある研究は論外ですが、一定水準以上のレベルで計画されている研究計画であれば、たとえばがん研究と糖尿病研究のどちらの申請書が優れているかを評価することはかなり困難で、自信をもってこちらの方が優れていると言い切れる人はいないでしょう。 このような状況では、より成功する可能性が高い方を採択しようとなり、「この研究計画では、うまくいかないのではないか?」という審査員の疑問にあらかじめ答えが用意されているかがとても重要になります。そのためには大きく2つの戦略があります。 #### 予備データを示す 申請書を評価する難しさは、まだ結果がなくどうなるかわからないものを評価しなければいけないことにあります。そのため、予備的なデータを示し、すでに研究の一部はうまくいっている、うまくいきそうである、ことを示すことができれば、審査員も評価しやすくなります。 背景で予備データを示すことはもったいないと書いた理由はここにあります。それをしてしまうと、その予備的な結果を事実のものとしてそれを元に研究計画を立てることになってしまうので、この研究計画がうまくいくか?という疑問に対する証拠としては使えません。「研究計画」で予備データを示せば、立てた研究計画の正しさを支持するデータとして使うことが可能になります。 > **OK** 申請者はすでに〇〇〇を〇〇〇した解析から、〇〇〇を見出している。 ただし、予備データを示しすぎて研究計画のほとんどがすでに完成していると書いてしまっては、研究する必要がなくなってしまいますので、あくまでも - ある部分についてはうまくいっているので、同様にもする - ある部分についてはうまくいっているので、これをもとに次の展開を目指す - 部分的にはうまくいっているので、この方向性で研究を継続しても大きくは外さない という程度にしておくことが重要です。場合によっては、あえて予備データを出し渋り、うまくいきそうである(実際にはうまくいくことを確認済)とする戦略もありえます。今後のことを評価する申請書において、「あと少しで結果が出そう。あとひと押しの支援ですべてが解決できる」という期待感はかなりプラスに働きます。 | 予備データを示すことが可能な項目 | 予備データの使い方 | |---|---| | (B) 背景と問い、(C) 着想の経緯 | 研究のきっかけ、独自性のアピール材料として | | (F) 研究方法・研究計画 | 研究の方向性の正しさの証明材料として | | (G) 準備状況 | 研究がすでに始まっていること、研究遂行能力のアピール材料として | #### うまくいかない場合の対応(プランB)を書く 研究には、リスクの高い研究と低い研究があります。一般的に、調べた結果がどうであれ、何かしらの結果・結論が得られるタイプの研究は低リスクであり、特定の仮説が正しいかどうかを検証する、たくさんの中からあるかどうかもわからないものを探索する研究(変異体や化合物スクリーニングなど)は高リスクです。 高リスクの研究を実施すること自体はよいのですが、その成功がそれ以降の研究計画の前提となっているのは、よほどのことがない限り危険です。 > **NG** 本研究では、すべてのがん種を予防する化合物を同定した後に、作用機序を明らかにする。 こうした研究計画だと、化合物が見つからなかった場合に、それ以降にすることがなくなってしまいます。高リスクの研究を実施する場合にはとくに、「うまくいかない場合にどうするのか」について先回りして書いて、研究計画をしっかり考えていることをアピールすることが重要です。 > **OK** 仮に〇〇〇がうまくいかない場合は、〇〇〇や〇〇〇についても検討する。 > **OK** 〇〇〇などが問題となり〇〇〇が示せない場合でも、〇〇〇については明らかになると考えられることから、これを利用して〇〇〇を行う。 > **OK** サンプルが予定通り集まらない場合に備えて、〇〇〇についてもサンプル収集を行っておく。仮にサンプルが余れば、これらについては〇〇〇に利用する。 また、せっかく用意したバックアッププランも同様に高リスクの計画になっていると台無しで、リスクが減った感じはありません。 > **NG** 本研究では、すべてのがん種を予防する化合物を同定する。仮に、見つからない場合には、別の化合物ライブラリを用いて同様の解析を行う。