--- title: "(E) 本研究の目的" book: 科研費申請書の教科書 chapter: 第2章 何を・どこに書くか pages: 92-98 images: page_0092.png ~ page_0098.png --- # (E) 本研究の目的 > **#科研費のコツ 40** 申請書の「研究目的」には、本研究計画の目的を書く > **#科研費のコツ 41** 手段の目的化は避けよ > **#科研費のコツ 42** 仮説ドリブンでいこう > **#科研費のコツ 43** 問題を分割する ### 「本研究の目的」に迷ったらこう書こう 「目的」を言い換えると……本研究で何を明らかにするか #### 具体例 > **本研究の目的および学術的独自性と創造性** > そこで本研究では、年齢や社会的関係が言語使用に大きく反映される日本語と朝鮮語を比較することで、それぞれどのような言語形式やコミュニケーション手段が過干渉を引き起こすのかを明らかにすることを目的とする。さらに、得られた結果をもとに、過干渉を最小限に抑えるコミュニケーション戦略の基盤を構築する。 > ●【独自性】● > > - **(7-1)研究目的** 採用する研究アプローチ > - **(7-2)研究目的** メイン目的 > - **(7-3)研究目的** サブ目的 > **研究目的** > そこで本研究では、抗がん剤治療による発症が知られている脱毛症の原因となる細胞の機能の解明を目的とする。具体的には、毛包周辺の細胞に着目し、その細胞膜受容体の同定を試みることで、脱毛症に対する新たな治療法の開発を目指す。 > > - **(7-2)研究目的** メイン目的 > - **(7-1)研究目的** 採用する研究アプローチ > - **(7-3)研究目的** サブ目的 #### 一般化例 > そこで本研究では、〇〇〇を〇〇〇すること{で/によって}、〇〇〇の〇〇〇を明らかにすることを目的とする(さらに、〇〇〇により、〇〇〇を〇〇〇することを目指す)。 ### 種目別の研究目的フォーマット **科研費|基盤、若手、スタートアップ** - 該当する項目:本研究の目的および学術的独自性と創造性(2ページ目) - 分量:3〜5行程度 - 基盤(C)や若手だとスペースが少ないので、目的は長くは書けない。 - 要素:(7)研究目的、(5)独自性・妥当性、(9)未来の状況 - 研究目的と独自性・創造性の2つに分けてそれぞれで見出しを立ててもよいし、注意書きにある通りに、目的と独自性・創造性を1つの項目として書いてもよい。この場合は、目的は独立した段落として書く。 **科研費|挑戦的研究(萌芽)** - 該当する項目:目的及び研究の方法(様式S-42-1、1ページ目)、本研究の目的(様式S-42-2、1ページ目) - 分量:それぞれ3〜6行程度 - 背景・重要性や研究計画と一緒に書くので、目的は長くは書けない。他とのバランスを見ながら調節する。 - 要素:(2)背景・重要性、(3)少し前の状況、(4)きっかけ、((5)独自性・妥当性)、(6)現在の状況、(7)研究目的、(8)研究計画 - 本研究の目的を書けという指示について、様式S-42-1でも様式S-42-2でも背景を書ける場所がここしかないので、背景と目的を併せて書く。ページ数制限が厳しいので、目的はダラダラと書かず、スパッと書くのがポイント。図をうまく使うとよい。 **学振** - 該当する項目:研究目的(2ページ目) - 分量:3〜6行程度 - 全体のページ数も限られているので、なるべく手短に目的を書いて、研究計画や特色・独創的な点を書くためのスペースを確保する。 - 内容:(2)背景・重要性、(3)少し前の状況、(4)きっかけ、((5)独自性・妥当性)、(6)現在の状況、(7)研究目的、(8)研究計画 - 「本研究では〇〇〇による〇〇〇の解明を目的とする。さらに、〇〇〇を〇〇〇することを目指す」という「**研究アプローチ+メイン目的+サブ目的**」が基本構成。 ## 「本研究の目的」の要素 **研究目的は長々と書かず、短く3〜6行でまとめます。**申請書を理解するうえで鍵となるパートなので、太字で書くなど強調も有効です。目的はメインの目的に加えて、サブ目的も書いておくと、リスク分散になり安定した計画になります。 たとえば「アンケートを実施する」や「〇〇〇解析を行う」のような手段を目的として扱ってしまうと、これらを行いさえすれば、結果がどうあれ目的を達成したことになり、この研究は成功したことになってしまいます。本来の目的は、アンケートや〇〇〇解析という手段によって、事前に設定した仮説を検証したり、それによって何かを生み出すことだったり、であったはずであり、これでは本末転倒です。これは一般に、**手段の目的化**といわれているダメな例です。 また、以下のように非常に広く曖昧な目的だったり、その逆にすごく具体的で狭い範囲しかカバーしない目的だったり、難しすぎたり簡単すぎたりするのもよくありません。 > **NG** あるべき社会保障の形 > **NG** 〇〇〇分子の〇〇〇番目のアミノ酸をAAAに置換したときにも機能が保たれているか > **NG** がんの完全撲滅 これらを避け、適切な難易度と具体性を持つ目的を設定する必要があります。 ただし、論文とは違って、ここで書く「未来の状況」はまだ結果すら出ていない申請者の希望(妄想)にすぎないので、長々と書いてもあまり審査員には響きません(審査にプラスに働かないのであれば、むしろスペースがもったいない)。この研究が、申請者の興味を満たすためだけのものではなく、他の研究や社会に対しても多くのメリットをもたらしうることが伝わればそれで十分です。 ### (7-1) 研究目的|採用する研究アプローチ 具体的な方法は研究計画で書きますが、本研究で用いる研究アプローチの概要については簡単でよいので、目的に書いておくようにしましょう。研究方法の妥当性については「背景と問い」あるいは「着想の経緯」で説明しますので、詳しい説明は不要です。 > **NG** 宇宙の果てを明らかにすることを目的とする。 > **OK** 光速を超えることのできる〇〇〇法の開発により、宇宙の果ての直接観察を目的とする。 このように、研究目的だけを書くよりも、簡単な方法を併せて書く方がずっと説得力があります。長く書きすぎると1文が長くなってしまい読みにくくなります。ここで書くべきことのメインは目的ですので、軽い記述で構いません。 ### (7-2) 研究目的|本研究で何を明らかにするのか(メイン目的) 手段と目的は連続的なものであり、区別をつけにくいものです。 > この実験をする(手段)のは、〇〇〇を明らかにするためであり(目的)、 > 〇〇〇を明らかにする(手段)のは、AAAを検証するため(目的)で、 > AAAを検証する(手段)のは、□□□を解決するため(目的)である…… のように、手段と目的はどこまでも遡って書き続けることができます。この調子でいくと最後は人類の幸福とかそのあたりの目的に行きつくことでしょう。実際、こうした混乱はしばしば見られ、研究期間内に絶対に達成できないであろう大きすぎる目的や、すぐにでも達成できるような小さな目的が書かれている申請書を読むことがしばしばあります。ちょうどいいサイズの研究計画を書くようにしてください。 審査員だけでなく申請者自身が混乱しないためにも、本研究で明らかにする(しようとする)範囲を明確に定めることが重要です。すなわち**「どうなればこの研究は成功だといえるのか」**を明確にする必要があります。 > **NG** がんの撲滅を目的とする。 たかだか数年の研究で「がんの撲滅」が実現できる見込みが本当にあるのであれば、そう書いても構いませんが、現実的ではありません。 > **NG** 社会福祉のあり方について理解を深めることを目的とする。 > **NG** 本研究では〇〇〇の詳細な役割を明らかにすることを目的とする。 どうなれば「理解が深まった」といえるのか、「詳細な役割を明らかにできた」といえるのかが明示されておらず、審査員にはわかりません。こうした目的を書く場合、申請者自身も研究のゴールがよくわかっていないことがほとんどです。具体的に何を示せばどんな結論を出せるのか、を明確にしたうえで、なるべく具体的な研究目的を書くようにします。また、 > **NG** 本研究では、〇〇〇を実施することを目的とする。 > **NG** 本研究は〇〇〇を再検討することを目的とする。 のように、具体的に何をどうするのかわからないような目的を書いてはいけません。この書き方だと実施しさえすれば結果がどうあれ、この研究は成功したことになってしまいます。大事なのは〇〇〇を実施した結果、何かを明らかにすることだったはずであり、手段と目的が逆転してしまっています(手段の目的化)。 ### (7-3) 研究目的|本研究で何を明らかにするのか(サブ目的) また、本研究のメインの目的以外に、サブ目的を書いておくのも良いアイデアです。仮にメインの目的が達成できなくても、別の目的を立てていればバックアップになりますし、基礎と臨床や、学術的視点と社会実装など、1つの対象を異なる視点で見ることで研究計画に深みを与えることができます。 サブ目的はメインと同じ重みづけでも構いませんし、もう少し軽くして「うまくいくなら狙ってみる」くらいの感じでも構いません。 > **メイン目的** > 〇〇〇の解明を目的とする。 > **サブ目的** > 〇〇〇を目指す。 > 〇〇〇についても挑戦する。 > 〇〇〇の基盤を{整備/構築}する。 のように、文末表現でメイン目的とサブ目的の区別をつけたり、メイン目的と切り口を変えたものを書いたりします。 ### (7-4) 研究目的|研究計画の概要 科研費や学振など以外の書くスペースが十分に大きい申請書の場合は、研究計画の全体像を見失いがちです。図でまとめたり、タイムテーブルを書いたりすることも重要ですが、目的に続けて、研究計画の目次として、具体的に何をするのかの概要を示す方法があります。 > 本研究では、〇〇〇により〇〇〇を明らかにすることを目的とする。具体的には、 > 1. 〇〇〇の解明 > 2. 〇〇〇の確立と〇〇〇 > 3. 〇〇〇 > > を通じて、〇〇〇の〇〇〇に迫る。 のように、研究計画の見出しに相当する部分を箇条書きで書きます。この方法は、全体の見通しを良くする効果が期待できるため、長い申請書でとくに有効です。短い申請書では、すぐ後の研究計画にも同じことを書くことになりますので、こうした記載は不要です。 ## 「本研究の目的」の構成 | パターン | (6-1) 研究アプローチ | (6-2) メイン目的 | (6-3) サブ目的 | (6-4) 計画の概要 | |---------|:-:|:-:|:-:|:-:| | 最小セット | ● | ● | | | | おすすめセット | ● | ● | ● | | | フルセット | ● | ● | ● | ● | 研究目的は一本道ですので、申請書全体の分量によって、いずれかを選択します。 ### 最小セット 書くスペースが短い場合には余計なことをいわず、端的に書きます。ここまで短いとわざわざ見出しを書くまでもなく、他の項目の最後に書けば十分である場合も多いでしょう。 > **OK** こうしたことから、本研究では、〇〇〇により〇〇〇を明らかにすることを目的とする。 ### おすすめセット 科研費や学振では、もう少し詳しく目的を書く余裕があります。その場合には、各要素をもう少し詳しく書くとともに、サブ目的についても書くとよいでしょう。 > **OK** そこで本研究では、〇〇〇を〇〇〇することで〇〇〇を〇〇〇し、これにより〇〇〇における〇〇〇を明らかにすることを目的とする。さらに、〇〇〇の〇〇〇についても、〇〇〇することを目指す。 ### フルセット 十分な長さの申請書を書くことのできる場合には、研究計画部分も長くなりがちであり、計画の全体像を把握するのが困難になります。そうした場合には目的に続ける形で、計画の概要(見出し部分)を書いておくと、研究の全体像の見通しがよくなります。 > **OK** そこで本研究では、〇〇〇を〇〇〇することで、〇〇〇を明らかにすることを目的とする。さらに、〇〇〇についても〇〇〇を行うことで、〇〇〇の基盤とする。具体的には次の3点について明らかにする。 > 1. <研究計画1の見出しそのもの、あるいは内容を1行で> > 2. <研究計画2の見出しそのもの、あるいは内容を1行で> > 3. <研究計画3の見出しそのもの、あるいは内容を1行で>