--- title: "1.5節 エフォート" book: 科研費申請書の教科書 chapter: 第1章 申請書を書く前に pages: 18中段-25(p.18上半は1.4節の末尾) images: page_0018.png ~ page_0025.png --- # 1.5節 エフォート > **#科研費のコツ 05** エフォートの計算式 > > **#科研費のコツ 06** 科研費・学振以外のエフォートは情熱を示す > > **#科研費のコツ 07** エフォートは後からも減らせる > > **#科研費のコツ 08** エフォートはその都度変更する ### エフォートとは エフォート(研究充当率)は、「研究活動の時間のみならず教育・医療活動や営業部分等、すべての業務等を含む研究者の全仕事時間を100%とし、そのうち当該研究の実施に必要となる時間の配分割合(%)」として定義されています。 科研費審査において、エフォートの多少は審査項目には含まれておらず、エフォートが低いという理由で不採択にしてはならないことになっています。ですので、給与や研究時間の算定に関わってこない限りは、エフォートの数字を気にしすぎる必要はありません。実際、年齢が若い(キャリアが浅い)人は多めのエフォートを書く傾向にありますが、だからといって審査において特段有利になったりはしません。ただし、審査員の印象に影響する可能性は十分にあるため、過度に低いエフォートは書かない方が無難であり、研究費に応じたエフォートを書いておくようにしましょう。 ### 表1.2 エフォートの目安 | 種目 | 研究費規模 | エフォート | |------|----------|----------| | どうしても熱意を示したい特殊な場合(さきがけ専任など) | — | 90% | | 学振PD | 80〜150万円/年+給与 | 60% | | さきがけ(兼任) | 1,000万円/年 | 40% | | 基盤A、新学術領域・学術変革(計画班)など | 1,000万円以上/年 | 30〜40% | | 基盤B, C、若手研究、挑戦的研究(開拓)、新学術領域・学術変革(公募) | 300〜1,000万円/年 | 20〜30% | | 挑戦的研究(萌芽) | 150〜250万円/年 | 10〜25% | | 研究活動スタート支援 | 300万円以下/年 | 10〜20% | | 研究分担者 | 300万円以下/年 | 5〜15% | | 民間財団 | 50〜300万円/年 | 1〜10% | > **エフォート(プロジェクト従事率(年間))** > = 該当プロジェクト従事時間 ÷ 年間の全仕事時間(※) > > (※)裁量労働制が適用されている場合は、みなし労働時間とする。 > > *参考 文部科学省「令和2年3月31日資金配分機関及び所管関係府省申し合わせ」* ### エフォートの決め方 > 「エフォート」欄は、本応募研究課題が採択された場合を想定した時間の配分率(1〜100の整数)を入力すること。 > > *参考 研究計画調書(Web入力項目)作成・入力要領* > エフォートは1〜100%を入力しないとエラーになりますので、必ず入力してください。 > > *参考 令和4(2022)年度説明資料に関する主な質問への回答について* このようにエフォートは研究にかける時間の配分率を自然数で書くことが求められています(e-Rad操作マニュアルは「0〜100までの整数」と矛盾しています)。また、直接経費から人件費が支払われるプロジェクト雇用の場合は、 > エフォートは、5%から100%までの5%刻みの20段階で設定することを…… > > *参考 文部科学省 エフォート管理の運用統一について資金配分機関及び所管関係省申し合わせ 令和2年3月31日* のように書かれていることから、エフォートは5%単位であることを想定しているようです。エフォートのやりくりが厳しい場合は1%単位でもよいでしょうが(実際、見たことがあります)、通常は無難に5%刻みで書くようにしましょう。 若手が大型予算を取れる数少ないチャンスである「さきがけ」などの場合では40%以上が目安とされているようで、少ないとエフォートを積み増すことを求められるようです。通常であれば、研究代表者で20〜30%程度、研究分担者だと5〜15%程度も確保しておけば十分でしょう。また、エフォートの高さは熱意の大きさとも解釈されることもあり、たとえば90%といった極端なエフォートを提示することで、そのプロジェクトに賭ける熱意を伝えることも可能です(とくに合議制の審査があるような研究種目で有効です)(図1.8)。 エフォートは後で減らすことも可能ですので、余裕があるならまずは多めで出しておけば無難です。しかし、エフォートの修正申請が可能になるのは採択後なので、追加で別の研究費に応募する可能性がある場合は、配分に注意を払う必要があります。また、90%のような極端な値ではない限り、一定以上のエフォートであれば審査員の印象に大きな違いはありません。 ### プロジェクト雇用、専任教員の場合 プロジェクト雇用、専任教員の場合は、職責としてそのプロジェクトに関わるわけですから、それ以外の研究への参加には制限が課されます。とはいえまったくダメなわけではなく、ある程度の裁量が認められていますので、研究費側と雇用側の双方のルールをしっかりと理解して応募しましょう。 > プロジェクト雇用の40歳以下の研究者の場合、PI等が、当該プロジェクトの推進に支障がない範囲であると判断し、所属研究機関が認めること(当該プロジェクトに従事するエフォートの20%を上限とする) > > *参考 内閣府 競争的研究費においてプロジェクトの実施のために雇用される若手研究者の自発的な研究活動等に関する実施方針 競争的研究費に関する関係府省連絡会申し合わせ 令和2年12月18日* 日本学術振興会特別研究員(SPD・PD・RPD)が受入研究機関として本会に届け出ている研究機関において応募資格を得た場合には、「新学術領域研究(研究領域提案型)の公募研究」、「基盤研究(B・C)」、「挑戦的研究(萌芽)」、「若手研究」に限り応募することが可能です。 > *参考 特別研究員よくある質問 設問11* > 特別研究員奨励費の研究課題の研究遂行に支障が生じないこと(特別研究員としての活動時間のうち、特別研究員奨励費の研究課題に係る研究活動時間が、年間を通じて概ね6割を下回らないこと) > > *参考 日本学術振興会 特別研究員(PD)の科研費応募に関する重複制限の緩和について(2013年6月5日)* また、研究機関によっては、 - 専任教員は学生への教育等の活動があるので、エフォートの50%以下で研究すること - 特任教員や博士研究員(とくに国家プロジェクト雇用)については、雇用財源の研究課題が本来のミッションであるはずなので、エフォートの10%以下で研究すること といった指示があるようですので、必ず確認してください。 ### エフォートは変えられる エフォートは後で変更することができます。e-Rad内に「エフォートの管理」タブがあり、そこで修正申請を行うことができます。この機能が存在することの意味を考えると、合計値が100%を超えないように後からでも適切に調整することが可能であるということです。ではどういった場合にエフォートを変更することができるのでしょうか? #### 新しい仕事が増えた > **図1.6の概要:** 「いままで」研究費A(40%)・B(30%)・C(20%)・教育その他(10%)で配分していた場合、新たに研究費Dが加わると「これから①」各プロジェクトから少しずつ時間を削って捻出(A:35%, B:25%, C:15%, D:15%, 教育:10%)。「これから②」は持ち時間を100→120時間に拡大してエフォート率を下げるパターン(A:33%, B:25%, C:17%, D:17%, 教育:8%)。 エフォートとは自分の持ち時間を100%として、その割合を示すものです。新たに研究費Dを取ってくるために新たにエフォートを割り当てる必要があるとします。持ち時間が変わらないとすると、それぞれから少しずつ時間を削って捻出することになります。 実際にこういう割合で働く以上、良い悪いではなく、必然的にエフォートは下げる必要があります。研究費の年額が500万円以下のものについては、思い切った値に下げてしまっても修正は認められると思います。一方で、大型予算の場合は、配分機関としては研究に専念してもらいたいので、研究時間を削るようなエフォートの下げ方は、認めたくないと考えるかもしれません。 #### 自分が研究する時間が減った アルバイトやパート、博士研究員などの雇用により、研究に携わる人員が増加すれば、研究に費やす総時間を維持しつつも自分が使う時間を減らすことができ、エフォートを下げることが可能になります。注意点としては、計画時に人を雇用することを前提としてエフォートを見積もっている場合には、こうした効果は折り込み済みとなっていると考えられますので、エフォートを下げることに対する説得力は下がってしまいます。 また、研究期間の最終年度などの場合、研究が当初の計画を上回るペースで進んだため、申請した研究計画の範囲ではすることがなくなったという状況が生まれることがあります。この場合は、仕事量そのものが減るのでエフォートを下げることは当然だといえるでしょう。 #### 研究する時間が増えた 「これから②」では個々のプロジェクトに費やす時間は変わりませんが、持ち時間が100時間から120時間へと拡大することによって、エフォートが低下しています。この場合、研究時間を削っているわけではないので、研究は以前と同じペースで進めることができると主張しやすくなり、エフォートを下げることも認められやすくなるでしょう。 研究活動が裁量労働である場合には、100時間を120時間に延ばすことは理屈のうえでは可能です。持ち時間の拡大分を新たな研究に費やせば、これまでのプロジェクトに影響することなく新しいことを始めることができます。ただ、これが正当な理由として通じるかどうかは微妙なところです。かつて「この研究費が採択されたら1.5倍働くから問題ない!」といったものの却下された人がいたと聞きました。通勤時間が減った、研究以外の業務が終わり時間に余裕ができた、などであれば認められるかもしれません。 ### エフォートの修正方法 採択後の課題に登録されているエフォート値を修正する申請をします。修正には所属研究機関の承認と配分機関が受理する必要があります。 > **図1.7の概要:** 研究者が「エフォート修正」を提出 → 研究機関が「承認」または「否認」 → 承認された場合、配分機関が「受理」または「不受理」を判断するフローチャート。 e-Radトップページの「エフォートの管理」から「エフォートの修正申請」と進むと、エフォートの修正が可能です。エフォートの修正は比較的早く行われますが、それでも数日はかかりますので、余裕をもって申請するようにしましょう。詳細な手順についてはe-Rad研究者向け操作マニュアルの「6.エフォート修正編」を見てください。 また、エフォートの修正申請をしたとしても承認されるかどうかは研究機関の承認と配分機関の受理が必要です。修正理由を書く欄などはとくにありませんが、万が一問い合わせがあった場合にも、しっかりと答えられるよう考えておくようにしましょう。 ### エフォートの疑問 #### Q1. いつの時点のエフォートを書くのか > 「エフォート」欄は、本応募研究課題が採択された場合を想定した時間の配分率(1〜100の整数)を入力すること。(中略)本応募研究課題が採択された際には、改めてその時点におけるエフォートを確認し、エフォートに変更がある場合には、e-Rad上で修正した上で交付申請手続きを行うこととなる。 > > *参考 研究計画調書(Web入力項目)作成・入力要領* すなわち複数種目に応募する際には、いったんそれらがすべて採択された場合のエフォートを書く必要があり、その後、実際に即したエフォートに修正するということです。 #### Q2. 100%を超えるとどうなるのか > 交付の内定を行った研究課題の研究代表者又は研究分担者のうち、本件通知日時点で、e-Rad上でエフォートの合計が100%を超過している研究者(以下「超過者」という。)については、その旨を別途連絡します。当該連絡があった場合は、交付申請書の提出までにe-Radに登録されているエフォートを修正する必要があり、エフォートが100%を超過している状態が解消されるまで、超過者が研究代表者又は研究分担者として参画している研究課題については、交付決定を行いません。 > > *参考 科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)の交付内定について(通知)* #### Q3. 重複制限により、明らかに重複して受給できない種目がある場合はどうするのか > 科研費において、重複応募は可能であっても、重複して採択されることがない研究種目(特別推進研究等)を入力する場合は、「−」(ハイフン)と入力すること。 > > *参考 研究計画調書(Web入力項目)作成・入力要領* 重複制限により、両方を受給できないことが確定している場合には大きい方のエフォートを持つ種目が採択された場合を想定することになります。 #### Q4. 海外の研究費や民間財団もエフォートを書くのか > 科研費への応募に当たっては、「統合イノベーション戦略2020」において「外国資金の受入について、その状況等の情報開示を研究資金申請時の要件」とすることとされたことを踏まえ、令和3(2021)年度科研費の公募より、研究計画調書の「研究費の応募・受入等の状況」欄に海外からの研究資金についても記入することを明確にしています。国内外を問わず、競争的研究費のほか、民間財団からの助成金、企業からの受託研究費や共同研究費などの研究資金について全て記入してください。 > > *参考 令和4(2022)年度研究計画調書(Web入力項目)作成・入力要領* となっていますので、記入は必須です。以前は必ずしも記入が必要なかったので、1人あたり10万ドル程度の予算がもらえるHFSPなどもエフォート記載が必須ではなかったという話も聞きます。 #### Q5. エフォートが高い方が採択されやすいのか 科研費や学振の評価項目は公表されていますが、その中にエフォートに関するものはありません。エフォートは研究費の「不合理な重複」や「過度の集中」を排除するために用いられ、エフォートが高いことは直接の評価対象とはなりません。 ただし、あまりにも低すぎるエフォートは研究遂行の本気度を疑われかねませんし、ボーダーライン前後の申請書を比較する際にはエフォートが高い方が印象はよいでしょう。研究費の種目にもよりますが10〜30%のエフォートを書いておけば問題なく、一部の高額な研究費の場合には40%以上のエフォートであることが求められます。 > **図1.8の概要:** エフォートが低い人「…まあ、それなりにやります」vs エフォートが高い人「全力で頑張ります!!!」。実際問題のところ、エフォートの違いはたかだかこの程度だが、審査員の印象には影響する。