--- title: "序文" book: 科研費申請書の教科書 pages: 前付(toc_page_0003.png) images: toc_page_0003.png --- # 序文 2023年7月 科研費.com 皆さんは、社会学におけるピーターの法則をご存知でしょうか。この法則は、「優れた仕事をした人は高く評価され昇進するが、このプロセスが繰り返されると、彼らは最終的に自分の能力を超えるようなポジションに昇進してしまい、そのポジションでうまく機能できず「無能」になる」というものです。 研究者のキャリアにおいても、この法則は適用されます。つまり、研究者のキャリア初期には研究能力が重視されますが、昇進するにつれて、申請書の作成能力やプレゼンテーション能力など、研究費を獲得するための能力が求められるようになります。研究能力と申請書の作成能力は一部共通する部分もありますが、基本的には別々の能力であり、研究者としてさらに成長するためには、申請書をうまく書く能力を新たに身につける必要があります。 最近では申請書の書き方を指南するハウツー本が数多く出版されており、ネット上にもコツが多く掲載されていることから、申請書作成のハードルはずいぶんと下がってきました。科研費.com(kakenhi.com)でも2016年から科研費申請書作成のノウハウを公開しており、2019年には『できる研究者の科研費・学振申請書 採択される技術とコツ』(講談社)を出版し、多くの読者に申請書作成のコツを届けてきました。 しかし、研究費を巡る状況は厳しさを増しており、より本質的な申請書作成技術について学びたいというニーズの高まりを感じていました。そこで本書は、前著のパワーアップ版として、科研費・学振申請書作成において同質性のある具体的なコツについて解説を大幅に拡充するだけでなく、より本質的な申請書作成技術について学べるようにしました。 本書では申請書を11の要素に分け、それぞれの要素について、何を・どこに・どのような順序で書くのかについての説明に多くのページを割いています。申請書は審査員に対する提案と説得のための文章ですから、どんな種類の研究費であっても書くべき文章の要素はほとんど同じです。その意味でも、本書で学ぶことのできる申請書作成技術は、研究者のキャリアを通じて役立つ一生モノの技術になると考えています。