<研究目的及び研究方法、応募者の研究遂行能力(つづき) 挑戦的研究(萌芽) 2 【1 研究目的及び研究方法、応募者の研究遂行能力(つづき)】 ヒトとショウジョウバエのLGRファミリーは相同性 が高く、そのリガンドも相同性が高い(表)。例えば ショウジョウバエ ヒトLGR1~3とそのリガンド(LH/CG, FSH. TSH) との関係は、ショウジョウバエのdLGR1とGPA2/ GPB5の関係に等しく、LGR7~8とそのリガンドのリ ラキシンとの関係は、dLGR3とインスリン様ペプチド 8との関係に等しい。ヒトのLGR4~6だけは内因性リ ガンドが不明であるが、LGR5 (LGR4とLGR6も含 めて)に対応するショウジョウバエのdLGR2のリガ dLGR2 バーシコン ンドは、バーシコン(bursicon)というヘテロタイマー (bursと pbursのヘテロダイマー)のペプチドホルモ ンである。バーシコンはショウジョウバエ表皮の硬化 や色素沈着を起こすホルモンである。 このようにLGR5にアミノ酸配列が似たショウジョ ウバエ dLGR2の内因性リガンドがbursとpbursのヘテ ヒトとショウジョウバエのLGR受容体とリガンドのアミ ロダイマーのバーシコンであることから、LGR5の内 ノ酸配列は相同性が高い。ヒトのLGR4,5.6 の内因性 因性リガンドも、burs/pbursに類似したペプチドの リガンドは、バーシコンに類似したペプチドホルモンと 想定されているが、現在はまだ不明である。 ヘテロダイマーである可能性が考えられた。 そこでバーシコンにアミノ酸配列のホモロジーの高いヒトのペプチドを、タンパク質データベ ースから選び出し、2種類の組み合わせで培養細胞にヘテロダイマーとして発現させる。そして 発現させたヘテロダイマーのペプチドをLGR5に作用させるアッセイ系を使って、目的とする LGR5の内因性リガンドを見つけ出す計画を着想した。 (タンパク質データベースには bursicon に類似したヒトのペプチドが14種類存在する)ヘテ ロダイマーのバーシコンを形成するbursおよびpbursは、ヒトのbone morphogenic pr (BMP) アンタゴニストである7種のペプチドホルモン(gremlin, PRDC, Cerberus, DAN, USAG1. SOST)と系統発生的に近似している。これら7種のBMP アンタゴニストとbur およびpbursはアミノ酸配列上のシステイン結合の位置が類似しており、AIによる立体構造予測 プログラムの AlphaFoldで予測された立体構造も類似している。さらにこれら7つのペプチドホ ルモンに加えて、von Willebrand factor(VWF)と分泌型ムチン(4種)のC末端部分や、norri および nogginと呼ばれるペプチドホルモンのシステイン結合の位置もbursやpbursに類似してい る。現時点ではこれら14種類のペプチドがburs/pburs類似の哺乳類ペプチドである。 (培養細胞を使ってヘテロダイマーとしてタンパク質を発現させ、アッセイに用いる) 目的のペプチドの全長をコードするCDNAをPCRによって増幅し、14種類の発現ベクターを作 成する。そこから2種類ずつの組み合わせを選び、それぞれ同量の発現ベクターをHEK293細胞 にトランスフェクションして、ヘテロタイマーとして発現させる。予備的な検討では、発現量は 14g/4mL 培養液程度あり、アッセイを行うのに十分な量であった。現在、合成したリガンド 候補タンパク質は、LGR5安定発現株へ作用させて CAMP活性を確認し、内因性リガンドの候補 を絞り込みつつある。現時点の予備実験の結果から、LGR5の内因性リガンドは、哺乳類のバー シコン類似ペプチドのヘテロダイマーよりもさらに複雑なコンプレックスを形成したタンパク質 分子ではないかと考えている。確証には至っていないが、現在、さらに検討を進めている。 ③ 応募者の研究遂行能力 申請者は、リカンド不明のオーファン GPCR をターゲットにして未知のペプチドホルモンの 錦文載の雑誌と発行年 Nature (1999) 探索を行い、これまでにグレリンをはじめとし て、いくつかの新しいペプチドホルモンを発見 し、その機能を解明してきた。グレリンは胃か ら分泌される成長ホルモン分泌刺激活性および 摂食亢進作用を示すペプチドホルモンである。 申請者らによるグレリン発見論文は被引用回数 が7.128件、グレリンに関する発表論文は 12,003編と(2022年9月現在)活発な研究が 行われている。このように申請者は未知のペプ チドホルモンを発見し、その機能解析を行って きた十分な経験を有している。 305