<研究計画調書の概要(つづき)> 挑戦的研究(萌芽)概要2 【研究計画調書の概要(つづき)】 そこでアミノ酸配列や構造的特徴がバーシコンに類似したヒトのペプチドを、タンパク質デー タベースから選び出し、2種類の組み合わせで培養細胞にヘテロダイマーとして発現させる。そ して発現させたヘテロダイマーのペプチドをLGR5に作用させるアッセイ系を使って、目的とす るLGR5の内因性リカンドを見つけ出す計画を着想した。 (タンパク質データベースには bursicon に類似したヒトのペプチドが14種類存在する) バーシコンを形成するbursおよびpbursに類似したヒトのペプチドには、gremlin. (PRDC), Cerberus, Coco, DAN, USAG1, SOST、およびvon Will ムチン(4種)のC末端部分や、norrin,nogginの合計14種類のペプチドがあった。 (培養細胞を使ってヘテロタイマーとしてタンパク質を発現させ、アッセイに用いる) 14種類の候補ペプチドの発現ベクターを作成する。そこから2種類ずつの組み合わせを選び、 それぞれ同量の発現ベクターをHEK293細胞にトランスフェクションして、ヘテロダイマーとし て発現させる。予備的な検討では、発現量は14g/4mL培養液程度あり、アッセイを行うのに 十分な量であった。現在、合成したリガンド候補へテロダイマーは、LGR5安定発現株へ作用さ せてCAMP活性を確認し、内因性リガンドの候補を絞り込みつつある。 申請者らの現時点の予備実験の結果から、LGR5の内因性リガンドは、哺乳類のバーシコン類 似ペプチドのヘテロダイマーよりも、さらに複雑なコンプレックスを形成したタンパク質分子で はないかと考え、現在、さらに検討を進めている。 【応募者の研究遂行能力】 申請者は、リガンド不明のオーファ ンGPCRをターゲットにして未知のペプ チドホルモンの探索を行い、これまで にグレリンをはじめとして、いくつか の新しいペプチドホルモンを発見して きた。グレリンは胃から分泌される成 Biochem Biophys 長ホルモン分泌刺激活性および摂食亢 進作用を示すペプチドホルモンであ る。申請者らによるグレリン発見論文 は被引用回数が7,128件、グレリンに関 する発表論文は12,003編と(2022年9 月現在)活発な研究が行われている。 【挑戦的研究としての意義】 (申請者はこれまでLGR5の内因性リガンド探索に取り組んできた) 申請者はこれまでLGR5の内因性リガンド探索に取り組んできており、消化管組織の抽出物か ら探索を行ってきたが(2011~2012年度の挑戦的萌芽研究:消化管幹細胞に作用する新しい ペプチド・ホルモンの探索と腸管粘膜再生への応用)、その同定までには至らなかった。その理 由として、従来の方法ではリガンドが変性して効率よく抽出されていないこと、内因性リガンド が幹細胞のある一定の時期にしか発現されないこと、幹細胞自体の数が少ないためリガンドの存 在量が極めて少ないこと、などが推測されている。 そこで申請者らは、哺乳類のLGR 5がショウジョウバエのdLGR2にホモロジーが高いのなら ば、その内因性リガンドもショウジョウバエのバーシコンにホモロジーが高いと考え、本研究計 画を構想した。 (未知のリガンドを発見する意義) 生体内には内因性リガンドが不明な(オーファン) GPCR (Gタンパク質共役型受容体)が数多く存在し、そのリガンドの同定は未知の生理作用の解明や、 治療薬の開発などにつながる。実際に申請者が発見したグレリンについては、グレリン様作用を 持つ低分子アゴニスト(アナモレリン)が「がん悪液質」の治療薬として2021年より臨床応用 されている。このようにオーファンGPCRの研究から発見された内因性リガンドは、その生理作 用の解明から治療薬への応用につながることが多く、未知の内因性リガンドを発見する意義は非 常に大きい。 LGR5は消化管上皮や毛包の幹細胞マーカーとして知られていることから、その内因性リガン ドは幹細胞の維持や増殖分化に対する作用が想定されている。本研究によってLGR5の内因性リ ガンドが発見されれば、再生医学分野へ大きな貢献ができると期待される。 303