<研究目的,研究方法など(つづき)> 基盤研究(C)(一般) 2 【1 研究目的、研究方法など(つづき】 セスすると推定されている。グレリン受容体の場合はこのギャッ プ構造が、グレリンの脂肪酸修飾基と相互作用していると考えら 申請者らが明らかにした不活 性型のグレリン受容体の構造 れる。またGPCR受容体の活性化に重要なTM6とTM7という膜 通領域が関与しているために、グレリン受容体の活性化メカニズ ムへの関与も考えられた。 (本研究の着想に至った経緯) 申請者は1999年に摂食亢進ホルモンのグレリンを発見し、そ の構造を明らかにした。グレリンはN未端から3番目のセリン残基 の側鎖がオクタン酸によって修飾されており、しかもこの脂肪酸 修飾基が活性発現に必須であることを見いだした。この活性発現 の仕組みを解明するには、グレリンが結合したグレリン受容体の 3D構造解析が必要であったが、当時は解析技術が未確立だった。 2007年になってスタンフォード大学のコビルカたちによって GPCRの3D構造解析技術が確立されたが、個々の受容体にはそれ ぞれ特性があり、受容体ごとにアミノ酸の置換による安定化や、 T4リゾチームなどの共結晶タンパク質との融合、受容体抗体の使 用など、さまざまな検討が必要であった。申請者はグレリン受容 体の基底状態(不活性型)と活性型の両方の3D構造解析を目指し グレリン受容体のTM6 とTM7の間のギャップ 構造。この間にグレリン の脂肪酸修飾基が入り込 むと考えられる。 て、それぞれ次のような戦略で進めた。 ① 不活性型グレリン受容体の構造解明:グレリン受容体に融合タンパク質としてbRIL(熱支 定化したアポ型チトクロム b562 変異体)を用い、アンタゴニストとグレリン受容体抗体との複 合体によって結晶化に成功し不活性型のグレリン受容体の3D構造を解明した(論文準備中)。 ② 活性型グレリン受容体の構造解明:不活性型の結晶構造解明に成功したアミノ酸変異グレ リン受容体と、グレリンを結合させて結晶化を試みたがうまくいかなかった。またグレリン受容 体を活性型に固定するモノクローナル抗体やナノボディ(アルバカの一本鎖重抗体)の作成を 試みたが、グレリン受容体の抗原性が低く、これもうまくいかなかった。 そこで活性型グレリン受容体の3D構造を明らかにするために、アミノ酸変異によって高活性 型のグレリン受容体を用いて結晶化し線構造解析を試みることと、クライオ電子顕微鏡によっ て受容体・リガンド・Gタンパク質の複合体で3D構造を解明する、今回の研究計画を立てた。 (解決すべき学術的「問い」) 上記のように、グレリンの脂肪酸修飾基とグレリン受容体と の相互作用を解明するには、グレリンとグレリン受容体が結合した状態の3D構造を解明す る必要がある。しかし、どのGPCRについても内因性リカンドが結合した活性型受容体の3D 構造を明らかにすることは現在でも困難な研究であり、グレリン受容体においてもまだ成功して (2)本研究の目的および学術的独自性と創造性 (本研究の目的)本研究の最終目標は、グレリンが結合した状態でのグレリン受容体の3D構 造を解明することによって、グレリンの脂肪酸修飾の部分が、どのようにして受容体の構造を不 活性型から活性型に変換するのか、そのメカニズムを解明することである。 (本研究の学術的独自性と創造性) グレリンはペプチド部分だけでなく、脂肪酸の修飾基が ないと活性を示さないという特徴的な構造をしており、なぜ脂肪酸部分がグレリン受容体の活性 化に必要なのかは不明であった。申請者らはこの疑問に答えるためにグレリン受容体の結晶構造 解析を進め、まず不活性型の構造を解明した。その結果、TM6とTM7間のギャップ構造部分の 疎水性アミノ酸と、グレリンの脂肪酸部分の相互作用によって、TM6が活性型の位置に動き、 それによって受容体が活性型に転換することが示唆された。このような膜通領域間のギャップ 構造は脂質GPCRにもみられることから、グレリン受容体はペプチド性 GPCRと脂質 GPCRの両 方の特徴をもったハイブリッド型GPCRである。ただしこのギャップ構造は、脂質GPCRの場合 はリガンドが受容体の側面からリガンド結合ポケットに侵入する経路であることが、グレリン受 容体(リガンドは細胞膜表面から侵入)とは異なっており、活性化機構の違いが示唆される。 グレリンとグレリン受容体が結合した3D構造が解明されれば、グレリンの脂肪酸修飾基による (289