4 本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心をなす学術的「問い」の書き方 (本文) (1)本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心をなす学術的「問い」 (本研究の学術的背景) 申請者らは1999年に摂食亢進・成長 ホルモン分泌促進作用を有するペプチ ド・ホルモンのグレリンを胃から発見し (Kojima et al. Nature 1999)、その生体 内での役割について研究を進めてきた (Nakazato, Kojma (4/7人) et al. Nature 2001他)。このグレリンに関して、現時 点(2015年9月)で7,800件以上の研究 論文が発表され、申請者らのグレリン発 見のオリジナル論文は被引用回数が 5,000回を超えている。 グレリンは典型的なGタンパク質共役 オクタン酸の修飾基が、どのようにしてグレリン 受容体を活性化するのかを明らかにするには、 受容体の結晶構造の解明が必要である。 型受容体(GPCR)であるグレリン受容体 に結合して、その生理作用を現す。グレリンはペプチド・ホルモンであるが、N末端から3番目 のセリン残基が中鎖脂肪酸のオクタン酸によって修飾されており、しかもこのオクタン酸が受容 体の活性化に必須であるという極めて珍しい構造をしている(Kojima et al. Nature 1999 & Physiol Rev 2005)。なぜグレリンがペプチド部分だけでは受容体を活性化できず、オク 修飾があって始めて受容体を活性化できるのか?それを明らかにするためには、グレリン受容体 の結晶構造の解明が必要であり、不活性型の構造だけでなく、リガンドが結合して活性型になっ た構造の両方を明らかにして、受容体の動きを見る必要がある。 (本研究の着想に至った経緯) 申請者はグレリン受容体の結晶構造解析を目指して3年前から研究をスタートし、〇〇大学0 ●教授の研究室と共同研究を行っている。これまでに結晶構造解析のためのグレリン受容体を改 変したいくつかのコンストラクトを作製し、大量発現による精製から、結晶化のスクリーニング にまで進んでいる。不活性型のグレリン受容体については、アンタゴニストが結合した状態の受 容体タンバク質を精製し、結晶化の条件検討にまで至っている。しかし活性型のグレリン受容体 については、グレリンや合成アゴニストが結合したグレリン受容体は極めて不安定で、活性型の ままでは精製ができず、結晶化にまで至っていない。 そのためモノクローナル抗体を使ってグレリン受容体を活性型に固定させることを計画した (挑戦的萌芽研究H26~27年度)。しかしマウスのモノクローナル抗体は受容体のグレリン結 部位に対して大きいことや、融合細胞のスクリーニングには限度があるため、現在でもグレリン 受容体を活性型に固定する抗体は得られていない。そこでモノクローナル抗体に代わるツールと して、分子量が小さく、受容体のリガンド結合部位の認識も可能なナノボディの作製を考えた。 (研究課題の核心をなす学術的「問い」) 本研究の学術的「問い」は、①グレリンの脂肪酸修飾基(オクタン酸)は、なぜグレリン受容 体の活性化に必なのか?そして、②グレリンがグレリン受容体に結合した際、どのような分子 機構によって受容体が活性化するのか?である。 図3-30●「本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心を 学術的「問い」」の書き方の例 平成28年度に採択された基盤研究(C)の申請書の実例を令和7年度の様式に変更したもの.「学術的背景」「着想 に至った経緯」「学術的「問い」」に分けて苦くのはよい。なお。「本研究の学術的背景」には申請者以外の研究者の 研究成果を書くべきだが、グレリンは私たちが発見したホルモンであり、私たち自身の研究成果が学術的背景(こ れまで世界でどのような研究が行われてきたか)であるため、この例では私たちの研究成果を中心に書いている い 章 ことができる。そして「研究の学術的背景」をきちんと書いてこそ、次の「本 研究の着想に至った経緯」「研究課題の核心をなす学術的「問い」」が活きて くる. また背景を長々と書きすぎないこと、「着想に至った経緯」に至るまでに背景 を1ページ以上も費やすのならば、審査委員も読み進めるのが嫌になることだ (141