===== Page 256 ===== とが多く、世界的に研究データの公開や共有を通して研究成果のオープン化が 進んでいる.日本においても公的資金により得られた研究データの管理や活用 について機関リポジトリが整備されてきたが、研究データの収載が進んでいな いことや、研究データポリシーが未整備であるといった課題がある。このため 科研費においてもDMPの提出が求められるようになった。 DMP の様式例は交付内定時に示される(学術振興会ホームページにも参考様 式として「DMP 様式例・記入例」がある:https://www.jsps.go.j /01_seido/10_datamanagement/index.ht 容に沿って研究課題における研究成果や研究データの保存や管理を行うことが 必要だ. 研究データマネジメントの具体的な進め方は以下の通りである。 ①研究開始前 DMPの様式例を参考にして、研究開始にあたり研究データの管理計画を策定 する.この段階ではDMPの提出は不要である。 ②研究実施中 DMPにもとづき研究データを適切に管理しつつ研究を進める。研究の進捗に 応じてDMPを適宜更新する。 ③各年度の研究終了後 科研費によって得られた研究データは、機関リポジトリや分野別リポジトリ に研究者が収納することで、研究終了後も適切に管理される。また研究者が研 究データの情報であるメタデータを提出すると、KAKEN(科学研究費助成事 業データベース)において登録・公開されることが予定されている.そして将 来的には国立情報学研究所データベースのCiNii Researchに連 データの利活用が広く行われる予定である。 2 不採択のとき一採択されなかったら、どうする? 不採択の通知 これまでは科研費電子申請システムにログインして、申請した課題が表示さ れていないときは不採択だったが、令和4年度からは「審査結果通知メニュー」 画面の応募した研究種目に「不採択」ときちんと表示されるようになった。 また、不採択の研究課題について、審査結果はオンライン上で開示される。 応募時に「審査結果の開示」を希望した場合、「審査結果通知メニュー」画面に (256 科研費獲得の方法とコツ第9版 ===== Page 257 ===== 2不採択のとき一採択されなかったら、どうする? 科研費電子申請システム 審査結果開示 小区分 小愛真会名 203424267168 53050皮膚科学関温 第53050小委員会 裏交細者に有用するペプチドホルモンの保索 ※各部を区分の応募件数が多い場合には、その区分の応募護題を振休的に分割し、それぞれ独立に審査を行いました。分割が行われた場合には小要員会名の使るにローマ数字が表示 ご応募いただいた上記研究課題の審査結果は次のとおりでした。 旅R事 ※営明(8)一般 11,5554 17件 3234円 基盤研究(B)一般は、2段書送協会を実施しており、当誌小委員会では6名の同一の客会委員が、個々の研究課題について2段階にわたり送部会を実施し採択時は題が決定されま 28.00 23.5% 図5-6●不採択の通知書の電子開示1 令和5年度基盤研究(B)の実例. は「審査結果開示状況」があり、不採択の応募課題の評価結果が開示される。 令和6年度の審査結果の開示は基盤研究(A,B,C)と若手研究では4月11日 に行われており、挑戦的研究(開拓・萌芽)では8月1日に行われた。不採択 課題について、基盤研究(B,C)と若手研究では1段階目の書面審査のおおよ その順位などが、基盤研究(A)では審査結果の所見と書面審査のおおよその 順位などが公開される. 審査結果開示のページでは、応募した研究種目名・区分・研究課題名に続い て、研究種目名と区分における応募件数、採択件数、採択率の結果が示されて いる(図5-6). 次に応募した研究課題について「1.審査区分における採択されなかった研 究課題全体の中での、書面審査の総合評点に基づくおおよその順位」がABCの 3段階で示されている。ちなみにA(上位20%),B(上位21~50%),C(50% 以下)である(図5-7). それに続いて「2.書面審査における評定要素ごとの評価結果」が記入され ている、令和5(2023)年度公募における基盤研究と若手研究では「(I)【評定 要素ごとの結果】」は、①研究課題の学術的重要性、②究方法の妥当性、③ 究遂行能力及び研究環境の適切性、について4段階で点数が付いている。応募 者の平均点(複数の審査委員による採点の平均点)と採択課題の平均点が表示 されている。評定区分は、4:優れている、3:良好である、2:やや不十分であ る、1:不十分である、となっている。 なお、令和7年度公募からは、基盤研究(A,B,C)において「研究課題の 国際性に関する評定要素」が加わり、これも4段階の評定区分で評価されるこ (257 ===== Page 258 ===== 1. 審査区分における採択されなかった研究課題全体の中での、書面審査の総合評点に基づくおおよその おおよその順位は「A」でした。 (参考1)おおよその順位 A 審査区分における採択されなかった研究課題全体の中で、 上位20%に位置していた B 審査区分における採択されなかった研究課題全体の中で、 上位21%~50%に位置していた C 審査区分における採択されなかった研究課題全体の中で、 上位50%に至らなかった 2. 番面審査における評定要素ごとの評価結果 1段階目の審査の各評定要素については、4段階の絶対評価により審査を行っています。あなた の評定要素毎の審査結果は次のとおりでした。 審査では、総合評点に基づき採否が決定されます。審査にあたり、高い総合評点を付す研究課題 は、必ずしも、全ての個別要素において高い評価を得る必要はない旨、評定基準等で示されてい ます。 (1)【評定要素ごとの結果】 あなたの研究課題の平均点及び当該審査区分において採択された研究課題の平均点 評定要素 ①研究課題の学術的重要性 ②研究方法の妥当性 ③研究行能力及び研究環境の適切性 あなたの平均点 2.83 3.00 3.00 採択課題の平均点 3.39 3.22 3.43 ※当該審査区分に採択課題がない場合は、採択課題の平均点は「0.00」と表示されます。 (参考)①~③の評定基準 評点区分・評定基準 4 優れている 3 良好である 2 やや不十分である 1 不十分である 図5-7●不採択の通知書の電子開示2 令和5年度基盤研究(B)の実例。例年ほぼ同じ内容だが、年度によって少し異なることもある。 とになっている(この評定要素は充足率に影響を与える。参照3章9:本研究が どのような国際性を有するか). さらに「(2)【審査の際「2(やや不十分である)」又は「1(不十分である)」 と判断した項目(所見)】」には、何人の審査委員が2または1と採点したのか 表示してある(図5-8).そして、「3.その他の評価項目の評定結果」では「研 発経費の妥当性について」の審査委員の評価が記載されている(図5-9).「研 究経費の妥当性について」については、例えば外部委託費が多すぎないかとか、 (258 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 259 ===== 2不採択のとき一採択されなかったら、どうする? (2)【審査の際「2(やや不十分である),又は「1(不十分である)」と判断した項目(所見)】 評点「2(やや不十分である)」又は「1(不十分である)」が付された評定要については、そのように評価した委員の数を項目ごとに「*」で示しています。(最 評定要素 客室委員の数 ①研究講の学術的蔵要性 2研究方法の受当性 3研究行能力及び係究環境の適切性 ・学術的に見て、推進すべき重要な研究課題であるか ・研究課題の技心をなす学術的「問い」は卵液であり、予備的独自性や創造性が認められる* ・研究計画の着想に至る経持や、関連する国内外の研究動向と研究の位置づけは明確である* ・本研究課題の遂行によって、より広い学術、料学校るいは社会などへの波及効果が期 待できるか ・研究日的を達成するため、研究方法等は具体的かつ適切であるか。また、研究経費は研究 計画と数合性がとれたものとなっているか ・研究目的を達成するための準備状況は適切であるか ・これまでの研究活動等から見て、研究計画に対する十分な還行力を有しているか ・研究計画の送行に必要な研究施設・設備・研究資料等、研究環塊は登っているか * ※審査の※「2(やや不十分である)」又は「1(不十分である)」を付した※査委員がいない場合、 「*」は表示されません。 図5-8●不採択の通知書の電子開示3 令和5年度基盤研究(B)の実例。例年ほぼ同じ内容だが、年度によって少し異なることもある。 3.その他の評価項目の評定結果 研究経費の妥当性について 「研究経費の内容に問題がある」と評定した審査委員が1名いました。 4. 留意事項 人権の保護及び法令等の遵守を必要とする研究課題の適切性について 「法令遵守等の手続き・対策等に不十分な点が見受けられる」と指摘した審査委員はいませんでした 図5-9●不採択の通知書の電子開示4 令和5年度基盤研究(B)の実例、例年ほぼ同じ内容だが、年度によって少し異なることもある。 パソコンやソフトなど通常は準備されているべきものに多額の研究費が計上さ れていないか、などがチェックされる〔参照3章13:研究経費とその必要性) 後に「4.留意事項」では「人権の保護及び法令等の遵守を必要とする研究課 題の適切性について」の審査委員の評価が記載されている(図5-9).ここは申 請書のこの項目で、学内の倫理委員会や遺伝子組換え実験安全委員会などに研 究計画を申請して承認を受けていること、あるいはこれから受けることが書か れていれば問題ない〔参照 3章11:人権の保護及び法令等の遵守への対応)。 このような通知書の内容からは、第1段審査評点のおおよその順位がA~O の段階で書かれているだけで、具体的な順位や、あとどのくらいで採択圏内に 入るのかなどはまったくわからない.また評定要素における採択課題との平均 点の差や、評点が2か1が付いた項目を指摘されても、残念ながら個々の申請 書の内容についてのコメントではないので、具体的にどこが悪いのかわからず、 (259 ===== Page 260 ===== 次年度の申請書を改良するのに、あまり役に立つとは思えない。 このように審査結果の開示内容は少しずつ改善されているのだが、まだまだ 不十分だ。現在、すべての申請書に対してすべての審査委員がコメントを書く ことになっているので、将来的には、申請内容のどこが悪いのか審査委員の直 接な意見と、また応募件数のなかで何番目だったのか、などの詳細な情報が開 示されるようになるのかもしれない。 Column 初めての科研費(Gくんの場合) 何年も前に初めて若手研究が採択されたとき、 単純な嬉しさと同時に、心底ほっとした。なぜ かというと、この研究所のスタッフは全員が料 研費を獲得していた。危うく自分ひとりが科研 費をもらえず、周りに頼って研究をするという 非常に肩身の狭い思いをするところであった。 そのため単純に研究費がもらえる以上に、自分 にとって精神的にとても大きな意味をもった採 択であった。 これまで地方国立大学を出た私にとって、科 研費はあまり身近なものに感じられなかった。 理学部の学生時代からそれほど多くの研究費を 獲得した人は周りにいなかった。どちらかとい うと科研費や特別研究員(学振)はある程度も らえる人は決まっており、書類作成に時間と労 力を傾けても仕方ないという声さえ聞こえてき ていた。また、ポスドクとして採用された研究 所には潤沢な研究費があり、ポスドクはとにか く研究費よりもデータを出すことを第一に求め られた(それでもたいした結果は出せなかった が…・・).こういった経緯で、それまで、まとも に研究費の申請書を書いたことがなかった。 そのため、この分子生命研に来て初めて真剣 に科研費申請に取り組んだ。しかし、まず初め に申請書の書き方がよくわからない。これまで も,格好だけをまねて書いていたものの、誰に 教わるでもなく本当に自己流であった。できあ がった申請書を提出前に教授に見せたところ、 「まったく読めたものではない!」と書き直し を命じられ、それから周りの研究者の採択され た申請書をみて、申請書の書き方を初めて知っ た。わかりやすく端的な言葉で書かれており、 それに比べて自分の申請書は自己満足で、読み 手の読みやすさを考えていないものであると感 じた。書き直して申請したが採択されず、その 後もチャレンジを続けたが、評価Aをもらうこ とはあっても、毎年連続きであった。この原 因の1つとして、目立った実績がないことを理 由に挑戦的萌芽研究に出していたのがよくな かったと思われる。 そしてついに採択、内容もさることながら、 学内の講習会などで学んだ書き方のコツをもと に、図を使い、わかりやすく書いたことと、実 績はないが駄目でもともとという気持ちで、採 択数の多い若手研究に出したのがよかったのだ ろう.これでようやく研究者としてのステップ を一歩上れたような気にはなったが、今回の採 択は研究室の先生方の威光や、研究室より出た 素晴らしい論文の恩恵を少なからず受けている と思われる。それを考えると、これからの研究 の成果と次の研究費獲得が、自分の真価を問う 意味で重要だと考えている。 (260) 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 261 ===== 2不採択のとき一採択されなかったら、どうする? もし、採択されなかったら・・・ 申請書を出す前から「採択されなかったら…・・」とは縁起が悪いが、その場合 は次のことを忘れずに行おう。 ①採択されなかった原因を考えよう 何が悪かったのか分析しよう。日本学術振興会のホームページから、審査区 分の状況を調べよう.応募したのは競争の激しい分野だっただろうか?また 「KAKEN (科学研究費助成事業データベース)」から採択課題を調べて、 分野では誰がどのような課題で採択されているのか、よく研究しよう。同じ申 請分野で採択された人は間違いなくこの先もライバルになる。また、採択され た人、あるいはラボのメンバーにもう一度申請書を見てもらって、意見を聞く のは非常に有効だ。 ②審査結果から自分の申請が採択圏内までどのくらいなのか知ろう 採択に準ずるレベルなのか、それ以下なのか?通知される審査結果からは、 あなたの申請は採択圏内までどのくらいなのか、ごく簡単にしかわからない。 Column 科研費がなくても生き延びる方法 科研費に採択されなかったときには、どう やって研究を続けていったらいいのだろうか? ほとんどの国立大学の場合は、大学から各教室 へ支給される研究費は微々たるもので、光熱水 費や電話代だけで消えていってしまう。科研費 が獲得できなかった場合,冗談抜きに「今年は 研究費がゼロ」状態になってしまう.すると、 「研究費がない」→「試薬・器具が買えない」→ 「実験ができない」→「業績が出ない」→「採 択されない」→「研究費がない」と悪循環に 陥ってしまう.こんなときにはどうやって研究 活動を続けていったらいいのだろうか? これに関して、私のラボのメンバーで知恵を 出し合ったアイデアが次のものだ(なぜ、こん な話し合いをしたのかはさておいて). ①まず簡単なのは、自分の出身ラボの教授にお 願いして、研究費を分けてもらうこと、知り合 いの研究者でも可。そのために次年度に向けて 研究分担者に加えてもらって、研究費を分配し てもらう. ②科研費以外の国の研究費や民間財団の研究助 成に応募する。科研費同様,採択のハードルは 高い〔参照5章4:科研費以外の研究費への応 募の可能性). ③自腹を切る。自分の給料から研究費を捻出する。 ④研究を止める(悲しすぎる…・・). そして現実的によいと思うアイデアは、 ⑤仲間を募って互いに協力して研究を続ける。 1人で研究を続けていくのは大変だが、自分と 同世代の近くにいる研究者と協力体制を作って いけばなんとかなる。機器類はもちろんのこと、 試薬・器具などを融通しあうというものだ、何 人かの研究者が集まれば、各人のネットワーク からさらに人脈が広がっていく、こうやってな んとか研究を続けて業績をあげ、科研費に採択 されるのをじっと待つのだ。 独立したばかりの若い研究者諸君、くれぐれ も仲間を大切に. 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