===== Page 224 ===== (224 2 図の挿入 科学論文などでは文章を読むだけよりも、図を参照しながら読む方が、ずっ と内容を理解しやすい。科研費のような申請書においても、視覚的な効果が非 常に有効であることはいうまでもない.この本のなかでも申請書には図やイラ スト、写真などを使うことを勧めている。ただし主要な応募種目では、審査委 員に届く申請書はモノクロ印刷になっているので注意が必要だ(後述). 図やイラストがあるかないかで、印象はがらりと変わる。実例をあげておく (図4-6,図4-7, 参照図3-36,およびその周囲の文章)。 図の注意点 赤ペン添削 HB3 ● case 02. 73~76 ●申請者のギモン 7,9~ 14, 17. 22 図やイラストを使うときの注意点をまとめると、次の通りである(参照3章 の図3-50,図3-51,図3-61~図3-64、およびその周囲の文章). ①簡単な図 1枚の図やイラストだけで十分理解できるように、簡単な図にすること。複 雑な図はかえってわかりにくくなるから注意すること(図4-8)・ ②注目すべきところをしっかりと示す 複雑な図はどこを見ていいのかわからず、図の意味をつかむのが困難である (図4-9). 図のなかのどこが一番大切なのか、審査委員に見てほしいのかを考 えて、図を作成すること。 ③オリジナルな図 他人の本や論文から引用してきた図やイラストなどは使わない。あくまでオ リジナルな図やイラストを使うこと、自分の論文の図を使うときにも、そのま ま使うのではなく、英語を日本語に直す。重要な部分だけを使って必要のない 部分をカットするなど工夫すること。 ④文章を補助する 図やイラストで示す内容は、予備データや研究計画の概要、研究者の役割分 担など文章を補助するものにする。 ⑤印刷を想定する 印刷したときに鮮明な図にすること、審査委員の手に届く申請書の図は、令 和7年3月現在、主要な種目はまだモノクロ印刷である。濃淡をうまく利用して、 モノクロ印刷でもよくわかるような図にしよう。特に図中の文字がはっきりと読 るようにフォントの大きさに注意すること。 すでにいくつかの申請書ではカラー化されているが、申請書で実際に色を必要 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 225 ===== 図の挿入 A) (概要) グレリンは申請者らが 1999 年に胃から発見した強力な成長ホルモン分泌促進作用と摂食亢進 作用を持つペプチド・ホルモンである。グレリンは発見されてからまだ4年余りしか経っておらず、 脂肪酸で修飾された活性型のグレリンに至る生合成過程や、グレリンのノックアウト・マウスの 表現型解析などの未だ解明されていない基礎的な問題が多く残されている。 本研究はこれらの問題を解決し、さらにグレリンを治療薬として臨床応用へと展開するための 研究基盤を確立することが目的である。そのための具体的な研究項目は次のものである。 ①グレリン遺伝子から活性型グレリンになるまでの生合成過程の解明、②グレリン・ノックアウ トマウスの自律神経機能の解析、③グレリン受容体サブタイプの探索とグレリン関連ペプチドのス クリーニング、④胃摘出患者における血中グレリン濃度測定の意義と、術後食欲不振症との関連、 ⑤アンチエイジング対策のためのグレリンの骨・筋肉への作用解明 本研究によってグレリンの基礎的・応用的研究がさらに進展することが期待される。 (1) 本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」 申請者らは 1999 年に胃組織からグレリン(ghrelin)を発見し(Kojima et al. Na これが成長ホルモン分泌促進作用を示すとともに、強力な摂食亢進作用を持つことを明らかにし た (Nakazato et al. Nature 2001)。グレリンは胃から分泌されて血中 モンであり、3番目の Ser残基の側鎖がカーオクタン酸 (C8:0)によって脂肪酸修 さらにこの脂肪酸修飾が活性発現に必であるという極めてユニークな構造をしている。グレリ ンは、末梢投与によって摂食亢進作用を示す内因性のペプチド・ホルモンとして唯一のものであり、 血中投与や皮下投与によって強力な摂食亢進作用を示す。グレリンは摂食促進や成長ホルモンの 分泌を調節することによって、生活習慣病や摂食障害の病態と密接な関連がある。 4 章 B) グレリンは申請者らが 1999年に胃から発見した強力な成長ホルモン分泌促進作用と摂食亢進 作用を持つペプチド・ホルモンである。グレリンは発見されてからまだ4年余りしか経っておらず、 脂肪酸で修飾された活性型のグレリンに至る生合成過程や、グレリンのノックアウト・マウスの 表現型解析などの未だ解明されていない基礎的な問題が多く残されている。 本研究はこれらの問題を解決し、さらにグレリンを治療薬として臨床応用へと展開するための 研究基盤を確立することが目的である。そのための具体的な研究項目は次のものである。 ①グレリン遺伝子から活性型グレリンになるまでの生合成過程の解明、②グレリン・ノックアウ トマウスの自律神経機能の解析、③グレリン受容体サブタイプの探索とグレリン関連ペプチドのス クリーニング、④胃摘出患者における血中グレリン濃度測定の意義と、術後食欲不振症との関連、 ⑤アンチエイジング対策のためのグレリンの骨・筋肉への作用解明 本研究によってグレリンの基礎的・応用的研究がさらに進展することが期待される。 (1) 本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」 申請者らは 1999年に胃組織からグレリン (ghrelin)を発見し(Kojima et al. Nature 1999) こ れが成長ホルモン分泌促進作用を示すとともに、強力 な摂食亢進作用を持つことを明らかにした (Nakazato et al. Nature 2001)。グレリンは胃から 分泌されて血中を流れるペプチド・ホルモンであり、 3番目のSer 残基の側鎖がnーオクタン酸(C8:0)に よって脂肪酸修飾を受けており、さらにこの脂肪酸修 飾が活性発現に必須であるという極めてユニークな構 造をしている。グレリンは、末梢投与によって摂食 進作用を示す内因性のペプチド・ホルモンとして唯一のものであり、血中投与や皮下投与によっ て強力な摂食亢進作用を示す。グレリンは摂食促進や成長ホルモンの分泌を調節することによっ て、生活習慣病や摂食障害の病態と密接な関連がある。 図4-6●図やイラストの効果1 B)はA)に図を加えただけ。たった1つの図があるかないかで、全体の印象が変わってしまう。 (225 ===== Page 226 ===== A) 1研究目的、研究方法など 本研究では申請者らが発見した摂食亢進ホルモンのグレリンを対象として、その受容体を活性 化するナノボディをアルパカで作製し、活性型グレリン受容体の結晶構造解析のツールとする。 近年、多くのGPCRの結晶構造が明らかになってきたが、ほとんどがアンタゴニスト結合状感 の不活性型で、アゴニストが結合した活性型受容体の結晶構造の例は少ない。これは活性型受容 体の動きが大きく結晶構造をとりにくいためである。 本研究ではグレリン受容体発現細胞のセカンドメッセンジャー変化を指標として、受容体を活 性化できるナノボディを探索する。ナノボディは分子量が小さいためグレリン受容体のリガンド 結合部位が認識可能である。このナノボディを使ってグレリン受容体を活性型に固定し、活性型 のグレリン受容体の結晶構造を解明する。これによってグレリンのオクタン修飾部分がどのよう に受容体を活性化するのかが明らかになると期待される。 (1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」 申請者らは1999年に摂食亢進・成長ホルモン分泌促進作用を有するペプチド・ホルモンのグ レリンを胃から発見し(Kojima et al. Nature 1999)、その生体内での役割について研究を進め てきた(Nakazato, Kojima (4/7人) et al. Nature 2001他)。このグレリンに関 (2015年9月)で7,800件以上の研究論文が発表され、申請者らのグレリン発見のオリジナル論 文は被引用回数が5,000回を超えている。 グレリンは典型的なGタンパク質共役型受容体(GPCR)であるグレリン受容体に結合して、そ の生理作用を現す。グレリンはペプチド・ホルモンであるが、N未端から3番目のセリン残基が 中鎖脂肪酸のオクタン酸によって修飾されており、しかもこのオクタン酸が受容体の活性化に必 であるという極めて珍しい構造をしている(Kojima et al. Nature 1999 & Physiol Re 2005)。なぜグレリンがペプチド部分だけでは受容体を活性化できず、オクタン酸の修飾があっ て始めて受容体を活性化できるのか?それを明らかにするためには、グレリン受容体の結晶構造 の解明が必要であり、不活性型の構造だけでなく、リガンドが結合して活性型になった構造の両 V B) 1研究目的、研究方法など 本研究では申請者らが発見した摂食亢進ホルモンのグレリンを対象として、その受容体を活性 化するナノボディをアルパカで作製し、活性型グレリン受容体の結晶構造解析のツールとする 近年、多くのGPCRの結晶構造が明らかになってきたが、ほとんどがアンタゴニスト結合状態 の不活性型で、アゴニストが結合した活性型受容体の結晶構造の例は少ない。これは活性型受容 体の動きが大きく結晶構造をとりにくいためである。 本研究ではグレリン受容体発現細胞のセカンドメッセンジャー変化を指標として、受容体を活 性化できるナノボディを探索する。ナノボディは分子量が小さいためグレリン受容体のリガンド 結合部位が認識可能である。このナノボディを使ってグレリン受容体を活性型に固定し、活性型 のグレリン受容体の結晶構造を解明する。これによってグレリンのオクタン修飾部分がどのよう に受容体を活性化するのかが明らかになると期待される。 (1) 本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」 申請者らは1999年に摂食亢進・成長ホルモン 分泌促進作用を有するペプチド・ホルモンのグレ オクタン酸なしのグレリン リンを胃から発見し(Kojima et al. Nature 1999)、その生体内での役割について研究を進め てきた (Nakazato, Kojma (4/7人) et al. Nature オクタン酸 2001他)。このグレリンに関して、現時点 (2015年9月)で7,800件以上の研究論文が発表 され、申請者らのグレリン発見のオリジナル論文 は被引用回数が5,000回を超えている。 グレリンは典型的なGタンパク質共役型受容体 活性化あり オクタン酸の修飾基が、どのようにしてグレリン 受容体を活性化するのかを明らかにするには、 受容体の結晶構造の解明が必要である。 (GPCR)であるグレリン受容体に結合して、その 生理作用を現す。グレリンはペプチド・ホルモンであるが、N未端から3番目のセリン残基が中 鎖販みのオクタン※ のオクタン製には容体の注意が必須 図4-7●図やイラストの効果2 図4-6と同じく、B)はA)に図を加えただけ。 (226 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 227 ===== 図の挿入 A)幹細胞マーカー LGR5 の内因性リガンドを発見する ショウジョウバエのバーシコンに類似したペプチド B) ヘテロダイマーの形成 アッセイ 腸管上皮幹細胞マーカーの LGR5 受容体 ニューロメジンS 基礎研究 摂食行動 ・体内時計 ・免疫応答 ・生殖機構 ・その他 応用研究 ・ヒト・コンパニオンアニマルでの 肥満、拒食症の治療・時差ぼけ、リズ ム障害の治療・感染症に対する創 薬など ・家畜での効率的食肉生産・分娩誘 発、昼間分娩誘起法の確立など CAMP 温度4 LGRS の内因性リガンドの同定 腸管上皮幹細胞への作用、管粘膜再生への応用 研究計画の椒略 図4-8・実際の申請書に使った研究計画の模式図 A)は研究計画・方法を模式的に書いたもの。B)は計画全体の流れを書いたもの。図はオリジナルなものを作り、 一目見てわかりやすいものにすること。濃淡にも注意すること。 A)複雑な図の例 倫理教育力の強化 患者が抱える問題の解決 医療の質の向上 医師の倫理的感受性 倫理的行動力の強化 医学部生の倫理的感受性の強化: 医学部教員の倫理的感受性・行動力の強化 医療情報SNSの有用性及び課題 ③④ 医学部教員の倫理的感受性・倫理的行動力の 強化に関する検証 医療倫理に関するSNSサイトの構築 ①(国内外の医療倫理教育、オンライン教育に関する文献研究 B) シンプルにした見本 ①国内外の医療倫理教育、オンライン教育に関する文献研究 ② 医療倫理に関するSNSサイトの構築 3医療情報SNSの有用性及び課題 ④ 医学部教員の倫理的感受性・倫理的行動力の強化に関する検証 医学部教員の倫理的感受性・倫理的行動力の強化 ・医学部教員の倫理教育力の強化 ・医学部生の倫理的感受性の強化 ・医師の倫理的感受性・倫理的行動力の強化 ・患者が抱える問題の解決 ・医療の質の向上 図1:本研究の税要 図4-9●「研究の概略図」の改善前と改善後 A)改善前ではバックの矢印が目立ちすぎるし、文字の枠の大きさがばらばらで統一感がない。B)改善後は、研究テーマを中心に据 究項目や目標をできるだけシンプルにした。 とするのは図や写真である。色を使うときの注意点は、色の種類を多くしすぎない ことと、原色系の強いを避けること、そして、図の一番大切なところをアピール するために色を使うことだ〔参照3章1:申請書を書く前の注意点◆申請書のカラー化 への対応). 4 章 (227 ===== Page 228 ===== 申請書へ図を入れる方法 科研費申請書はMicrosoft Word を使って作成する人がほとんどだと して図は Adobe Illustrator や Microsoft PowerPoint う.挿入する図のファイル形式としては、Illustrator で作成した図はJPEG やPNG形式に変換するのが一般的だが、PowerPointで作成した図はコピー ペーストでそのまま申請書にもってくることができる。 Wordファイルに図を入れるのはなかなか難しい.図を入れる手順をここに 書いておく、なお、Wordのバージョンにより、メニュー表示や操作手順が多 少異なる。ここでは Microsoft Word for Macバージョン16 する. ①Wordファイルの申請書上で、図を挿入する場所にカーソルを置く・ ②メニューバーから「挿入」→「写真」→「画像をファイルから挿入...」と進 んで、目的の図を選んで「挿入」をクリックする。あるいは、図のファイル をドラッグして挿入する場所にもってくる。 ③図と本文が重なるときには、図を右クリックして「文字列の折り返し」から 「四角」を選択する。また「文字列と一緒に移動する」をチェックする。この ように設定すると図の移動に伴って文字列も動く。 ④図の大きさを変えるためには、図をクリックして選択する。選択後、4つの 角にある口部分をドラッグして、望みの大きさに変える。 ⑤図を望みの位置に動かし、大きさを整える。 申請書をPDFファイルに変換する方法 作成し終わった申請書はWordファイルでそのまま電子申請できるが、PDF ファイルに変換したものでも申請できる。後者の利点は、アップロードすると きにフォントなどの置換がなく、自分でイメージしたままのものが審査委員の 手に届くことだ。Wordファイルでアップロードした場合、Web上でPDF ファイルに変換されるので、フォントが変化してしまうことがある。そのため、 私は電子申請のときはできるだけPDFファイルをアップロードすることを勧め ている。WordファイルからPDFファイルへの変換方法はいくつかある、ここ でも Microsoft Word for Macバージョン16.96を例として紹 ①作成したWordファイルを開いて、「ファイル」→「名前を付けて保存...」を クリックする。 (228 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 229 ===== ②図の挿入 ②「ファイル形式」のところで「PDF」を選択する。 ③ファイルを保存する場所を指示して「エクスポート」をクリックするとPDF ファイルに変換されて保存される。 またプリント画面からも変換できる。 ①作成したWord ファイルを開いて、「ファイル」→「プリント..」をクリック してプリント画面を出す。 ②その左下の「PDFY」を開いて、「PDFとして保存」を選択してファイルの 保存場所を指示する。 ③「保存」をクリックするとPDFファイルに変換されて保存される。 ・図の挿入のポイント 図はあくまでも申請書の内容を理解しやすくするためのものなので、申請者 によるわかりやすいオリジナルの図にすること。 Column 生成AIと科研費 ChatGPTをはじめとする生成AIを使用する ことは、研究者にとってはすでに当たり前のも のになっている。何か調べものをするときや、 ちょっとした文章を作成するときなどにとても 便利だ、新しい研究のアイデアを提案してくれ たり、料研費などの研究費の申請書を書いてく れたらとても助かることだろう。そして、実際 に生成AIが思いもよらなかったアイデアを教え てくれたり、画期的な提案をしてくれたりとい うニュースも流れている。 実際に生成AIを扱ってみて、ときには素晴ら しい回答に感動したりもするが、思ったほどで はないとがっかりしたこともある。この本の読 者のなかにも、科研費の申請書作成において生 成AIを使ったことがある方もいるだろうし、そ の回答があまりに普通だったのでがっかりした ことがある方もいるだろう。しかし、生成AIは 使い方次第で、とても役に立つ。例えが古いが、 手書きの申請書をワープロやパソコンで作成す るようになったこととか,Index Medicus で文 献を調べていたものがネットで検索するように なったことに匹敵する(たぶん、それ以上なの だろう).もはや生成AIを使うことは普通で、 それをどのように使っていくのかが重要だ。 当然,これからも科研費申請書の作成にも生 成AIは使われていくことだろうが、1つ大きな 問題がある。それは科研費申請書に書くべき研 究計画は、生成AIが学習した大規模言語モデル のデータにはないということだ、研究とは、未 知のものを解明していくものだから、それ はり申請者自身の考えにもとづくものだ、一方 で、生成AIはあくまでも学習したデータをもと に「確率で続きを書く機械」なので、ごく普通 の回答しか得られないことが多い。また申請書 は審査委員が読むものであるから、申請書をど のように「魅せる」かということに対して、生 成AIよりも人間の方がまだまだ優位だ。 しかしそれも、より汎用的な能力を備えた AGI(人工汎用知能)が活用される時代になっ たらどうなるかわからない。願わくば、科研費 申請書を作成するのも、その申請書を審査する のもAIといった時代にならないことを、 4 章 (229