===== Page 216 ===== 4申請書の仕上げと 電子申請 科研費の申請書において第一印象は重要である。決められた様式の申 請用紙に文章を流し込むだけではなく、フォントの種類と大きさ、余白 の有無、小見出しや箇条書き、図を入れるなど、審査委員に読みやすい ように工夫することが大切だ。完成した申請書は電子申請で提出する が、締め切りには余裕をもって送しよう. 1 申請書の見栄え 赤ペン添削 HB3 ● case 06, 07 申請書を書き上げて、「さあ、終わった、提出だ!」とほっとしている人も多 いだろうが、ちょっと待ってほしい。研究機関内の締め切りまでまだ時間があ れば、最後の仕上げをお忘れなく、それは、「きれいな読みやすい申請書にす る」ということ、現在では申請書の提出はすべて電子申請になったけれども、 審査委員の手元に送られてくる大量の申請書はまだ多くの種目では紙媒体だ。 いずれはすべての種目でPDFファイルによって審査することになるのだろうが、 紙媒体であろうが、PDFファイルであろうが、審査委員によい印象を与える読 みやすい申請書にしよう.そのために、いくつかの点に注意する必要がある。 フォントの種類と大きさ 赤ペン添削HB3 ●申請者のギモン 2,19. フォントの種類によって申請書の感じはがらりと変わる。フォントは明朝体 20 を使う人の方が多いと思うが、ゴシック体も悪くない。ゴシック体の方が、文 字がはっきりして見やすく、また力強い印象を与えるからだ(図4-1).もちろ ん規定はないため自分の好きなフォントにするのが一番満足感が得られる。重 要なことは印刷したときに文字がかすれてしまうくらいの細すぎるフォントや、 申請書が黒く感じられるような太すぎるフォントは使わないことだ。 また、基本的なこととして、フォントの大きさをあまり小さくしないように、 研究計画調書(添付ファイル項目)には「本文は11ポイント以上の大きさの 文字等を使用すること」と指示されている。しかしこれは Microsoft Word (216 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 217 ===== 申請書の見栄え 基盤研究(C)(一般) 1 1 研究目的、研究方法など 本研究計画者は「小区分」の査区分で※査される。記述に当たっては、「科学研究費助成事業における※査及び評価に 関する規程」(公募要領参照)を参考にすること。 本研究の目的と方法などについて、4頁以内で記述すること。 冒頭にその要を簡潔にまとめて記述し、本文には、(1)本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心 をなす学術的「問い」、(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性、(3)関進分の研究動向と本研究の位置づけ、(4)本研 究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか、(6)本研究の目的を達成するための準備状況、(6)本研究がどのよ うな国際性(将来的に世界の研究をけん引する、協同を通じて世界の研究の発に貢献する、我が国独自の研究としての高い 価値を創出する等)を有するかについて具体的かつ明確に記述すること。 本研究を研究分担者とともに行う場合は、研究代表者、研究分担者の具体的な役割を記述すること。 グレリンは申請者らが発見した摂食亢進作用を示すペプチドホルモンで、N末端から3番目の セリン残基が脂肪酸のオクタン酸によって修飾されている。しかもこの脂肪酸修飾がグレリンの 活性に必要であるという特徴を持つ。なぜグレリンは脂肪酸の修飾がないと活性を示さないのか、 それを明らかにするためにはグレリンが結合したグレリン受容体の立体構造の解明が必要である。 最近になって申請者らは不活性型のグレリン受容体の構造解明に成功した。グレリン受容体は典 型的なGPCRの構造であるが、第6と第7の膜買通領域の間に疎水性に富んだギャップ構造があ り、この部分とグレリンの脂肪酸修飾基が相互作用してグレリン受容体を活性型に変換するので はないかと考えられた。しかし、それはまだ証明されたわけではない。 本研究では高活性型の変異グレリン受容体のX線結晶構造解析や、クライオ電子顕微鏡による Gタンパク質との複合体を解析することによって、グレリンが結合した活性型グレリン受容体の 立体構造を明らかにする。この研究によってグレリンの脂肪酸修飾基が受容体を活性型に変換す るメカニズムが明らかになり、GPCRの活性化機構に新たな知見をもたらすと期待される。 (1)本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心をなす学術的「問い」 (グレリンについて) グレリンは申請者らが グレリンのペプチド部分 1999年に発見したペプチドホルモンで、胃から分w⑥⑨FDSPEXHQRV 泌されて食欲刺激、摂食亢進、成長ホルモン分泌 促進、海馬での神経発生などの作用を示す。申請 者らのグレリンの発見論文(Nature, 1999) は被 P(PAKLQPR・COOK 引用回数が6,300件、グレリンに関する発表論文 HOH 白未理★ ↓グレ 4 章 基盤研究(C)(一般)1 研究目的、研究方法など 本研究計画調者は「小区分」の査区分で査される。記述に当たっては、「科学研究費助成事案における査及び評価に 関する規程」(公募要領参照)を参考にすること。 本研究の目的と方法などについて、4頭以内で記述すること。 冒頭にその振要を簡潔にまとめて記述し、本文には、(1)本究の学術的背や本研究の着想に至った経線、研究課題の核心 をなす学術的「問い」、(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性、(3)関途分野の研究動向と本研究の位置づけ、(4)本研 究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか、(6)本研究の目的を達成するための準備状況、(6)本研究がどのよ うな国際性(将来的に世界の研究をけん引する、協同を通じて世界の研究の発展に食献する、我が国独自の研究としての高い 価値を創出する等)を有するかについて具体的かつ明産に記述すること。 本研究を研究分担者とともに行う場合は、新究代表者、研究分担者の具体的な役割を記述すること。 (概要) グレリンは申請者らが発見した摂食亢進作用を示すペプチドホルモンで、N未端から3番目の セリン残基が脂肪酸のオクタン酸によって修飾されている。しかもこの脂肪酸修飾がグレリンの 活性に必要であるという特徴を持つ。なぜグレリンは脂肪酸の修飾がないと活性を示さないのか、 それを明らかにするためにはグレリンが結合したグレリン受容体の立体構造の解明が必要である。 最近になって申誚者らは不活性型のグレリン受容体の構造解明に成功した。グレリン受容体は典 型的なGPCRの構造であるが、第6と第7の膜貨通領域の間に疎水性に富んだギャップ構造があ り、この部分とグレリンの脂肪酸修飾基が相互作用してグレリン受容体を活性型に変換するので はないかと考えられた。しかし、それはまだ証明されたわけではない。 本研究では高活性型の変異グレリン受容体のX線結晶構造解析や、クライオ窀子頭微鏡による Gタンパク質との複合体を解析することによって、グレリンが結合した活性型グレリン受容体の 立体構造を明らかにする。この研究によってグレリンの脂肪酸修飾基が受容体を活性型に変換す るメカニズムが明らかになり、GPCRの活性化機構に新たな知見をもたらすと期待される。 (本文) (1) 本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心をなす学術的「問い」 (グレリンについて) グレリンは申請者らが グレリンのペプチド部分 1999年に発見したペプチドホルモンで、胃から分Nt (GS/SFDSP(EXHOR 泌されて食欲刺激、摂食亢進、成長ホルモン分泌 促進、海馬での神経発生などの作用を示す。申請 9。K'SEKAO O 者らのグレリンの発見論文(Nature, 1999) は被 HOI KPPAKLOPBCOON 引用回数が6,300件、グレリンに関する発表論文 は17 2021 日本田火 図4-10フォントの種類 上のフォントはヒラギノ角ゴシック.下のフォントはヒラギノ明朝。フォントを変えるだけで印象ががらりと変わる。 令和7年度基盤研究(C)の様式をもとに作成。 ===== Page 218 ===== 11ポイント 10.5ポイント 10ポイント MS明朝 科研費 科研費 科研費 ヒラギノ明朝Pro 科研費 科研費 科研費 游明朝 科研費 科研費 科研費 MS ゴシック 11ポイント 10.5ポイント 10ポイント 科研費 科研費 科研費 ヒラギノ角ゴシック Pro 科研費 科研費 科研費 メイリオ 科研費 科研費 科研費 図4-2●フォントの種類と大きさの比較 MS明朝、ヒラギノ明朝 Pro、明朝、MSゴシック、ヒラギノ角ゴシックPro、メイリオの11,10. トの大きさ比較。MSフォントの大きさは他のフォントに比べて小さいことがわかるだろう. イルに標準搭載されているフォントであるMS明朝とMSゴシックが想定され ている。MSフォントはやや小さめのフォントで、11ポイントは他のフォント (例えばヒラギノ、遊明朝,メイリオなど)の10.5ポイントに相当する(図4-2 なお、「それでもスペースがいっぱいで全文が入らない」というときには、フォ ントを小さくするのではなく、文章を削る方がよい.もう一度申請書をよく読 んで、不必要な部分を削除すると、必ず内容がよくなる。 なお、申請書のWordファイルではデフォルトのフォントはMS明朝かMS コ シックになるが、正直これらのフォントは美しくない。これらのMSフォント は、まだ性能が十分ではなかった昔のPC環境において、表示のしやすさや読 みやすさを確保するためにつくられたフォントである。そのためMSフォント と他のデザイン系のフォントでそれぞれ申請書を印刷して比較すると、デザイ ン系のフォントの方が好ましいことがわかるだろう。 フォントとしてお勧めできるのは、明朝体ならば游明朝やヒラギノ明朝,ゴ シック体ならばメイリオ、游ゴシック、ヒラギノ角ゴシックなどである。 余白を生かす 赤ペン添削HB3 ●case 06 文章の周囲に適度な余白を設けること、枠内にぎっしりと書いていると、審 査委員はそれだけで、げんなりしてしまう.また行間にも注意しよう。行と行 の間が詰まっているときは、行間を少し広げよう.またところどころ、空白の 行を入れると見やすくなる。図4-3に示した例を見ると、少しの工夫で、いか に違ってくるかがわかると思う.図4-3Aは一番見やすい形の図4-3Cから、空 (218 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 219 ===== 申請書の見栄え 白の行をカットしただけのもので、これだけでも印象がずいぶんと異なる. 余白がなく、ぎっしりと書いた申請書は意外に多く、これらは非常に読みに くい。 箇条書きや小見出しを使う 赤ペン添削HB3 ● case 03. 55. 85 箇条書きにすることで要点がまとまって、ぐっと読みやすくなる。研究目的 などを箇条書きにすると非常によい(図4-3B,C). また、小見出しをつけて読みやすくする工夫もある(図4-4).小見出しはそ の部分の要約になるからだ。1つの段落でページの半分以上の長いものになる ときには、小見出しをつけて文章を半分に分ける方がよい。その方が審査委員 は読みやすい。 文字を強調する 赤ペン添削HB3 ●case 07, 11, 72 強調文字として太字や下線などを利用することも見栄えをよくする1つの手 段だ、ただし、これらの強調文字を混在させることは避けた方がよい。太字や 下線などを使う目的は、その単語や文章を目立たせるためであろうから、使う ならどれか1つにすべきだ。 強調文字を使った申請書によくみられるのは、これらを使いすぎること。以 前、1ページのほとんどに下線を引いている申請書を見たことがある。いった い何を強調しようとしているのか、これではわからない。原則として強調文字 Column 審査委員がうんざりする申請書 科研費の審査委員をやってみると、「これは、 あまりに…・」と言いたくなる申請書も多々ある。 思いつくままに書いていく. ①ぎっしりと隙間なくたくさん書いてある申請 書.見ただけでげっそりして、読む意欲がなく なってしまう。それでも勇気を奮い起こして読 み進めるが、点数は辛いものになりがちだ。 ②太字、下線、二重下線、その組合わせなど、 強調文字が多すぎて、何が大切なのかわからな い申請書。ディスカウントストアの広告みたい で、見るだけでくらくらする。 ③図が複雑すぎる申請書。図の意味を探るだけ でも大変.そんなにいっぱいシグナル伝達経路 を書いてもわからない! ④内容が乏しい申請書.あまりに余白が多いと 計画が練られていないのでは、と印象はよくな い。①とも関係するがバランスが重要である。 ⑤内容が難しい申請書。理解するのに、何度も 何度も読まなくてはならず、根気が必要。たい ていは内容が高度なのではなく、書いてある目 的や意義が明確でないだけ.「理解できないの は、書いた方が悪い!」と開き直りたくもなる。 ©自分の苦手な分野の申請書。でも審査委員は ちゃんとみています。 4 章 (219 ===== Page 220 ===== A) 空白行がないた め読みにくい印 象を与える B) 箇条書きでは ないため理解 しにくい 本研究は申請者らが発見した摂食亢進ホルモンのグレリンについて、グレリンの生合成過程や ノックアウト・マウスの表現型解析などの未だ解明されていない基礎的な問題を解決し、さらに グレリンを治療薬として臨床応用へと展開するための研究基盤を確立することが目的である。 計画している具体的な研究項目は次のものである。 ①グレリン遺伝子から活性型グレリンになるまでの 生合成過程の解明 ②グレリン・ノックアウトマウスの自律神経機能の解析 ③グレリン受容体サブタイプの探索と グレリン関連ペプチドのスクリーニング ④胃摘出患者における血中グレリン濃度測定の意義と、 術後食欲不振症との関連 ⑤アンチエイジング対策のためのグレリンの胃・筋肉への作用解明 1. 研究の背景 申請者らは 1999年に胃組織からグレリン(ghrelin)を発見し(Kojima et al. これが成長ホルモン分泌促進作用を示すとともに、強力な摂食亢進作用を持つことを明らかにし た (Nakazato et al. Nature 2001)。 グレリンは胃から分泌されて血中を流れるペプチ ンであり、3番目の Ser 残基の側鎖が脂肪酸であるnーオクタン酸(C8:0)によって脂肪酸修飾を 受けており、さらにこの脂肪酸修飾が活性発現に必須であるという極めてユニークな構造をして 本研究は申請者らが発見した摂食亢進ホルモンのグレリンについて、グレリンの生合成過程や ノックアウト・マウスの表現型解析などの未だ解明されていない基礎的な問題を解決し、さらに グレリンを治療薬として臨床応用へと展開するための研究基盤を確立することが目的である。 計画している具体的な研究項目は、グレリン遺伝子 本研究計画 から活性型グレリンになるまでの生合成過程の解明、 グレリン・ノックアウトマウスの自律神経機能の解析、 グレリン受容体サブタイプの探索とグレリン関連ペプ チドのスクリーニング、胃摘出患者における血中グレ リン濃度測定の意義と、術後食欲不振症との関連、ア ◎グレリンの生会成送相 ●グレリンパマウスの会が ◎グレリンのファミリー検索 ◎グレリンと術会不策 ●グレリンの筋肉・女作用 ンチエイジング対策のためのグレリンの胃・筋肉への 作用解明、などである。 1, 研究の背景 申請者らは 1999年に胃組織からグレリン(ghrelin)を発見し(Kojima et al. N これが成長ホルモン分泌促進作用を示すとともに、強力な摂食亢進作用を持つことを明らかにし た (Nakazato et al Nature 2001)。 グレリンは胃から分泌されて血中を流れ ンであり、3番目の Ser 残基の側鎖が脂肪酸であるnーオクタン酸(C8:0)によって脂肪酸修飾を C) 本研究は申請者らが発見した摂食亢進ホルモンのグレリンについて、グレリンの生合成過程や ノックアウト・マウスの表現型解析などの未だ解明されていない基礎的な問題を解決し、さらに グレリンを治療薬として臨床応用へと展開するための研究基盤を確立することが目的である。 計画している具体的な研究項目は次のものである。 ①グレリン遺伝子から活性型グレリンになるまでの 生合成過程の解明 ②グレリン・ノックアウトマウスの自律神経機能の解析 ③グレリン受容体サブタイプの探索と グレリン関連ペプチドのスクリーニング ④胃摘出患者における血中グレリン濃度測定の意義と、 術後食欲不振症との関連 グレリンの疾患治療への応用 ⑤アンチエイジング対策のためのグレリンの胃・筋肉への作用解明 応用研究への展開 ◎グレリンの筋肉・骨作用 1.研究の背景 申請者らは 1999年に胃組織からグレリン(ghrelin)を発見し(Kojima et al. Nature これが成長ホルモン分泌促進作用を示すとともに、強力な摂食亢進作用を持つことを明らかにし た (Nakazato et al. Nature 2001)。グレリンは胃から分泌されて血中を流れるペプチド・ 図4-3●余白や箇条書きの重要性 A) 空白行がない見にくい例。B)箇条書きでない見にくい例。C)見やすい例. (220) 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 221 ===== 申請書の見栄え 基盤研究(C)(一般) 3 適度に余白を 入れて読みや すくする 研究項目ごと に小見出しを 付けて、箇条 響きにする 【1 研究目的、研究方法など(つづき)】 (4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか 本研究計画ではグレリンの生合成過程やノックアウト・マウスの表現型解析などの未だ解明さ れていない基礎的な問題を解決し、さらにグレリンを治療薬として臨床応用へと展開するための 研究基盤を確立する。 計画している具体的な研究項目は、①グレリン遺伝子から活性型グレリンになるまでの生合成 過程の解明、②グレリン・ノックアウトマウスの自律神経機能の解析、③グレリン受容体サブタ イプの探索とグレリン関連ペプチドのスクリーニング、④胃摘出患者における血中グレリン濃度 測定の意義と、術後食欲不振症との関連、⑤アンチエイジング対策のためのグレリンの骨・筋肉 への作用解明、である。 1. グレリンの生合成経路の解明ーニー遺伝子から活性型のペプチドへ(児島、佐藤が担当) グレリン遺伝子の発現調節から、活性型グレリンになるまでの生合成経路について明らかにす る。 グレリン遺伝子の転写制に関わる因子の解明 グレリン遺伝子の転写を制御する因子として、申請者らは抑制性のNF-KB と促進性の Nkx2.2が関与していることを見出した。本年度はさらにこれらの因子がグレリン・プロモー ーのどの部位に結合して、グレリン遺伝子の発現を調節するのかを解明する。方法としてはゲル シフト・アッセイやChip (クロマチン免疫沈降)アッセイ法などを用いて結合領域を明らかに する。 グレリン遺伝子の発現を制御する染色体領域の解明 プラダー・ウィリー症候群(PWS)は第15染色体の異常があり、これが原因で生後早期から の高グレリン血症や過食などになる。さらに申請者らの最近の研究で、第1染色体の先天異常疾 患においてグレリン産生が激減している例を見出しており、この原因はまだ不明である。これら の領域のタンパク質をコードすると考えられる部分の遺伝子を、内因性にグレリンを産生する細 胞(例えば甲状腺癌由来のTT細胞など)でRNAi法を用いて発現抑制し、培養細胞でのグレリ ン産生をグレリン測定系(RIAおよびELISA)で定量する。これによってグレリン遺伝子発現の 候補遺伝子を明らかにする。 グレリン前駆体からグレリン・ペプチド部分を切り出すプロセシング・プロテアーゼの同定 われわれのこれまでの研究で、グレリン前駆体からのプロテアーゼによる切断にはfurin およ びPC1/3が関与していることがわかった。そこで本年度は furin と PC1/3のど レリン産生細胞に存在して、グレリンと共存しているのか明らかにする。自作のグレリン抗体と、 市販のfurin、PC1/3抗体を用いて、胃の免疫組繊染色を行い、染色像が重なるかどうか調べる。 内因性に活性型グレリンを産生する甲状腺由来TT細胞で、RNAi法を使って furin または PC1/3の発現を阻害することによって、グレリン前体のプロセシングが進むかどうか調べ、 グレリンのプロセシング・プロテアーゼを同定する。 グレリンの指肪酸修飾酵素の同定 グレリン活性化に必要な脂肪酸転移酵素は現在でも全く不明である。申請者らは COS細胞を 使った発現系で、グレリンとfurin の発現ベクターと、胃または視床下部 CDNA発現ライ ーを共発現させ、培地中にオクタン酸を加えることで、オクタン酸で修飾された活性型グレリン を産生させ、これを免疫組織染色で同定するというアッセイ方法を確立した。このアッセイ系を 用いてグレリンの指肪酸修飾酵素を明らかにする。この酸素はおそらく新規の脂肪酸誌移酵素で 図4-4●小見出しの見本 小見出しをつけたり、箇条書きにすると、要点がはっきりして読みやすい。小見出しの項目ごとに空白行を入れたりすることも忘れずに 成14年度基盤研究(B)に申請した内容を、令和7年度基盤研究(C)の様式を用いて作成、 や強調する文章は1ページに多くても2~3カ所以内だ. また、ここぞという本当に強調するべき要点の部分のみに使うべきだ。なぜ このような部分を強調しているのかわからないものが多すぎる。くれぐれも大 事な点のみを強調するようにしよう(図4-5). 4 章 (221 ===== Page 222 ===== A) 本研究の学術的独自性と創造性 近年の肥満症、摂食障害患者の急増によって、摂食調節ペプチドを中心とした内分泌・エ ネルギー代謝の研究は世界中で盛んに行われており、この数年でもNPW、ガラニン類似ペ プチド、ネスファチン-1など新しい摂食調節ペプチドが見つかっている。グレリンは申請者 らが、世界に先駆けてその精製・構造決定を報告したペプチド・ホルモンであり、摂食亢進 作用をはじめとするその広範な生理作用から世界中で活発に研究がすすめられている。申請 者らはグレリン発見の論文発表前よりグレリンの研究を展開してきたため、現在でも、申請 者らのグループ、および申請者らと共同研究を行っている国内・国外の研究グループが中心 になってグレリンの基礎・応用研究をリードしていると考える。応用面では共同研究先のA ファーマやK大学探索医療センターにおいてグレリンの摂食亢進作用を応用した臨床試験研 究がスタートしており、フェーズ!を経て、現在フェーズIIの臨床試験を行っており、摂食障 害やカへキシアなどに対して良好な結果を得ている。 B) 本研究の学術的独自性と創造性 近年の肥満症、摂食障書患者の急増によって、摂食調節ペプチドを中心とした内分泌・エ ネルギー代謝の研究は世界中で盛んに行われており、この数年でもNPW、ガラニン類似ペ プチド、ネスファチン-1など新しい摂食調節ペプチドが見つかっている。グレリンは申請者 らが、世界に先駆けてその精製・構造決定を報告したペプチド・ホルモンであり、摂食亢進 作用をはじめとするその広範な生理作用から世界中で活発に研究がすすめられている。申請 者らはグレリン発見の論文発表前よりグレリンの研究を展開してきたため、現在でも、申請 者らのグループ、および申請者らと共同研究を行っている国内・国外の研究グループが中心 になってグレリンの基礎・応用研究をリードしていると考える。応用面では共同研究先のA ファーマやK大学探索医療センターにおいてグレリンの摂食亢進作用を応用した臨床試験研 究がスタートしており、フェーズ1を経て、現在フェーズIIの臨床試験を行っており、摂食障 害やカヘキシアなどに対して良好な結果を得ている。 図4-5・文字のスタイル(強調文字)の混在 A)を見ると、下線や太字などが混在していて、どの部分が重要なのかわからない。これらの強調文字を使うときには一種 類だけにして、B)のようにここぞという最も重要な部分やキーワードにのみ使う方がよい。 難しい単語を避ける また難しい単語は、やさしい単語に置き換えよう。難しい単語の例として、 例えば手の資料から主観的に選ぶと、「識別」「乖離」「破砕」「算出」「洞察」 などがあり、それぞれ、「見分ける」「離れる」「細かく砕く」「値を出す」「考え る」などといいかえるとよい。また誤字・脱字にも十分に気をつけよう.ワー プロ変換に頼っていると、ときには思いもかけない変換ミスがある。 漢字,英語、カタカナを適切な割合に 赤ペン添削HB3 ●申請者のギモン 3 文章全体に漢字が多すぎないように、その割合を考えること、漢字があまり 多いと、申請書全体が堅い印象になり、審査委員は一気に読む気が失せてしま う.同様に文章中に英語、カタカナが多すぎると、読みにくくなる、ひらがな、 カタカナ、漢字、英語の割合を適切にすること.もっともこれは、ある程度の 222) 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 223 ===== 11申請書の見栄え 経験を積んでいかないと難しいとは思う. とにかく、審査委員が好印象をもつような、きれいで読みやすい申請書を作 ることを心がけよう. ・申請書の見栄えのポイント フォント(種類と大きさ),レイアウト(余白、箇条書き、小見出し),強調 文字(太字、下線)などに細かく気を配って、読みやすい申請書を作成する こと. Column 初めての科研費(Fさんの場合) 日本学術振興会特別研究員(PD)の期間が 終了し、いよいよ科研費申請ができる立場に なった(もちろん、PDの間は特別研究員奨励 費の申請はできるが、他の採択率とは雲泥の差 である)。まずは、どんな項目を書くのか?ペー ジ数は?と公募要領と計画調書をぱらぱらめく る。記載項目は学振研究員応募と大きく変わら ない。そこで、3年前に書いた自分の学振申請 書を読み返してみた。よく「夜書いたラブレ ターは、朝読んではならない」といわれるが、 そんな気分になった。感想は、「こんな文章で よく愛が実ったね(申請書通ったね)」だった。 これはなんの役にも立たないので、我が研究室 の百戦錬磨の方々の申請書を参考にさせてもら うことにした。 夜な夜な先生方の申請書を読むうちに、申請 書の書き方と研究スタイルが一致することに気 がついた。ならば、自分の研究スタイルに合っ た申請書を書けばよいのではないだろうか?ま ず、自分はどのような研究スタイルなのか?ど のような研究者になりたいのか?を考えてみ た、「派手さはないが、生命現象に対して真撃 に向き合いたい」が私の回答であった。ならば、 「派手ではないが、自分の興味対象をマニアッ クに追究する」申請書に決め、自分の思い描く 研究ストーリーを綴っていった。一通り書き終 え、K先生にみていただくことにした。K先生 からいただいたコメントをもとに書き直してい ると、申請締め切り日になってしまった。急い で最終版原稿を秘書さんに手渡して、初めての 科研費申請は完了となった。 結果が出るまでは、神頼みをするぐらいで特 に何もできない。とりあえず、研究者の皆さ に顔を覚えてもらおうと、いろいろな学会に参 加した。あまりデータがなくても,親父ギャグ を織り交ぜつつ発表した。しかし、知り合いの 先生から「あのギャグつまらない」と言われて へこんでいるところに、他の先生からは「あな たよくお見かけしますが、どこの方?」とたず ねられ、もう立ち上がることもできなくなった。 そう、学会での努力は実を結んでいないのであ る.ギャグが寒いのか?小柄だから目に入らな いのか?そもそも根本的に間違っているのか? 研究同様,暗中模索だった。 そんななか、申請課題の採択通知がきた、よ かった、「愛が通じた」。 4 章 (223