===== Page 128 ===== 基盤研究 (C)(一般)2 【1 研究目的、研究方法など(つづき)】 (本研究の着想に至った経緯) 本研究の着想に至った 経緯: 着想に至った研究者の 個人的な経験を書く (研究課題の核心をなす学術的「問い」) 研究課題の核心をなす 学術的「問い」: 何が問題なのか、解明 すべき課題は何か (2) 本研究の目的および学術的独自性と創造性 (本研究の目的) 本研究の目的: 研究目的は具体的に わかりやすく書く (本研究の学術的独自性と創造性) 本研究の学術的独自 性と創造性: 学術的独自性には研 究の重要性を、創造 性には研究の展開・ 応用を書く 図3-9●「研究目的,研究方法など」の構成案(2ページ目) 令和7年度基盤研究(C)の申請書の実例をもとに作成、 赤ペン添削HB3 ● case 04, 05, 15. 17. 18. 20. 23. 24 「概要」に書くべきこと これまでにさまざまな分野の科研費申請書をチェックしてきた経験からいう と、文系理系にかかわらず、この「概要」部分がしっかりと書けていない例が 多い.2~3回読んでも研究の内容を理解するのが難しかったり、書くべき内容 を書いていないことがある。ここでまず「概要」に書くべきことを整理しておこう。 (128 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 129 ===== 3研究目的,研究方法などーこの欄の全体像 基盤研究(C)(一般) 3 【1研究目的、研究方法など(つづき)】 (3)関連分野の研究動向と本研究の位置づけ 関連分野の研究動向と 本研究の位置づけ: 関連分野の研究動向に は研究テーマに関する 最新の情報を、本研究 の位置づけにはこの研 究分野にどのように貢 献できるかを書く (4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか 3 章 研究計画を 1ページ半 くらいで書く 図3-10●「研究目的。研究方法など」の構成案(3ページ目) 令和7年度基盤研究(C)の申請書の実例をもとに作成 前述したように「概要」は「1研究目的、研究方法など」のまとめであると ともに申請書のサマリーである。そのため「概要」は「1研究目的,研究方法 など」で記載する6つの項目から、大事なところを抜粋してまとめるときちん とした「概要」(サマリー)になる。 では、記載項目からどの部分を抜粋してくればよいのだろうか.「1研究目 的,研究方法など」に記載するのは次の6つである。 (129 ===== Page 130 ===== 基盤研究(C)(一般)4 【1 研究目的、研究方法など(つづき)】 (4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか(つづき) 研究計画の続 き 現時点での具 体的な準備状 況を書く (5) 本研究の目的を達成するための準備状況 (準備状況) (研究体制やタイムスケジュール) チームメンバーの 名前や年次計画な どを具体的に書く (6) 本研究がどのような国際性を有するか なにか「国際性」 に関連したことを 書く、何も書かな いのはだめ 図3-11●「研究目的,研究方法など」の構成案(4ページ目)令和7年度基盤研究 ( (1) 本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心を す学術的「問い」 (2) 本研究の目的および学術的独自性と創造性 (3) 関連分野の研究動向と本研究の位置づけ (4) 本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか (5) 本研究の目的を達成するための準備状況 (6) 本研究がどのような国際性を有するか (30)科研費獲得の方法とコツ第9版 ===== Page 131 ===== 研究目的、研究方法などーこの欄の全体像 概要としては 長すぎる 基盤研究(C)(一般) 1 1研究目的、研究方法など 本研究計画書は「小区分」の査区分で審査される。記述に当たっては、「科学研究費助成事業における審査及び評価に 関する規程」(公然製領参照)を参考にすること。 本研究の目的と方法などについて、4頁以内で記述すること。 皆頭にその概要を簡潔にまとめて記述し、本文には、(1)本研究の学術的背景や木研究の着想に至った経線、研究課題の核心 をなす学術的「問い」、(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性、(3)関連分野の研究動向と本研究の位置づけ、(4)本研 究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか、(5)本研究の目的を達成するための準備状況、(6)本研究がどのよ うな国際性(将来的に世界の研究をけん引する、協同を通じて世界の研究の発展に貢献する、我が国独自の研究としての高い 価値を創出する等)を有するかについて具体的かつ明確に記述すること。 本研究を研究分担者とともに行う場合は、研究代表者、研究分担者の具体的な役別を記述すること。 (概要) グレリンは胃から発見された強力な成長ホルモン分泌促進作用と摂食亢進作用を持つペプチ ド・ホルモンである。申請者は、このグレリンに関して、その発見から生化学的な基礎的研究、 生理作用の解明、臨床への応用など、一連の研究を進めてきた。グレリン受容体は脂肪組織にも 発現していることや、グレリンの慢性投与は脂肪組織を増大させ肥満をおこすことから、グレリ ンと脂肪組織との何らかの関連が伺える。しかし、現在のところ、現在グレリンの研究は、その 摂食亢進作用を中心として世界中で進められているが、グレリンの脂肪組織・脂肪細胞に対する 作用については、なぜかまだ十分な検討が行われていない。本研究では脂肪組織に対するグレリ ンの生理作用を検討し、グレリンと他種類のアディポサイトカインとの関連を探る計画である。 脂肪細胞由来のホルモンであるレプチンと、グレリンは正反対な作用を持つことから、脂肪細胞 の機能を解析する上で、グレリンの研究は無視できない。申請者らの予備的な検討では、脂肪組 織はグレリンとその受容体を発現しており、このことからグレリンが脂肪細胞に直接的に作用す ると考えられる。脂肪細胞に対してグレリンがどのような効果を示すのかは不明であり、本研究 によって明らかにしたい。グレリンによる脂肪細胞の増殖・分化、他種類のアディポサイトカイ ン類への影際、脂肪細胞でのシグナル伝達分子の変化などの研究を計画している。 図3-12●「研究目的,研究方法など」冒頭の「概要」部分のあまりよくない例1 多く書きすぎて、大事なポイントがわからない。応募書類の様式・記入要領には「10行程度で記述すること」と指定が このなかから「概要」を書くために必要な中心部分は、(1)の「背景」と 「問い」,(2)の「目的」と「創造性」である。「創造性」は「展開・応用」(= この研究でなにがわかるのか、どのような展開・応用ができるのか)と言い換 えてもいいだろう。 またスペースに余裕があれば(2)の「独自性」(=研究のオリジナルな点), (3)の「着想に至った経緯」や(4)の「何をどのように、どこまで明らかに しようとするのか」も加えてもよいと思う.ただし短く簡潔に、 まとめると、「概要」には、研究の「背景・問い」「目的」「展開・応用」を忘 れずに書くことである(図3-13). これまでに書いたように、「概要」は全体ができあがって一番最後に本文を抜 粋してまとめるとよいが、そのように書かれた申請書でも、私が見てきた例で はいくつかの点で不十分なものが多かった。 まず研究の「背景」と「問い」、意外に「背景」が抜けているものが目につ く.また「背景」の部分に研究課題の「問い」(問題点)は何か、それが書かれ ていないことが多い。「まだわかっていないこと」あるいは「何が問題なのか」 などが書かれていない。この研究課題に関するこれまでの研究で、いったい何 3 (131 ===== Page 132 ===== 「概要」 研究の「背景」 w 研究の「問い」 ← 研究の「目的」 研究の「展開・応用」 本文 (1) 学術的背景、着想に至った経緯。 「問い」 (2) 目的,独自性 創造性 (3) 研究動向,研究の位置づけ (4) 何をどのように、どこまで 明らかにしようとするのか (5) 準備状況 (6) 国際性 図3-13●「研究目的,研究方法など」冒頭の「概要」部分に書くべきこと 「概要」は本文の「背景」「問い」「目的」「独自性・創造性(展開・応用)」の部分から抜粋してまとめ るとよい。 が問題なのか、何がわかっていないのか。そのような研究の問題点(申請書の 記載では研究の「問い」であるが)をしっかりと書かないといけない.研究の 「背景」をきちんと書いて、問題点を指摘しておかないと、研究の「目的」が活 きてこない。研究の「背景」と「問い」があってこその研究の「目的」だ。 そして研究の「目的」では、この研究では、どのようなことを行うのか?ど のような手段で「問い」(問題点)を解決していくのか?それをわかりやすく 書いていく、何を明らかにするのか、何を解明するのか.ここが研究の一番大 事なポイントであるので、しっかりと書かないといけない。この研究で、いつ たい何をやろうとしているのか。そしてスペースに余裕があれば、簡単に「研 発の方法」も書いておけばよい。 最後に研究の「展開・応用」。この研究を行うことで、どのような面白いこと がわかるのか、どのような展開があるのか、どのような応用ができるのか、ど のように役立つのかなど、この研究の意義をしっかりと書いていく. 審査委員を務めた経験からいえることは、この概要部分を一度さっと読んだ だけで理解できるかどうか (何をやろうとしているのかが、わかるかどうか)が、 この後の本文を好意的に読んでもらえるかどうかの重要なポイントだ。概要が理 解できないと、審査委員はストレスを抱えたまま本文を読むことになり、積極的 に内容を理解しようとする気持ちが低くなる。詳しい内容は本文で理解してもら えばよく、「概要」は簡潔に書いておけばよい。概要部分の基本型として、 132) 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 133 ===== 3研究目的,研究方法などーこの欄の全体像 赤ペン添削HB3 ● case 15~17, 23 ・申請者が対象としている研究のこれまでの背景(3文以内) ・何が問題なのか(1文程度) ・何を明らかにするのか(2文程度) ・どのような展開・応用が可能なのか(1文程度) このような分量でまとめていくとほぼ10行程度になるし、これで十分である。 「概要」の例とその直し方 「概要」部分を読むときに、研究の①背景と問い。②目的,③展開・応用と3 つの項目に注目してみると、自分の書いた概要の欠点がよくわかる。次の例、 図3-14をみてみよう. この例の文章構造を分析してみると、研究の「背景と問い」と「目的」の2 つの部分から構成されている(図3-15). あるいは研究の「背景と問い」「方法」と「目的」の3つの部分から構成され ているとみることもできる(図3-16)・ この例では研究の「背景と問い」が大部分を占めて、「目的」が少なくアンバ ランスなことがわかるだろう。しかも、研究の「展開・応用」にはまったく触 れられていない。概要部分は全部で10土2行くらいを目安とすると、「背景」と 「問い」に4~5行、「目的」に2~3行、「展開・応用」に2行といったところ (概要) 申請者らのグループが精製・構造決定したグレリンは成長ホルモン分泌促進ならびに摂食 亢進作用をもつペプチドホルモンであり、転写・翻訳後にN末端から3番目のセリン残基が カーオクタン酸修飾(脂肪酸修飾)されて、はじめて生理活性を発揮する。したがって、グレ リンの脂肪酸修飾の調節は同ペプチドによる生体調節機構の重要なファクターである。しか しながら、グレリンの脂肪酸修飾に関与する酵素、および、その調節機構についての報告は これまでにない。本研究では、グレリンの脂肪酸修飾酵素の精製と構造解析、ならびにグレ リンの脱脂肪酸(不活性化)過程の解析を行い、グレリンの生合成と分泌調節機構の解明を 図3-14●「研究目的、研究方法など」冒頭の「概要」部分のあまりよくない例2 研究の背景 と問い 研究の目的 (概要) 申請者らのグループが精製・構造決定したグレリンは成長ホルモン分泌促進ならびに摂食 亢進作用をもつペプチドホルモンであり、転写・翻訳後にN末端から3番目のセリン残基が コーオクタン酸修飾(脂肪酸修飾)されて、はじめて生理活性を発揮する。したがって、グレ リンの脂肪酸修飾の調節は同ペプチドによる生体調節機構の重要なファクターである。しか しながら、グレリンの脂肪酸修飾に関与する酵素、および、その調節機構についての報告は これまでにない。本研究では、グレリンの脂肪酸修飾酵素の精製と構造解析、ならびにグレ リンの脱脂肪酸(不活性化)過程の解析を行い、グレリンの生合成と分泌調節機構の解明を 進める。 図3-15・「研究目的,研究方法など」冒頭の「概要」部分の分析 1 (133 ===== Page 134 ===== 研究の背景 と問い 研究の方法 研究の目的 (概要) 申請者らのグループが精製・構造決定したグレリンは成長ホルモン分泌促進ならびに摂食 亢進作用をもつペプチドホルモンであり、転写・翻訳後にN未端から3番目のセリン残基が nーオクタン酸修飾(脂肪酸修飾)されて、はじめて生理活性を発揮する。したがって、グレ リンの脂肪酸修飾の調節は同ペプチドによる生体調節機構の重要なファクターである。しか しながら、グレリンの脂肪酸修飾に関与する酵素、および、その調節機構についての報告は これまでにない。本研究では、グレリンの脂肪酸修飾酵素の精製と構造解析、ならびにグレ リンの脱脂肪酸(不活性化)過程の解析を行い、グレリンの生合成と分泌調節機構の解明を ・(進める。 図3-16・「研究目的,研究方法など」冒頭の「概要」部分の分析2 研究の背景と問い 4~5行 研究の目的 2~3行 研究の展開・応用 2行 図3-17●概要部分に書くべき項目の行数の目安 研究の「背景」と「問い」が4~5行、「目的」が2~3行、「展開・ 応用」を2行くらいにすると、概要は10行くらいに収まる。 研究の背景 と問い 研究の方法・ 目的 研究の展開・ 応用 (概要) 申請者らのグループが発見したグレリンは成長ホルモン分泌促進と摂食亢進作用をもつべ プチドホルモンであり、N末端から3番目のセリン残基がnーオクタン酸修飾(脂肪酸修飾) されて、はじめて生理活性を発揮する。したがって、グレリンのオクタン酸による脂肪酸修 飾の調節は同ペプチドによる生体調節機構の重要なファクターであるが、グレリンの脂肪酸 修飾を行う酵索、および、グレリンの不活性化の機構については十分にわかっていない。 本研究では、グレリン特異的に脂肪酸の修飾を行う酵素の精製と、その構造解析、ならび にグレリンの脱脂肪酸(不活性化)過程の解析を行い、グレリンの生合成と分泌調節機構の 解明を進める。本研究によってグレリンの脂肪酸修飾を介した成長ホルモンや摂食調節の新 たな制機構が明らかになると期待される。 図3-18●「研究目的。研究方法など」冒頭の「概要」部分の改善例1 が適切な分量である(図3-17). この例について、少し文章を整理して研究の展開・応用を加えると、まとまっ た概要ができあがる(図3-18). 概要に書くべき3つの項目のなかで、書かれていないことが多いのは、研究 の「背景と問い」と「展開・応用」である、図3-19に例をあげる。なお、こ の例は私が以前チェックした申請書を改変して使わせてもらっている。 この文章の構造は、研究の「方法」。「目的」「展開・応用」となっており、 肝心の研究の背景と問いが書かれていない(図3-20).しかし、この例のよう に概要部分に研究の「背景と問い」が抜けていたり、あるいは研究の「展開・ 応用」が書かれていないものでも、本文を読むと「背景と問い」や「展開・応 用」がきちんと書かれている例がほとんどだ、この例のもととなった申請書の なかにもきちんと書かれていた。 (134 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 135 ===== B 研究目的、研究方法などーこの欄の全体像 (概要) 本研究では〇〇〇骨格を有する新規な核酸誘導体を合成し、それをRNAi (RNA干渉)機 構による遺伝子発現抑制を誘起する SiRNA (shortinterfering RNA)中に組み込 〇〇〇核酸誘導体は細胞環境によってジスルフィド型とジチオール型の構造をとると予想さ れ、この構造変化を時空間制御のスイッチとして利用した細胞環境に応答するSiRNAの創製 を目指す。さらにこのsiRNAを利用し、遺伝子発現抑制効果がオンとなる細胞を、細胞 ブラリーからスクリーニングし、疾患細胞特異的なsiRNAを開発することで新しいSiRNA 薬品の開発を行う。 図3-19・「研究目的,研究方法など」冒頭の「根要」部分のあまりよくない例3 研究の方法 研究の目的 研究の展開・ 応用 (概要) 本研究では〇〇〇骨格を有する新規な核酸誘導体を合成し、それをRNAi (RNA干渉)機 構による遺伝子発現抑制を誘起する SiRNA (short-interfering RNA)中に組 〇〇〇核酸誘導体は細胞環境によってジスルフィド型とジチオール型の構造をとると予想さ れ、この構造変化を時空間制御のスイッチとして利用した細胞環境に応答するSiRNAの創製 を目指す。さらにこのsiRNAを利用し、遺伝子発現抑制効果がオンとなる細胞を、細胞ライ ブラリーからスクリーニングし、疾患細胞特異的なSiRNAを開発することで新しいSiRNA医 薬品の開発を行う。 図3-20●「研究目的。研究方法など」冒頭の「概要」部分の文章構造の分析3 研究の背景 と問い 研究の目的 研究の方法 研究の展開・ 応用 (概要) 次世代バイオ医薬品としてのsiRNA医薬品はウイルス感染症からがんに至るまで幅広い疾 患への応用が期待されている。しかし、標的組織へのデリバリー方法が難しいことや、医薬 品としての安定性の問題などがあり、in Vivoでの有効性の発揮が難しく、未だ医薬品として の成功例はない。 〇〇〇核酸は細胞環境に応じて、ジスルフィド型とジチオール型の構造をとると予想され ることから、本研究では、この構造変化を時空間制のスイッチとして利用した細胞環境応 答型SiRNAの創製を目指す。研究の方法としては、糖部分に〇〇〇骨格を有する新規な核酸 誘導体を合成し、それをSiRNA中に組み込み、遺伝子発現制のスイッチとして応用する。 この細胞環境への応答機能を付けたsiRNAを利用することで、疾患細胞特異的な核酸医薬品 の開発が可能になると考える。 図3-21●「研究目的。研究方法など」冒頭の「概要」部分の改善例2 この例の場合、本文から研究の背景と問いに相当する部分を探すと、「次世代 バイオ医薬品として期待の高いsiRNA創薬であるが、in wioで有効性を発揮 るのは困難で未だ医薬品としての成功例はない」とあった、これを概要部分に 組み込んで整理すると、まとまった概要ができあがる(図3-21). もう1つ例をあげよう.これはきちんと3つの項目がまとまっている例であ る(図3-22)・ これも同じように文章構造を調べると、研究の背景と問いがやや多いが、3 つの書くべき項目はきちんと書けている(図3-23). さらに文系の例をあげておく(図3-24,図3-25).この例では「背景と問 い」にあたる部分が2カ所に分断されている。改善例では「背景と問い」部分 (135 ===== Page 136 ===== 生体内には、内因性リガンドが不明ないわゆるオーファン受容体が数多く存在する。本研 究で対象とする消化管幹細胞マーカーのオーファン受容体はLGR5と呼ばれており、LGR5 受容体はロイシンリッチな繰り返し配列を細胞外ドメインに有するGPCR(G蛋白質共役型 受容体)で、LH(黄体化ホルモン)やFSH (卵胞刺激ホルモン)の受容体に類似している ため、その未同定の内因性リガンドもペプチド・ホルモンであると考えられている。 この研究計画では、幹細胞マーカーとして消化管幹細胞に発現するオーファン受容体の内 因性リガンドを探索し、この内因性リガンドの腸管粘膜再生への効果を調べる。LGR5に結 合する未知のペプチド・ホルモンは消化管幹細胞の増殖や分化に関与すると考えられ、消化 管の再生医療への応用が期待される。 図3-22●「研究目的、研究方法など」冒頭の「概要」部分の見本1 研究の背景 と問い 研究の目的 研究の展開・ 応用 (概要) 生体内には、内因性リガンドが不明ないわゆるオーファン受容体が数多く存在する。本研 究で対象とする消化管幹細胞マーカーのオーファン学容体はLGR5と呼ばれており、LGR5 受容体はロイシンリッチな繰り返し配列を細胞外ドメインに有するGPCR(G蛋白質共役型 受容体)で、LH(黄体化ホルモン)やFSH (卵胞刺激ホルモン)の受容体に類似している ため、その未同定の内因性リガンドもペプチド・ホルモンであると考えられている。 この研究計画では、幹細胞マーカーとして消化管幹細胞に発現するオーファン受容体の内 因性リガンドを探索し、この内因性リガンドの腸管粘膜再生への効果を調べる。LGR5に結 合する未知のペプチド・ホルモンは消化管幹細胞の増殖や分化に関与すると考えられ、消化 管の再生医療への応用が期待される。 図3-23●「研究目的、研究方法など」冒頭の「概要」部分の文章構造の分析4 研究の背景 と問い1 研究の目的 研究の背景 と問い2 研究の展開・ 応用 (概要) 人口減少による地方経済の縮小と東京への一極集中を抑えようと、政府は「地方創生戦 略」を提案し、各自治体は地方大学の協力を得て独自の「地方創生総合戦略」を策定してい る。一方、地方経済は地方大学といわば一心同体であり、地方大学の発展なくして地方経済 の持続は困難である。 本研究では、地方大学が地方創生のため、どのような取り組みを行っているのか、また行 えば良いのかを具体的事例およびデータから明らかにする。地域に貢献する人材育成という 従来の地方大学が実施している教育を超えて、地方創生のための様々な役割を担うことが地 方大学には期待されている。 それぞれの地域が抱える社会的課題には共通点も多い。各地方の自治体やいくつかの地方 大学の成功事例を水平展開することによって、多くの地域の課題解決に貢献できると考えら 図3-24●「研究目的、研究方法など」冒頭の「機要」部分のあまりよくない例4 をまとめるとともに、「一心同体」「水平展開」などの表現を改めた。 このように「概要」部分は、研究の「背景と問い」、「目的」、「展開・応用」 がきちんと書けているかチェックすればよい。最初に書いたように概要は申請 書のサマリーである。そのため、本文を書き上げて、そのなかから重要な部分 を抜き出して概要としてまとめるのがお勧めである、もう一度繰り返すが、こ の「概要」は審査委員が最初に目を通す部分であろうから、ぜひともしっかり とした内容の理解しやすいものに仕上げてほしい。 136) 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 137 ===== 3研究目的,研究方法などーこの欄の全体像 研究の背景 と問い 研究の目的 研究の展開・ 応用 人口減少による地方経済の縮小と東京への一極集中を抑えようと、政府は「地方創生戦 略」を提案し、各自治体は地方大学の協力を得て独自の「地方創生総合戦略」を策定してい る。地方経済にもたらす地方大学や学生の消費は大きな割合を占め、地方大学の発展なくし て地方経済の持続は困難である。このように地方大学には、地方創生のための様々な役割を 担うことが期待されているが、地域に貢献する人材育成という従来実施している教育のみで は地方経済の活性化への貢献は不十分であり、今後、どのような教育・研究を実施すれば良 いのかは明らかではない。 本研究では、地方大学が新しい方法で行っている教育や研究、情報発信、産学官連携活動 の具体的な事例を収集し、地方創生のための地方大学の運営戦略や発展モデルを発見する。 それぞれの地域が抱える社会的課題には共通点も多い。いくつかの自治体における地方大 学の成功事例を解析することによって、地方大学が今後の地方創生のためにどのような運営 をするべきなのか、その方向性を明らかにできると考える。 図3-25●「研究目的,研究方法など」冒頭の「概要」部分の改善例3 →「研究目的,研究方法など」の「概要」の書き方のポイント ・簡潔に書くこと、多く書きすぎない(10行程度). ・研究の「背景と問い (4~5行)」と「目的(2~3行)」と「展開・応用 (2行)」をはっきりと書く。 ・「背景」には「問い」を書くことを忘れずに。 赤ペン添削 HB3 ●case 03~08 ● 由請者のギモン21 申請書を読みやすく理解しやすいものにするちょっとした工夫 ちょっとした工夫をすることで、申請書は読みやすくなり、審査委員に理解 されやすくなる。 ●改行と項目分け 例えば「概要」部分.先に「概要」には研究の「背景と問い」,「目的」,「展 開・応用」を必ず書くようにお勧めしたが、これらを1つの部分として書くので はなく、適宜改行を入れてそれぞれの部分を別々の段落にするとよい。例えば 図3-26は図3-22と同じ内容のものを段落を設けずに記入してある。このまま でもよいが、「背景と問い」のあとで改行して2つの部分にすると、「背景と問い」 とその問題点が書かれた段落と、研究「目的」とその「展開・応用」が書かれ た段落が対比されて、読みやすく、理解しやすくなる(図3-22)・スペースに 余裕があれば、「背景と問い」,「目的」「展開・応用」と3つの部分に分けるの もよい.また「研究の全体構想」と「本研究の具体的な目的」などと見出しを 書いて、分けて記載するのもよい方法だ(図3-27). ●箇条書きや見出し、余白行を入れる さらに、具体的な研究項目などを箇条書きにすることは、読みやすいし、内 ===== Page 138 ===== (概要) 生体内には、内因性リガンドが不明ないわゆるオーファン受容体が数多く存在する。本研 究で対象とする消化管幹細胞マーカーのオーファン受容体はLGR5と呼ばれており、LGR5 受容体はロイシンリッチな繰り返し配列を細胞外ドメインに有するGPCR(G蛋白質共役型 受容体)で、LH(黄体化ホルモン)やFSH (卵胞刺激ホルモン)の受容体に類似している ため、その未同定の内因性リガンドもペプチド・ホルモンであると考えられている。この研 究計画では、幹細胞マーカーとして消化管幹細胞に発現するオーファン受容体の内因性リガ ンドを探索し、この内因性リガンドの腸管粘膜再生への効果を調べる。LGR5に結合する未 知のペプチド・ホルモンは消化管幹細胞の増殖や分化に関与すると考えられ、消化管の再生 医療への応用が期待される。 図3-26●「研究目的,研究方法など」冒頭の「概要」部分の見本2 図3-22の文章から改行をなくしたもの。研究の「背景と問い」の部分と、「目的】「展開・応用」の部分を別するために、図3-22では 「背景と問い」のあとで改行して2つの部分に分けている。 「研究の全体 構想」と「本 研究の具体的 な目的」を はっきりと分 けて書くこと で、内容を理 解してもらい やすい (概要) (研究の全体構想) 本研究はセントロメアの形成機構を染色体の構造改変を利用して明らかにするものです。分裂 、酵母を用い、2本の染色体が融合し、セントロメア配列を2つ保持しながら一方のセントロメアが 機能を失った融合染色体(シュードダイセントリック染色体)の実験系を用いて、染色体分配に 必額なセントロメア・動原体複合体が、どのような分子機構によって新規に形成されるのか、そ の形成過程の調節機構を解明します。 (本研究の具体的な目的) 1) シュードダイセントリック染色体を切断し、機能的なセントロメアを持たない染色体を作り 出すことで、新規機能的セントロメアが形成される実験系を構築する。2)塩基配列、エピジェネ ティック要員の新規セントロメア形成への影響を検証する。3)変異株を用いた新規セントロメア 形成に関わる因子の探索と機能解析を行う。 図3-27●「研究目的,研究方法など」冒頭の「概要」部分の見本3 平成21年度若手研究(B)の申請書の実例をもとに改変。一番の特徴は「研究の全体構想」と「本研究の具体的な目的」をはっきりと分け て書いてあること、これはよいアイデアだ。なお、この見本では「本研究の具体的な目的」のなかで「研究の方法」と「研究の展開」につ いても触れられている。 容も理解しやすくなるのでお勧めする(図3-28)・ また「研究目的。研究方法など」の本文では、(1)から(6)までの6つの 分で書いていくように指示されている。そのときにもただ数字を並べて、すな わち(1),(2),(3) と書いて、いきなり本文を書いていくより(図3-2 各数字の部分には何が書かれてあるのか、項目を書いておく方が審査委員にわ かりやすくてよい(図3-29B)(図は以前の申請書の例なので、現在の申請書 とは項目と番号の対応が異なっている)。そしてそれぞれの部分の間には余白行 を必ず入れる、あるいは項目の見出しを太字にするなどの工夫もよいと思う. このようなちょっとした工夫や書き方で申請書の読みやすさ、理解しやすさ が向上するので、細部まで気を配って仕上げていってほしい。 ▶申請書を読みやすく理解しやすいものにするためのポイント ・適宜改行を入れたり、部分に分けて読みやすくする。 ・余白行を入れる、見出しを太字にするなどで読みやすくする。 (138 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 139 ===== 3研究目的,研究方法などーこの欄の全体像 研究の背景 と問い、経過 研究の目的 と展開 箇条書きで 研究項目を 書いている (概要) グレリンは胃から発見された強力な成長ホルモン分泌促進作用と摂食亢進作用を持つペプチド・ ホルモンである。申請者は最近、自律神経によってコントロールされている生体機能(体温調節、 血圧・心拍数などの循環機能、消化管運動など)の正常な維持に、グレリンが必要であること を見いだした。しかしその詳しいメカニズムなどはまだ不明である。 本研究ではグレリンによる自律神経の恒常性維持機構を明らかにし、グレリンを自律神経機能 不全症の治療応用へと展開するための研究基盤を確立する。具体的な研究項目は、 ①グレリン欠損マウスの自律神経機能異常の解析 ②グレリンによる自律神経恒常性維持作用のメカニズム解明 ③グレリンによる体温調節とエネルギー消費のコントロール ④自律神経を介した不安・うつ様症状とグレリンとの関連、 図3-28●「研究目的,研究方法など」冒頭の「概要」部分の見本4 平成21年度基盤研究(B)の申請者の実例をもとに改変。 A) (1) 申請者らは1999年に胃組織からグレリン(ghrelin)を発見し(Kojima et al」 Nature 1999)、これが成長ホルモン分泌促進作用を示すとともに、強力な摂食亢進作用を持 つことを明らかにした。一(以下、省略)一 (2) 上記の背景およびこれまでの研究成果をもとに、本研究はノックアウト・マウスの表 現型解析などの、グレリンのまだ解明されていない基礎的研究を完成し、グレリンを利用し た新しい診断方法や治療薬への臨床応用に展開するための基盤となる研究を行う。 ー(以下、省略)一 (3) グレリンの基礎研究から臨床応用へと展開するために、本研究計画では以下の項目の研 究を行っていく。 ①クレリン遺伝子から活性型グレリンになるまでの生合成過程を解明する。 ②グレリンKOマウスでは自律神経機能の異常を示すが、そのメカニズムを解明する。 =(以下、省略)= い B) (1)本研究の学術的背景、研究課題の核心をなす学術的「問い」 申請者らは1999年に胃組織からグレリン (ghrelin)を発見し(Kojima et al. Nature1999 これが成長ホルモン分泌促進作用を示すとともに、強力な摂食亢進作用を持つことを明らか にした。一(以下、省略)一 (2)本研究の目的および学術的独自性と創造性 上記の背景およびこれまでの研究成果をもとに、本研究はノックアウト・マウスの表現型 解析などの、グレリンのまだ解明されていない基礎的研究を完成し、グレリンを利用した新 しい診断方法や治療薬への臨床応用に展開するための基盤となる研究を行う。 ー(以下、省略)一 (3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか グレリンの基礎研究から臨床応用へと展開するために、本研究計画では以下の項目の研究を 行っていく。 ①グレリン遺伝子から活性型グレリンになるまでの生合成過程を解明する。 ②グレリンKOマウスでは自律神経機能の異常を示すが、そのメカニズムを解明する。 ー (以下、省略)一 図3-29●段落ごとの項目を書いておくことの利点 ちょっとしたことだが、(1)(2)(3)のすぐ後に本文を書いていくのではなく、段落ごとの項目を書いて、本文を書 いていく方が、その部分で何を書いているのか明確になってよい.図は以前の申請書の例なので、現在の申請書とは 項目と番号の対応が異なっている。 (139