===== Page 200 ===== 研究踝題名 腸管上皮幹細胞マーカーLGR5の内因性リガンドの探索 LGR5は消化管上皮の幹細胞マーカーとして知られており、 ファンGPCRである。LGR5は(および、 ※うすると考えられている。本炎の目的は、 LGR5の内因性リガンドのペプチドホルモン を発見し、腸管上皮幹細胞の維持や増殖分化における作用を明らかにして、消化管粘膜の 研究の要約 ~6の内因性リガンドが発見されれば、発生・再生の研究分野へ大きな貢献ができると期待 される。 研究の背景と 「問い」 研究目的 研究方法 研究の展開・ 応用 図3-84●挑戦的研究,Web入力項目(前半)の「研究の要約」の書き方 この例では「研究の背景と「問い」」「研究目的」「研究方法」「研究の展開・応用」で構成している.申請書のそれぞれに相当する部分から抜 粋して、最後にまとめた。 16 日本学術振興会特別研究員の申請書について 日本学術振興会特別研究員(通称:学振,以下では特別研究員)は「優れた 若手研究者に、その研究生活の初期において、自由な発想のもとに主体的に 発課題等を選びながら究に専念する機会を与える」ための制度で、「我が国の 学術研究の特来を担う創造性に富んだ研究者」の育成が目的である。 大学院博士課程(博士後期課程)在学者が対象のDC(Doctoral Course また は Doctor's Course. Doctor Course は和製英語)と、博 時に取得見込みの者のPD(Postdoctoral からきているのだろう)の2つのコー スがある。DCはDC1とDC2に分かれ、それぞれ約650~700名と約1,0 1100名の採用予定数、PDは約350名の採用予定数である。 例年2月上旬に募集要項が公表される。令和8(2026)年度採用分の申 期間は令和7(2025)年4月上旬から6月3日(火曜日)17時(厳守)までで あった. 申請書は特別研究員等審査会の審査委員(5名)による2段階書面審査を経 て、10月上旬ごろまでに第一次採用内定者の開示が、次年の1月上旬ごろまで に第二次採用内定者の開示が、さらに2月中旬ごろまでに補欠者のなかから採 用内定者が開示される。 令和5年の全国の大学院博士課程在籍者数75,841人(文部科学省学校基本調 査より)からすると、採択者は「選ばれた者」である。実際に採択率は15.1% (DCI),17.1%(DC2),23.4%(PD)(令和6年度のデータによる 5倍の高い競争率である。 200)科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 201 ===== Column ある研究室書の「ひとりごと」 毎年、科研費申請とその採択時期になると秘 書として「ルンルン気分」になります。また新 しい研究課題の申請のお手伝いができますし、 私がかかわった申請書が採択されたりすると、 研究機関で仕事をしている書として自がも て、1年更新の非常勤職員ではありますが、や る気も出てきます。自慢ではありませんが、私 が今まで携わった申請書の採択率は90%を越 えると思います。 ある年、10年以上応募資格がなかった先生 が、10月16日に着任され、11月はじめに締切 りの科研費に3件申請し、見事2件採択されま した.その方は研究内容や業績は素晴らしいの ですが、10年も大学を離れていたために、 e-Radとは?エフォート率とは??の状態で した。締め切りまでの時間がないし、その方に とってはほとんど初めての科研費応募でしたの で、私のもつ能力の最大限の力を出し、また巧 みな技を使い、3件応募したなかの2件が採択 されました!私が今まで携わって採択された 40本近い科研費のなかでも、今までの秘書人 生のなかでも、一番嬉しかったできごとです。 ここで,この本を熟読されてらっしゃる先生 方は多分、「巧みな技」とはどのようなものな か、ぜひ知りたいと思ってらっしゃいますよ ね?それではお教えしちゃいますね。 かなり個人的な考え方ですが、まず、秘書が 読んでもわかるような書き方でないとダメだと 思います。細目化されている分野に応募するの ですが、審査委員の方々は、世の中のすべての 研究に目を通しているのではありません。もち ろん、自分の分野でもわからないことだらけな のです(多分).大学院生に頼むのも手ですが、 自分の部下になる大学院生に「申請書を読ん で」とお願いしても、上司の機嫌を損ねること なんてできませんから、相当伸のよい上下関係 じゃないと無理です。ですので、ここは詳しい 16 日本学術振興会特別研究員の申請書について 研究内容を知らない書さんにお願いするのが 一番なんです!特に毒舌な秘書さんがおすすめ ですね。 次に、科研費の申請書は目立つことをした方 が勝ちだと思います。現在、いくつかの種目で はカラーを使うことも可能になっていますが、 本書の読者が申請する種目の大半が白黒ですよ ね.だから、ココが重要というところには、 この新規の物質をわれわれが発見した。 なんて、裏技をつかっちゃうんです。もちろん、 フォントをボールドにするのは当たり前ですが、 明朝体を使っていて、ここだけゴシックという のもありです。 また、業績欄が少し寂しい方は、自分の論文 を発表している雑誌の号の表紙をこの欄にもって きたりするのも1つの手だと思います。もちろん インパクトファクターの高い雑誌が好印象です。 ともかく、先生方にぜひともお伝えしたいの は、もう少し書を利用してほしいということ です。それも上手にほめながら仕事を頼んでも らえると、とってもテンション上がります。例 えば、「僕、文章下手でさぁーー、科研費の申 請書って、秘書さんとかが読んでもわかるよう な内容の書き方をした方が採択されやすいん だって、ぜひ〇〇さんに読んでもらって、内容 でわかりにくいところとか、チェックしてもら えると、助かるんだけど」とか、「業績部分、タ ブとか設定がわかんないんだぁ、〇〇さんいつ もきれいに整えてくれるからぜひ,今回もお願 い!」とか、たくさんほめながら仕事を頼んで みてください.きっと心をこめて丁寧に仕上げ てくれると思います。それに採択されたときは 予算の使い方など、秘書さんに調べてもらわな いといけませんからね。なにはともあれ、秘書 さんを大事にしてくださいね。 (20 ===== Page 202 ===== DCおよびPDの審査方針は、 ①自身の研究課題設定に至る背景が示されており、かつその着想が優れている こと、また、研究の方法にオリジナリティがあり、自身の研究課題の今後の 展望が示されていること。 ②学術の将来を担う優れた研究者となることが十分期待できること。 ③(PDのみ) 博士課程での研究の単なる継続ではなく、新たな研究環境に身を 置いて自らの研究者としての能力を一層伸ばす意欲が見られること。 ④(PDのみ)やむを得ない事由がある場合を除き、博士の学位を取得する予定 又は博士の学位を取得した研究機関(出身研究機関)を受入研究機関に選定 する者、及び大学院博士課程在学当時の学籍上の研究指導者を受入研究者に 選定する者は採用しない。 となっている〔令和8(2026)年度採用募集要項より).このようにDCとPD では評価指針が異なる. ・学振特別研究員の募集の概要 ・学振特別研究員にはDC,PDなどの種目がある。 ・2段階書面審査を経て、第一次、第二次、および補欠の採用内定者が決まる。 ・審査方針はDCとPDでは異なる。 申請書の書き方 さてその特別研究員の応募書類だが、いくつかの項目で科研費申請書と似た 部分がある。特別研究員の審査方針にも、「自身の研究課題設定に至る背景が示 されており、かつその着想が優れていること。また、研究の方法にオリジナリ ティがあり、自身の研究課題の今後の展望が示されていること」とあり、これ らは科研費申請書の評価基準と一致する。また申請書中の「【2】研究計画」の なかの「(1) 研究の概要及び研究の位置づけ」の「研究課題名」「研究の概要」 「当該分野の状況や課題等の背景」「本研究計画の着想に至った経緯」,「(2)研 究目的・内容等」の「研究目的,研究方法,研究内容」「何を、どこまで明らか にしようとするのか」「研究の特色・独創的な点」などの項目は科研費申請書と ほは同じだが、その一方で、個々の項目の記載順は科研費とは少し異なる。ま た「14】研究遂行力の自己分析」のなかの「これまで携わった研究活動におけ る経験などを踏まえ、究遂行力について分析」は、科研費申請書の「応募者 の研究遂行能力」の「これまでの研究活動」とほは同じだが、枠外の注意書き にある「今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素」は特別研 (202)科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 203 ===== 16 日本学術振興会特別研究員の申請書について 赤ペン添削HB3 ● case 04, 05, 15. 16,25, 26, 40~ 43 究員ならではの項目である。さらにPDにおいては「(3)受入研究室の選定理 由」の項目がある。 科研費の申請書と同じく、特別研究員の申請書の様式も変更されることがあ るので、申請書を作成するときには必ず応募年度の申請書をチェックすること 〔実際に、本書を書いているときに発表された和8(2026)年度の募集要項で 申請書の様式に変更があった)。特に科研費申請書の様式が変更されたときに、 それに沿って変更されることがある。 おそらく特別研究員に応募する者は、このような申請書を書くのが初めてで はないだろうか?そのため、何を書いていけばいいのか、またどのようにペー ジを埋めていったらいいのか、わからないことが多いことだろう。このような ときには、大きな部分を小さく分けて書いていくとよい。 また「適宜概念図を用いるなどして」とあるように、図表を使って説明する のは非常に効果的なので、図表の活用をお勧めする。 私の研究室からはこれまでに2名が特別研究員に採用された。彼らとのこれ までの応募経験と、特別研究員について個人的に勉強してきたことをもとにし て、申請書の各項目を書いていくうえでの要点をまとめた。 特別研究員の申請書のフォーマットに沿って見ていこう。なお、実際のフォー マットは「申請書情報」「申請者情報等」からはじまるが、ここでは省略する。 ●「12】研究計画」の「(1)研究の概要及び研究の位置づけ」 この項目は科研費申請書では、「研究目的、研究方法など」の「概要」「(1) 本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心をなす学術 的「問い」」および「(3)関連分野の研究動向と本研究の位置づけ」に相当する。 DC/PDとも500字の「研究の概要」とともに,「研究の位置づけ」として「当 該分野の状況や課題等の背景」「本研究計画の着想に至った経緯」を1ページに まとめる(図3-85). まず最初に500字程度で概要を書くようになっている。しかし基盤研究や若 手研究の申請書の書き方と同じく〔参照 3章3:研究目的,研究方法などーこの欄 の全体像),他の部分ができあがってから概要をまとめるのがよい.それは「概 要」は全体のサマリーだからである。 そして概要は「研究の背景と問い」「研究目的」「研究の展開・応用」で構成 するのがよい。そのなかで「この研究では何をしようとするのか」と「それが なぜ重要なのか」をしっかりと示すことだ. 「当該分野の状況や課題等の背景」では、提案する研究テーマに関してのこれ までの研究の流れや、問題点(=学術的「問い」),そしてこの計画がなぜ重要 203 ===== Page 204 ===== 見出しを加える (DC 申請内容ファイル) 【2】研究計画 適宜概念図を用いるなどして、わかりやすく記入してください。株式の変更・追加は不可です。 (1) 研究の顔要及び研究の位置づけ本項目は1頁に収めてください。 ・まず、研究課題名及び研究の最要を500字程度で記入してください。 ・続けて、特別研究員として取り組む研究の位置づけについて、当該分野の状況や課題等の背景、並びに本研究計画の着想に至った経線も含 めて記入してください。 研究課題名:GOAT 及びグレリン受容体の立体機造に基づいたグレリン脂肪酸修飾・認識機構の解明 (研究の概要)>グレリンは、脂肪修飾を介して活性化が制御される唯一のペブチドホルモンである。しか し、その脂肪酸修飾を担うグレリン脂肪酸転移酵素(GOAT)と、修飾後のグレリンを認識するグレリン受容 体の詳細な機構は未解明である。本研究では、①GOATによるグレリンの脂肪酸修飾機構の解明、②グレリン 受容体による活性型グレリンの認識機構の解明を目的とする。具体的には、X線結晶構造解析を用いて、GOAT およびグレリン受容体の立体構造を決定し、それぞれの機能に必要なドメインや相互作用部位を明らかにする。 これにより、グレリンの活性化制御の全容を解明し、摂食調節機構の理解を深めるとともに、神経性拒食症や プラダー・ウィリー症候群などの摂食異常の病態解明や創薬研究に貢献する。本研究は、国内唯一の GPCR構 造解析成功実績を持つ研究室と、グレリンを発見した研究室の共同研究として実施し、世界的にも先駆的な研 究となることが期待される。 【該分野の状況や課題等の背景) グレリンは、1999年に児島らがラットの胃から単離したペプチドホルモンである(文献 1)。グレリンは、 活性化に3番目のセリン残基の中鎖脂肪酸(オクタン酸)修飾が必須であり、末梢から分泌される唯一の摂 食応進ホルモンである。さらに、グレリンは、ほ乳類に限らず多くの脊椎動物で保存されており、摂食亢進 作用以外にも、成長ホルモン放出促進、血圧降下および体温低下作用などが報告されている(図1)。したが ってグレリンは飢銀を感知し、生体活動を抑制することにより生命維持を補助するホルモンと考えられる。 グレリンの脂肪酸修飾は、グレリン脂肪酸転移酵素(Ghrelin O-acyltransferase:GOAT)によって触媒 される(文献2)。しかし、GOAT がグレリンに脂肪 酸を修飾する機構については十分に解明されてい 活性型グレリン GOATによるオクタン設時 ない。加えて、グレリン受容体は、脂肪酸修飾さ れた活性型グレリンを特異的に認識するが、脂肪 酸の有無だけでリガンドを認識する受容体は少な グレリン分選/ く、その認識機構やシグナル伝達機構についても 未解明な点が多い。 本研究計画の着想に至った経線▶ 中枢 GH 分定促進 摂食尢進 これまでの研究から、GOATによるグレリン 認識にはN 未端の4アミノ酸が十分であること 末楨 貫般分泌促進 舞運動性の大速 インスリン分&和制 開1.グレリンの横造と生理機続 が示唆された。また、GOAT はオクタン酸に限 らず、ヘキサン酸(C6:0)やへプタン酸(C7:0)なども修飾可能である(文献3)。これらの知見は、GOATが ルーズな基質の認識機能を持つことを示唆しているが、生体内では高い基質特異性を示す。そして、GOAT の基質認識機構は解明されていない。 申請者は、GOATおよびグレリン受容体の欠失変異体を作製し、それ ぞれの活性ドメインを解析した(図2)。その結果、GOATはN 未端ま たはC末端の10アミノ酸を欠失すると酵茶活性を失い、グレリン受容 体ではN 未端 39番目のアラニン(Ala39) 以降が細胞内シグナル伝達 に重要であることが示された。しかし、これらのタンパク質のグレリン 認識機構については、未だ不明で今後の課題である。 (文献I) Kojima, M, Hosoda, H,, Date, Y,et al,: Nature 402,656-660,1999 (文献2)Yang,J, Brown, M.S., Liang,G,et al,:Cell 132,387-396,2008. 図2 細胞内Ca2+浅度変化による グレリン受容体異体の活性測定 (文献3)Ohgusu, H,, Shirouzu, K,, et al,: Biochem. Biophys. Res. Com 386,153-158,2009. 最初に500字 程度の概要を 書く、概要は 全体のサマ リーなので、 全体ができあ がってから最 後に書くこと 図を入れる 図を入れる 研究計画に関連した 重要な文献をあげる 項目を分けて書く -3- 申請者登録名 〇〇一OO 図3-85●「【2】研究計画」の「(1)研究の概要及び研究の位置づけ」の見本 平成27年度の特別研究員(DC)の申請書の実例をもとに、令和8年度の申請フォーマットに移し替えて改変したもの。 (204)科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 205 ===== 16 日本学術振興会特別研究員の申請書について 赤ペン添削HB3 ● case 31~39, 44~ 62 赤ペン添削HB3 ● case 69 なのかを示す。そして「本研究計画の着想に至った経緯」では、申請者がどの ようにこの研究計画を思いついたのかを書いていく。 ●「【2】研究計画(続き)」の「(2)研究目的・内容等」 科研費申請書の「研究目的、研究方法など」の「(2)本研究の目的および学 術的独自性と創造性」「(4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしよう とするのか」などに相当する。 「(2) 研究目的・内容等」では記載すべき内容が多く、読みやすいように(そ れが理解しやすさにつながる) 工夫して書いていかなければならない.ここに あげた例では全体をいくつかの部分に分けて小見出しを付け、それぞれの項目 に何が書かれているのかがわかるように意図した(図3-86)・ 「研究目的」では、一番重要な「研究目的」を太字にしてアピールした。 「研究方法」と「研究内容」の違いを書き分けるのは難しい.ここでは両方を 1つの項目にして、どのような戦略で研究を進めていくのか、その一般的なこ とを書いていった。そして具体的な研究の進め方を次の「どのような計画で、 何を、どこまで明らかにしようとするのか」にまとめた。 「研究の特色・独創的な点」を示すために、「先行研究等との比較」では、こ の研究テーマの研究がなぜうまくいっていないのかを説明した.「本研究の完成 時に予想されるインパクト」では、なぜこの研究が重要なのか、何が新しい点 なのかをアピールした。「将来の見通し等」では、この研究を行うことで、どの ような展開・応用が期待されるのかを書いた. ●「(3) 受入研究室の選定理由」(PDのフォーマットのみ) 受入先の研究室をなぜ選定したのか、その理由をきちんと書いておく必要が ある。その研究室でないと研究が進まない理由、そこに行くことで研究が画期 的に進展する可能性が大きいことなど、しっかりと説明すること、これまで同 じ研究機関内での別の研究室への移動でも可能だったのが、「博士の学位を取得 する予定又は博士の学位を取得した研究機関(出身研究機関)以外の研究機関 を選定すること」と、原則必ず別の研究機関に移動しなければならなくなった。 また、「実質的な研究機関移動」と認められるかどうかは採択の重要な判断基準 になるので募集要項をよく読んで注意する。 「【3】人権の保護及び法令等の遵守への対応」 科研費申請書の「人権の保護及び法令等の遵守への対応」に相当する。 個人情報に関する研究、遺伝子組換え実験、動物実験など、研究機関で倫理 委員会やその他の委員会の承認があらかじめ必要なものは、きちんと対応して おけば問題はない(図3-87). (205 ===== Page 206 ===== 【2】研究計画(続き)海定概念図を用いるなどして、わかりやすく記入してください。株式の変更・追加は不可です。 (2) 研究目的・内容等 本項目は2頁に収めてください。 ①特別研究員として取り組む研究計画における研究目的、研究方法、 研究内容について記入してください。 ②どのような計画で、何を、どこまで明らかにしようとするのか、特別委究員奨費の応募区分(下記(※)参照)に応じて、年次計画を示 し、具体的に記入してください。研究計画が想定通り進まなかった場合の対応方法があれば、あわせて記入してください。 ③ 研究の特色・独創的な点(先行研究等との比較、本研究の完成時に予想されるインパクト、将来の見通し等)にも触れて記入してくださ い。 ④研究計画が所属研究室としての研究活動の一部と位置づけられる場合は申請者が担当する部分を明らかにしてください。 ⑤ 研究計画の期間中に受入研究機関と異なる研究機関(外国の研究機関等を含む。)において研究に従事することも計画している場合は、 体的に記入してください。 (愛)特別名発製品質の第入期が3年の場合のん●に後は(め方)が203円以下、66込方)2208円の門めで(いのみ。と年の場合は(め方)が100 円以下、(B区分)が160万円300万円以下。1年の場合は(A区分)が80万円以下。(6区分)が80万円程150万円以下。18区分については研究計画上必要な場合のみ (2)研究目的・内容等 【研究目的 グレリンは、ヒトペプチドホルモンで唯一、脂肪酸修飾によって活性化が制御されている。本研究は、こ の生化学的特徴に着目し、グレリンの脂肪酸修飾と密接に関係しているグレリン脂肪転移酵素(GOAT) とグレリン受容体の両方を対象として、次の2点を研究目的とする。 ① GOATによるグレリンの脂肪酸修飾機構の解明 ② グレリン受容体による活性型グレリンの認識機構の解明/ 研究目的を太字にして、 はっきり示す 【研究方法、研究内容】 これからの研究では、GOAT およびグレリン受容体によるグレリンの認識機構を明らかにする。そのた めに、GOAT およびグレリン受容体のX線結晶構造解析を行う。 リガンド・タンパク質の結合様式を明らかにする研究手法の中で、立体 構造解析は、一度に多くの情報を得ることができる最も強力な手段の一 つである。2007年にアドレナリンB2受容体の立体構造が解明されて以 降、数種類の受容体の立体構造が明らかにされ、リガンドがどのように して受容体のポケットに収まるか、リガンドの結合に伴い受容体がどの ような構造変化をするのか視覚的に理解できるようになった(図3)。 本研究で対象としているグレリン受容体は、アドレナリン Ba受容体 と同じGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。そのため、アドレナ リンβっ受容体を含む構造既知の GPCR 立体構造解析でのストラテジー をグレリン受容体の構造解析にも応用できると考える。一方、GOATも 受容体と同じ膜タンパク質の一つであるため同様の立体構造解析手法を 13 アドレナリンB2受体の立体表金008 10:3045 応用することでGOATのX線結晶構造解析も可能であると考える。 X線結晶構造解析で最も重要な点は、構造学的に安定なタンパク質の産生である。 アドレナリン B~受容体では、N 未満およびC未端領域の削除、細胞内第3ループへT4リゾチームを拝 入することで安定なタンパク質を産生している。しかし、このような変異体は、構造学的に不活性な コンフォメーションを形成する場合があり慎重な検討が必要である。申請者は、これまでに種々の欠失変 異体を作製し、GOATおよびグレリン受容体の活性を検討してきた。そのため、活性に必要な領域につい ての知見をすでに持ち合わせており、本研究に大きなアドバンテージを有している。また、新たな欠失変 異体の作製に際しても、これまでの手技・手法を応用して柔軟に対応できると考えている。 1どのような計画で、何を、どこまで明らかにしようとするのか [Step1] 安定変異体の作成 出芽酵母(S.cerevisiae)を用いた発現系では、(1緑色光蛋白質 (GFP)の融合、(2)当光シグナルによ る評価系、(3種鎖修飾部位の変異やN端またはC未満領域の削除、(4)細胞内第3ループにT4リゾチーム 項目を分けて書く -4- 申請者登録名 0〇〇〇 図3-86●「【2】研究計画」の「(2)研究目的・内容等」の見本 平成27年度の特別研究員(DC)の申請書の実例をもとに、令和8年度の申請書フォーマットに移し替えて改変したもの。 206) 科研費獲得の方法とコツ第9版 記載項目が 多いので 工夫して書く 図を 入れる 重要な部分を 太字にして はっきりと示す 研究方法と 内容(次ペー ジへつづく) (次ページへつづく) ===== Page 207 ===== 16 日本学術振興会特別研究員の申請書について (前ページからのつづき) を導入する技術を用い、結晶化能の向上を視野に入れた安定変 異体の迅速なスクリーニングを行う。 [Step2]タンパク質の大量発現・精製 Step1により安定化 出芽酵母 タンパク質の生産 [Step1] 安定員体の作製 (1) GPの場合 製光シグナルによる評価 された変異体を利用し、メタノール資化酵母(P.pastoris) あ るいは昆虫細胞を用いた系により標的タンパク質の大量発現・ 精製を行う。さらに、得られたタンパク質に特異的な薬剤を用 いたリガンド結合アッセイを行い、受容体機能を保持している メタノール発化。母 IStep2! タンパク質の大観発現・精製 リガンド詰合アッセイ かを確認する。 【Step3] 結晶化 種々のリガンドや、ヒスタミンH、受容体の構造解析で用いら [Step3] 総品化 頭タンパク質/試体の れた脂質キュービック相法を用いて結晶化を試みる。また、ナ ボタンパク質の結晶化 ノドロップ結晶化ロボットにより結晶化条件のスクリーニン グを行う。同時に、立体構造認識抗体を用いた受容体/抗体複 1Step4] 横溘解析 合体の結晶化を試みる。 [Step4]構造解析 大型放射光施設 SPring-8のビームラインを用いる事により、 原子分解能でのX線結晶構造解析を行う。得られたX線回析 データから、その構造やリガンド結合部位の解析、さらには過去に構造解析されたGPCR との比較により GPCR の間での構造の類似点や相違点について解析する。 本研究は、上述の4つの項目に沿ってX線結晶構造解析を行う。X線照射により、リガンド(グレリン)と 結合した GOATおよびグレリン受容体の結晶の回折データを得る。その後、回折データをもとにパソコン上 で分子モデルを作製し、リガンドとの結合部位を解析することで、グレリンの脂肪酸修飾機構およびグレリ ン受容体によるグレリン認識機構を明らかにする。これら一連の研究から得られた知見をもとに、グレリン による摂食調節が制御されるかを理解することで神経性拒食症やプラダー・ウィリー症候群といった摂食異 常の病態解明に貢献する。 【先行研究等との比較] これまでのプレリン研究では、構造生物学からのアプローチは全くなされていない。一般に、膜タンパ ク質およびGPCR の立体構造は、可務化や結晶形成の難しさから困難とされている。特に、GPCRの立体 構造は、十数種類しか解明されておらず、世界でも5つの研究室でしか成功していない。しかし、〇〇大 学〇〇研究室は、国内で唯一GPCR の構造解析に成功しており、本研究計画によって GOATおよびグレリ ン受容体の結晶構造を解明できると考える。 【本研究の完成時に予想されるインパクト】 本研究は、世界に盛りてクレリンを発見した●〇大学●〇研究室と〇〇大学〇〇研究室との共同研究 で行う。グレリンは、ヒトペプチドで唯一、脂肪酸修飾の有無によって活性が制御されるホルモンであ り、脂肪酸修飾とグレリン受容体による活性型グレリン認識機構の解明は、グレリン研究の大きな課題で ある。当研究室は、グレリン研究の中心的立場にあり、この脂肪酸修飾機構とグレリン認識機構が、ペプ チドを発見した研究室で解明される社会的意義は大きいと考える。 【将来の見通し等】 GPCIを含ぜ多くの膜タンパク質は、創薬ターゲットとして研究されている。実際、市販薬のおよそ50% が膜タンパク質を標的としている。グレリンは、摂食行動を制御するペプチドホルモンであり、神経性拒食 症に代表される摂食障害や肥満を伴う先天性疾患、プラダー・ウィリー症候群と関与している。また近年、 GOATに着目した糖尿病などの生活習慣病に対する基礎研究が活発である。そのため本研究は、これらの病 感理解や治療楽開発の大きな礎になるものと確信する。 これらの項目はコンパクトにまとめる 研究方法と 内容 研究計画に 対応した フローチャート 章 ーー 申請者登録名 〇〇〇〇 207 ===== Page 208 ===== 【3】人権の保護及び法令等の遵守への対応本項日は1頁に収めてください。様式の変更・追加は不可です。 ・本棚には、「【2】研究計画」を遂行するにあたって、相手方の同意・協力を必要とする研究、個人情報の取り扱いの配慮を必要とする研究、 生命倫理・安全対策に対する取組を必要とする研究や安全保障貿易管理を必要とする研究など指針・法令等(国際共同研究を行う国・地域 の指針・法令等を含む)に基づく手続が必要な研究が含まれている場合、講じる対策と措置を記入してください。 ・例えば、個人情報を伴うアンケート調査・インタビュー講査・行動調査(個人限・映像を含む)。国内外の文化遺産の講等、提供を受け た試料の使用、優能性を伴う研究、インフォームド・コンセントが必要な研究、ヒト遺伝子解析研究、遺伝子組換え実験、動物実験、機微技 術に関わる研究など、研究機関内外の情報委員会や倫理委員会等における承認手続が必要となる調査・研究・実験などが対象となりますの で手続の状況も具体的に記入してください。 ・なお、該当しない場合には、その旨記入してください。 本研究では、GOAT やグレリン受容体遺伝子の組換え実験や発現実験を行う。このため、実験は〇〇大学 遺伝子組み換え実験安全委員会の承認及び〇〇大学組換え DNA 実験安全管理委員会の管理のもと、〇〇大 学組換え DNA 実験安全管理規程に則って行う。 本研究に用いるすべての動物実験は、動物実験を適正に実施するため、「〇〇大学における動物実験の実施 に関する規程」の定めるところにより、学長の総括管理のもと、動物実験委員会の管理下において行う 図3-87●「人権の保護及び法令等の遵守への対応」の見本 平成27年度の特別研究員(DC)の申請害の実例を令和8年度のフォーマットに移し替えたもの。 研究機関での 手続き等を 忘れずに (208 「【4】研究遂行力の自己分析」 赤ペン添削HB3 ●case 64~66 (1) これまで携わった研究活動における経験などを踏まえた研究遂行力の分析 科研費申請書の「応募者の研究遂行能力」に相当する。 申請書の注意書きには「これまでの研究活動の成果物(論文等)がある場合 には、まず成果物の一覧表を掲載し、見出し番号を付してください」とある。 そして「く文章では、適宜成果物に言及しながら(言及の際には見出し番号 で示すこと)記入してください」と書かれている。この項目は、この指示にし たがって書いていけばよい。 科研費と同じように、この部分は単に業績リストを書くためにあるのではな く、申請者の「研究遂行能力」を示すためのものだ。これまでの論文発表や学 会発表の内容が、今回の研究計画にどのように活かされているのかをしっかり と示そう.また論文発表などの研究業績は特別研究員採択のために必須といわ れているが、大学院生の場合には研究業績がほとんどない場合も多い。私の研 究室の例では、大学院生の場合は筆頭著者の英文論文がなくても採択されてい るが、業績はあるに越したことはない。この欄では、論文(第二著者以下のも のでもよい)、総説、学会発表など、小さなものでもよいので記入しておこう (図3-88). その他には、大学などで表彰を受けたことや民間財団の研究助成 獲得の実績などを書いて「研究遂行能力」をアビールしよう。 (2) 今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素 ここには申請書の説明文(「申請書を作成する際には消去してください」と書 かれているところ)にあげられている例から、いくつか当てはまるものを書い ていけばよい (図3-88の2ページめ).例としてあげられているのは、研究に 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 209 ===== 16 日本学術振興会特別研究員の申請書について 【4】研究遂行力の自己分析本項日は2頁に収めてください。株式の変更・追加は不可です。 ・日本学術振興会特別研究員制度は、我が国の学術研究の将来を担う創造性に富んだ研究者の養成・確保に資することを目的としています。 この目的に悩み、これまで携わった研究活動における経験などを踏まえ、研究行力について分析してください。 【成果物の一覧】 1. 論文:Shimura Y, Ohgusu H, Sato T, Kojima M. Regulation of the Human Ghre by Transcription Factors, NF-K B and Nkx2.2. Int J Endocrinol. 2015:58090 2.総説:Sato T, Nakamura Y, Shiimura Y, Ohgusu H, Kangawa K, Kojima M. Struc function of ghrelin. J Biochem. 151(2):119-128 (2012).(査読あり) 3. 総説:グレリンとその受容体、およびグレリン脂肪酸転移酵素の比較内分泌学 椎村祐、中村祐樹、佐藤貴弘、児島将康、比較内分泌 150:159-164(2013).(査読あり) 4.研究発表(口頭):椎村勘「グレリン受容体の結晶構造解析による活性型グレリン認識機構の解明」 第91回日本内分泌学会学術総会、若手研究奨励賞講演、フェニックス・シーガイア・リゾート(宮崎市) 2018年4月26日(査読あり) 5.受賞:〇〇キャンバス賞(第7回〇〇大学学術交流カンファレンス)受賞 6. 助成金:平成24年度●●科学研究助成に係る助成金 成果物を見出し番号で示す (1) これまで携わった研究活動における経験などを踏まえた研究遂行力の分析 【自己の長所等】 様々な研究分野に携わってきた経験から、より幅広い知識と実験技術を身に付け、多面的な考察力を養って きたことが申請者の長所である。 申請者はこれまでに、豚鶏ウイルス学や薬理学、内分泌学と3つ分野で研究に携わり、それぞれの分野で論 文① や総説 2.3)学会発表 の成果を残している。申請者はもともと、強い知的好奇心を持ってお り、多くの分野で研究に従事してきた経験の中で、より広範な知識と実験技術を獲得してきたと考える。今後 も積極的に新しい知識や実験技術を習得し、その中で培った能力を研究に反映させることで将来の学術研究を 狙っていきたいと考えている。 (成果物 1の解説)本論文は、グレリン遺伝子の発現調節機について調べたもので、いくつかの転写因子 のうち NP-KB が発現抑制を、Nkx2.2が発現九進を行うことを見出した。本論文に記載された実験を行うこ とによって、今回の研究計画に必要な生化学や分子生物学の手法をマスターした。とくにタンパク質の発現法 や、その物理化学的な性状の解析は、結晶化のためのグレリン受容体タンパク質の発現や、熱安定性の検討に 十分に活かされている。 (成果物 2の解説)本総説はグレリンの造と能についてまとめたもので、申請者はグレリンの発現制倒 機構に関する部分を担当した。この総説の執筆を通して、グレリンに関する知識を深めることができ、今回の 研究計画の立案に役立った。 (成果物 3の解説)本総説は申請者が中心になって全体をまとめた。グレリン受容体に関する文献を読み込 い 章 成果物(論文 等)を一覧に まとめておく 最初に要約を 書いておく 論文や総説の 情報だけでな く、中身につ いて簡単に触 れておく -7ー 申請者登録名 〇〇〇〇 (次ページへつづく) 図3-88●「研究遂行力の自己分析」の見本 本項目は科研費と同じく、単に「研究業績」を書くのではなく「研究遂行能力」を示すためのものに変更された。そのため、見本は平成27年 度の特別研究員(DC)の実例をもとにして、令和8年度の申請書に合わせて修正したものである。令和8年度の申請書 ジにまとめることになっている。 (209 ===== Page 210 ===== (前ページからのつづき) (14】研究途行力の自己分析の抜き) むことで、今回の研究計画の方針を決定することができた。 (成果物4について)研究の途中経過について学会で発表し、若手研究奨励賞を受賞することができた。 【自己評価する上で、とくに重要と思われる事項】 申請者がこれまでの成果をまとめた論文は国際学術誌へ掲載され、この成果によって日本学生支換機構の 「業績優秀者返還免除」にも採択されるなど、研究成果は一定の評価を得ている。一方で、学会においてはバ ネリストとして討論する機会やシンポジウムをオーガナイズする機会にも恵まれ、学生時代から研究者間のコ ミュニケーションを育んできた。卒業後は大学助手として勤務し、講義や実習を通して学生教育に携わる一方、 研究においても「〇〇キャンパス賞(第7回〇〇大学学術交流カンファレンス)」(5)の受賞に繋がる成果を 得ている。その後、基礎研究へのさらなる思いを実現するために大学院に再入学し、そこで立案した研究は「平 成24年度〇〇科学研究助成に係る助成金」(6)に採択されている。このように、申請者は、研究のみならず、 学会や研究助成の獲得などに積極的に参加・応募することを心がけている。 (2)今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素 (英語力の向上) 応募者は英語があまり得意ではなく、英語論文執筆や国際学会での学会発表は苦手である。筆頭著者とし て英語論文はこれまで一編発表したが(1)、論文の執筆中には指導教官からなんどもなんども修正の指摘 を受けた。また初めての英語での学会発表(Keystoneシンポジウムでのポスター発表だった)では、英会話 が苦手なために質問に十分に答えることができなかった。指導教官からは「論文発表でも学会発表でも、ど んな研究者でも初めてのときがあるのだから」と慰められたが、とても悔しかった。 しかし今後、研究者としてやっていくには英論文や国際学会での発表は避けることはできない。そこ で、英語力の向上を目指してしっかりと学んでいきたい。具体的には次のように英語力向上の学習計画を立 ①英語論文の執筆を積極的に行うこと 筆頭者者の論文だけでなく、機会があれば先等論文での自分の担当部分の執筆を行い、発話論文の経験値 研究室のジャーナルクラブでの論文だけでなく、自分の研究に関連した論文や、その他の重要な論文を 申請者な らではの アピール ポイント 申請者の 具体的な 体験を 晝く 箇条書きに して読みや すく工夫 国際学会での発表や海外留学を目指すためには英会話力の向上が欠かせない。現在、週に一度英会話教室に 通って、英会話を習っている。また、それだけでは不十分なのでYouTubeで科学に関する動画などを積様的 に視聴するように心がけている。 (知識の幅・深さを広げるために) 現在はまだ日分の子にアーマのグレリン遺伝子の転写制のことだけを勉強するのに精一杯で、知識の組 や深さはまったくない状態である。それでは当然、将来に自分が考えたオリジナルな研究テーマに取り組む ときに、研究内容が浅いものになってしまう。 そこで知識の幅や深さを広げ最新の研究動向をむために、学会では自分の専門分野の発表だけでなく他 分野の研究発表もできるだけ聴講するようにし、またLodish らの「分子細胞生物学」教科書を読んだり、 Nature 誌の News & Viewsコーナーのような最新の研究成果の解説記事を毎号読むことに努めている。 いくつかの項に分けて記載する 欠点を 隠さない -8= 申請者登録名 おける主体性、発想力、問題解決力、知識の幅・深さ、技量,コミュニケーショ ンカ、プレゼンテーション力などである。これらについて「具体的に記入」「観 点を項目立てするなど、適宜工夫して記入」していけばよい。 「具体的に記入」するには、自分の欠点や足りないものを正直に隠さずに書くこ とだ。若手研究者なのだから、欠点や足りないものがあって当然。むしろそれら を自覚していると評価されるかもしれない。恥ずかしがらず堂々と書いていこう。 (210)科研費獲得の方法とコツ第9版 ===== Page 211 ===== 16 日本学術振興会特別研究員の申請書について 「申請者に関する評価書」(指導教官が作成する) ここには評価書作成者からみた申請者の「(1) 研究者としての強み」と「(2) 今後研究者として更なる発展のため必要と考えている要素」について記載する。 これらの項目は「14】研究遂行力の自己分析」の記載項目とほぼ同じである。 つまり申請者自身と評価書作成者(おそらく指導教官だろう)が、主観的客観 的に別々にこれらの項目について書くということだ。 申請者を悪く書く指導教官はいない。あるいは申請者の立場からは、自分を 悪く書くような指導教官には評価書を頼まない。評価書の内容がいくらよくて も、研究内容があまりよくないものは採択されないだろうが、やはりよい評価 書があるに越したことはない。評価書を書く者の腕のみせどころである。 記載内容に求められているのは、申請者の研究における主体性、研究の進捗 状況、発想力,問題解決能力,専門知識・技量,コミュニケーション能力、特 来性、研究の独創性または特色などである。評価書作成者には申請者の未来を 予見する能力が求められているようだ。 多くの評価書は当たり障りのない。申請者が誰であってもそのまま使えるよ うな内容になりがちだ。例えば、以下のように、 ・毎日コツコツ実験を積み重ねる努力家で、忍耐強く実験を行い、優れた 研究成果をあげた ・自分の研究分野だけでなく、他の関連分野の知識も豊富で、よく勉強し ている ・着想力や想像力が豊かで,研究チームとのコミュニケーションも良好で ある ・学業成績優秀で,将来性豊かである このように書かれた評価書では、申請者の人物像は審査委員にはあまり印象 に残らない。では、どのような評価書が印象に残るだろうか?私はできるだけ その申請者にまつわる具体的なエピソードを入れて書くようにしている。研究 室(あるいは日常生活)でのできごとについて、その人物がどのように対応し たのか、どのような行動をしたのか、などを書く.他の誰でもない。その申請 者ならではのエピソードから、申請者の研究姿勢や能力などが浮かび上がるよ うにする。もちろんこのような書き方は難しいだろうが、当たり障りのない評 価書よりも、はるかに印象に残ると思う.例えば、以下のように. (211 ===== Page 212 ===== 現在行っている研究を進めるために、どうしても他施設に人を派遣して、 そこで実験を進めなければならなくなりました。数カ月とはいえ、遠方へ の移動は大変です。このような頼みにくいことに対して〇〇くんは「先生、 ほく行きます」と二つ返事で引き受けてくれたのです。〇〇くんのこの決 断のおかげで研究は大いに進展しました.このようなエピソードからも〇 〇くんの研究に対する、積極的な取り組みや、決断力、実行力などがうか がえると思います。 また実際に苦労した研究内容などを、例えば何回くらい実験を繰り返したか とか、論文投稿でのリバイスの回数など、具体的な数字を使って書くのも印象 に残る。 ・この論文審査には4回ものリバイスと追加実験があったが、〇〇くんは すべての休日を返上し、忍耐強くレフリーの要求に答えた。 ・申請者は根気強く 42種類もの変異体を作製し、細胞内情報伝達系の解析 を網羅的に行うことで、受容体との選択的共役部位を特定した。 日本学術振興会特別研究員は研究者として成長していくのに重要なステップ である。特来の科研費応募への練習の意味もあるので、応募できる方はぜひト ライしてほしい。 なお、Dr. クラゲさん(本名は貴人さん)という方が、YouTubeで「学振 必勝講座」を公開している。2020年3月当時、東京大学大学院理学系研究科生 物学専攻・国立科学博物館に在籍しておりDC2に採用されていた(2025年3月 現在,福山大学の講師をされている)。この動画も参考にしてみるとよいかもし れない。 →学振の申請書の書き方のまとめ ・これまでに行ってきた研究が、申請した研究計画にどのようにつながるの かを示す. ・なぜ自分の研究が重要なのかをしっかりと書く. ・図表を活用して、わかりやすくする。 ・受入先の研究室を選定した理由をはっきりと示す。 ・自己評価や評価書は具体的なエピソードを入れて印象に残るようにする。 212 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 213 ===== 16 日本学術振興会特別研究員の申請書について Column 審査委員経験者からの申請書に対するアドバイス 科研費の審査委員がどのように申請書を評価 しているのか、ほとんどの人にはわからないだ ろう。私自身も、知り合いから立ち話程度に聞 くくらいしか他の審査委員の評価方法がわから ない。以下は匿名の審査委員経験者から寄せら れた申請書に対してのアドバイスである。 審査委員Aさんのアドバイス 審査委員といえども、申請者と全く同じ専門 領域である可能性は少ないため(ある意味申請 者よりもその分野の素人の可能性あり!),丁寧 に研究の重要性をアピールしよう。税金を投入 する意味のある研究であることをアピールしよ う.それには国語力が必要になる。具体的には、 1) 目的を明確に書こう 2) 研究目的や研究計画の学術的背景を引用論 文をあげてきちんと書こう 書かれている背景が学術的根拠の薄いもので あったり、申請者の思い込みである場合がかな りある.また、「〇〇〇のニューロンでの作用 はよく知られているが、グリア細胞での作用は 調べられていない」という研究背景では、研究 計画の重要性が審査委員には伝わってこないの で、当然評価は低くなる。 3) 応募者の研究遂行能力欄 以前の研究テーマと異なるテーマで申請する際 には、応募課題に関連するものに限らず、以前の 研究テーマでの研究業績を書くこと。そうでない と、申請者に研究計画遂行能力があるのかどう か、審査委員が判断できない。何も書いていない と、研究計画遂行能力がないと判断されてしまう。 4) 申請書の形式に沿って書こう 審査委員が申請者と研究分野がかなり異なる 場合には、審査委員が申請書(きちんと書かれ ていても)を理解できないことがある。その場 合、審査委員によっては、形式的な審査をする 可能性がある。例えば、申請書には、箇条書き で記載する項目を説明しているところがあるが、 箇条書きの1つを無視しただけで、非採択判定 する審査委員もいる。それゆえ、申請書の形式 に沿って書いた方が無難である。 5) 申請書は平易な文章で書こう 本書で散々述べられている通りである。 審査委員Bさんのアドバイス もちろん、私とは違った観点から審査する方 もいるはずです。なぜなら私が総合評点で2を 付けた申請者が採択されている場合も少なから ずあるからです(4を付けた申請者が不採択の こともあり). もう面倒になって業績だけで決めてしまう番 査委員、いそうですよねー、ということを考え れば、研究遂行能力欄の充実は必須です。審査 した申請書で気づいた点は、 1) 自立性の欠如 ①テーマが明らかに元ボスの焼き直しで発展 性に欠ける。 ②計画通り行かない場合は「元ボスに助言を 仰ぐ」と堂々と書く、恥ずかしいぞ! ③共同研究者が多すぎ (何でも他人に頼む申請 者。で、あなたならではの得意領域は何?). 2) 実験方法と計画に具体性がない ①実験方法が平凡で独自の工夫に欠ける。 ②計画内容と人員が明らかに対応しない.1 人でそれをすべてできるのだろうか?実験 補助を雇用するとか学生人数を具体的に記 述するべき. ③うまくいかない場合の対処法がない。 3)何でも外注 院生がこんなにもいるのに、こんな程度のこ とさえ外注? 4) 国民の税金を使っていることを意識してい ない 国民に還元する方法の箇所が空白、もしくは 特許のことだけとか、学会や論文発表のことし か書いていない。 5) そのテーマに関する世界の情勢を自分の都 合のよいように書いてしまっている 真面目な審査委員は、PubMedで調べながら 審査しているので、わかってしまうのだ。 6) 1の自立性とも関連するが、申請者の核と なる成果が非常に少ない つまり、共同研究ばかりで申請者はいわば部 品のような役割しかしていない。 (213