===== Page 187 ===== 13研究経費とその必要性 若手研究の研究課題をもとに新たに応募することができる研究種目は、研究 期間が4年の研究課題は「基盤研究(S),基盤研究(A,B, C)」,研究 3年の研究課題は「基盤研究(S),基盤研究(A,B)」と少し異なる。 なお、採択されれば、継続している研究課題の最終年度の科研費は原則とし て交付されない。また継続している研究課題以外に、研究代表者として別の研 究課題がある場合には、その研究種目の重複制限が適用されることがある、さ らに「研究計画最終年度前年度の応募」とは別に新規で応募しようとする研究 課題がある場合も、重複制限が適用されることがあるので注意が必要だ。詳し くは公募要領でチェックしてほしい。 いくつかの制限があるためなのか、これまでの審査の経験で「研究計画最終 年度前年度の応募」を目にしたことはない。 その研究計画最終年度前年度応募の状況であるが、当初内定時の研究期間が 4年以上の研究課題において、令和4年度(2022年度)の応募件数は567件、採 択件数は204件、採択率は36.0%であった。一方で当初内定時の研究期間が3年 以上の若手研究では、令和4年度の応募件数は165件で採択件数は54件、採択 率は32.7%だった。 13研究経費とその必要性 ●この欄では何を書くのか? 研究経費の内訳を記入する。設備備品費。消耗品費、旅費、人件費・謝金、その 他の明細を書く、そしてその内容が、なぜ研究計画に必要であるのかを示す。 ●この欄では何を評価する? 研究経費の項目では、内容によって採択のプラスになることはまずないが、審査 における評定要素には研究経費の妥当性が含まれている。そのため、1つの費目 が全体の90%を超える場合など、かなり偏った使用方法のときにはきちんとし た説明がないと採択に影響する場合がある。 研究経費の明細 ここでは、設備備品費。消耗品費、国内旅費,外国旅費、人件費・謝金、そ の他の明細を記載する。 平成30年度の公募から、この欄はダウンロードした申請書にはなく、電子申 (187 ===== Page 188 ===== 基盤研究(C)(一般) 9ー(1) 研究経費とその必要性 設備備品費の明細 年度 品名・仕様 (金額単位:千円) 消耗品費の明細 設置機関 数量 単価 金額 事項 金額 R2 生化学・公子生物 学実験用試 400 R2 生化学・分子生や400 8a a 400 細胞培養器具 400 計 計 1,600 生化学・分子生物 学実験用試薬 400 生化学:分子生物 学実験用器具 400 細胞培養試薬 400 細胞培養器具 400 計 0 計 1,600 R4 250 設備備品、消耗品費の必要性 設備備品については現有のもの、あるいはK大学の学内施設のもので行う。生化学実験、分子生物学実験、 培養細胞を使った実験を行うので、消耗品を多く計上した。 図3-77●「研究経費とその必要性」の見本1 令和2年度基盤研究 (C)の申請書の実例をもとに作成、ここでは設備備品費、消耗品費の欄を示す。旅費、人件費・ 謝金、その他についても同様の欄がある。 請システム上で(Web上で)入力できるようになった〔Web入力項目(後半)、 参照4章3:電子申請の実際]. 経費が多すぎるために審査委員から減点されることはまずないが、研究計画 と研究期間にふさわしい額を要求すること.実際には応募種目ごとの最大限度 額を要求している応募者がほとんどだと思う.きちんと経費の内訳を記入して、 そのうえで必要なら究経費は遠慮せずに、堂々と最大限の額を要求しよう。 研究経費を少なく申請しておくと採択されるチャンスが多くなると考える(い われている)かもしれないが、そのようなことは絶対にない!経費の大小と採 択の可否はまったく関係がない。なお、Web上で研究課題名を入力するところ にも研究経費を入力する欄があるが、ここで記載したものと同じ金額・費目が 自動的に入力される。 設備備品は品名・仕様と設置機関を書く必要がある(図3-77).また備品を 購入するときには初年度に購入することが普通で、そのために初年度の研究経 費の額を大きくすることが多い.しかし、きちんとした理由があれば2年目以 降でも備品を購入することができるため、1年目の額を少なくして、2年目以降 (188 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 189 ===== 13研究経費とその必要性 の額を多くしてもかまわない。 また現在では研究経費の内訳は総額の50%以下ならば研究者の判断で自由に 変更でき、さらに次年度への繰り越しも可能なので、備品購入も研究の進展を みて購入できる。基金化、調整金、合算使用の制度によって、備品購入などに さらに使いやすくなったと思う〔参照1章7:科研費の基金化,調整金、合算使用、 バイアウト制度). 消耗品の明細は、図3-77で示したように、それほど詳しくは書く必要はな い。私は「生化学実験試薬」「細胞培養試薬」など、おおまかに書いている。 旅費については、「研究打ち合わせ」や「学会参加」など、何の旅費なのかを 書いておくこと、人件費・謝金は「実験補助」や「データ入力」などの事項を 書いておくこと、また「その他」には運搬費や、論文投稿前の英文校閲などの 費用と必要であるなら「バイアウト制度」の経費も計上しておくとよい。 研究経費の必要性 赤ペン添削HB3 ● case 70 この部分では、申請書に書いた研究経費(設備備品費,消耗品費、国内旅費、 外国旅費、人件費・謝金、その他)が妥当で、それが必要であることを明記する。 図3-78にいくつかの例をあげておく〔参照巻末の実際に採択された申請書①②)。 電子申請システム上のこの部分で説明されているように「各費目(設備備品 費、旅費、人件費・調金)が当該年度の全体の研究経費の90%を超える場合 及びその他(消耗品費,その他)の費目で、特に大きな割合を占める経費があ る場合」には、その内訳となぜ必要なのかをきちんと書いておかなければなら ない。 研究経費が妥当なものであるかどうかは評定要素にあるため、審査委員はこ の部分を必ずチェックして、研究費の各費目が妥当なものかどうかを調べる。 通常,審査のとき経費の内訳を詳しく検討することや、経費に意義を唱えるこ とはほとんどない。しかし、審査委員としての経験から述べると、書面審査で は、毎年「なぜこの経費が?」というのが100の申請課題のなかで1~2題は ある. 1つは分担金の額.研究分担者には必ず分担金を支給するが、その額は最大 限で全額の2~3割が妥当だと思う、科研費に採択された究課題はあくまで 研究代表者が中心にやるべきものなので、研究費の大部分は研究代表者が使用 するべきだ、しかし、なかには全体の額の半分を研究分担者に配分する申請書 もある。 また、経費をパソコンとソフト購入だけにしているものも問題だ、データ収 (189 ===== Page 190 ===== 初年度には研究を円滑にスタートさせるためにインキュベーターとペプチド・サンプルの凍 結乾燥用のための高性能真空ポンプを計上した。 本研究は、K大学生命科学研究所で実施します。主な研究の材料はヒトの培養細胞です。研 究遂行に必要な培養設備、頭微鏡、分子生物学的な解析装置など実施場所に概ね備わっていま す。経費の主要な用途は、消耗品です。培地、抗生物質、ウシ血清や培養用フラスコ、ディッシュ、 ピペットなどのプラスチック器具、ガラス器具、抗体、FISH用のプローブ、試薬類の購入が 必要です。設備備品としてFISHで使用する温度制御装置の購入が必要です。また情報交換や 学会で研究成果を公表するために必要な出張経費、および論文発表の際の諸経費を計上してい ます。これらを本研究費補助金から支出することは、関連法規などに照らして、十分妥当であ ると考えます。各項目の金額については、これまでに行った類似の研究で必要となった経費を 基準として算定しました。 研究を円滑に進めるために、初年度は血圧・心拍と体温測定用の送信器から送られるデータ を受け取る受信ボードを購入予定である。また、現有のものも含め、送信器のバッテリー寿命 は約1年であることから、次年度に再生費用として消耗品費の中に計上した。その他、研究に 必要な分子生物学用試薬を通年で、動物投与用試薬、ホルモン測定用試薬、動物維持費、細胞 培養用試薬・器具を使用する年度に申請している。 (例4) 上した。 平成30年度には研究の進展によって研究補助員の増員が必要になるため、1名分の謝金を計 (例5) また、研究成果を学会にて報告する経費として旅費を、誌上発表するための経費として外国 語論文校閲費を予算に計上した。 図3-78●「研究経費とその必要性」の見本2 例1~3は「設備備品費。消耗品費の必要性」の記載例、例4、5は「旅費。人件費・謝金、その他の必要性』の 集・統計解析を使った研究などではぜひとも必要なのだろうが、十分な説得力 のある説明を書いておかないと、これは難しい。科研費は最新パソコンの購入 に使うものではない。 他にも、外部委託の経費や、外注の経費が大きすぎるもの、人件費や謝金が 大部分を占めるものなどもクレームをつけられがちな経費申請の例としてあげ られる. 「研究経費とその必要性」の書き方のポイント ・研究計画に必要な額を、遠慮せずに堂々と最大限を計上しよう。 ・研究経費が1つの項目に偏らないように、全体の90%を超える費目があ る場合には、その内訳と必要性を記載すること。 ・機器の購入や研究補助員の雇用など大きな経費の費目は、研究計画に必要 である理由を示すこと。 190) 科研費獲得の方法とコツ 第9版