===== Page 174 ===== 10応募者の研究遂行能力及び研究環境 ●この欄では何を書くのか? 申請者のこれまでの研究活動や研究業績(発表論文、著書。産業財産権(いわゆ る特許)、招待講演〕などを書いて研究遂行能力を示すとともに、研究環境が整っ ていることを書く. ●この欄では何を評価する? 提案している研究計画を実行できる技術や経験があるのかどうか、また研究環境 が整っているのかどうかを判断する。 平成31年度以降の申請書では「研究業績」ではなく、代わりに「応募者の研 究遂行能力及び研究環境」の項目となった (図3-68).この項目に書くべき内 容は「(I) これまでの研究活動(主要な研究業績を含む),(2)研究環境(研究 遂行に必要な研究施設・設備・研究資料等を含む)」であり、これを若手研究と 基盤研究[S,A,B,C: ただし基盤研究(S)だけは様式が少々異なる〕では 2ページ以内にまとめる。 注意点は、以前の申請書と異なり、単に研究業績のリスト(例えば発表論文 のリスト)を記載するのではなく、「本研究計画の実行可能性を説明する」ため に「その根拠となる文献等の主要なものを適宜記載する」ことである。 このような形になったのは、従来の「研究業績」欄では、 ・必ずしも研究課題とは関係のない業績を不必要に連ねている ・科研費の審査において「業績偏重主義」であるかのような印象を応募者、 その他に与えている ・できるだけ多くの業績でスペースを埋めなければ審査において不利にな るのではという誤った認識を与えている などの懸念があったためである。そのため、「研究業績」ではなく、提案された 研究課題に対する申請者の研究遂行能力や実行可能性を評価するものに変更さ (174 2 応募者の研究遂行能力及び研究環境 応募者(研究代表者、研究分担者)の研究計画の実行可能性を示すため、(1)これまでの研究活動(主要な研究業績を含 む)、(2)研究染境(研究遂行に必要な研究施設・設備・研究資料等を含む)について2頁以内で記述すること。 「(1)これまでの研究活動」の記述には、研究計画に関連した国際的な取組(国際共同研究の実施歴や海外機関での研究歴等) がある場合には必要に応じてその内容を含めること。また、研究活動を中断していた期間がある場合にはその説明などを含め てもよい。 図3-68●「応募者の研究遂行能力及び研究環境」の解説部分 令和7年度基盤研究(C)の申請害の実例. 科研費獲得の方法とコツ第9版 ===== Page 175 ===== 10応募者の研究遂行能力及び研究環境 赤ペン添削HB3 ● case 64~66 れた。つまりこれまでのように主として論文発表を評価するのではなく、あく までも(だと思うが)提案された研究計画のアイデアや計画がうまくいきそう なのかを評価するものに変わったということだ。「だと思う」と書いたのは、「応 募者の研究遂行能力」を評価する方法としては、やはりこれまでに発表された 論文から判断するのが一番確かだからだ.もちろん、論文に著者として名を連 ねていることと、本人の研究遂行能力とは別ものであるので、論文発表がある からといって研究遂行能力があるとは限らないのだが。 また「1研究目的、研究方法など」の(6)の「国際性」とともに、ここでも 「研究計画に関連した国際的な取組(国際共同研究の実施歴や海外機関での研究 歴等)がある場合には必要に応じてその内容を含めること」と国際性に関する 記載が求められる。 では実際の申請書において、「応募者の研究遂行能力及び研究環境」はどのよ うに書いていけばいいのだろうか。 「(1) これまでの研究活動」をどのように書けばいいのか ここでは、申請者のこれまでの研究活動を書いて、申請者の「研究遂行能力! つまり今回の研究計画が実現可能であることを示す。それには、 ①論文で示す いうまでもなく、研究活動のなかでは発表論文がいちばん重要である。発表 論文は、申請者がこれまでに行ってきた研究内容をみて、新たに提案している 研究計画が実行可能なのかどうかを判断する指標である、「申請書の審査ではま ず発表論文をみて、業績のない人はそれだけでだめ」と判断する審査委員もい ると聞く、つまり発表論文があることは採択のための必須事項である。ただし 然のように、「科研費の申請の時期だから、発表論文を増やそう」としても一 朝一夕には無理である、常日頃から少しでも多く研究業績をあげておく必要が ある。筆頭著者でなくてもいいから、普段から論文に名を連ねるように努めよ では、どのくらいの業績があればいいのだろうか。発表論文はなにも Nature Cel, Science クラスやその姉妹誌のものが必要というわけではないし、 に発表論文があっても採択されないことも多い.しっかりした査読システムが あるジャーナルに数本の発表論文があるなら、最低ラインはクリアしているの で安心してよい。 また論文数の最低ラインとしては、基盤研究(C)や若手研究では、筆頭者 者としての論文とそれ以外の共著者としての発表論文の合計が年平均1報、基 盤研究(B)では年平均3報くらいが基準だろうか。自分の論文発表状況を十分 (175 ===== Page 176 ===== に認識して対応しよう。 以前の申請書では応募課題に関連する過去5年間の業績を中心に、それ以前 のものも10件以内記載できるようになっていた.ところが平成30年度の公募 から、その制限がなくなった、そのため、いわゆるインパクトファクターの高 い雑誌の発表論文ばかりを、発表年にかかわらず記入する人もいるかもしれな い.しかし、それは要注意である。先にも書いたように、この項目の意図は、 提案している研究計画を実行できるのかどうかを、申請者のこれまでの業績か ら判断するためのものだ。そのときに、過去の古い業績ばかりを載せていたら、 審査委員はどのように感じるだろう。「過去の業績は素晴らしいけど、最近、研 究を行っていないのじゃないか」と、現在の研究遂行能力を疑われるかもしれ ない。それによって評価も下がる可能性がある。 コンスタントに研究活動を行っていることを示すために、やはり過去5年間 の業績を中心に記載するべきだ。理想的には発表論文の半分くらいを過去5年 間の業績でまとめ、残りにそれ以前の重要な発表論文を記載するのがよい (鬯 3-69).もちろん若手研究者は業績が少ないだろうから、すべてを記入する。 また投稿中(未受理)の論文は研究業績に含めることはできないが、in pres の論文は研究業績に含めることができる。 ②学会発表で示す まだ論文に発表されていなくても、学会や研究会で発表しているのなら、そ のことを書いておく.学会名、発表のタイトル、発表年月日とともに、発表内 容について今回の研究との関連についても触れておくこと。 招待講演は、小さな研究会でも学内の研究会でも呼ばれた講演はすべて書く. 「学会発表で記載できるのは『招待講演」だけではないのか」と思われるかも しれない。確かに以前の申請書では記載できるのは「論文、著書、産業財産権。 招待講演」となっていたが、現在の申請書では「論文、著書、産業財産権、招 待講演等」となっており、招待講演に限定されているわけではない.そのため 論文発表の研究成果だが、すでに学会などで発表しているものなら、積極的 に書いて研究遂行能力をアピールするのがよいと思う。 ③研究助成の成果で示す 科研費や民間財団の助成金などによって、どのような研究成果をあげてきた かを記載する。これまで研究費を受給されたときにはきちんと成果をあげてき たことを書いて、研究遂行能力(研究の実行可能性)を示す(図3-70). 審査委員の立場からいうと、過去に科研費を獲得していることは、申請者の 評価にプラスに働くことがある。それは申請者の評価に迷っているときに、他 176) 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 177 ===== 10応募者の研究遂行能力及び研究環境 基盤研究(C)(一般) 5 申請者のこ れまでの研 究活動の間 単な説明 古い発表論 文であるが、 今回の研究 計画の基礎 となってい るもの 執筆や編集 した単行本 があればあ げておく. 本の表紙な どを画像で 添付してア ピールする 直近5年間 の発表論文 をあげて研 究の継続を アピール 2応募者の研究遂行能力及び研究環境 応募者(研究代表者、研究分担者)の研究計画の実行可能性を示すため、(1)これまでの研究活動(主要な研究業績を含 む)、(2)研究環境(研究避行に必要な研究施設・設備・研究資料等を含む)について2頁以内で記述すること。 「(1)これまでの研究活動」の記述には、研究計画に関連した国際的な取組(国際共同研究の実施歴や海外機関での所究歴等) がある場合には必要に応じてその内容を含めること、また、研究活動を中断していた期間がある場合にはその説明などを含め てもよい。 (1) これまでの研究活動 グレリンに関するこれまでの研究成果:研究代表者は、グレリンの発見以来、様々な生物種にお けるグレリンの構造決定と機能の解明、グレリンの測定系の開発、グレリンの生理作用の解明、グレ リンの活性化に必須な脂肪酸修飾のメカニズムの解明などを行ってきた。 1. Kojima, M, Hosoda, H, Date, Y,, Nakazato, M,, Matsuo, hormone-releasing acylated peptide from stomach. Nature 402, 2. Hosoda, H., Kojima, M., Matsuo, H. & Kangawa, K. Ghrelin an ghrelin peptide in gastrointestinal tissue. Biochem Biophys 3. Kaiya, H., Kojima,M, Hosoda, H, Koda, A, Yamamoto, K Y,, Kikuyama, S. & Kangawa, K. Bull frog ghrelin is residue. J Biol Chem 276, 40441-8 (2001). 4. Nakazato, M,, Murakami,N, Date, Y.,Kojima, M, M ghrelin in the central regulation of feeding. Nature 5. 6. Kojima, M, Kangawa K. Ghrelin: structure and function. Physiol Rev. Nishi Y, Hiejima H, Hosoda H, Kaiya H, Mori K, Fukue M. Ingested medrum-chain fatty acids are directly utilized Endocrinology. 146:2255-2264(2005). 7. Sato T, Fukue Y, Teranishi H, Yoshida Y, Kojima, M. M regulation by fasting and 2-deoxy-d-glucose administration. E 8. Sato T, Kurokawa M, Nakashima Y, Ida T, Takahashi T, Fukue Kojima, M. Ghrelin deficiency does not influence feeding pe 9. Ohgusu H, Shirouzu K, Nakamura Y, Nakashima Y, Ida T, Sato (GOAT) has a preference for n-hexanoyl-CoA over n-octanoyl-CoA as an Res Commun. 386(1):153-8 (2009). 研究代表者が責任編集を努めた Methods in Enzymology 514 "Ghrelin”が2012年10月に発刊されている(右に表紙の写真)。 また最近のグレリンに関する研究では、グレリン遺伝子の発現 調節機構の研究、グレリンによる海馬の神経回路形成の研究、膵 臓のグレリンと時計遺伝子の関連、グレリンによる自発運動の制 御などの研究を行ってきた。 10. Shimura Y, Ohgusu H, Sato T, Kojima, M. Regulation Human Ghrelin. Promoter Activity by Transcription Factors, NF- xB and Nkx2.2. Int J Endocrinol. 2015:2015:580908 (2015). 11. Kim Y, Kim S, Kim C, Sato T, Kojima, M, Park S. Ghrelin is restriction-induced enhancement of hippocampal neurogenesis: lessons from ghrelin knockout mic Endocr J. 62(3):269-75 (2015). 12. Li E, Kim Y, Kim S, Sato T, Kojima, M, Park S. Ghre stimulates proliferation, migration and differentiation of ne progenitors firom the subventri cular zone in the adu Neurol. 252:75-84 (2014). Methods in ENZYMOLOGY Volume 514 Chrelim Krni Kanaiw ① (次ページへつづく) 図3-69●「応募者の研究遂行能力及び研究環境」の見本 令和2年度基盤研究(C)の申請の実例を令和7年度のフォーマットに移したもの.直近5年間くらいの業績を中心として、それ以前の 重要な業績も記載する。研究代表者と研究分担者の名前の下には下線を引くとよい。 の審査委員によって過去に評価されたということで、よい点数をつけようとす る自分の評価に(ある程度の) 安心感を与えるからだ. 3 (177 ===== Page 178 ===== (前ページからのつづき) 論文は未発 表であるが、 学会で発表 しているこ とをアピー ル 今回の研究 計画と関連 した手法を 使った論文 をあげて実 行可能性を アピール 研究試料や 機器の準備 ができてい ることを示 す 基盤研究(C)(一般)6 【2 応募者の研究遂行能力及び研究環境(つづき)】 13. Sato T, Oishi K, Ida T, Kojima M. Suppressive effect of ghre expression in the mouse pancreas. Endocr J. 2019 Oct 1l. dol: 10.1507/e 14. Mifune H, Tajin Y, Sakai Y, Kawahara Y, Hara K, Sato T, Nish Kojima M. Voluntary exercise is motivated by ghrelin, possi Endocrinol. 2019 Oct l. pil: JOE-19-0213.R2. グレリン受容体の結晶構造解明については、7年前から研究をスタートし、まずアンタゴニストが 結合した不活性型の構造解明に成功した。この成果に関する論文は投稿準備中であるが、すでにい つかの学会でその内容を発表している。 •GPCRであるグレリン受容体の結晶構造解析による受容体活性化機構の解明 児島将康、2019年6月25日 第19回日本蛋白質科学会年会・第71回日本細胞生物学会大会合同 年次大会(神戸国際会議場) •グレリン研究のこれから 児島将康、2018年8月3日 第36回内分泌代謝学サマーセミナー(宮城県蔵王) また高活性型のグレリン受容体作成には、アミノ酸を変異させたグレリン受容体の活性測定などの 実験手法が必要だが、この点に関してこれまで様々な動物種においてGPCRを使ったリガンド探索 経験を有しており、グレリン受容体の変異体作成や活性測定のメソッドをマスターしている。 ニューロメジンU:機能未知だった神経ペプチドをオーファンGPCRのリガンドとして再発見し、 摂食抑制作用を持つことを明らかにした。 Kojima M, Haruno R, Nakazato M, Date Y, Murakami N, Hanada Purification and identification of neuromedin U as an endog GPR66 (FM3). Biochem Biophys Res Commun. 2000 Sep 24 CCHアミド1&2:ショウジョウバエで発見したインスリン分泌促進活性を示すホルモン。 16. Ida T, Takahashi T, Tominaga H, Sato T, Sano H, Kume Terajima S, Nakamura Y, Mori K, Yoshida M, Kato J, Murakami M. Isolation of the bioactive peptides CCHamide-1 and CCHam putative role in appetite regulation as ligands for G prote (Lausanne). 2012 Dec 31:3:177. Trissin:ショウジョウバエから発見した機能未知の神経ペプチド。 17.Ida T, Takahashi T, Tominaga H, Sato T, Kume K, Yoshizawa-K Murakami N, Miyazato M, Kangawa K, Kojima M. Identifi peptide trissin, a ligand for an orphan G protein-coupled rec Commun. 2011 Oct 14:414(1):44-8. このように研究代表者はグレリンに関する研究を継続して行っており、不活性型のグレリン受容体 についてはすでに結晶構造解明に成功した。その研究成果を活かすことで、グレリンが結合した活性 型のグレリン受容体構造の解明も可能になると考える。 (2)研究環境 グレリンに関するこれまでの研究によって、グレリンやグレリン受容体のサンプル、グレリン受 体の複数のアゴニストとアンタゴニストなどの実験試料は整っている。 申請者が所属する研究所は、遺伝子組み換え実験を行うP1レベルの設備が完備されている。また 化学実験や分子生物学実験を行う基本的な実験機器等も保有している。これらは、PCR装置、電気泳 動装置、微量分光光度計、インキュベーターなどである。細胞培養の設備に関しても、クリーンベン チやCOュインキュベーターなど、現存のもので対応できる。 以上、応募者の研究遂行能力及び研究環境によって、今回の研究計画は十分に実行可能である。 178) 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 179 ===== 10応募者の研究遂行能力及び研究環境 これまでに支援 を受けた科研費 や民間助成財団 を示す これらの研究は科研費の基盤研究(B&C)、挑戦的芽研究、新学術領域研究(食欲と脂肪蓄 積の制御と破綻の分子基盤の解明:計画班)、および民間財団(武田科学財団ほか)などの研究助 成によって行われてきた。 図3-70●「これまでの研究活動」の見本 平成30年度国際共同研究強化(B)の申請書の実例.これまでの研究で支援を受けた科研費や民間助成財団の研究費によって行われてきたこ とを記載する。 申請者らは1999年に胃組織からグレリン(ghrelin)を発見し(Kojima et al. Nature 1999)、これが成長ホルモン分泌促進作用を示すとともに、強力な摂食亢進作用を持つこと を明かにした(Nakazato et al. Nature 2001)。グレリンは胃から分泌されて血 ペプチド・ホルモンであり、3番目のSer残基の側鎖が脂肪酸であるnーオクタン酸(C8:0) よって脂肪酸修飾を受けており、さらにこの脂肪酸修飾が活性発現に必須であるという極め てユニークな構造をしている。グレリンは、末梢投与によって一以下、省略一 図3-71●重要な研究業績は本文中でアピールする 赤ペン添削HB3 ● case 64, 65 赤ペン添削HB3 ●case 27 ④その他に ・今回の研究計画に用いるテクニックや手法がこれまでの研究業績(発表論文 や学会発表)に書かれているのならば、その業績を記入し、内容を簡単に説 明しておく.これもやはり研究遂行能力(研究の実行可能性)を示すことに なるからだ(図3-69の2ページ目). ・日本語の発表論文・総説も大切な研究業績なので記載する。 ・重要な研究業績は「研究目的、研究方法など」の本文中でもアピールする。 「応募者の遂行能力及び研究環境」のページに記入するだけでは、重要な 論文とそうでない論文との区別がつかずアピール度が弱くなる。これまでに 発表した重要な研究論文などは、本文中にも記入することで大いにアピール するのがよい(図3-31,図3-71). ・成立特許と出願特許を記載する。発表論文と in press 論文に相当する産 産権(いわゆる特許)は、成立した特許だけである。しかし、現実には成立 した特許数は、出願した特許数に比べて格段に少ない。多くの研究者が「特 許をもっている」というときには、それはほとんどが特許を出願しただけの もので,成立した特許ではないことが多い。 ・研究分担者との業績量のバランスを考えること、重要なことは、研究代表者 (申請者)の業績のみが大きく評価されるということだ。最近5年間の業績が 少ないので、業績の多い究分担者をメンバーに加えて業績欄を多くしよう としても、審査委員はすぐに見抜いてしまう。逆に研究分担者の方が研究代 表者よりも業績が多く記載されていると、マイナスのイメージになることが 多いので要注意だ。 ・業績,とくに発表論文がない場合はどうしたらいいのか。ともかく発表論文 を多くすることに関しては特効薬はない。1報でも2報でも、筆頭著者でなく (179 ===== Page 180 ===== ても何番目の著者であってもいいから、ともかく論文を発表しよう。そうは いっても業績が最近ないときはどうするか?正直に「このところ業績はない が、この計画を行うのに十分なテクニックをもっている」と別の場所(本文 や準備状況など)に記載してアピールするしかない。なお、以前の挑戦的研 究(開拓・芽)の申請書には論文の記載部分はなかったが、現在は「③応 募者の研究遂行能力」の部分に、「これまでの研究活動(主要な研究業績を含 む)」と主要な研究業績を記述することが求められている。 researchmap について このように科研費申請書における研究業績は、現在では単なる発表論文のリ ストではなく、「(1)これまでの研究活動」において「応募者の研究遂行能力」 を示すためのものに変更された。そして科研費の審査においては、「research 及び科学研究費助成事業データベース(KAKEN)の掲載情報を必要に応じて 参照する」(文部科学省ホームページより)ことになっている〔参照KAKENに ついては2章3:採択課題の調査を参照)。researchmapは、「研究者が業績を管 発信できるようにすることを目的とした、データベース型研究者総覧」 (researchmapのホームページより)である。論文、講演・口頭発表、著書 業財産権、作品,社会貢献活動などの業績を管理することができる。これらの サイトは今後は審査において積極的に参照されるようになるだろう.図3-72 はresearchmapの私の「マイポータル」画面である。 そのresearchmapであるが、ログインすると「〇〇〇〇さんの業績の可能 高い、とAIが判定した候補を表示しています」と、業績候補の一覧が出てきて(図 3-73),「承認」にチェックマークを入れて「承認/却下を登録」をクリックする と自身の「マイポータル」ページに反映される。また「共著者候補リスト」も一覧 が出てきて登録することができる。さらに、PubMedやKAKENなどの外部シス ムからのデータの取り込みもできる(図3-74).このように、現在では業績の入力 がとても簡単になっている. このようにresearchmapの更新は簡単にできるようになっているので、 researchmapに登録しているが業績の更新が滞っている方は、ぜひ科費の応 募に合わせて更新してほしい。 researchmap は申請書の内容を補足するだけで なく、申請書に書き切れない情報を登録することで申請者の研究遂行能力のア ピールの場にもなるので、十分な活用をお勧めする。 (180) 科研費獲得の方法とコツ 第9版 ===== Page 181 ===== 10応募者の研究遂行能力及び研究環境 ▶researchmap 日本語| English ■児島将康な・ 更新日: 13:57 児島 将康 コジマ マサヤス(masayasu kojima) 園カバー写真の追加 ホーム 研究キーワード 研究分野 担当経験のある科目((業)所属学協会 経歴 受賞 Works(作品等) 論文 MISC 審箱等出版仂 講演・口頭発表等 共同研究・競争的資金等の研究課題 委員! 産楽財産権 学術貢献活動 社会貢献活動 メディア報道 その他 外部システムからのデータ取り込み ニエクスポート ユインポート 11粒べ替え •設定 メニュー く 基本情報 ビ編集 マイボータル 所属 久留米大学 分子生命科学研究所 教授 研究ブログ 資料公開 研究者番号 e researchmap 会員ID 20202062 J-GLOBAL ID 201101024656287813 B000001981 共著者の一覧 く 02/04更新 井田隆造 02/04更新 ”88年宮崎医科大学大学院博士課程修了(医学博士)。日本学術振興会特別研究員を経て、93年国立循環器病センタ 一研究所生化学部室員、195年より同室長。01年より久留米大学分子生命科学研究所遺伝情報研究部門教授。2024 年3月に定年退職し、研究者支援のジーラント株式会社を設立。同時に久留米大学名誉教授&客員教授。 研究テーマと抱負:研究テーマは生理活性ペプチドの探索と機能解明。グレリンを中心とした摂食・代開調節の研 究。 趣味はクラシック音楽と山登り。好きな曲はたくさんあるが、ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」とバッハ「無 伴奏チェロ組曲」、R・シュトラウス「ばらの土」。2022年10月に富士山頂で日本百名山を全山踏破。 好きな映画:小津安二郎の作品。どこにでも、だれにでもあるような話が心に染みる年齢になったのか。 好きな小説:トーマス・マン「ファウスト博士」。谷崎潤一郎と村上春樹の小説。 図3-72●researchmapの「マイポータル」画面 3 章 児島将康さんの業績の可能性が高い、とAが判定した候補を表示しています。 承認するとその業績は、あなたの薬績としてrosaarchmap上で表示されるようになります。 公開したくない業績は異績として登録した後に非公開に設定することができます。 自分の薬績ではないものだけを、担下してください。 総件数 ◎ 協文 〇承認 ◎数下 誠文 〇承認 〇却下 誠文 〇承認 〇知下 滋乳最盛期の乳牛への中鏡脂肪酸カルシウム補給に関する内分必および代プロファイル変化からの解析 福森理加野 利久、新宮崎行、小林寿美、長谷川喜久、児島将康、家川賢治、長和、引史郎 日本産学会大会講演要旨集 1191124-124 2015年3月【期限り] 立録:北曜)04/18 アゴニストと結合したグレリン受容体の構造に関する別意(nsights into the Structure of the Agonist-bou Becoptor) 祖村祐機、イム・ドヒョン、谷途介、本瀬亮次、浅田 秀基、岩田想、増保生部、児島特 日本内分泌学会雑誌 99(1) 298-298 2023年5月 登録: 09/08 更新:……・・・・/-/- 塩造情報を基づいたグレリン受容体アゴニストのシグナル活性の比較 植村祐機、イム・ドヒコン、谷器介、木瀬亮次、松井一真、浅田秀基、岩田想、児島康、増保生郎 日本内分泌学会雑誌 99(3) 1420-1420 2024年4月 会録:図03/08 更新:…・・・…・・-/-/- Bcyl.moditications.in.byine,porsine,and.esuine.gtreins Takanorl Icks, Hatsum Tominaga, En twamoto, Akio Kurool, Ayaka Okura, Kengo Shimada, Johji Kato, Atsutoshi Ku Hirotaka Ode, Sayaka Nagata... Frontiers in Endeerinoiogy 15 2024年5月17日 登録(205/24 更新:.........../.. 図3-73●researchmapではAIが自分の業績候補を提案してくれる (181 ===== Page 182 ===== 外部システムからのデータ取り込み 以下の外部システムから業績リストを取り込みます。 論文・Miscの取り込み ・ DBLP ・ PubMed ・ ORCID ・ Web of Science ・ CiNi Research • arXiv ・ Scopus ・医中誌Web ・JGLOBAL 文献情報 書籍の取り込み ・ CiNii Books 共同研究・競争的資金等の研究課題の取り込み ・ KAKEN(科研費取得状況) ・J-GLOBAL (JST研究課題) 図3-74●researchmapの「外部システムか らのデータ取り込み」 いくつかの外部システムから業績リストを取り込むことが可能だ。 赤ペン添削HB3 ● case 67, 68 「(2)研究環境(研究遂行に必要な研究施設・設備・研究資料等を 含む)」をどのように書けばいいのか 応募者の研究計画に必要な機器や設備が整っているのか、研究に必要な試料 や資料は保有しているのかなどを書く(図3-69の2ページ日下部)・ 注意点は、 ①もし機器や設備がまだ整っていないときにはどのようにするのか、その対処 方法を書く、例えば測定機器などは、「〇〇大学のものを借りて測定する」な ど、できるだけ具体的に書く. ②必要な試料や資料を保有していない場合、その入手方法を書く、これも単に 「入手する」だけでなく、どこで、誰から、どのように入手するのかまで具体 的に書くこと。 ③若手の方に時々みられる書き方なのだが、「研究室の上司の指導を仰ぐ」「O 〇大学の〇〇教授に相談する」などとは書かないこと。「自信がないのか」「消 極的」「人に頼りすぎ」などのマイナスのイメージしかもたらさない。たとえ 若手であろうと科研費は申請者が主役となって行う研究活動である。たとえ 自信がなくても、自分がやるということをアピールする。 (182 科研費獲得の方法とコツ第9版 ===== Page 183 ===== 10応募者の研究遂行能力及び研究環境 文献入力のための便利なヒント 医学生物学系ではPubMed (https://pubmed.ncbi.nl mmode=std)を利用して文献を集める人が多いだろう。PubMed で検索した文 献画面をそのままコピー&ペーストして入力してもよいが、 ■ 1 Cite Share Cite Share Ghrelin improves dystonia and tremor in patients with study. Yuge K, Hara M, Okabe R, Nakamura Y, Okamura H, Nagamitsu S, Yamashita Y Matsuishi T. J Neurol Sci. 2017 Jun 15;377:219-223. doi: 10.1016/i.jns.2017.04.022. E PMID: 28477699 This prompted speculation that ghrelin may play an important role in patients, including two adults, with severe dystonia and tremor, were was intravenousiy administered at a dose of 3mug/kg, once-da Plasma ghrelin and desacyl ghrelin concentrations in renal fa Yoshimoto A, Mori K, Sugawara A, Mukoyama M, Yahata K, Sugana M, Kangawa K, Nakao K. JAm Soc Nephrol. 2002 Nov;13(11):2748-52. dol: 10.1097/01.asn.0000032 PMID: 12397045 Free article. Ghrelin is a unique acylated polypeptide, and the naked peptide, desa activity. ...Two kinds of radioimmunoassays were used: amino-terminal im ghrelin alone (N-IR), and carboxyl-terminal immunoreactivity… のようになり、フォーマットを1つずつ変更していくのは煩わしい。このよう なときには必要な文献のタイトル左のボックスにチェックを入れ、上にある 「Save」をクリックする。 Pub med.gor 最後にここを クリックする RESULTS BY YEAR チェックを 入れる 022 ■ Abstract ■ Free full text ■ Fultext ARTICLE ATTRBUTE D Associated data Kojima AND ghrelin Advanced Create alert Create RSS X Search User Guide Emall Send to Sorted by-First author 1: Display options 192 results 2 items selected x Clear selection Page 0t20 > > Ghrelin improves dystonia and tremor in patients with Rett Cite study. Yuge K, Hara M, Okabe R, Nakamura Y, Okamura H, Nagamitsu Matsuishi T. JNeurol Sel. 2017 Jun 15:377:219-223. dot 10.10168ins.2017 PMID: 28477699 This prompted speculation that ghrelin may play an impor patients, including two adults, with severe dystonia and tremot, were was intravencusty administered at a dose of 3mug/kg, once-daily for Cite Share Plasma ghrelin and desacy ghrelin concentrations in renal fallure. Yoshimoto A, Mori k, Sugawara A, Mukoyama M, Yahata K, S M, Kangawa K, Nakaok JAm Soc Nephrol 2002 Nov.13(11):2748-52. dol: 10.1097/01.0sn.000003242 PMID: 12397045 Free article. Ghrelin is a unique acylated polypeptide, and the naked pe acthvity...Two kinds of radioimmunoassays were used. ami shrelin alone (N-IR), and carboxyl-terminal immunoreacti 次に「Save citations to file」のFormatを「 「Create file」をクリックしてテキストファイルで保存すればよい。 3 章 (183 ===== Page 184 ===== Publmed.gor Koyama AND ghrelin Advanced Create alert Create RSS Save・Emal Send to Save citations to file Selection: Selection (2) Format:Summary (text) Create file Sorted by: First author : X Search User Gulde Display options ※、 | FormatをSummary (text で保存する Cancel 保存したファイルを開くと 1: Yuge K, Hara M, Okabe R, Nakamura Y, Okamura H, Orimoto K, Kojima M, Matsuishi T. Ghrelin improves dysto patients with Rett syndrome: A pilot study. J Neurol Sci. 15;377:219-223. doi: 10.1016/j.jns. 2017.04.022. Epub 2017 Apr 1 2: Yoshimoto A, Mori K, Sugawara A, Mukoyama M, Yahata K, Hosoda H, Kojima M, Kangawa K, Nakao K. Plasma ghrelin a concentrations in renal failure. J Am Soc Nephrol. 2802 N 10.1097/81.asn.0080032420.12455.74. PMID: 12397045. のように表示され、そのまま必要な部分をコピー&ペーストで入力すればよい。 「応募者の研究遂行能力及び研究環境」は申請者の工夫次第で審査委員におお いにアピールすることが可能であり、それだけに申請者の腕(書き方)の見せ どころだ、ぜひさまざまな工夫を試みて、よいものに仕上げて欲しい。 「応募者の研究遂行能力及び研究環境」のポイント ・今回の申請に関連する論文、学会発表、研究助成の成果などを記載して研 究遂行能力をアピールする。 ・今回の研究計画に関連した研究手法などの発表論文があればあげておく ・研究試料(資料)や機器などの必要なものは準備していることを示す。 184 科研費獲得の方法とコツ第9版